こんにちは。ひつじです。突然ですがひつじの姉は絵描きをしています。(もちろん半分趣味みたいなものです。)なのでモニタとかには結構こだわりがあるみたいです。色々私も調べる機会が多く知識も多少は付いたんですよね。
結構奥深いのがこのジャンルなんですが、専門用語の羅列が多すぎて正直何をどう参考にしたらいいか分からない方も多いと思います。今回、逆引き辞典的に単語を掲載してみました。液晶モニタに偏っていますが、もしスペック表などで分からない点があれば参考にしてください。(読み物としては面白くないかもしれません…。)
1.前提の話
液晶にせよ有機ELにせよ、性能を示すデータというものがあります。大きく分けて「色空間」「ビット深度」「解像度」「輝度」「フレームレート」などですね。
・色空間について
前提として光の三原色という考え方があります。赤、緑、青の3つ、あるいはシアン、マゼンタ、イエローの3つを混ぜ合わせれば世の中の色は大体表現できる、という考え方です。(厳密にはここに白と黒も存在します)ただ絵の具の量は制限(≒色域)しないとそれこそ無限に色は作れてしまうんですよね。つまりこの制限が色空間ということになります。あ、あと他にもYCbCrというものもありますね。これもRGBと大きくは違わないのですが、RGBが3色それぞれの強さを示すのに対し、YcbCrは明るさ及び、青と赤を基準に「どれだけ色がずれているか」を表記しているものだと思えば大体あってると思います…。
色空間は歴史との戦いでもありました…。一番定番なのはsRGBというものかと思います。これはMicroSoftが提唱した色の範囲を示すもので、赤、緑、青の三角の面積を「大体これを表現するように各位で共通言語化しましょ!」と提唱したものです。一方、AdobeRGBなるものもあります。これはPhotoshopなどで有名なアドビ社が同じく三角の面積(sRGBより広い)を「うちはこの範囲を扱うからね!」としたものです。名前は違えどどこも大体同じ感じです。一例として「NTSC」「DCI-P3」「BT.2020」「BT.2100」「x.v.color(xvYCC)」等々があります。
なお、「Adobe RGBカバー率●●%」と「Adobe RGB比●●%」は意味が違うので注意。見るべきは前者です。後者はあくまで面積比としてどうか、という話でしかありません。
ちなみに色空間が広いと扱わないといけないデータ量が増えます。後述しますが解像度や輝度なんかもデータ量に影響するのでデータ転送に直接影響するHDMIのバージョンがころころ変わったりする原因にもなっています。
・ビット深度について
本来の意味であれば、1単位ごとに割り当てるデータ量を指す単語だと思いますが、画像や映像で言えば「1ピクセル(1画素)当たりに割り当てるデータ量」というべきでしょうか。定番なのが24bitです。これがRGB各色に8bit(256色)を割り当てて色を混ぜる「1677万色」なんですが、ある意味パソコン界隈でのデフェクトスタンダードです。比較対象として、24bit画像と8bit画像を貼ってみます。結構違うんだな、と思うかも。
上が24bit、下が8bitです。
え、Windowsの色設定は通常32bitで設定しているはずだって?そうですね。Windows98~2000位で32bitの設定が一般化したように記憶しています。ただ実はこの残り8bitは「好きにお使いください」だったりします。Linuxを使っていたりする人は「なんでWindowsと違って24bitまでしか設定できないんだろう」と思っていたかもしれませんが、そういう理屈でした。もちろん、好きにお使いください、なので透明度(αチャンネル)なんかが当て込まれたりすることが多いみたいです。
あと一部のGPU(特にQuadroやRadeonPro等の業務用GPU)等は各色10bit(以上)で出力出来たりするパターンもあります。モニタでも「10bit対応」みたいな売り込み文句があったりしますね。ブルーレイなどでは「deep color」という48bit対応をうたう規格もあったりします。
もっとも、PC環境が基本24bit+αな世の中ですから作成される映像も大抵24bitなわけで。各機器で扱える24bitを超えた情報分は補正に使われがち(というかほぼ
