こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。2015年冬のタブレット、2 in 1機種比較特集をやってます。今回は10インチクラスの中で最も人気が高いであろう、ASUS TransBook T100シリーズとその対抗馬、acer Aspire Switch 10シリーズについて書きたいと思います。どちらもタブレット本体にヒンジのついたキーボードが付属し、キーボードを接続すればほぼ完全なノートPCとしても使える製品です。
目次
1.ASUS TransBook T100シリーズ
ひとことで「TransBook T100」といっても、大別すると3種類に分かれます。
T100TAシリーズ
もっとも長く販売されているモデルで、非常に多くのバリエーションがあります。T100TAの特徴は「BayTrail世代のAtomプロセッサーを搭載した10.1インチサイズのタブレットに、ヒンジ付きのキーボードを付属させ、キーボード側にHDD(ハードディスク)500GBを装備した2 in 1 PC」で、このパッケージングに(別に真似したわけではないでしょうが)追随したのがacer Aspire Switchシリーズです。現在、価格比較サイトなどで販売されているT100TAシリーズの主要な製品は下記の通りとなっています。
T100TAF: RAM 1GB、ストレージ32GBとして、HDD500も取り去ったベーシックモデル。その分価格が安くなっており、実売価格は3万円を切ることも。
T100TAL: HDD500GBを省き、CPUのグレードも下げている代わり、LTE対応のSIMスロットを装備。SIMフリー機としてはかなり低価格で、実売価格は3万円程度。
T100TAM: 現行のT100TAシリーズ中最もスペックが高く、つい最近OSをWindows 10して「ニューモデル」となったばかり。スペックの概要は
OS: Windows 10 Home 64ビット
CPU: Intel Atom Z3795
RAM: 4GB
ストレージ: 32GB+500GB HDD(キーボード側)
ディスプレイ: 10.1インチIPS(1,366 × 768)
ネットワーク: 802.11 a/b/g/n、Bluetooth 4.0
入出力:
(本体):microHDMI、microUSB、microSD、オーディオ
(キーボード): USB3.0
カメラ: インのみ126万画素
バッテリー稼働時間: 本体のみ12.1時間、キーボード接続時10.3時間
サイズ:
(本体): 263 × 171 × 10.5 mm / 重量 570 g
(キーボード): 263 × 171 × 10 mm / 重量 520 g
となっており、T100TAシリーズの特徴を全て踏襲しつつ、64ビットのOS、BayTrail世代としては最上位のAtom、4GBのRAMを搭載し、Atom機としてはハイスペックなものとなっています。実売価格は5万円台前半というところです。この記事では以下、この「T100TAM-32E5H」を基準に比較を進めていきます。
ASUS TransBook T100TAM - Windows 10モデルにリニューアル、ハードウェアは変更なし
T100HAシリーズ
最新型のTransBookです。筐体は新しくなっていて、サイズ感はT100TAシリーズとあまり変わりませんが、タブレット本体の厚さが8.45 mmと薄型化され、キーボードも薄くなっています。T100HAシリーズには2種類のスペックがあります。
OS: Windows 10 Home 64ビット
CPU: Intel Atom X5-Z8500
RAM: 2GB / 4GB
ストレージ: 64GB / 128GB
ディスプレイ: 10.1インチIPS(1,280 × 800)
ネットワーク: 802.11 a/b/g/n、Bluetooth 4.0
入出力:
(本体):USB3.1 Type-C、microHDMI、microUSB、microSD、オーディオ
(キーボード): USB2.0
カメラ: イン126万画素 / アウト500万画素
バッテリー稼働時間: 本体のみ11.3時間、キーボード接続時11時間
サイズ:
(本体): 265 × 175 × 8.45 mm / 重量 580 g
(キーボード): 265 × 175 × 11 mm / 重量 500 g
上位モデルは「T100HA-128S」という型番で、RAMが4GB、ストレージが128GBです。一方下位モデルは「T100HA-(色名)」の型番となり、RAMが2GB、ストレージが64GBです。また、T100TAシリーズの特徴であった「キーボード側のHDD500GB」というのはT100HAにはありません。実売価格は上位モデルのT100HA-128Sが6万円前後、下位モデルのT100HAが4万円前後となっています。
ASUS TransBook T100HA-128S - RAMとストレージ倍増!これで本領発揮だね
T100 Chiシリーズ
T100 Chiシリーズは他の2つとはかなり異なる印象があります。「ヒンジつきのキーボードが付属する10インチ 2 in 1」という基本線は同じですが、デザインが洗練されており、薄型化も際立っています。T100 Chiにも2つのバリエーションがあります。
OS: Windows 8.1 with Bing 32ビット
CPU: Intel Atom Z3775
RAM: 2GB
ストレージ: 32GB / 64GB
ディスプレイ: 10.1インチIPS(1,920 × 1,200)
ネットワーク: 802.11 a/b/g/n、Bluetooth 4.0
入出力:
(本体):microUSB3.0、microUSB2.0、microHDMI、microSD、オーディオ
