GEEKOMのミニPC「GT13 Pro 2025エディション」の実機レビューです。以前ウインタブで「GT13 Pro」という同名のミニPCをレビューしており、この2025エディションはその改良版です。変更点はPCの心臓部であるCPUで、Intelの第13世代Core i9-13900HKを搭載しています。
なお、このレビューはメーカーからのサンプル機の提供を受け、実施しています。
・Core i9-13900HKはオーバークロック可能、BIOSでも調整余地大
・他社製品と比較してコンパクトな筐体
・筐体の開口は容易、RAMやSSDの増設・換装がしやすい
・ポート類は充実、USB4も搭載
ここはイマイチ
・調整しないと本来のCPU性能が出ない(そのままでも十分だが…)
販売サイトはこちらです
GEEKOM GT13 Pro 2025エディション:GEEKOM公式サイト
※クーポンコード:wtGT13ProHK
GEEKOM GT13 Pro 2025エディション:Amazon
※クーポンコード:WTGT13PROHK
※クーポンコードの利用で94,905円
※公式ストア、Amazonともクーポンの期限は6月13日
1.製品概要
スペック表
GEEKOM GT13 Pro 2025エディション | |
OS | Windows 11 Pro |
CPU | Intel Core i9-13900H/Core i9-13900HK |
外部GPU | なし |
RAM | 32GB(DDR4-3200, デュアルチャネル,最大64GB) |
ストレージ | 1TB/2TB PCIe4 ×4(M.2 2280) M.2 2242 SATA SSDスロット空き1 |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | なし |
ネットワーク | WI-Fi6E、Bluetooth5.2 |
入出力 | USB4 Type-C ×2、USB 3.2 Gen2 Type-A ×3 USB2.0 Type-A、HDMI2.0 ×2 SDカードリーダー、オーディオジャック LAN(RJ45) |
カメラ | なし |
バッテリー | なし |
サイズ | 112.2 × 112.2 × 38 mm |
重量 | 440 g |
バリエーションモデル
・Core i9-13900H/RAM32GB/2TB SSD
・Core i9-13900HK/RAM32GB/1TB SSD(これが2025エディション。レビュー機の構成)
コメント
OSはWindows 11 Proで、正規ライセンス(OEMライセンス)であることを確認しました。ウインタブはこれまでにGEEKOMのミニPCを何度もレビューしていますが、ボリュームライセンス(法人などの組織向けに割安で販売されるライセンス。ライセンスを受けた組織以外のPCに使うとMicrosoftの規約違反となります)であったことは一度もありません。
CPUは第13世代のCore i9-13900HKです(従来モデルのCore i9-13900H搭載機も併売されています)。13900HKと13900Hは基本構成は同一ですが、13900HKのみオーバークロックにも対応します。オーバークロックはIntelの純正ツールXTU(Extreme Tuning Utility)を使用すれば可能ですが、このレビューの対象外とします。また、たとえ純正ツールを使用したとしても、オーバークロックという行為はIntelの保証対象外となりますので、PCに詳しくない人がむやみにオーバークロックを試すのは危険です。
2025エディションのRAMは32GB、SSDは1TBです。RAMとSSDの構造についてはこのあと筐体を開口しながらご説明します。また、入出力ポート構成についても筐体の外観説明のところでご説明します。
2.外観
同梱物です。ペーパー類はユーザーマニュアル(多言語で日本語も含まれます。筐体開口手順の説明もありました)とグリーティングカードです。ACアダプターは出力120Wのもので、ミニPC用としては小さくて薄型です。まあ、ミニPCなので本体とACアダプターを持って出かける機会は少ないと思いますが、据え置きで使うにせよ、コンパクトサイズなのは省スペース性という点では歓迎できます。
GEEKOM製品で注意したいのが電源ケーブルのプラグ形状です。3つ足タイプなので、そのままでは一般家庭のコンセントで使えない可能性があります。その場合は変換プラグを用意することになります。
例えばこれ。
サンワサプライ(Sanwa Supply) 3P→2P変換アダプタ:Amazon
変換プラグはこれ以外にもあり、200円とか300円で買えますし、なんなら100均でも購入できます。あとはHDMIケーブル、VESAブラケット(モニターの背面に取り付けるための金具)とブラケット用のネジが入っていました。
上面(天板)です。筐体色はやや暗めのシルバーで、金属製です。シンプルながら美しい造形で質感も高いです。また、他社のミニPC(GMKtecの最新モデル)との比較では「小さい」です。
底面です。この部分は樹脂製です。四隅にゴム足があり、ゴム足を剥がすと筐体開口用のネジが出てきます(このあと説明します)。