補正用)という側面もあったりしますが…。
・解像度について
ドット全盛の現代ではいわゆる「画素」とほぼ同義だったりします。縦と横のドットの数を考えたもの、ですね。国内のテレビを例に挙げるならば、ハイビジョンが1,366×768、フルハイビジョンが1,920×1,080、4Kがフルハイビジョンの縦横2倍で3,840×2,160、8Kが4Kの縦横2倍で7,680×4,320、ということになっています。
なお、解像度は単純に高いほど高精細、とは限りません。フルハイビジョンと4Kを比較したとき、画面の大きさが縦横2倍以上違えば、ドットの粗さは4Kの方がむしろ目立つ、ということになります。(1ドットあたりが大きいからです)なので別途用いられる指標が「dpi」(ドット/インチ)ということになります。このdpiは1インチ幅をどれだけのドットで表現できるか、という指標です。ですので、dpiが2倍になれば、1インチを2倍のドットで表現できるため、面積換算で4倍のドットで表現が可能、ということになります。
・輝度について
最近これがトピックになっています。というのも「HDR」が全盛になってきているからです。昔は液晶モニタだと特に「白浮き」「黒潰れ」と言われるような、明るさの表現に弱点が多かったものが散見されたのですが、近年は逆に映像ソース側の表現不足が目立つようになっています。これを打開できるのがHDRです。
HDRは明るさの情報量を増やし、眩しい表現はちゃんと眩しくするとともに、明るさの上限を高くしておくことで暗い表現にも余力を残せるような作りを目指した規格です。(ちなみにHDRでない旧来の映像等は「SDR」と言います)
ただ、モニタの性能がまた規格に追い付かなくなっていることもあり、HDR対応映像の明るい画面の描写をモニタのピーク性能に合わせてしまったことで逆に今までと同じ白がやけに暗く見えてしまう、といった現象も発生し(例としてWindowsがHDRに対応した直後、最近だと地上波での4K放送が始まったタイミング)、「画面が暗くなった」みたいな悪い影響もチラホラ出ています。
特にテレビは販売層も購買層も規格面の知識が少ない、というパターンが存在してしまうので結構な懸念ではありますね…。こういった部分のフォローがないまま市場流通してしまった点はちょっと残念ですね。
ちなみに人間の目は解像度よりこの輝度により「精彩さ」を感じるらしいですね。フルハイビジョンのHDR環境と4Kの非HDR環境であれば前者の方が良いと思う人も確実に存在すると思います。現に私がそうだったので。
・リフレッシュレートについて
ゲーミングPC界隈では特に注目される数値です。一部後述と被ると思いますがリフレッシュレートとは「対象のモニタは1秒間に何枚映像を更新できるか」を示す値です。厳密には「リフレッシュレート」がモニタ側の性能を示すのに対し、よく名前を見るフレームレートは「(リフレッシュレートを上限として)どの位の更新をするか」という微妙な使い分けもあったりします。よく見る値としては30Hz、60Hz、144Hzが挙げられるかなと。一般的にメジャーなのは60Hzですが、ゲーミングモニタなどでは高い数値をアピールしていることもあります。1/100秒で勝負をする世界において60Hzというのは1/60秒でしかないわけですから、より早いリフレッシュレートが求められるんでしょうね。ひつじには無縁ですが。
2.液晶編
通常、モニタで使われる液晶(=LCD)は「TFT液晶」と呼ばれるものです。TFT液晶とは薄膜トランジスタを使用している液晶を指します。もっと簡単に言うなら、TFTが光をどのくらい通すかというシャッターの役割をして、そのシャッターの先に色付きフィルタを置いておいて、シャッターを開いたら色付きの光が出る、それを1ドットとして扱っている液晶ということになります。(もちろん各社の工夫で例外とかもありますけどね)
で、このフィルタへの光の通し方が次の「表示形式」につながります。いわばシャッターの開く向きが大きな影響を与えています。また視野角(まともに見える範囲を示す角度)もこのシャッターの向きが影響しています。(単純に例えるなら、光を取り入れているブラインドが視点位置で明るさが変わるように感じるのと同じです。)