(キーボード): microUSB(ただし充電専用)
カメラ: イン200万画素 / アウト500万画素
バッテリー稼働時間: 8.7時間
サイズ:
(本体): 265 × 174.5 × 7.2 mm / 重量 570 g
(キーボード): 265 × 175 × 6 mm / 重量 510 g
その他: Office Home & Businessが付属するモデルあり
T100 Chiの上位モデル「T100 Chi-3775S」はストレージが64GBあり、製品版のOfficeが付属します。一方下位モデル「T100 Chi-FG001B」のほうはストレージが32GBでOfficeもつきません。T100 Chiシリーズは本体の厚さがわずか7.2 mmと劇的に薄く、キーボードをBluetooth接続方式に改め、若干省くことによって他のシリーズをはるかにしのぐ薄さを実現しています。また、デザインにも凝っており、T100シリーズ中最も美しいデザインと言えます。その薄さもあり、タブレットとしての利用時に真価を発揮しますが、キーボード接続時の実用性は入出力ポートがmicroUSBのみであることやキーボードがBluetooth接続であることから、他のT100シリーズよりもやや劣るといえます。実売価格は上位モデルのT100 Chi-3775Sが5万円前後、下位モデルのT100 Chi-FG001Bが3万円台半ば~4万円程度となっています。
ASUS TransBook T100 Chi - 既存モデルからの正統進化!この春大本命の2 in 1
2.acer Aspire Switch 10シリーズ
acer Aspire Switch 10シリーズには時系列で「Aspire Switch 10」「Aspire Switch 10E」「Aspire Switch 10E(新型)」というモデルが存在し、acerの公式サイトでは現状初代モデルである「Aspire Switch 10」と最新モデルである「Aspire Switch 10E(新型)」が掲載されていますので、この記事ではその2機種について説明します。
Aspire Switch 10
Aspire Switch 10シリーズの初代モデルで、現在はシリーズ中のエントリーマシンという位置付けになっています。新規生産はしていないような気がしますが、現在でも多くの通販サイトで購入することができます。
OS: Windows 8.1 with Bing 32ビット
CPU: Intel Atom Z3735F
RAM: 2GB
ストレージ: 64GB / 64GB + HDD500GB
ディスプレイ: 10.1インチIPS(1,280 × 800)
ネットワーク: 802.11 b/g/n、Bluetooth 4.0
入出力:
(本体):microUSB2.0、microHDMI、microSD、オーディオ、電源
(キーボード): USB2.0
カメラ: インのみ200万画素
バッテリー稼働時間: 8時間
サイズ:
(本体): 261 × 177.1 × 8.9 mm / 重量 585 g
(キーボード): 261 × 177.1 × 11.3 mm / 重量 585 g/615 g
その他: Office Home & Businessが付属するモデルあり
Aspire Switch 10には「ストレージ64GB+キーボード側にHDD500GB、Office Home & Business付属」の上位モデル「SW5-012-F12D/SF」と「ストレージ64GB、HDDとオフィスなし」の下位モデル「SW5-012-F12P/S」がありますが、現在実質的に購入できるのは下位モデル「SW5-012-F12P/S」のみで、実売価格は3万円弱となっています(上位モデルも探せば買えますが、数が少なく割高です)。今回の比較では「価格勝負」的な製品といえます。ちなみに私はこの製品の下位モデルを愛用しています。
旧型でよくね?acer Aspire Switch 10が2万円台で買える件
Aspire Switch 10E
こちらは最新モデルです。OSにWindows 10、CPUにCherryTrail世代のAtomを搭載して12月11日からの販売となっています。TransBook T100シリーズと競合するのは実質的にこの製品ということになります。
OS: Windows 10 Home 64ビット
CPU: Intel Atom X5-Z8300
RAM: 2GB
ストレージ: 64GB + HDD500GB
ディスプレイ: 10.1インチIPS(1,280 × 800)
ネットワーク: 802.11 b/g/n、Bluetooth 4.0
入出力:
(本体):microUSB、microHDMI、microSD、オーディオ
(キーボード): USB3.0
カメラ: イン/アウトとも200万画素
バッテリー稼働時間: 12時間
サイズ:
(本体): 262 × 180 × 10.95 mm / 重量 630 g
(キーボード): 262 × 180 × 14.8 mm / 重量 650 g
Aspire Switch 10Eにはスペックのバリエーションはなく、カラーバリエーションのみが存在します。Aspire Switch 10シリーズ全般に言えることなのですが、筐体の品質が高く、特にマグネット式のヒンジは素晴らしい出来栄えです。なお、実売価格はこの記事を書いている時点で発売日を迎えておらず、予約注文価格のみで税込み69,979円となっています。おそらく発売日以降に実売価格に取扱店による差が出てくるものと思われます。
acer Aspire Switch 10 E - 10インチ 2 in 1の本命機、CherryTrailと新色をまとう!
