こんにちは、natsukiです。悲しいお知らせです。ながらく、我が家のリビングにて活躍を続けてくれていた、希代のディスプレイ付きオールインワンタブレットミニPC(といって良いのかどうか)「PIPO X15」が故障してしまいました。いろいろと救命措置をとったのですが、どうにも、もうダメそうなので、供養を兼ねて顛末をご報告します。モノがモノだけに一般のパソコンとは異なる部分も多くありますが、トラブルシューティングの一例としても参考にしていただければと思います。
0.不具合の発生
「PIPO X15」スペック
「PIPO X15」のスペックはご覧の通り。
ともかく、この主張の強い筐体を見よ!一見タブレットPCながら、分厚い台形の筐体に無数のポート類を備えた、他に類を見ない強烈な個性を持つパソコンです。ディスプレイを備えたミニPC、というのが一番近い表現でしょうか? USB Type-Aを6つも備える拡張性は圧倒的。一方で、バッテリーを持たないため、電源接続が必須です。
使用状況
かつてレビュー時に、「省スペースなデスクトップ」と評した「PIPO X15」ですが、まさにその通り、リビングに設置して、主に子供向けパソコンとしてずっと稼働してきました。基本的な用途に加え、画質を調整すればマインクラフトくらいなら十分可能
予兆と症状 ― 起動しない
ある日、この画面からまったく起動しなくなってしまいました。本来なら、電源を入れると「PIPO」のロゴが表示されます。また、表示の通り「Delete」か「Escape」を押せばUEFIは開けます。なお、さすがは奇抜なPIPO X15というべきか、UEFIのメニューがネットで検索して出てくるものとかなり違う……。あんまりUEFIを多数いじった経験は無いので、American MegatrendsのUEFIの特徴なのか、PIPO X15の特徴なのかは分かりかねますが、ここも、興味深くも苦労したところです。
予兆としては、同様なことがすでに何度かあったんです。ただ、いったん強制終了すると問題無く起動したので、特に対処してこなかったという経緯があります。しかし今回は、いくら強制終了してもダメ。また、多くのパソコンでは、何度か強制終了を行うとシステムの修復などを行う画面が表示されますが、それも表示されません。
対処1.セーフモードでの起動を試みる
UEFIは開けるので、セーフモードでの起動を試みます。しかし、先ほどの画面に戻るだけで起動せず。
対処2.システムの修復を目指す
次に目指すべきは、「システムの修復」もしくは、コマンドプロンプトによる「chkdsk」コマンドの実行でしょう。
ブータブルUSBメモリからの起動
最も基本的な方法です。Windows 10 Homeのイメージをダウンロードして、ブータブルUSBを作成し、そちらから起動します。Microsoftのホームページからツールをダウンロードすれば、あとはウィザードに沿って簡単にできます。
そして作成したブータブルUSBメモリを挿してUEFIに入り、ブートの優先順位をUSBにして、起動。が、起動しません。
修復ソフトから起動
USBメモリから起動するタイプで、ある程度の機能まではフリーで使える、システム修理ソフトもあります。
比較的老舗の、
MiniTool
AOMEI
EaseUS
の3社のソフトを試しましたが、やはり起動できず。各ソフトのインターフェースにもたどり着けません。
なお、以上のUSBからの起動の失敗は、ブータブルUSBメモリからも各社修復ソフトからも、「PIPOのロゴは出るがそこで固まる(数時間放置して様子を見たが動かないので遅いわけではない)」「左上に文字入力カーソルのようなものが表示されて固まる」「Windowsの汎用ロゴが出て固まる」の3パターンが見られました。どういう場合にどれというような、条件の特定までは詰めていません。
この段階での推測と次への展望
ということで、USBメモリからの起動すらできないので、この段階ではマザーボードの不具合を疑いました。従って、PIPO X15の復活はいったんあきらめ、データのサルベージを次の目標としました。とはいえ、ローカルで回収したいデータはマインクラフトなどのゲームデータくらいです。
対処3.SSDの取り出しとデータサルベージの試み
SSDの取り出し
なにしろ起動しないので、分解してSSDを取り出すこととします。画像は、すでに取り外したあとです。ディスプレイとマザーボードをつなぐきしめんケーブルがタイトで、完全に開けきることはできず、支えておく必要があります。それでも、SSDを取り出すためにSSDを固定するネジを緩めなくてはいけないため、その際に、どうしてもきしめんケーブルにテンションをかけてしまいます。
取り出しました。形式はM.2 SATA 2280です。製品型番「SSDSCKKF180H6HN」からすると、れっきとしたINTEL製品。
外付けSSDケースでデータにアクセスしようとするが……!?
