ウインタブで先日レビューしたノートPC「ACEMAGIC AX15」のACEMAGICが展開するブランド「NiPoGi」のミニPC、E3Bの実機レビューです。旧世代のRyzen 7を搭載して価格を3万円強に抑えた、非常にコストパフォーマンスが高い製品です。
このレビューはメーカーからのサンプル機の提供を受け、実施しています。また、レビュー機の搭載CPUは「Ryzen 7 5700U」ですが、現在販売されている製品はより新しく、性能の高いRyzen 7 5825Uです。
・Ryzen 7 5700U搭載で3万円強と高いコストパフォーマンス
・ポート構成が充実
・筐体の開口は容易、RAMやSSDの増設・換装がしやすい
・ファン音は静かで温度上昇も小さく、安定稼働に期待できる
ここはイマイチ
・RAMがシングルチャネルなので、パフォーマンスが低め
・パフォーマンス調整(電力調整)機能なし
1. スペック表
項目 | 仕様 |
---|---|
OS | Windows 11 Pro |
CPU | AMD Ryzen 7 5700U |
RAM | 16GB (DDR4) ※シングルチャネル、空きスロット1 |
ストレージ | 512GB SSD (M.2 2280 SATA) ※M.2 2280空きスロット1 |
ディスプレイ | なし |
無線通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth5.2 |
ポート類 | USB Type-C (映像出力対応) USB3.2 Gen2×2、USB3.2 Gen1×4 HDMI2.0、DisplayPort、LAN (RJ45) 3.5mmオーディオジャック |
カメラ | なし |
バッテリー | なし |
サイズ | 128×128×41.3mm |
重量 | 550 g |
※OSはOEMライセンスであることを確認しました。
※CPUにRyzen 7 5700Uを搭載するモデルは現在販売されていません。現行モデルのCPUはRyzen 7 5825U/Ryzen 5 7430Uです。
2. 外観
箱です。見事なまでのそっけなさ。段ボールらしい段ボール、そんな箱ですが、個人的には箱の装飾にコストを掛ける必要は全くないと思っていて(むしろ好感を持っている)、筐体もしっかり保護されていたので文句はありません。
同梱物です。画像左側に電源ケーブルとACアダプター、ACアダプターの横にHDMIケーブル、ユーザーマニュアルとVESAマウント用のブラケット、そしてブラケット用のネジです。
ACアダプターは出力が65Wのものでした。CPUがノートPC用の省電力タイプで外部GPUも搭載していないため、この出力で問題はありません。
本体上面(天板)です。ケース素材はプラスチック製ですが、特に安っぽいとか華奢である、という印象はありませんでした。筐体サイズもミニPCとしては普通くらいですね。これよりタテ・ヨコが数ミリ、あるいは1~2センチ程度小さかったとしても省スペース性はほとんど変わらないと思います。
底面です。中央に通気口があり、VESAマウント用のネジ穴も見えます。四隅にゴム足がありますが、ゴム足を外すとネジが出てきて、筐体を開口することができます(筐体の開口については後述します)。
前面です。左から電源ボタン、イヤホンジャック、USB 3.2 Gen 2 Type-A ポート×2、USB Type-Cポートがあります。
背面です。上部に通気口(排気口)があり、その左横にセキュリティロックスロット、右横にDC-INジャックがあります。下部には左からUSB 3.2 Gen 1 Type-Aポートが4つ、有線LANポート、DisplayPort、HDMIポートがあります。

左側面

右側面
両側面にはポート類やボタン類はありません。
3. 筐体内部
外観のところでも説明しましたが、底面の四隅にあるゴム足を外すとネジが出てきますので、まずはこの4つのネジを外します。
ネジを外すと金属プレートが出てきます。このプレートはヒートシンク代わりと思われますが、これもドライバーで外します。
筐体内部です。画像右にSSDスロットがあり、M.2 2280 SATAのSSDが装着済みでした。SSDは「HOGE H671L 512 GB」というモデルでした(詳しい情報はありません)。
画像中央(やや右寄り)にはM.2 SSDの空きスロットがあります。マザーボードに「PCIE+SATA」という文言が見えますので、PCIe とSATAに両対応しているものと思われます(このレビューでは空きスロットにSSDを装着していません。未検証です)。
画像左側にRAMスロットが2つあり、初期の16GBメモリーが1枚だけ装着されていました(1スロットは空き)。つまり、NiPoGi E3Bは初期状態で「シングルチャネル」でした。RAMはKingston…じゃなくて「Kinsotin」のDDR4-3200のものでした。…しかし、パクリっぽいネーミングですよね…。