3.カタログスペックで選ぶ
CPUやRAM、ストレージなど、PC製品の処理速度(性能)に関する部分を比較すると
T100TAM: Atom Z3795、4GB、32GB+500GB HDD
T100HA: Atom X5-Z8500、2GB、64GB
T100HA-128S: Atom X5-Z8500、4GB、128GB
Aspire Switch 10E: Atom X5-Z8300、2GB、64GB+500GB HDD
※CPU、RAM、ストレージの順で記載しています
となります。PASSMARKが公表しているベンチマークスコアは
Atom Z3795: 1,684
Atom X5-Z8500: 1,192
Atom X5-Z8300: データなし
Atom Z3735F: 902
※2015年12月2日現在のPASSMARK公表値。数値が大きいほど高性能
なのですが、実はこのデータは信用できません。Z3795と参考のため掲載したZ3735Fに関しては信用できますが、Z8500はサンプル数がわずか「2」なので、統計データとしては使いものになりません。個人的にZ3735F、Z3795、Z8500を試用した経験で言うと、PCやタブレットで事務処理系の作業やWebブラウジングなどをする場合、性能差はあまり体感できませんが、オンラインゲームのベンチマークソフト(ドラクエベンチなど)でテストしてみると、CherryTrail世代のAtomのほうが顕著に高いスコアとなりますので、グラフィック系の処理は確実にCherryTrail世代の方が優秀です。
また、RAMに関しては、32ビットOSの場合、2GBでも4GBでもあまり差はありませんが、64ビットOSの場合は4GBある方が望ましいとされます。ただし、タブレットとしての日常利用においてはOSのビット数、RAMの容量はあまり体感できません。ノートPCとしてブラウザのタブを10個以上開いたり、複数のソフトウェアを同時に立ち上げるような使い方をする場合は、OSが64ビットであれば4GBのほうがいいと思います。
これら私の経験も踏まえて書くと、ノートPCとしてキーボードを接続し、比較的重い作業をするのであればTransBook T100HA-128S、ついでTransBook T100TAMがスペック上優れている、と考えます。
4.筐体で選ぶ
ここでは、筐体構造、サイズ感、入出力ポートについて比較していきます。
筐体構造
私はacer Aspire Switch(この記事では低価格の初代モデルとして紹介しています)を愛用していて、非常に気に入っています。特に筐体構造が素晴らしく、素材はプラスティック製ながら安っぽさを感じません。また、ヒンジ部分は強力なマグネットで固定するタイプなのですが、着脱、開閉とも非常にスムーズで、キーボードを装着してしまえば、完全なノートPCとして使用することができます。TransBook T100TAに関しては、周囲に実機を使用している人も複数いて、少し使わせてもらったりしているのですが、TransBookも決して悪くはないとはいえ、Aspire Switchのデキが良すぎる感があります。筐体品質に関してはAspire Switch 10シリーズに軍配が上がると思います。
サイズ感
タテ・ヨコのサイズ感は多少の差異があるものの、どの製品もそんなには変わらないと思います。気になるのは厚さと重量です。厚さという点ではTransBook T100 Chiが群を抜いて薄くなっています。タブレット本体だけで7.2 mm というのはWindowsタブレット全体を見ても最薄クラスですし、キーボードも厚さ6 mmというのは比較対象機種中最も薄く、「キーボードを一緒に持っている」ということを忘れてしまいそうです。
次に重量ですが、TransBookシリーズの方は1.1 kg弱、ということで全機種統一されている感じですが、Aspire Switchのほうはそれよりも100 g程度重くなっています。わずか100 gといえど、長時間持ちあるく際には意外とバカにならない体感差になると思うので、この点は注意したいところですね。
入出力ポート
今回の比較対象機種は基本的にキーボード側にもUSBポートを備えており、Windowsタブレットの泣き所である入出力ポート不足、というのはかなり軽減されている感があります。しかし、特にノートPCとして使う場合、ポート類は多ければ多いほどいい、というのは間違いありません。
T100TAM: microHDMI、microUSB / USB3.0(キーボード)
T100HA: USB3.1 Type-C、microHDMI、microUSB / USB2.0(キーボード)
T100 Chi: microUSB3.0、microUSB2.0、microHDMI
Aspire Switch 10: microUSB2.0、microHDMI、電源 / USB2.0(キーボード)
Aspire Switch 10E: microUSB2.0、microHDMI / USB2.0(キーボード)
