こんにちはtakumiです。今週からドイツのケルンで始まったGamesCom 2018ですが、その中でNVIDIAが講演を行い、そこで正式に次世代ゲーム用途向けGPU「Geforce RTX 2080Ti」「Geforce RTX 2080」「Geforce RTX 2070」が発表されました。採用されているアーキテクチャは昨年からディープラーニングやサーバー向けのGPU「TITAN V」に採用されている「Volta」ではなく、今月行われたばかりの「SIGGRAPH 2018」内で発表され、早くも新型Quadroに採用されている「Turing」アーキテクチャとなります。この「Turing」搭載GPUが、NVIDIAが世界で初めて「リアルタイムレイトレーシング」技術に対応したGPUになります。現在はデスクトップ向けのグラフィックカードとしての発表のみですが、この内、「Geforce RTX 2080」と、「Geforce RTX 2070」に関しては、例年通りであれば、ノート端末向けのチップセットが展開されるはずです(Max-Qへの対応は今のところ不明)。
1,前世代との違いは?
例として、「Geforce RTX 2080」と、前世代の「Pascal」アーキテクチャ搭載GPU「Geforce GTX 1080」と比較すると、CUDAコア数が1.15倍、メモリクロックが1.4倍(GTX1080は搭載メモリがGDDR5Xに対して、RTX2080はより高性能なGDDR6を搭載)、メモリバス帯域幅は1.4倍となっています。また最大の違いは、リアルタイムレイトレーシング技術への対応の有無でしょう。これだけの性能向上を達成しながら、RTX2080はGTX1080と比較して、TDP(消費電力)は45W(225W)の増加に留まっています。補助電源もFounders Edition(NVIDIAが公式に展開するベースモデルよりも少しオーバークロックをしたモデル)では8ピン+6ピンとなっているので、電源の交換もほぼ不要でしょう。ただ、前世代との「単純な」性能差は現時点ではまだ分かっていません。
2.レイトレーシング(RTX)でゲームはどう変わる?
レイトレーシング技術はどういう原理でどのような描画処理がなされるのか、という話に興味を示したり、その話が理解出来る方はごく小数だと思います(実際、記事を書いている自分ですらよく分かっていません)ので、RTXによってゲームの描画表現がどう変化するのかをご説明しますと、主に光や影の表現に強くなります。具体的には、
・光の当たり方や僅かな色の違いが分かるようになる
・光の当たり方によって出てくる影の強弱がよりハッキリ分かるようになる
・鏡や金属に写った光の描写がより鮮明になる
実際にRTXをサポートする「バトルフィールドV」では、キャラクターの目に映る炎の光や、車に映りこんだ炎の色、及びその光によって出来るいくつもの影がより現実的に描画されているのが分かります。勿論、他にも様々な恩恵が受けられることと思いますが、効果が「はっきりと」分かるのは上記の3点です。これらの描画表現に魅力を感じるかどうかが、新世代GPUの購入の決め手となりそうです。
RTXに対応したゲームは現段階で21あり、「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」や、「メトロ エクソダス」といった期待の新規タイトルから、「PUBG」や「We Happy Few」といった既存の人気タイトルにもアップデートで対応するとの事です。対応リストはこれからも増えていくとの事ですが、個人的な予想をすると、「Fortnite」のような、トゥーン調のグラフィックスのゲームでは採用されないと思われます。この部分に対して、NVIDIAがどのような対応をしてくるのか見どころだと思います(個人的には、この辺りはAMDがリードして欲しいなあと思ってたり)。
3.ゲーミングノートへの搭載はいつ頃?
少しこのサイト向けの話に戻します。現行の「Pascal」アーキテクチャ搭載GPUは、通常のノート向けモデルと、薄型ノート向けに性能を抑え、消費電力と発熱を抑えた「Max-Q」と呼ばれるモデルが展開されていますが、次世代の「Turing」アーキテクチャ搭載GPUでも恐らく同じ展開をしてくるものと思われます。
但し、これまでのGPUはFounders Edition含めNVIDIAのリファレンスモデルは外排気タイプのシングルファンでしたが、今回はメーカー製と同様のような内排気タイプのツインファンに変更されました。そのため、発熱は全世代と比較して高くなってることは間違いないと思います(一応メーカーからは、性能を落とし外排気シングルファンを搭載したモデルが展開されます)。そのため、NVIDIAがノート製品向けのさらなるデチューンを施すか、メーカー側で発熱対策を講じるか、になってくるところだと思われます。後者の場合、「Max-Q」モデルが展開されるまでは、搭載ゲーミングノートの筐体は写真のような大型の筐体になってくるのでは、と予想します。
肝心の発売時期ですが、前世代「GTX 10」シリーズがゲーミングノートに搭載が発表されたのは、最初に「GTX 1080」が発表されてから3ヶ月後のことでした。これと同じスパンなら、今年の11月or12月頃にノート向けの「RTX 20」シリーズが発表されるかと思われます。更にいうと、各メーカーはこれらノート向けGPUが発表されたとしても、現行の「Intel Coffee Lake-H」CPUを搭載せず、2019年Q1(1月~3月)に出荷が予定されている新しい「Intel Coffee Lake Refresh-H」プロセッサ搭載CPUを搭載しての販売をしてくるだろうと予想します。仮に現行のi7-8750H(或いは、i9-8950K)を搭載して販売してきたとしても、個人的にはCoffee Lake Refresh世代のCPU搭載モデルを待ったほうが懸命ではないかな、と考えます。
4.ゲームグラフィックスの未来は?