・表示形式
テレビ等でのディスプレイ市場では大きく分けて3つあります。特性を順番に紹介したいと思います。
・TN方式
TFT液晶としてはかなり初期から存在する形式です。電圧をかけないと光を素通しします。(要はシャッターが開きっぱなし)ちなみに完全にシャッターは締まらないので、黒の表現には弱いです。その代わり構造が単純なので応答速度が単純な白黒の切り替えは非常に速いというメリットがありますし、消費電力も低いです。
ただ視野角は狭く、表現できる色数も少ないことが非常に多いです。(不足した色表現は高速で2つの色を交互に表示して混色させる荒業を使っていたりします…。)
応答速度も速い、と言いつつ中間調は例外。大抵テレビやゲームはこの中間調が映像の大部分を占めるので残像が気になる、みたいなオチが付きます。
一方視野角の狭さは横から覗き込まれることを防ぐ力がある、ということにもなるのでビジネスPCでは導入コストも相まって積極的に採用されています。オフィスユースなら応答性能とか色表現とかどうでもいいしね。
・IPS(ADS)方式
長らく液晶としては最高峰の評価を得ていた形式です。TNとはほぼ逆の特性と思ってもらったらいいと思います。細かい表現はしませんが、電圧がかかるとシャッターが開きます。このシャッターは光の通り道をほとんど阻害しません。よって視野角が良好なのが特徴です。
ただ、そもそも光を阻害をしない作りであるため、どうしてもバックライトの光を漏らしてしまう欠点もあります。よってコントラストも上げづらいです。応答速度は特徴的なそのシャッター構造のため良好とは言い難いです。(中間調は割と良好ですが。)
色表現は液晶の形式では極めて豊かですし、視野角の広さからも大画面テレビやグラフィッカーには最適な形式と言えます。ただHDRが全盛になっている近年ではコントラストを上げ辛い点から「2番手」の液晶扱いにはなりつつあります…。
・VA方式
長らく「2番手」の形式だったのですがHDR全盛になってから大きくイメージを高めました。VAもIPS同様、電圧をかけるとシャッターが開きます。ただこのシャッターが優秀で、光が殆ど漏れません。そのためIPSに比べて視野角は犠牲になりがちですがコントラストを上げやすい、という特性があります。
色表現はIPSには及ばないものの一般的なデスクトップPC位であれば十分網羅出来ますし、視野角は犠牲になっていると言いつつ、TNよりは良好。コントラスト比を除けばIPSとTNの中間的な特性を有している、と思ってもらえればいいのではないでしょうか。
HDR対応のハイエンドテレビでは近年、この形式を採用しているものが増えています。パソコン用のディスプレイではIPSかVAかは好みによって正解が分かれるというのが正直なところです。
・液晶独自技術
ここからはいろんなところで見る単語の紹介、という感じです。
・IGZO
シャープがブランド名を持っていますが、原理上はTFT液晶の薄膜トランジスタ(シャッター)を高性能化したもの、と思ってもらえれば良いと思います。ブラインドで例えるならば旧来のTFT液晶の場合、常に力を入れておかないとブラインドは開けっ放しにできなかったところが、IGZOは手放しでも開いたままになる、という違いがあります。なので省電力に貢献出来る、というのが一番良い特徴です。ブラインドを開けるのに必要な力も軽減できています。
なので、高画質につながる技術とは言えないものの、省電力化に貢献しているためスマートフォンなどと相性が抜群なんですよね。なお、このIGZOそのものはライセンス供与を行なっているため、「IGZO相当の液晶」はシャープ以外がリリースする(している)可能性はあります。
・量子ドット
クォンタムドットなどとも表現されます。有名どころだとサムスンが採用していますね。凄くざっくり言うと、量子ドット素材が光子のエネルギー吸収を行なうなどして光の波長を変化させて色変化を行なう、という仕組みみたいです。特性としては色付きフィルタに頼らず色調整を行うことが出来る上、その色表現も幅広いようです。