※microSDとオーディオジャックは全機種装備のため記載省略
ポート類がもっとも充実しているのはTransBook T100HAですね。他の製品よりもUSBポートがひとつ多い上、USB Type-Cも装備してます。このクラスでポートがひとつ多い、というのは使い勝手に大きな差が出ると思います。面白いのは初代のAspire Switch 10で、他の製品がUSBポートを使って給電、充電するのに対し、この製品だけは独立した電源コネクターを装備しています。この構造の場合、外出先で長時間使用する際には電源ケーブルをUSBケーブルと別に持ち歩く必要がありますが、その代わりUSBポートを電源のためにふさぐ必要がないので、個人的には便利だと思っています。
なお、TransBook T100 Chiのみはキーボード側にUSBポートがありません。正確にはBluetoothキーボードの充電専用のmicroUSBポートがありますが、それ以外の用途には使えないため、実用上は単なる充電コネクターにすぎません。T100 Chiのキーボードはわずか6 mmという薄さなので仕方ないとは思いますが、少しもったいない気もしますね。
5.価格で選ぶ
これまで書いてきた通り、TransBookもAspire Switchも異なるスペックのバリエーションが多く、単に価格だけでの比較はあまり意味がないように思うのですが、一応、最安価格の製品を比較してみましょう。「TransBook T100TAF」と「Aspire Switch 10」で、どちらも実売価格は3万円を切ります。これらの製品は筐体構造こそ上位モデルと同じですが、OSはWindows 8.1のまま(簡単にWindows 10にアップグレードできます)ですし、スペック的にはかなり低くなってしまいます。この2機種のうち、どちらを選ぶかといえば、Aspire Switch 10のほうです。TransBook T100TAFはRAMがわずか1GBで、タブレットとしてライトに使うぶんには問題ないにせよ、キーボードを接続してノートPCとして複数のデスクトップソフトウェアを使いこなすのはちょっと不安です。しかし、Aspire Switch 10はRAMも2GBあり、筐体もかなりしっかりしているので、その点は安心ですね。というか、非常にお買い得だと思います。
単純に安値追求、ということでなく、ある程度の予算が確保されているのであれば、TransBook T100HA-128Sがいいと思います。実売価格はやや高くなってしまいますが、Atom機としてはほぼ文句のないスペックですし、入出力ポート類も充実しています。個人的にはこのクラスの製品の場合、カタログスペックで表示される性能差と実際に使ってみた場合の性能の体感差はかなり異なっていて、体感的にはスペック差は顕著に出ない、と考えていますが、そうはいっても予算の範囲内でできるだけ高いスペックの製品を選んだほうがあとあと後悔しないだろう、とも思います。T100HA-128Sであれば、購入して後悔するようなことはないでしょう。
仮に私がこの中から一機種を選ぶとしたら、予算があればT100HA-128Sを、予算が厳しければもう一度Aspire Switch 10を選ぶと思います。
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コメント
T100TALがSIMフリーじゃないですか???(^^;) LTEだから、末尾がLだと思います。
しいふうるさん、こんにちは、コメントありがとうございます。ご指摘の通りです。記事修正しました。この記事は書いている最中に何度もつまづいてしまい、かなり苦労したのですが、そういうときって間違いも多くなってしまいます。誤りを放置するのは非常に恥ずかしいことなので、早めにご指摘いただいて助かりました。感謝します。
SIMフリー機が欲しいなと思っていつも見ていたので(^^;)
ただ、今持ってる機種(T100TA)からスペックが変わらないので、食指が動かないんですよね…。
しいふうるさん、こんにちは、コメントありがとうございます。TransBookの型番ってかなり混乱しちゃうんですよね。SIMフリー機ということならSurface 3っすかねえ。とちょっと思いました。
T100TALの説明文
>じつは異価格
こんにちは、コメントありがとうございます。こういう指摘が超助かるんですよね。記事修正しました。感謝です。
私なら、コスパでT100HA(2G 64GB)ですかね。
今使ってるT100TAをリビングルーム専用機にして、モバイル用に買い足そうかな。
こんにちは、コメントありがとうございます。機種選びは人それぞれの考えがあるし、そうやって考えるのが楽しいですよね。私なんて、当面新機種買う予定なんてないんですけど、実際に買うつもりで記事書いてます。こういうのも楽しいですよ。
修正続いてますねw
入出力ポート比較の所AspireSwitch10E USB3.0(キーボード)ですよ
すいません、直しておきます