RTXは、MicrosoftがDirectX12向けに開発した「DXR」に最適化されています。「DXR」は、Unreal EngineやUnityなどでも採用されるため、RTX対応ゲームはこれからも増えていくことかと思われます。一方で、これらの映像表現がゲーマー達に受け入れられるのか、という疑問も残ります。コアなゲーマーたちは、RTXのような所謂「映像表現の強化」ではなく、純粋に今よりもフレームレートを多くしたいといった「パフォーマンスの向上」を求めています。
先程も述べたように、今回NVIDIAはRTX 20シリーズとGTX 10シリーズの「純粋な」性能比較を公開していません。仮にパフォーマンスの向上が微々たるものであった場合、RTXテクノロジーはゲーマーに受け入れられないものになってしまうかもしれません。それは即ち、RTX 20シリーズが市場で受け入れられない、ということも意味します。NVIDIAは、ゲーム制作各社と協力して、グラフィックのさらなる進化を目指していくと宣言していますが、それがゲーマーの求めるビジョンと一致するかといったところが、今後の見どころになりそうです。
以上、今回は趣向を変えて、新世代GPUのちょっとした解説をしてみました。1にも2にも実際にゲームをプレイして試さないと分からないかと思っています。おそらくTGS(東京ゲームショウ)でRTX20シリーズを体感できるのでは無いかと思いますので、お金を貯めつつ、ゲームグラフィックの技術革新に期待したいところであります。
5.関連リンク
NVIDIA RTX 20シリーズ:NVIDIA公式サイト
コメント
トゥームレイダーのレイトレデモはビックリしましたよ
フルHD解像度ですら2080Tiで30FPSでしたっけ?
中途半端な2070じゃとても太刀打ちできないのは容易に想像付くし
買うなら相当に勇気が要りますね
ダイ大型化してRTコアに費やしてるから
今回のRTXは完全にレイトレの正否にかかってるし様子見かな
こんにちは。コメントありがとうございます。トゥームレイダーのデモは初見時、「あれ?どこか変わったか?」と2,3度見返してようやく違いが分かりました( ̄▽ ̄;)
個人的にはメトロ エクソダスのムービーが1番興奮しました。楽しみです。
RTXグラボはシングルプレイ主体のゲーマーには重宝されるかとは思いますが、如何せんパフォーマンスが出ないのでマルチプレイ主体のゲーマーにはあまりウケが良くないかもしれません。
レイトレーシング自体は映画などのプリレンダの世界では既に使われており、従来のテクスチャとシェーディングの世界よりも鏡面などがずっとリアルな訳ですね。リアルタイムレイトレーシングも時間の問題ですが、それに必要な計算能力が足りないというのが現状でしたので、リアルタイムレイトレ支援機能というのは魅力的です。
一方、素の性能向上が見劣りするのは確かで、高い消費電力にはそれが表れています。それなりのアーキテクチャの改善しかしていないわけですね。また、どんなにNVIDIAのGPUやマイクロソフトのDirectXがリアルタイムレイトレに対応しても、家庭でプレイステーションで遊ぶ多くのユーザーのグラフィックには全く貢献がないわけなので、7nmプロセスを投入するAMDのGPUがどうなるのかというのが今年一番の見ものですね。
こんにちは。コメントありがとうございます。
現状今回RTX対応が発表されたゲームでも、1080p30fpsでの動作という噂がありますし、まだまだ実用的とは言い難い気がします。果たしてそこの技術にどれだけの消費者が投資してくるか、というのが焦点になりそうな気がします。
コンシューマー機もそうですが、PCもRTXあるいは、DXRに対応してこない新作ゲームも恐らくあるでしょうから、AMDがそこの土俵でどれだけ暴れられるかが非常に見どころだと思っています。
ZEN2+GTX1070くらいで良さそうな気がしてくるw
こんにちは。コメントありがとうございます。
ZEN2がどれだけの性能で出るかは分かりませんが、Intel並にゲームへの最適化が進んでいるのであれば、ゲーマー向け市場はひっくり返ることは間違いないでしょう。
マルチプレイ主体であったり、シングルプレイでの微細な画質向上に魅力を感じないのであれば、GTX10シリーズもまだまだ現役と言えそうです。
リアルタイムレイトレーシングはグラフィックという意味ではひとつの究極ですが、それが表現として主力になるにはまだグラボ側のスペックが足りないですね
RTXシリーズはゲーム用ではなく、Quadroのようなグラフィックデザイナー向けの安価なグラボと考えた方が良いかもしれません
また、今回採用された12nm+プロセスですが、実質的には16nm++位の代物だという話で、シュリンクによる性能向上は微々たるものだという話です
ゲーミングノートのdGPUとして最重要になるワットパフォーマンスと言う面では、レイトレ用のアクセラレーターの存在もあり、期待するだけ損ですね
なにより、あの反応から察するに、恐らく12nmでレイトレチップを取り除いたGTXシリーズも展開すると思われますので、ゲーミングノートとしてはそちらが本命になるでしょうね
こんにちは。コメントありがとうございます。
NVIDIAもそれを危惧してか、RTX2080TiはGTX1080比で平均1.5倍の性能向上を果たすと主張して来ました。しかし、コレもやはり実際のベンチマークの結果を見て判断するのが1番良さそうです(最も、CSGOやDota2など軽いグラフィックのタイトルをプレイするゲーマーにとってはGTX10シリーズで事足りてる感が凄いですけどね…)
NVIDIAが今後レイトレーシングを主体とするかは分かりませんが、デスクトップ、ノートに限らず、レイトレーシングチップ非搭載のGTX11シリーズなんかが出てくると消費者としても選択の幅が広がって市場的には面白いと思います。
ごめんなさい、RTX2080がGTX1080比1.5倍のようです