こんにちは、近郊ラピッドです。今回はモバイル向けCPUの記事になります。よろしくお願いいたします。CPUには、よく使われるモデルと登場頻度の少ないモデルがあります。例えば第11世代Core(Tiger Lake)ではCore i3-1115G4、Core i5-1135G7、Core i7-1165G7というモデルをよく見かけます。大半のintel Core採用ノートパソコンではこれらのモデルが使用されています。しかし、たまに少し違う型番のCPUが搭載されている場合があります。そのような比較的珍しいCPUをご紹介したいと思います。ちなみに今回紹介するCPUはすべてTiger Lake世代でモバイル向けです。
1.Pentium Gold 7505
Pentiumというブランドは「Celeron以上Core i3未満」という位置付けになっています。しかしCore i3との性能差は世代によって異なっています。明確に差が付けられていてCeleronから多少クロックが上がった程度に留まるという世代もあれば、Core i3から多少性能を下げられた程度で、かなりCore i3に近い性能を持っているという世代もあります。
今回取り上げるPentium Gold 7505は第11世代(Tiger Lake)のCPUで、比較的新しいCPUとなっています。この7505ですが、同世代のCore i3とはどの程度の差があるでしょうか。ここではTiger Lake世代のCore i3の中でも下位に位置付けられるCore i3-1115G4と比較してみます。
スペックを比較してみると、多少の差はあってもそこまで開いていないということが分かります。内蔵グラフィックスや対応メモリ規格に至っては全く差がありません。また今世代のPentiumはターボブーストが付いています。内蔵グラフィックスがCore i3から下げられていないのも注目に値します。
公開されているPassMarkベンチマークの結果を見ると、Tiger Lake世代のPentiumは同世代のCore i3-1115G4の84%ほどのスコアとなっています。Pentiumの最大クロックはCore i3-1115G4の85%ほどなので、クロックの差がスコアにそのまま表れた形となります。参考のためにCore i3-1005G1(第10世代)のスコアも比較してみましたがPentiumとほぼ同じになりました。
上記の表からも分かる通り、Pentium Gold 7505はCore i3-1115G4とは多少の差がありますが、それでもPentiumとしてはかなり健闘していると言えるのではないでしょうか。ただ残念なのは、搭載された製品がとても少ないことです。かなり探しましたが、NECのWindowsの1機種(LAVIE Direct N15(S))と、LenovoのChromebook(IdeaPad Slim 560i)しか見つかりませんでした。しかしPassmarkのサンプル数はそれなりにあるので、海外では搭載機種がある程度存在するのかもしれません。
現状ではかなり珍しいPentium Gold 7505ですが、なかなかの実力を持っていると言えるでしょう。Chromebook環境でもWindows環境でも、重い作業以外なら十分快適に作業できる性能で従来のモバイル向けPentiumブランドとは別物になっています。
2.Core i3-1125G4
先ほどはPentiumを取り上げましたが、今度は上位モデルのCore i3-1125G4を取り上げます。1125G4は先ほどのPentiumとの比較で登場した1115G4とよく似た型番ですが、どの程度性能差があるでしょうか。
スペックを比較してみると、かなりの差があることが分かります。1115G4は2コアですが、1125G4は4コアです。シングルコア性能など部分的には1115G4の方が上回る場面もありますが、それでも2コアと4コアの差を覆せるほどではありません。
公開されているPassMarkベンチマークの結果も大差が付いています。参考のためにCore i5-1135G7の平均スコアとも比較しましたがかなり近いスコアになっています。
ベンチマーク結果を見ても分かりますが、同じTiger Lake世代のCore i3と言っても1125G4は1115G4とは別物と言える性能を持っています。最大クロックが0.4GHz低いのでシングルコア性能が重要な場面では逆転される可能性もありますが、マルチコア性能はかなり優勢です。
先ほどのPentiumは搭載されている製品がかなり少なかったですが、Core i3-1125G4搭載機も少ないです。ただDellとHPが数種類ずつ製品を出しており、製品のラインナップがスタンダートノートや、モバイルノート、大画面ノート、2in1、Chromebookと多彩なものになっています。またInspiron やPavilionといった各メーカーの主力シリーズにも搭載されています。
今までのモバイル向けCore i3は2コアの製品がほとんどでした。しかしTiger Lake世代で4コアの製品も登場することになりました。Tiger Lake世代のCore i3は2コアでも十分な性能ですが、4コアのCore i3-1125G4は今までのCore i3とは一線を画す性能を持っています。1125G4は軽い作業だけではなく、ある程度の負荷のかかる作業もこなせる性能を持っていると言えます。
3.Core i5-1155G7
ここで取り上げるCore i5-1155G7は2021年5月に追加投入されたモデルで、基本的にはCore i5-1135G7(及び1145G7)を強化したモデルとなっています。今回はCore i5-1155G7と上位ブランドのCore i7-1165G7を比較してみます。最上位のCore i5と最下位のCore i7ではどの程度の差があるでしょうか。
スペックを比較すると分かるのですが、シングルコア性能は大差ありません。しかも全てのコアをブーストさせたときのクロックの上限に至ってはCore i5の方が高いです。一方で内蔵グラフィックスはCore i7の方が格上になっています。
公開されている現時点でのPassMarkのベンチマーク結果はこうなっています。Core i5-1155G7のサンプル数が少ないので、ある程度の誤差はあると思われますが現時点ではほとんど同じスコアになっています。先ほどのスペック比較やベンチマークのスコア比較から、1155G7と1165G7がほぼ同じ処理性能を持っているという点が読み取れます。
上記のスペックの比較を見てもわかる通り、1155G7と1165G7は内蔵グラフィックス以外の性能差はあまり無いと言えます。Core i5の方が上回る点も部分的にあるため、ブランドこそ違えども処理能力という点ではほぼ同格と言っても良いでしょう。
Core i5-1155G7は先ほど紹介した2つと比べれば、まだ搭載機種が多くなっています(ウインタブでも搭載機種が何機種か取り上げられています)。しかし後から登場したモデルのため、Core i5-1135G7と比べるとかなり少ないです。搭載機種を見ると、VAIOやLet’s note等の高級機種を中心に、比較的高価格帯のノートパソコンが多いです。
Core i5-1155G7はCore i5ブランドにも拘らず、Core i7-1165G7よりも全コアブースト時のクロック上限が0.2GHz高く、Tiger Lake世代のモバイル向けCPUでは高いマルチコア性能を持つCPUとなっています。シングルコアのブーストクロックも4.5GHzとかなり高いので、幅広い処理に対応できます。
今回はTiger Lake世代のPentium、Core i3、Core i5の比較的珍しい型番のCPUを紹介いたしました。いずれのCPUもブランド名の割には高性能なCPUになっていると思います。
同じ世代の同じブランド名、同じ用途向けのCPU同士でも細かい型番の違いで結構性能差があるということを考えると、パソコンを探す際にはCPUのブランド名に加えて細かい型番もチェックする、というのも結構大切な事だと言えるのではないでしょうか。