一見すると非常に最新テクノロジー感が出ているのですがそういうわけでもなく、例えばソニーは2013年頃に「トリルミナスディスプレイ」をリブランドした際からこの技術を採用しています。
・直下型LED/エッジライト型LED
液晶は原理上、色付きフィルタに光を通すわけですがその光をどこから照らすかにより性能にも影響が出ます。直下型はその名前の通り、液晶パネルの真裏から画面に向かってバックライトが光ります。エッジライト型はいわゆる「額縁」に当たる部分にバックライトの機能を持たせています。
画質は一般的に直下型が上と言われています。というのもエッジライト型の場合は横から光を当てるため、光のムラが出来たりしますし、エリアコントロールあるいはローカルディミング(画面表示に合わせて細かくLEDの明るさを調整する技術)においても光の通り道に当たる箇所はどうしても明るくなってしまう、という欠点があります。それを目立たせないためには他の箇所も明るくするしかないので結局黒が黒くないんですよね…。
ただし、ハロー現象といい、直下型でもエリアコントロールの分割数によっては光の漏れは目視できる場合があるのと、LEDの数で言えばエッジライト型は点数が少ない分コストや消費電力でメリットがあるとも言えます。
あ、ちなみに「ダイナミックコントラスト比」はこのLEDのエリアコントロールなどを加味したコントラスト比です。光の通り道が光ったりする欠点がある上でのコントラスト比なのでご注意を。通常は「(ネイティブ)コントラスト比」を参考にした方が良いと思います。
・オーバードライブ
液晶の色変化はのんびりしています。それこそ、場合によっては画面の切り替わりに追い付かないレベルで。なので「早く動いてよ!」と急激に力を入れる(=電圧をかける)ことで強引に色を変える機能を持たせた液晶が存在するんですね。(特にTN・VA)
このオーバードライブ機能、適切な調整であれば応答速度が向上する素晴らしい機能なのですが逆の場合は「早く動かしすぎる」、つまりおかしな色に一瞬変わってしまう場合があります。やりすぎは禁物、というやつですね。
・倍速駆動
現実世界はモノが常に動いていますが、液晶はフレームレートに応じて、(例えば60FPSなら60分の1秒は)画面が静止しています。ただ、この静止画面中にも次の映像のために画面を切り替える必要があるわけです。このラグと書き換え発生がいわゆる残像を生み出す原因になっています。前の画面に目が引っ張られてしまうんですよね。
なので、この対策として一時増えたのが間に1枚黒い画面を挿入する、あるいは黒い帯を高速で上下に動かす、という手法でした。そうすれば確かに映像がいったんきれいに消えるので残像は見え辛くなります。反面で画面表示時間のうち実に半分が黒くなったら、画面自体も暗く感じてしまったり、そもそも目が疲れてしまったりという原因にもなります。
そこで別手法のアプローチとして登場した手法が黒い画面の代わりにモニタが計算して生成する「60分の1秒と60分の2秒の間の画像」を挿入する、という倍速駆動でした。こうすれば残像感は実質半減する上、画面はヌルヌル動いて見えていいよね、という考え方です。今では4倍速なんかもありますし、前述の黒画面挿入と合わせているようなパターンもあります。
ただ、モニタが画像を生成する都合上、生成結果次第では一部幽霊みたいなナニカが映り込んだりします…。世の中の天才技術者が集まったであろうgoogleの深層学習による画像生成があのザマなのですから…。(※閲覧注意)
・フリッカーフリー
モニタのバックライトは明るさの調整をする場合、何も工夫しなければ点滅をすることで調整をします。ただこの点滅が曲者で、眼精疲労の原因にもなったりしたんですよね。判断方法としてよく「暗い部屋にして画面の前で手を振る」というのがありますが、他にもスマホのカメラで画面を映そうとした場合に線状に動くノイズが出るかどうかでも判断が出来ると思います。画面を暗くすればするほど、通常点滅は目立ち認知できてしまう場合もあるようです。
その点滅を無くしたことで目の疲労を軽減させたのがフリッカーフリー機能だと思ってください。ちなみにこのフリッカー、蛍光灯なんかにも当然存在します。だまされたと思って是非部屋の光源もフリッカーフリーにしてみてください。結構違いを感じる人もいると思います!