RAMとSSDを外したところです。M.2 SSDスロットの下にWi-Fiモジュール(M.2 2230)とボタン電池が隠れていました。
筐体の開口、RAM/SSDの増設・換装は非常に容易です。あまりPCに詳しくない人でも問題なく作業ができると思います。
4. 性能テスト
ベンチマークテスト
ベンチマークテストの実施にあたり、Windowsの電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定しました。GMKtecなど、BIOSでパフォーマンスモードを切り替えられるミニPCもありますが、NiPoGi E3Bはそのような設定項目はありませんでした。
なお、NiPoGi E3Bの現行モデルの搭載CPUはRyzen 7 5825U/Ryzen 5 7430Uのため、これから掲載するベンチマークスコアよりも高くなっているものと思われます。
ウインタブでは過去にRyzen 7 5825U搭載のミニPC「GMKtec NucBox M5 Plus」をレビューしていますので、参考までに下記レビュー記事をご参照ください
GMKtec NucBox M5 Plus レビュー - Ryzen 7 5825Uを搭載、普段使いなら文句なしのミニPC、お値段なんと4万円切りです!
※ただし、NucBox M5 PlusはRAMがデュアルチャネルであり、シングルチャネルのNiPoGi E3Bとは構成が異なることにご注意ください。
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。ビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。ウインタブが最も重視しているテストです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 9 185H:8,099
Ryzen AI 9 365:7,896
Ryzen AI 9 HX 370:7,511
Ryzen 7 8845HS:7,446
Core Ultra 7 258V:7,527
Ryzen 9 PRO 6950H:6,987
Ryzen 7 8840U:6,949
Ryzen 7 PRO 6850H:6,858
Core Ultra 7 155H:6,849
Ryzen 5 8645HS:6,708
Core i9-13900H:6,542
Core Ultra 5 135H:6,485
Core Ultra 7 155U:6,392
Core Ultra 5 125U:6,376
Ryzen 5 7535U:6,021
Core i7-1360P:5,929
Core i5-1340P:5,677
Core i7-1355U:5,452
Core i5-1334U:5,145
Core i7-1255U:4,834
Core i5-1335U:4,775
Core i5-1135G7:4,066
ウインタブで過去に「ASUS Zen AiO 24」という、Ryzen 7 5700U(NiPoGi E3Bと同じ)搭載のオールインワンPCの実機レビューをしたことがあり、このときのPC Markのスコアは5,296点でしたから、それと比較してもE3Bのスコアは低めです。これ、おそらく「RAMがシングルチャネルである」ことが要因と思われます。
とはいえ、過去データとの比較だと、第13世代のCore i5-1335Uや第12世代のCore i7-1255Uと同水準のスコアになっていますから、ビジネス用途で性能が足りないということはありませんね。
グラフィック性能を測定する3D Markのスコアです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 7 258V:4,397、8,611、35,677
Core Ultra 9 185H:4,143、8,223、31,710
Core Ultra 7 155H:3,924、8,338、24,476
Ryzen AI 9 365:3,895、8,885、34,303
Ryzen AI 9 HX 370:3,800、8,026、31,138
Core Ultra 5 135H:3,454、7,235、24,791
Core Ultra 5 125H:3,392、7,301、23,168
Ryzen 9 7940HS:3,362、7,776、29,076
Ryzen 7 8845HS:3,330、7,908、29,873
Ryzen 7 8840U:2,943、7,206、27,471
Ryzen 9 PRO 6950H:2,846、7,051、27,983
Ryzen 7 PRO 6850H:2,660、6,601、26,920
Ryzen 5 8645HS:2,437、6,253、24,401
Core Ultra 7 155U:2,319、5,162、19,024
