こんにちは、吟遊詩人です。Utypingの磁気軸キーボード「UT65 HE」の実機レビューです。吟遊詩人のUS配列のキーボード遍歴は、HHKB、折りたたみキーボードRK925、JAMESDONKEY A3、DYNA TAB75です。これまでコンパクトサイズのメカニカルキーボードを中心に歩んできました。今回初めて「磁気軸・ラピッドトリガー」の製品を試すこととなり、その打鍵感や打鍵音を楽しみにしていました。
なお、このレビューの実施にあたり、Utyping様より実機をサンプル提供していただきました。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
・クジラ座流星群をテーマにした幻想的な限定コラボモデルでデザインが秀逸
・ドライバソフトを導入不要でwebサイトからFnキーを含むキーマッピングの変更が可能
・トリガー性能も0.01mm単位で調整可能
・バックライトの発光パターン変更可能
・マクロ機能もあり、キー入力のシーケンスを定義可能
・キーマップの変更はキーボード側に保存
ここはイマイチ
・USB端子の設置場所が奥にある
・重量が本体で1.5 kg、パームレスト併せて2.55 ㎏
・US配列のみ
1. スペック
項目 | 仕様 |
---|---|
キー/配列 | 68キー/英語配列 |
スイッチ | カスタムOMEGAマグネティックスイッチ ※Huanoと共同開発 ※リニアタイプ |
ホットスワップ | 対応 |
遅延 | 0.125 ms |
リターンレート | 8K (Hz) |
初期押下圧 | 35±10gf |
底部押下圧 | 45±10gf |
作動範囲 | 0.01~3.40 mm |
耐久寿命 | 1億回クリック |
ライティング | RGBバックライト |
接続方式 | USB有線 (Type-C) |
ケース | アルミニウムCNCケース |
スイッチプレート | アルミニウム合金 |
キーキャップ素材 | PBT素材 |
2. 付属品・筐体
外箱はごくわずかにへこみがありましたが、本体には全く問題がありませんでした。宅配便で届いたとき、あまりの重さから「レンガでも入れられて届いたか??」と不安になるほどの重量感でした (本体重量は約1.5 kg)
もちろんレンガなど入っているはずもなく、内容物はキーボード本体、USBケーブル(Type-C⇔Type-A)、キーキャップ/スイッチプラー、保証書兼取扱説明書でした。保証書兼取扱説明書は多言語で、日本語でも記載がありましたが、一部中国語表記の箇所がありましたので、そこは英語で書かれた部分を読むといいでしょう。
例えば、[Fn]+[F]でバックライトの輝度を下げるところが中国語で書かれています。まあ、漢字なので雰囲気で分かるといえば分かります。
また、およそ一週間ほど遅れて別便で専用パームレストが届きました。こちらも本体に負けず劣らずの重量感でした (約1 kg)。
このパームレストは本製品専用品となっておりキーボードとシームレスに合体することができます。この「星鯨(ほしくじら、イラストレーター まころんさんとのコラボモデル)」のデザインはキーボードとパームレストが一体化して初めて完成形になります。一度パームレスト付きを見てしまうと外す方が不自然と感じるほどです。かっこいいというか綺麗というか、視線が吸い寄せられますね。
筐体色はレビュー機「星鯨」のほか、「月詠(つくよみ)」も選べます。
キーボード本体の各側面を見ていきます。キーボードの上端の側面にはUSB Type-Cのコネクタがあります。本機は有線接続方式のみなので、特に切り替えスイッチなどはなく、コネクタがあるのみです。ちなみにコネクタが結構奥まったところにあり、L型のケーブルでは奥まで届きません。純正のケーブルを使うかL型になっていないケーブルを使う必要があります。キーボードの左右端の側面には特に何もありません。
キーボードの下端の側面はカバーの取り外しが可能で、専用のパームレストを取り付けられます。カバーは普通に使っていて外れてしまうようなことはありません。