外付けSSDケースに入れ、他のパソコンにつなぎ、データの回収を試みます。ところが、ドライブとしては認識するものの(画像の「E:」)、開けない。また、しばらくするとエクスプローラーそのものがフリーズします。
データ復旧ソフトも通用せず
データ復旧専用ソフトを使ってみます。まずは定番の「Recuva」、それから、先ほどのMiniTool、AOMEI、EaseUSの3社のデータ復旧ソフト試用版を試みました。しかしいずれも、ドライブとしては認識するものの、選択するとフリーズ。
コマンドプロンプトも通用しない
ちなみに、データ破損覚悟でコマンドプロンプトから「chkdsk」を実行するも、コマンドプロンプトがフリーズ。オプション指定をせずに、単なる「chkdsk」のみでもフリーズします。
PIPO X15本体は、ブータブルUSBメモリから起動可能に
ここで試しに、SSDの無い状態のPIPO X15本体にブータブルUSBメモリを挿して起動してみました。すると、なんと、起動しました。
この段階での推測と次への展望
以上の結果からすると、どうも、問題はPIPO X15のマザーボードではなく、SSDにあった模様。SSDがある状態ではブータブルUSBからの起動ができず、SSDが無い状態だとできるというのは、なかなか不可解な状況ですが、しかし不具合の原因がSSDにある可能性は極めて高くなりました。
そこで、SSDからのデータのサルベージはいったんあきらめ(先述のように、ゲームのデータくらいなので)、今度は、新しいSSDにOSをクリーンインストールしてPIPO X15の復活を図ります。
対処4.新しいSSDへの換装
新しいSSD
はい、換えのSSDです。Aliexpressで半ばネタで買った中華マイナーメーカー(KingChuxing)のものですが、「H2testw」「CrystalDiskInfo」「CrystalDiskMark」「SSD-Z」、実際のデータなどで、ガッチリチェック済み。外付けSSDケースで別のパソコンにつなぎ、再フォーマットを行います。パーティションスタイルはGPT、ファイルシステムはNTFS、アロケーションユニットサイズは規定値で。
クリーンインストールを試みる
フォーマットしたSSDをPIPO X15に挿入。ブータブルUSBメモリからクリーンインストールを試みます。
が、このエラーメッセージが出て進まない。ぬうう、なぜだ?
周辺機器(キーボードとマウス)やブータブルUSBメモリを挿すUSBポートを変えてみましたが、ダメ。
UEFIから、Advanced>Storage Configurationの設定をどうこうするという情報もあり、ところがPIPO X15のUEFIには該当項目がなく、おそらく近いであろうSATA Configurationの設定を変更してみるも、ダメ。
関係無いとは思うものの、SSDのフォーマットをMBRに変えてみたりもしましたがダメ。では、コマンドプロンプトから「diskpart」コマンドで何とかできないか……、という段階で、新たな問題が発生。
2次被害発生 ― ディスプレイの故障
……ん?ディスプレイが点かない。ここに至るまで、主にSSDを取り出すために何度か分解していて、その際に、どうも、ディスプレイをつなぐケーブル(おそらくはディスプレイとの接続箇所?)を傷めてしまったらしい。はじめに分解したときにタイトなのは分かっていたので、以後も作業には慎重を期したつもりだったのですが、実際、どうにも点かず、そしてHDMIから外部ディスプレイには表示可能なので、これはケーブルまわりの破損で間違いないようです。そもそもが、分解を想定した機種ではありませんからね。南無三。
5.断念
ここで、修理をあきらめました。映像の外部出力が可能なので、この後、もしクリーンインストールに成功すれば、ミニPCとしては使用可能ですが、さすがにそれなら通常のミニPCを使います。
なお、起動しない以上、Windowsのライセンスキーは当然分からないので、クリーンインストール時にそこでつまずく可能性もあります。マザーボードが変わっていなければ大丈夫だとは思うのですが、実際どうなるかは分かりません。
あとは、「ドライブとして認識するが、専用のデータ修復ソフトですらアクセスできないSSD」から、データを回収するアイデアがないか、のんびり考えるくらいですかね。
6.教訓など
結論を言えば、結果的に、故障箇所はSSDだったことになります。やはり記憶媒体は、壊れるときには壊れるということです。では、振り返って、「こうすれよかった」ということはあったか、と見てみると、何度か「起動時にUEFIメーカー(American Megatrends)の画面が表示されて起動しない」という故障の予兆がありました。この段階では、強制終了から再起動できたので、データのバックアップは可能でした。月並みですが、データのバックアップはマメに行いましょう。
その他については、もちろん分解するなら慎重にということはあるものの、どうしようもなかったと思います。
この「PIPO X15」は、前世代機「PIPO X10」と合わせて、私のパソコンの使い方に根本的な革命を起こし(現在のメインマシンであるコンバーチブルPC「Lenovo Yoga 770」も、上の画像のごとくPIPOシリーズのようにテントモードで使うのが基本です)、またPIPO X10のレビューに応募したのがウインタブに関わる縁となったという意味でも、とても思い入れの深いパソコンです。ほぼまる4年間、主に使ってきたのが小学生の子供なので、どうしてもそれなりにぞんざいに扱ったところもあったのですが(保護フィルムのキズが物語っていますね)、リビングPCとして実によく活躍してくれました。一見キワモノな筐体ながら、極めて高い実用性を実証した名機でした。合掌。
7.関連リンク
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ツール類
Windows 10 のダウンロード:Microsoft
MiniTool
AOMEI
EaseUS
Recuva
コメント
R.I.P
まぁ機械ものですからいつかはこういうこともありますって。
でも、この記事は今後トラブル発生時に参考にさせてもらいます。ありがとうございました。
思い入れのあるPCなので、色々頑張ってみたのですがダメでした。せめて、皆さんの参考となれば、供養になります。
残念でした…
ネタPCだったのにいつしか暮らしに溶け込んでいたんですね…
まあPIPO君もこれだけ使ってもらえれば本望でしょう
見た目はキワモノながら、家庭用PCとして、「拡張性の高いタブレット」というのがきわめて有用であることに気づかせてくれた、素晴らしい機種でした。流行れ、「PIPOスタイル」!
もし今買い替えるならHigolePC(昔のGOLEシリーズと同一メーカーかは不明)というブランドで似たような筐体のやつがありますね
情報ありがとうございます。把握しています。が、私が知る限り、Celeron の3000番台か4000番台で、これではCPUがさすがに低性能過ぎて……
N5095のUMPCなんかは、面白そうなんですけどね。