前面です。画像左からUSB3.2 Gen2 Type-A × 2、イヤホンジャック、電源ボタンがあります。
背面です。画像左からDC-INジャック、USB4 Type-C(上段)、HDMI(下段)、有線LAN(RJ45)、USB3.2 Gen2 Type-A(上段)、USB2.0 Type-A(下段)、USB4 Type-C(上段)、HDMI(下段)です。USB Type-Cポートは映像出力にも対応していますので、2つのHDMIポートと合わせ、最大4画面出力が可能です。
ポートの間隔は広くありません。私の手持ちの周辺機器は問題なく(端子が干渉することなく)取り付けられましたが、お手持ちの周辺機器の端子形状(端子部分の大きさ)によってはうまく挿せない可能性があります。比較的新しい周辺機器の端子であれば大丈夫だとは思いますけどね。
左側面です。通気口(吸気口)があり、SDカードリーダーがついています。GEEKOMのミニPCはほとんどがSDカードリーダーを備えていて、この点はGMKtec製品(ついているものもありますけど)に対してのアドバンテージと言えます。
右側面には通気口があるのみ。
上にも書きましたが、筐体の開口は底面からになります。まず4つのゴム足を外します。ゴム足を外すのは難しくはないのですが、接着剤もついていてちょっと面倒でしたw …まあ、誰でもできるとは思います。
開口(第一段階)です。背面のカバーを外したところ。金属製のカバーで覆われています。なお、中央に「細くて黒い線」が見えると思いますが、これはWi-Fiのアンテナケーブルです。開口の際に乱暴に扱ってしまうとアンテナケーブルが切れてしまいますので、慎重に作業しましょう。
金属製のカバーも四隅でネジ止めされていて、これを外すとようやくマザーボードが見えてきます。左側にRAM(メモリ)が2枚刺さっています。メモリのメーカー名は「Shenzhen WODPOSIT Technology」という、はっきり言って馴染みのない会社ですが、GEEKOM製品にはよく使われています。規格はDDR4-3200なので、2025年現在だとそれほど高速なものではありません。メモリスロットはご覧のように2つ、どちらにも16GBのメモリが刺さっているので、空きはありません。メモリ増設の際は初期搭載のものを外して大容量のものに取り替えることになります。
右側にはM.2 2280 SSDが刺さっています。SSDはKingston製で型番は「OM8PGP41024N-A0」、PCIe4.0 ×4接続です。
また、中央に私が赤枠で囲んだ部分があります。これはM.2 2242 SATAの空きスロットです。このため、RAMの場合とは異なり、(SATAになりますが)SSDの増設は非常に簡単にできます。
なお、SSDの下にWi-FiモジュールのMediaTek Filogic 330(MT7922)が入っていました。
3.性能テスト
発熱と消費電力、ファン音
いつものレビュー記事では先にベンチマークスコアを掲載するのですが、今回は発熱と消費電力について先にご説明します。
GEEKOM GT13 Pro 2025エディションはBIOSでPower Modeを「Quiet」「Normal」「Performance」の3種類から選択できます。そして、モードごとに「性能差」だけでない「個性」があります。
CPUパッケージ温度 最大値(℃) |
CPUパッケージ電力 最大値(W) |
サーマル スロットリング |
|
Performance | 100 | 54.76 | 発生 |
Normal | 92 | 40.96 | 発生 |
Quiet | 72 | 20.31 | なし |
CINEBENCH 2024のマルチコア測定中にHWiNFO64でデータを収集しました。GEEKOM製品は総じて電源オン時とかソフトウェア起動直後にCPU温度が上昇する傾向が見られます。PerformanceモードではCPU温度が100℃に到達し、サーマルスロットリングの発生履歴がありました。また、NormalモードでもCPU温度は最高で92℃、サーマルスロットリングの発生履歴もありました。もちろんNormalモードのほうが温度、サーマルスロットリングとも「マイルド(な数値と発生頻度)」でした。Quietモードでは発熱に不安はなく、サーマルスロットリングも発生していません。
次に「消費電力」です。Core i9-13900HKのCPUベースパワーは45W、ターボパワーは115Wなので、BIOSでPerformanceモードにした際の最大電力54Wというのは「まだかなり制限されている」ということです。なので、Performanceモードではもっと消費電力が大きくなってもいいだろうとは思います。一方でQuietモードでのベンチマークテスト中の最大電力は20Wと低く、「ノートPC並かそれ以下」です。実際のところ「性能と消費電力のメリハリをつけないのなら複数のモードを設定する意味はない」ですよね?なので、私はQuietモード時の電力設定は有意義であると思いますが、ベンチマークスコアはかなり低くなっています(このあと説明します)。