・サブピクセルレンダリング
こういうテキストサイトの文字をよく見ていると「文字の端々が本来とは違う色に光っているように見える」ことがありませんか?これはcleartypeフォントという、滑らかな表現が可能なフォントで発生します。
なぜかというと、液晶パネルは「色付きフィルタに光を通す」と伝えましたがこの光の出口は色毎に分かれていて、液晶パネル上で細かく並んでいるんです。この並びを1つのドットと考えればとても細かい単色のドットが大量に並んでいる、とも考えられますよね?このドット単位で画像などを処理する(レンダリング)することを「サブピクセルレンダリング」と言います。
液晶パネルの場合、RGBWパネルやシャープのクアトロンなど、通常の3原色であるRGBに加えて1色を追加することで表示性能を上げたものが世の中には存在するのですが、こういった液晶パネルはサブピクセルレンダリングを用いることで図形描写や光の描写をより滑らかにする、といった機能を有しています。(もちろん色の表現にせよ光の表現にせよ横のサブピクセルと調整して「それっぽい」描写をするにとどまるのであくまで補完的な機能です。使いすぎると本来は存在しない色が発生したりする原因にもなります。)
・サブピクセル配置
前述のサブピクセルレンダリングからも分かるように、「サブピクセル」とはRGB等、各ドット(=ピクセル)を構成する各色毎の細かい単色のドットを示します。この配置も種類があります。
代表的なものはストライプ形式といい、縦にまっすぐR、G、B、R、G、B…と並んでいるものです。このRGBの3サブピクセルで1ピクセルを構成している、というのが通常です。
一方、シャープ等の一部メーカーは「マルチ画素」という形式を採用している場合があります。これは元々、VA形式の液晶における視野角改善のため、1つのサブピクセルを分割してシャッターの向きそれぞれ変えておくことで視野角を改善する、というものです。ただこの分割したサブピクセルをどう配置するかによって、特にパソコンのcleartypeフォント等における「サブピクセルレンダリング」は影響を受けます。PCでは個々のモニタの特性までは分からず、通常の配列パターンを想定して映像を投影しますから。
近年では随分レアにはなりましたが、古いVA採用品なんかでは稀に厄介な画素配置があるようです。気を付けてくださいね。
・RGBWパネル
これはどちらかというと悪い評判の多い独自技術です…。もちろん単純に悪いわけではなくて、原理説明をするなら「RGBという3色にW(白)を入れた液晶パネル」を指す言葉です。スマホなんかでは有用で、照度を上げられるので直射日光下でも画面が見やすくなるんですよね。
ただ近年に限れば「RGBWパネル」というのは専ら「疑似4Kパネル」とも表現される格安のIPS液晶パネルを指します。このRGBWパネルの問題点は通常「RGB」で4K(つまり3,840×2,160)を表現するところを、Wが横に並んだ結果「サブピクセル織り込みで4Kでいいや!」と考えたんですね。つまり、本来RGBなら3,840×3がサブピクセルの横の数、ということになりますが、この合計数を変えないままWを編入してしまったんです。なので実質RGBだけで言えば1/4程数が減っている、ということになります。(※シャープのクアトロンはちゃんとRGBYで適切な数になるように計算しています。)
これが疑似4Kと言われる所以です。要はRGBだけで言えば2,880相当の画素数分しかありません。(縦方向は問題なし)
ただ、低価格に寄与しているのは事実ですし、チューニングが適切であれば大きな悪目立ちはしないのも事実。HDR全盛であれば白いサブピクセルは明るいので明るさの表現も強みになっていきます。分かって購入するのであれば決して悪くはないのだと思います。
・ペンタイル形式
液晶と言うより有機ELの方で大事、しかもサブピクセル配置に関する話題ですが良く調べられる方がいるので別掲します。通常のサブピクセルはストライプ形式と言い、RGBがまっすぐ順番に並んでいる、と説明したと思います。一方ペンタイル形式というものは、G(あるいはB)がまっすぐ並んでいるものの、横の列は残った色が縦に交互に並んでいます。
まっすぐ並んだ色の左右は確かに「RGB」という取り合わせになるのですが、Gが中心の場合、「R」と「B」は他のGと共用している形となります。結果はご想像通りなのですが、これも共用発生により本来は「3,840」ではなく「2,880」と解像度上表記すべきところを前者として取り扱っていることから議論を呼んでいる方式です。
なお、不幸中の幸いなのがこのパネルはスマホ向けの有機ELやヘッドマウントディスプレイで採用されていることから「悪目立ち」はしていないところだと思います。
3.有機EL編
