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Steam Machine 概観 - PS5超えの性能、最新ゲームもFHDで快適プレイ

オピニオン

Steam Machine
今回は、先日情報が公開されたValve社のゲーム用ミニPCSteam Machineについて、公開されたスペックをもとに性能を考察します。

この製品は、初期のOSとしてArch Linuxベースの”SteamOS 3″を採用しています。このコンセプトはすでに発売されている携帯型ゲーミングデバイスSteam Deckと共通しており、いわば「ミニPC版 Steam Deck」と位置づけられる製品であると考えられます。

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📊 主要スペックの確認

現在公開されている主要なハードウェアスペックは以下の通りです。このスペックの中で、特に注目すべき点は8 GBの独立したVRAMが搭載されているという点です。これは、CPU内蔵の統合GPU(APU)ではなく、別チップのGPU(dGPU)が搭載されていることを明確に示しています。

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CPUはZen 4世代の6コアであることから、デスクトップ用”Raphael”のRyzen 5 7600 (24x PCIe5.0, 32 MB L3$)、ノート用”Hawk Point”の[Ryzen 5 8640HS(20x PCIe4.0, 16 MB L3$)、廉価版ノート向け”Phoenix 2″系の[Ryzen 5 8540U (2xZen4 + 4xZen4c, 14x PCIe4.0, 16 MB L3$)のいずれかのカスタムバージョンでしょう。純粋なコア性能だけで見れば、こちらの製品では最大4.8 GHz、TDP 30Wに抑えられており、どれであっても性能に大差はありません。ただしノート用だった場合は、PCIeレーン数の少なさなどでゲーム性能に影響が出る可能性があります。ここでは仮にRyzen 5 7600のカスタム版と仮定して話を進めます。

GPUはRDNA 3世代の28 CUであることからRadeon RX 7600M/Sのカスタムバージョンと考えられます。こちらは本家が2.07 GHzの90Wに対して、カスタムバージョンは2.45 GHzの110Wと高めに調整されています。この調整は、携帯機であるSteam Deckと同様に、同じハードウェアの範囲でゲーム性能を重視したセッティングにしていると言えるでしょう。

🚀 推定性能

これらのチップの性能は、カスタムのベースとなったチップとクロック当たり性能は同じですので、クロック差をスケーリングすれば精度の高い予測性能を算出することができます。

CPU性能:基本的にはRyzen 7600や7640HSと同程度の性能です。Intelでは同世代の対抗馬はi5-12400やCore i5-12500Hなどに相当する性能です。これらは1.5世代前のミドルロー級で、2025年末現在は10万円を切るエントリークラスの製品に採用されています。PS5やPS5 Proより高いので問題は少ないでしょうが、CPU依存度の高い最新ゲームにおいては、ボトルネックとなる可能性も考慮する必要があるかもしれません。

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GPU性能:カスタムベースに対してクロックの引き上げにより底上げされており、グラフィックスベンチマークの代表的な指標であるTime Spy Graphicsでは、11,000~12,000程度のスコアが推定されます。この推定値は、据え置きゲーム機ではPS5とPS5 Proの中間に位置し、ミニPCとしては非常に高いグラフィックス処理能力を持ちます。GPU性能だけ見ればRyzen AI Max+ 395を搭載するGMKtec EVO-X2にも匹敵します(CPU性能や搭載メモリ量は比較にならない差があります)。

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ゲーム推奨スペックとの比較:この推定性能を最近のゲームタイトル(今回はCyber punk 2077 Phantom Liberty レイトレなし、Street Fighter 6Monster Hunter Wilds)の推奨スペックに当てはめると、フルHD(FHD)画質であれば、多くの最新ゲームで60 FPSの安定した動作が期待できる性能であると言えます。一方で、4K解像度でのプレイについては、GPU、CPU、メモリのすべてにおいて性能が不足しており、動作が困難なゲームが多くなると思われます。また、Cyber punk 2077のようなCPU負荷も非常に高いゲームでは、FHD画質でもフレームレートの維持に苦労する可能性が考えられます。

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Steamハードウェア&ソフトウェア調査では、Steamユーザーの最頻値は6コアCPU、GeForce RTX 3060またはRTX 4060とされているので、これらのスペックはおおよそそれに合わせたものとも言えます。

🔌 接続性

モニター出力は、DisplayPort 1.4とHDMI 2.0がそれぞれ1ポートずつ搭載されています。HDR、FreeSyncに対応しており、特にDisplayPortは最大240 Hzの周波数まで対応していますから、ゲーム用途に特化した設定です。ポート数は2つですが、個人用のゲーミング向けであれば基本的には単一のゲーミングモニターへの出力で問題ないでしょう。

無線機能は標準的な2×2 Wi-Fi 6EおよびBluetooth 5.3に加え、本機は専用の2.4 GHz帯Steam Controller接続機能を搭載しています。これは、Steamブランドで発売されることから、一般的なBluetooth接続よりも遅延を抑えることを目的とした、ゲームに特化した独自の仕様であると考えられます。このコントローラはタッチパッドもついているのでPCフレンドリーな仕様になっています。

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その他はギガビットLANが1ポート、USB-Cが1ポート、USB-Aが4ポートに限られており、PCIeスロットなどは存在しないミニPC仕様となっています。

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🌡️ 消費電力と冷却機構

本機のゲーム中の消費電力はかなり高く、GPUだけでもTDP 110Wに設定されています。一方で、製品のコンセプトとして「静音性」がアピールされています。高い消費電力と静かな動作音の両立には、冷却機構に高度な工夫が必要です。

公開されている筐体の外観から推測できるように、内部には大型のサイドフロー型ヒートシンクが搭載されています(YoutubeチャンネルGamers Nexusの取材動画)。この大型クーラーに取り付けられたファンは、CPUやGPUの冷却と同時に、ケースファンとしての役割も兼ねた形状になっているのではないかと推察されます。

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私自身がnoctua製の大型サイドフロークーラーを使っていますが、150W程度までは「注意しなければ忘れる」という程度の音量で冷やせていますので、このクラスの消費電力でも静音性を確保することは十分可能であると考えられます。

ただこのため、同じミニPCといっても、N100や7640HSを搭載した製品よりずっと重く(2.6kg)大きい(約16cm立方)、Mini-ITXが入る程度のキューブ型の筐体になっています。

📝 まとめ

トータルで判断すると、このSteam Machineは据え置きゲーム機であるPS5を超える性能を有していると見られます。PS5とSteamの両方でリリースされているゲームであれば、FHD画質で非常に快適にプレイできる可能性が高いでしょう。

ただし、4K解像度でのプレイ、レイトレーシングを積極的に使う設定、CPU依存度が高いゲーム(本格的なシミュレーションゲームなど)では性能的に厳しくなる可能性があります。

本機はLinuxベースの独自OSを搭載することでSteam用として発売されますが、通常のミニPCとしてWindowsをインストールして使用することも可能とされています。CPU性能はエントリークラスのノートPC程度になりますが、販売価格次第では魅力的な選択肢の一つになるでしょう。

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