3. 実際の使用感
設定画面
ともあれ、設定をしてみます。本機はアプリをインストールしなくても下記WebサイトにChrome系のブラウザでアクセスして、許可をすればキーボードの設定を行えます。
既に日本語になっていますが、右上の日本語の部分をクリックすると中国語、英語、日本語が選べるようになっています。
日本語にならない場合は手動で選んでください。キーボードを接続した状態で、真ん中の「デバイス接続」ボタンを押してください。初回は接続の許可ダイアログが出ますので許可してください。すると、設定画面へ移動します。
「キー機能」のメニューでキー配置のカスタマイズができます (このキャプチャはすでにカスタマイズ済みのものです)。吟遊詩人は[CAPS LOCK]キーは使わないので、ここを[Fn] キーにしました。こうすると、左手の小指で[Fn]キーを押せるようになるので漢字変換後[F10]キーを押す(半角英数にする)場合などで楽になります。他には[Fn]を押しながら[←]や[→]で[Home]や[End]なども便利です。
「トリガー性能」のメニューはまさに「磁気軸固有の設定」です。まずは、右に並んだボタンの最下部「キャリブレーション開始」を押してキャリブレーションしましょう。磁気軸は磁気の強さでキーがどのくらい押されたかを判定して当該キーのオンオフを制御します。
つまりキーボードの配置場所での地磁気の影響(これはごく軽微)や、各キースイッチの特性(製造上のばらつきなど)を考慮するものです。で、実際のキーの設定ですが、設定するキーを選んでから各種パラメータを設定していきます。吟遊詩人はゲーマーではなく、エンジニアなのでそんなに高速に反応してくれなくても正直事足ります。ただ、矢印キーだけは超高速に反応してくれても嬉しい(?!)のでそこだけは押下感度、リリース感度を小さめにしています。
とはいえ、スイッチのforce travel diagram(フォースカーブ)がないとInitial Pointが判らず押し始めの部分をどのくらいにするのが最適か判りません。残念ながら本機採用の「HuanoのカスタムOMEGAマグネティックスイッチ」のforce travel diagramは見つかりませんでしたのでカスタム前のOMEGAマグネティックスイッチのものを掲載しています。Initial Pointより押下感度を小さくすると誤打が多くなるような気がします。つまり、キーに指を載せているだけでキーが反応してしまっている場合がある気がします。事務作業者はそんなにピーキーに設定を追い詰めないほうがいいかもしれません。
「上級キー」メニューではマクロ的な機能を割り振れます。ゲーマーの皆さんはこれらを駆使するのかもしれませんが、エンジニアにはあまり用途が浮かびません…。強いていえばエクセルファイルを保存するときにカーソル位置をA1にするために[Home][←][↑][↑]みたいなシーケンスを一つのボタンに振るくらいでしょうか?w ここは使う人と全然使わない人に分かれるところかなと思います。こんな使い方あるよという方はぜひ教えてください。
「RGB機能」メニューではバックライトの設定を変更できます。エフェクトモードでいろいろ選べます。実際に変えてみて、「お、これかっこいい」というやつにすればよいと思います。本機は「星鯨」がテーマなので青系の波紋やギャラクシーなどがいいかな、と。ただ、キーキャップが非透過なので(キーの間から漏れてくる光だけなので)どれにしてもそんなに鬱陶しく光るということはありません。考え事をするときにキーキャップと漏れ零れてくる光を見て和むくらいの使い方ですね。
打鍵音
打鍵音はこちらをご確認ください。(動画の出来は触れないでください……。)
こちらは動画の40秒付近から5秒間の音を解析したものです。思ったよりも低い周波数帯域の音が多いかなと思います。これなら耳障りということもないですね。打鍵感は「いわゆるパチパチに近いコトコト」でしょうか。EnterやBackSpaceやSpaceなどの大型キーを強めに打てば高めの音がしますが、筐体内での変な反響音とかは出ていないですね。これもキーボード本体の圧倒的な重量感がなせる業かもしれないです。