ファン音はそれほど大きくなりません。私の感覚ではPerformanceモード(最もファン音が大きい)でベンチマークテストをした際でも不快に感じるとか気が散るといった印象はありませんでした。発熱の状況を踏まえると、もう少しファンの風量を大きくしても良かったのではないか、と思います。
これを踏まえ、BIOSでPerformanceモード時のファン風量を「最大風量で固定」としました(通常はCPU温度に合わせて風量が自動的に変わる「Auto」モードです)。この場合でもCPUの最高温度は100℃、サーマルスロットリングの発生も「あり」とはなりますが、ベンチマークスコアは顕著に改善されました。そして、「結構騒々しい」です。普段使いだと少し不快かも。
ベンチマークスコア
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。ビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。ウインタブが最も重視しているテストです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 9 185H:8,099
Ryzen AI 9 365:7,896
Ryzen AI 9 HX 370:7,511
Ryzen 7 8845HS:7,446
Core Ultra 7 258V:7,527
Ryzen 9 PRO 6950H:6,987
Ryzen 7 8840U:6,949
Ryzen 7 PRO 6850H:6,858
Core Ultra 7 155H:6,849
Ryzen 5 8645HS:6,708
Core i9-13900H:6,542
Core Ultra 5 135H:6,485
Core Ultra 7 155U:6,392
Core Ultra 5 125U:6,376
Ryzen 5 7535U:6,021
Core i7-1360P:5,929
Core i5-1340P:5,677
Core i7-1355U:5,452
Core i5-1334U:5,145
Core i7-1255U:4,834
Core i5-1335U:4,775
Core i5-1135G7:4,066
Performanceモードのスコアは過去データにある6,511点というのはGEEKOM XT13 Proのスコアで、GT13 Proの従来モデルでも6,411点でしたから、それらと大差ない(ほぼ同じと言ってよい)です。ちなみに、上で説明した「発熱」の関係で、ファンモードを「Auto」のままにした場合、スコアは5,980点程度と、6,000点に達しませんでした(4度テストし、すべて6,000点を下回りました)。
Normalモードのスコアは6,000点にやや届かないくらいでした。また、Quietモードではかなり低めのスコアになっています。Quietモードだと過去データの第13世代のCore i5-1335Uあたりと同等です。ただし、PC Markが想定する事務系の作業(OfficeソフトやWebミーティングなど)ではQuietモードでも問題なくこなせるはずです。また、Normal・Quietのモードではファンモードを「Auto」にしており、この際はファン音がほとんど気になりませんでした。
グラフィック性能を測定するPC Markのスコアです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 7 258V:4,397、8,611、35,677
Core Ultra 9 185H:4,143、8,223、31,710
Core Ultra 7 155H:3,924、8,338、24,476
Ryzen AI 9 365:3,895、8,885、34,303
Ryzen AI 9 HX 370:3,800、8,026、31,138
Core Ultra 5 135H:3,454、7,235、24,791
Core Ultra 5 125H:3,392、7,301、23,168
Ryzen 9 7940HS:3,362、7,776、29,076
Ryzen 7 8845HS:3,330、7,908、29,873
Ryzen 7 8840U:2,943、7,206、27,471
Ryzen 9 PRO 6950H:2,846、7,051、27,983
Ryzen 7 PRO 6850H:2,660、6,601、26,920
Ryzen 5 8645HS:2,437、6,253、24,401
Core Ultra 7 155U:2,319、5,162、19,024
Core Ultra 5 125U:2,081、4,826、19,421
Core i9-13900H:1,956、5,440、19,477
Core i7-1360P:1,786、4,991、16,779
Core i7-1355U:1,760、4,859、16,891
Core i5-1334U:1,386、3,672、13,157
Ryzen 5 7530U:1,281、3,137、13,730
Ryzen 7 5825U:1,242、3,226、12,859
Ryzen 3 5425U:1,122、2,848、11,949
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