Core Ultra 5 125U:2,081、4,826、19,421
Core i9-13900H:1,956、5,440、19,477
Core i7-1360P:1,786、4,991、16,779
Core i7-1355U:1,760、4,859、16,891
Core i5-1334U:1,386、3,672、13,157
Ryzen 5 7530U:1,281、3,137、13,730
Ryzen 7 5825U:1,242、3,226、12,859
Ryzen 3 5425U:1,122、2,848、11,949
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
3D Markでは「相当に厳しい」スコアとなりました。ちなみに上で触れたASUS Zen AiO 24の3D Markのスコアは「Time Spyが1,452、Fire Strikeが3,670」なので、かなりの差があります。PC Markのときと同様、RAMがシングルチャネルであることが低スコアの要因と思われます。
SSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。NiPoGi E3BのSSDは「SATA」接続です。ウインタブがレビューするミニPCの多くはPCIe接続のNVMe SSDなので、それらと比較するとかなり見劣りしますが、一般的なSATA SSDの水準(読み込み500MB/s前後)を満たしていると評価できます。
このスコアだとOSやアプリの起動で体感的な遅さはあまり感じませんが、大容量データの編集や転送では遅いと感じる場面もあるかもしれません。
発熱とファン音
他社ミニPCと比較してファン音は小さいです。ベンチマーク中でも控えめでした。ただしこれは「冷却性能が高いから静か」というより、「発熱そのものを抑える設計」によるものと思われます。各種ベンチマークテスト実行時の温度と電力をHWiNFOで測定したところ、CPUの最大温度は約85℃でサーマルスロットリングの発生はなし、消費電力は15W前後でした。Ryzen 7 5700UのTDPは15Wですが、BIOSで25Wまでは設定可能な設計になっており、他社製品ではもう少し電力が上がっているものと思われます。また、CPU温度も「安全運転」の範疇ではないかと思います。
「静か」なのは「パフォーマンスを控えめにした結果」と推測します。なお、繰り返しになりますが、NiPoGi E3BのBIOSにはパフォーマンス(電力供給)の設定項目はありません。
5. レビューまとめ
NiPoGi E3BはAmazonで販売中で、7月9日現在の価格はRyzen 7 5825U/RAM16GB/512GB SSDモデルが32,980円(製品ページの15%OFFクーポンを使用)、Ryzen 5 7430U/RAM32GB/512GB SSDモデルが41,578円(製品ページの10%OFFクーポンを使用)です。なお、価格は変動しますので、Amazon製品ページで確認するようにしてください。また、Ryzen 7モデルに関してはレビュー機と現行品のCPU型番が異なることにご注意ください(Ryzen 7 5825Uのほうが新しくて高性能です)。
「Ryzen 7搭載のミニPC」としては非常に安いです。ただし、RAMがシングルチャネルのためRyzen 7本来の性能にはなっていません。Office系アプリを使ったり、Webでの調べ物、動画視聴、Webミーティングなどの用途ではこのままでも十分かと思いますが、グラフィック系の用途(比較的ライトなPCゲームや動画編集、高度な画像加工など)を視野に入れる場合はRAMを1枚追加してデュアルチャネルにするほうがいいですね。
ミニPCのエントリーモデル(Intel N100搭載機など)はAmazonで2万円前後で販売されており、RAMがシングルチャネルのままであってもN100/N150搭載機よりは明らかに高性能なので、プラス1万円程度を支払う価値はあると思います。また、RAMとSSDの増設は容易なので、とりあえず16GB/512GBの状態で使い、性能不足や容量不足を感じるようであれば増設する、という考え方でもいいでしょう。ちなみに7月9日現在だと「16GB・DDR4-3200のノートPC用メモリ」や「M.2 2280 SATAの512GB SSD」はは5,000円弱から購入できます。
また、ポート構成(USB×7、HDMI、DisplayPort)は充実しており、使用中の温度も低く抑えられており、「安定稼働」が見込めます。
旧世代のCPUを搭載し、そのぶん価格を低く抑えるというコンセプト通りの製品だと思います。
6. 関連リンク
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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