少し前の話になりますが、12月15日にDELLが新製品発表会を開催しました。発表会のメインテーマは「Inspiron 13にCore Ultra搭載モデルが追加された」ということでした。しかし、それに加えて、Core Ultra(Meteor Lake)プロセッサーの概要についてIntelの技術者の方に丁寧にご説明いただきました。DELLって日頃からあまりベタに自社製品のPRをしない会社だと思っていましたが、この発表会も製品アピールだけにとどまらず、知りたかった新技術についてもわかりやすい説明が受けられ、いち出席者としては本当に有意義なものでした。
なお、Inspiron 13のCore Ultra搭載モデルについてはすでに紹介記事を掲載済みなので、こちらをご覧ください。この記事ではCore Ultra(Meteor Lake)の概要についてご説明します。
DELL Inspiron 13(5330)- 新世代CPU「Core Ultra」搭載モデルが追加されました。「AIに強い」モバイルノートに!
なお、私自身、CPUアーキテクチャについて高度な知識は持っておらず(渋谷Hさんにお任せw)、この記事も「Core Ultra(Meteor Lake)ってどうなの?第13世代CPUとはどう違うの?」ということについて、CPUアーキテクチャにあまり高い関心がない方向けに説明する内容になっていますので、あらかじめご了承ください。
40年で最大の転換
以下の画像はDELLの発表会で投影されたスライドを撮影したものです。画像は全て「クリックで拡大」します。
Core Ultraプロセッサーの開発コードネームは「Meteor Lake」で、この記事を執筆している12月24日現在だとノートPC用のみがリリースされています。そして「第13世代の次は第14世代でしょ?」という単純な話でもないんですよね…。「第14世代」と呼ばれる型番は現時点でデスクトップPC用のハイエンド型番のみリリースされていて、こちらは開発コードネームがMeteor Lakeではなく、第13世代と同じRaptor Lakeのままです。
また、Core Ultraプロセッサーは「i5」とか「i7」などの「i」はつきません。でも「5」とか「7」「9」といった性能をイメージできる数字は残っていますので、「型番体系が一新された」とまで言っていいのかはわかりません。ただ、Intelによれば「40年で最大の転換」という大きな変化があった、とのことです。
NPUの搭載でAIに強く
Core Ultraの大きなアピールポイントは「AIに強くなった」ということです。Core Ultraは「CPU(Central Processing Unit, 中央演算処理装置)」と「GPU(Graphics Processing Unit, 画像処理装置)」に加え、「NPU(Neural Processing UnitあるいはNeural Network Processing Unit, 直訳すると神経系処理装置)」という、AI処理に特化したチップを搭載しています。そのため、今後ますます進展していくであろうAI関連の機能で高い処理性能を発揮します。
現状、AIの機能の多くはクラウド上で処理されていますが、クラウドでの処理は一般にコストが高く、通信品質にも影響を受け、さらにプライバシーの問題も指摘されています。Core Ultraの搭載により、クラウド処理からローカル処理(使っているPCだけで完結できる処理)の割合が増加し、それがコスト低減やプライバシー問題の解決に繋がる、としています。
タイル・アーキテクチャ
ウインタブではCPUアーキテクチャについての突っ込んだ情報記事は渋谷Hさんが執筆されています(というか、私には突っ込んだ情報記事は書けない)。その渋谷Hさんの記事で「タイル化時代のAtom後継CPUの行方」というのがあり、そこでも触れられているのですが、Core Ultra(Meteor Lake)ではタイル・アーキテクチャというのが採用されています。
まず、グラフィックス・タイルですが、ここは従来のCore iプロセッサー(Raptor Lake以前)から大きな性能向上を果たしています。内蔵GPUの名称も「Intel Iris Xe」から「Intel Arc」に変更され、「外付けGPU並の性能」を発揮するとのことでした。
ここでCore Ultraと第13世代のCore i7(Raptor Lake)のベンチマークスコア(Passmark公表値)を見てみます。
比較しているCore i7-1360Pは第13世代のバランスタイプでInspiron 13の従来モデルが搭載している型番、Core i7-13700Hは第13世代の高性能タイプでゲーミングノートなどに搭載例が多い型番です(Core Ultra 7 155Hはサンプル数がわずかに「2」なので、今後大きく変動する可能性があることにご留意ください)。
このスコア差をどう見るかは人それぞれですが、私は「確かに性能は上がっているけれど、『40年で最大の転換』というほどでもないのでは?」と感じました。しかし、これはPassmarkの「CPUの処理性能のテスト」なので、主にGPU(グラフィック)性能を測定する3D Markなどのスコアを取ってみれば第13世代とはかなり大きな差が出るのではないか、と予想しています。逆に言えば「CPUの処理性能はそこまで劇的には変わっていない」と言えるかもしれません。
次にコンピューティング・タイルです。ここにはCPUコアがあり、Core Ultra 7 155HはPコア × 6、Eコア × 8、低消費電力Eコア × 2の合計16コア(22スレッド)です。一方、Core i7-1360PはPコア × 4、Eコア × 8の12コア(16スレッド)、Core i7-13700HはPコア × 6、Eコア × 8の14コア(20スレッド)です。Core Ultra 7 155HはPコアとEコアの数はCore i7-13700Hと同じですが、「intel 4」という新しい製造プロセスに移行しているのと、もう一つ「新しく追加された低消費電力Eコアはコンピューティング・タイルにはない」という特徴があります。
上でご説明した「NPU」と「低消費電力Eコア」はコンピューティング・タイルではなく、SoCタイルにあります。
このことは「低負荷な作業時にコンピューティング・コアを動かさなくてもよい」ということを意味します。つまり、省電力性が大幅にアップする、ということです。
まとめ
こうしてIntelの説明を聞いてみて、従来のCPU(Raptor Lake以前)との比較では、主に下記の点で「性能アップ」していると言えますね。
・Intel 4プロセスの採用
・NPUの搭載によるAI処理性能の向上
・内蔵GPUの大幅な性能向上と名称変更
・低消費電力Eコアの搭載による省電力性の向上
いかがでしょうか?冒頭にも書きましたが、私自身「個々のパーツの性能云々よりも、完成品としてのPCに興味がある」ほうなので、日頃は渋谷Hさんの記事で勉強する程度なのですが、Meteor LakeについてはDELLの発表会で非常に興味深い説明を受けられました。ウインタブでCore Ultra搭載機をレビューできるのはまだ先のことだと思っていますが、今後の実機レビューに役立てたいと思います。