Performanceモードのスコアは過去データとほぼ同じくらいです。また、Core Ultra(特にH型番)やRyzen 9 7940HS/Ryzen 7 8845HS(Zen4/RDNA3アーキテクチャの型番です)に及ばない結果となりました。内蔵GPUのIris Xeのグラフィック性能は、Core Ultra-HのIntel ArcやRyzenのRadeon 780Mよりも少々見劣りします。
Time Spyのスコアをモードごとに。やはりPerformanceとNormalでは大差なく、Quietが大きく水を開けられる結果となりました。
CPU性能のみを測定するCINEBENCH2024のスコアです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core i7-14700:122、1,177
Core Ultra 7 258V:121、676
Core i9-13900H:117、687(Normalモード)
Ryzen AI 9 HX 375:114、1,144
Core Ultra 9 185H:111、910
Ryzen AI 9 HX 370:110、942
Ryzen AI 9 365:109、1,008
Snapdragon X Elite:108、1,038
Ryzen 9 8945HS:108、958
Snapdragon X Plus X1P-42-100:108、754
Ryzen 7 8845HS:106、956
Ryzen 9 7940HS:106、914
Core Ultra 7 155H:105、964
Core Ultra 7 155U:101、533
Ryzen 5 8645HS:98、585
Core Ultra 5 125U:95,533
Core Ultra 5 125H:95、516
Ryzen 9 PRO 6950H:93、774
Ryzen 7 PRO 6850H:91、765
Ryzen 7 5825U:85、590
Ryzen 3 5425U:78、365
※左からシングルコア、マルチコアのスコア
3つのモードでメリハリのある結果が出たと思います。なお、ここでもPerformanceモード時のファンモードを「最大風量で固定」にしています。シングルコアのスコアはIntelのLunar Lakeよりもわずかに低く、Ryzen AI 300シリーズを凌ぎます。一方マルチコアに関してはRyzen AI 300シリーズやCore Ultraシリーズ1よりも低いですが、Lunar Lakeよりは高くなりました。
SSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。PCIe 4.0 ×4接続のSEQ1M Q8T1のReadのスコア(一番左上のもの)だと5,000MB/sで標準くらいなので、それと比較するとやや遅いほうです。また、従来モデルではACERのN7000という同規格ながら相当に高速なSSDを搭載しており、SEQ1M Q8T1のReadのスコアが約7,000であったことから、SSDに関してはコストダウンの影響が見られます。ただし、体感的には「これで十分」くらいのスコアではあります。
4.レビューまとめ
GEEKOM GT13 ProはGEEKOM公式ストアやAmazonで販売中で、5月10日現在、読者クーポンをいただいており、通常価格99,900円のところ、5%OFFの94,905円で購入できます。
GEEKOM GT13 Pro 2025エディション:GEEKOM公式サイト
※クーポンコード:wtGT13ProHK
GEEKOM GT13 Pro 2025エディション:Amazon
※クーポンコード:WTGT13PROHK
※公式ストア、Amazonともクーポンの期限は6月13日
メインPCとして使う上で不足感のないパフォーマンスを見せてくれたと思います。ただし、Core i9-13900HKが持つ本来のパフォーマンスを出すためにはBIOSで電力設定・ファン風量設定を変更する必要がありました。また、さらなる設定変更で性能を引き出す余地もありそうです。
それと、このレビューでは試していない(故障リスクを否定できないので、レビュー記事公開前には試せなかった)オーバークロックについても、ウインタブ読者なら「ぜひ試してみたい」ところではないでしょうか?
GEEKOM GT13 Pro 2025エディションは、10万円以下で購入できるミニPCとして、そのままでも申し分のない実力がありますが、ウインタブ読者のようにPC知識がある人にとっては「いじりがいのある製品=面白みのある製品」、とも言えると思います。
5.関連リンク
GEEKOM GT13 Pro 2025エディション:GEEKOM公式サイト
※クーポンコード:wtGT13ProHK
GEEKOM GT13 Pro 2025エディション:Amazon
※クーポンコード:WTGT13PROHK
※公式ストア、Amazonともクーポンの期限は6月13日
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
▶ サイト紹介・ウインタブについて
コメント