MSIが15.6インチのモバイルワークステーション「WF65」を発売します。コメント欄でしばしばお問い合わせをいただく「パソコンとワークステーションはどう違うのか?」という件ですが、Wikipediaによればワークステーションとは「組版、科学技術計算、CAD、グラフィックデザイン、事務処理などに特化した業務用の高性能なコンピュータ」である、と定義されます。しかし、2020年の現在、「ワークステーション」と称していなくとも専門業務に使えるだけの性能を持ったパソコンは少なくありません。
正しい定義かどうかは別として、ドスパラやレノボに、非常にわかりやすい解説がありました。
ワークステーションとは?一般パソコン、サーバーとの違いを解説!:ドスパラ
クリエイティブな仕事をパワフルに支える「ワークステーション」:Lenovo
これらの解説ページは、私としてもスッキリする内容です。具体的には「CPUがCore iではなくXeon、GPUがGeForceではなくQuadro」であることを一つの目安にしているわけです。例えばThinkPad X1 ExtremeとThinkPad P1はほぼ同じ筐体になっていて、CPUやGPUの構成が異なります。X1 Extremeは「フラッグシップ・ノートパソコンで」P1は「モバイルワークステーション」なんですよね。各メーカーの「運用の実態」を見ていると、特に「GPUがQuadro」というのがワークステーションと称する要件になっていると感じます(ウインタブの主観です)。
ともあれ、ウインタブでは「メーカーがなんと称しているか」によって表記を決めたいと思っています。今回ご紹介するWF65は「ワークステーション」です。
1.スペック
MSI WF65 | |
OS | Windows 10 Pro |
CPU | Intel Core i7-10750H |
外部GPU | NVIDIA Quadro P620(4GB) |
RAM | 16GB(最大64GB) |
ストレージ | 512GB M.2 NVMe SSD (2.5インチSATA スロットの空きあり) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 15.6インチ(1,920 × 1,080) |
ネットワーク | 802.11 a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.1 |
入出力 | USB3.2 Gen1 Type-C、USB3.2 Gen1 × 3、HDMI、イヤホンジャック、マイクジャック、LAN(RJ45) |
カメラ | Webカメラ(92万画素) |
バッテリー | 51Whr/4,500mAh |
サイズ | 359 × 254 × 21.7 mm |
重量 | 1.86 kg |
WF65のCPUはWindows 10 Pro、CPUは第10世代(Comet Lake-H)のCore i7-10750Hです。そしてGPUがQuadro P620で、Quadroとしては下位グレードとなります。ウインタブではGeForceを搭載するPCを何度も実機レビューしていますが、Quadroを搭載するPC(あるいはワークステーション)のレビューをしたことがありません。また、QuadroはGeForceとは利用シーンが同一ではないので、現実的にウインタブで実機レビューしたとして、まともに性能評価ができるとも思えません。
こちらが「GeForceとQuadroの違い」です。個人的には「CADはQuadro」みたいなイメージを持っているのですが、ウインタブではCADを操作できないため、性能評価も困難ではあります。
RAMは16GBで、2つのスロットに8GB × 2が挿されています。MSI指定販売店での対応となりますが、カスタマイズにより64GB(32GB × 2)まで増設が可能です。また、CPUがXeonではないので、ECCメモリー(動作の誤りを検出して訂正する機能を持つメモリー)には対応しないはずです。
ストレージは512GB M.2 SSDで、別途2.5インチのSATAドライブスロットがありますので、こちらもMSI指定販売店での作業になりますが、2.5インチのHDDやSSDを追加可能です。
ディスプレイは15.6インチのFHD解像度で、sRGB対応であるとかAdobeRGB対応であるとかの説明はありませんでした。おそらく一般的なIPS相当の液晶が使われているものと思います。また、Wi-Fi6(ax規格)に対応し、入出力ポートは15.6インチサイズとして十分な構成になっていると思います。
サイズは最新の15.6インチノートとして普通くらい(十分コンパクトとも言えます)で、重量も1.86 kgと軽量な部類となります。この製品、「ワークステーション」ではあるのですが、GPUがQuadroである、という以外はスペック表で特に強いクセというか、個性のようなものはありません。価格も安いとは言えませんが、目玉が飛び出すような水準でもないので、別に「高性能な15.6インチノート」と理解してもいいんじゃないでしょうか。あとはGeForceであればゲームするにも便利だけど、Quadroがあると助かるような場面、GeForceではなくQuadroのほうが望ましい場面が自分の利用シーンの中に含まれるか、ということになると思います。
2.筐体
左右のベゼル幅は今どきの15.6インチらしく細くなっていますが、上部ベゼルは中央が太くなっていて、独特の形状をしています。
天板です。筐体素材はおそらく金属と思われ、ご覧のようにヘアライン加工が施されています。MSIのModernシリーズやPrestigeシリーズに近いイメージですね。MSIのドラゴン・ロゴも健在ですが、あまり目立たないようになっています。
キーボードです。15.6インチサイズながらテンキーはありません。この画像では英語配列ですが、日本仕様は「シングルカラーバックライト内蔵日本語キーボード」となります。
入出力ポートの配置です。画像左上が右側面、右上が左側面、そして下が背面ですね。必要な数と種類は揃っていると言えますが、SD(microSD)カードリーダーはありません。また、HDMIポートのみ背面に装備されています。
3.価格など
MSI WF65は9月3日の発売予定で、ビックカメラではすでに予約販売がスタートしています。9月1日現在の価格は税込み184,800円(ポイント10%つき)なので、外部GPU搭載のノートPCとして見ても非常に高価、というわけではありません。
ただ、やはり専門的な業務を前提とせずにQuadroが必要か、というのはありますね。「つぶしがきく」というか、オンラインゲームがより快適にできて、動画編集や画像加工などもこなせるGeForceのほうが私達一般ユーザーにはいいのかもしれん、と思いました。
4.関連リンク
WF65 モバイルワークステーション:MSI公式サイト
WF65-10TH-1216JP:ビックカメラ
コメント
Quadro が載っているならRGBが各10ビット出力できるモニターかどうかが重要なのでは?
MSIのサイトを見る限り、AdobeRGBに対応しているなら対応しているとはっきり書いてあるので、このモデルはだめなんでしょうね。 対応してるのは解像度も4Kだったりしますし。
こんにちは。私もそのお考えには同感です。MSIはいつもはっきりそういうことを書いてますね。
こんにちは。他のQuadro搭載PCの製品ページを見ると仰るとおりかと思います。あとはお使いになる人のニーズ次第でしょうね。私は「音」とか「色」の識別能力が低いので、仮にこの製品をレビューできる機会があったとしても適切な内容にできないように思います。
MSIに問い合わせたところ、HDMIからの出力の場合は10bitRGBに対応していて、本体のモニターは対応していないとのことでした。