パームレスト
当初はパームレストはないものだと思って使っていました。しかし、遅れてパームレストが届き以後はパームレスト付きで常に使っていました。気晴らしの記事執筆にスタバに2.5 ㎏のキーボードを連れて行った際には自分の正気を疑いました…。いや慣れると、すごく便利なんですよw
今まで、吟遊詩人はパームレストなんてなくても大丈夫な人種だと思っていました。しかし、使ってみたら「驚きの楽さ」にもはやパームレストなしでの利用は考えられなくなりました。手首が適切な高さで接地しているだけでこんなに楽にタイピングができるとは思ってもいませんでした。
本機が65%でコンパクトなこともありホームポジションからさほど手を動かさなくても全て打鍵できるという点もパームレストの効果を高めているのかもしれません。合体の構造といいデザインといい本当に最高です。65%キーボードはそのコンパクトさから持ち歩き用途がメインだと考えていたんですが、本機のように圧倒的重量感で据え置きで使うのもありだったんだと新発見でした。
ホットスワップ
本機はキースイッチのホットスワップに対応しています。ただし「磁気軸キーボードは磁気軸のキースイッチとしか交換できません!」
吟遊詩人は最初勘違いしていたんですが、磁気軸キースイッチとしか交換できないとは思わず、打鍵音の比較のために茶軸のメカニカルキーを挿そうとして接点がないことに気が付き、危うく破壊を免れました。そうなんです、磁気軸はキーボードと電気的な接点がないんです。冷静に考えれば磁気を感知するのに電気接点いらないですよね……。
逆に言うと磁気軸はそのハウジング内には磁石とバネしか入っていないということです。これならどんなに打ってもすり減りそうもないですね。耐久性はすごいのだろうと思います。それとラピッドトリガーとして使うには、リニア軸(force travel diagramが可能な限り直線)でないと打鍵感とは違う位置でオンオフされるのでリニア軸が選ばれるのも理解できます。吟遊詩人は別にラピッドトリガーは使わず、超長寿命なキーボードとして使いたいので、タクタイル感のあるスイッチが欲しいです。
また、磁気軸はその構造上キーボード側とキースイッチ側がちゃんとあっていないと使えないと思います。メカニカルキーのようにAmazonで安いキースイッチがあったから買ってきたっていう勢いで磁気軸を買うと使えない可能性が高いと思いますので注意が必要です。このあたり、メーカーにていろいろ情報公開してほしいですね。もしくは、交換可能な他の磁気軸をガンガン発売してほしいです。この耐久性なら浮気せず買います!w
4. まとめ
Utyping UT65 HEは10月10日10時からMakuakeにてクラウドファンディングが開始されます。この記事執筆時点で価格は判明していませんので、下記のリンクボタンで価格を確認してください。
本機はまずデザインが目を引きますが「中身もすごい」です。デザインに関しては、半透過のキーキャップに星鯨を合わせてバックライトを星鯨の世界観に合わせたものを作ってくれればより最高だと思いますが、そうするとお値段がどうなってしまうか恐ろしくもあります。
吟遊詩人はラピッドトリガーの使い勝手はそんなにわかりませんでしたが、その構造から超長寿命で一生付き合えるキーボードでは?と思っています。本機の場合、バッテリーなどヘタレる要素もないので10年、20年戦えると思います。
今後磁気軸のキーボードが増えてくるかと思いますが、本機は間違いなく、当分第一線で戦えるはずです。デザイン的に職場の雰囲気的にまずいとかでなければ職場と自宅と2台ほしくなるというのが本音です。US配列かつ65%キーボードなので全ての人に無条件でお勧めとは言えませんが、65%に耐えられる人であれば「相当にお勧め」です。
今後、他の磁気軸も発売してくれれば、キータッチ感も変えられるのでより楽しめそうです。
5. 関連リンク

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