こちらはまだまだ過渡期な面も多いので、概要のみですが。有機ELは決して新しい技術ではなく、単色での小さい画面(音楽プレーヤー等)では15年ほど前から市場流通していました。ただ画面の焼き付きが発生しやすいことや寿命の短さがネックとなって、次世代の映像方式と言われながらなかなか実現に至らなかった方式でもあります。単純な描写性能で言えばバックライトがないことから黒の表現が非常に素晴らしく、ブラウン管が市場から消えて以降、実質初と言ってもいい特性です。(名誉のために言っておくと、プラズマテレビの「KURO」等は限りなくバックライト無しに近い描写ができていたと言われています)
現在、有機ELには2種類の表示形式があります。
・カラーフィルター方式
これは現在市場に存在するほぼ全て(例外としてASUSのProArt PQ22UC等)の有機ELモニタが採用している形式です。考え方は液晶とそっくりで、自発光する有機ELをバックライトに液晶と同様のカラーフィルターを組み合わせたものです。ただ液晶パネルと違い有機ELは発光するかどうかをサブピクセル単位でコントロールできるので、黒の表現は液晶を圧倒します。
反面でカラーフィルターは白い光からいらない色を減衰させる機能である、とも言えますから、明るさや色の表現においてはまだ有機ELの本領は出ていません。(特にRGBを混ぜ込んだ中間色表現は弱いと言われています)
・RGB独立発光方式
これはJOLEDやシャープ等が製造確立を目指す方式です。カラーフィルターを廃し、有機ELそのものに色を持たせてコントロールする方法です。カラーフィルター方式より製造が困難で、特に大画面化は難しいとされています。(現在30インチくらいが限界のようです)ただカラーフィルター方式と違い、有機ELそのものが発色するので中間色表現などもかなりの強みとなります。現在ASUSのProArt PQ22UCはこのパネルを採用しています。(ただとんでもない価格です)
4.今後のディスプレイ方式について
大きく話題になっているのが「マイクロLED方式」です。これは液晶でいうサブピクセルを全てカラーLEDに置き換えたものと言えば分かりやすいですね。ただ想像通りかなりの高精細であるため、当面は技術的な課題が大きいようです。
あとはRGB独立発光方式の有機ELがどうなるか、でしょう。大型化がスムーズに進行できれば製造方式には利のあるJDIが強みを見せることがあるかもしれませんが、歩留まり次第な面もあるかと思います。また、まだまだ耐久性に対する懸念はぬぐえないのが実態です。
また、量子ドットも進展次第では次世代ディスプレイ方式として存在感を示すかもしれません。仮にそうでないとしても上記2形式と親和性は悪くないはずなので、今後の展開に期待、ですね!
コメント
最近ソニー辺りがリファレンスの業務用ディスプレイとして出したモデルには、モノクロフィルタとカラーフィルタのダブルフィルタ構造を再発掘して作られたディスプレイを採用したモデルがありますね
有機ELと異なり最大輝度の上限が理論的にはなく、下限も有機ELに比肩する事もあり、有機EL以上のコントラスト比と色表現力を獲得しています
また、RGB自発光有機ELにはサムスンがスマホ用ディスプレイに利用している蒸着方式の他、JOLEDがリスク生産を開始した印刷式がありますね
元々有機ELの特性として生産時にインクのように使えて基板の柔軟性を阻害しないと言うのもありましたので、ようやく有機ELである意味が出てきたと言うところでしょう
ちなみに、JOLEDのは印刷方式なので、超大型ディスプレイであっても生産コストはさほどでもないらしいですが、今はまだ生産技術確立のために手頃な30インチ程度で生産しているみたいですね
初期のリスク生産で単価35万円とのことなので、将来的には1万円台の格安ディスプレイにも採用される可能性も高いと思われます
microLEDにかんしてもいくつかの製品が出てきてはいますが、構造的に高発熱かつ製造コストが高止まりしていることもあり、まだ普及帯には降りてこない可能性が高いですね
一応、microLEDは理論上は基板サイズ=ディスプレイサイズの完全ベゼルレスディスプレイを実現出来るため今後が興味深いところですが、まだ実生産物としては実証用の一辺完全ベゼルレス化した極小サイズしかない様ですね……
どうなるにしてもコスト問題が台頭するのがmLEDの悲しみといったところでしょう
いずれは安価で短寿命な代わりに大画面高精細な有機EL、高価な代わりに長寿命かつ高コントラストのmLEDの二択になりそうですね
返信が遅くなり申し訳ないです。匿名さん、コメントありがとうございます。
お詳しいことにビックリです!(まさに野生のテクニカルライター…。)
個人的にはmicroLEDはすごく楽しみにしているんですよね。液晶モニタの概念の究極系な気がしていまして。コストさえ下がれば…。と本当に思っています。
逆に現状の有機ELや液晶なら、ブラウン管の再来をして欲しいな、と思ってしまうところもちょっとありますw
あとは…50インチクラスのJOLEDの有機ELが出たら欲しいですけどねー…。
野生のテクニカルライター