富士通のモバイルノート「FMV Note C」のレビューです。この製品には従来の富士通FMVノートに使われている「LIFEBOOK」という名称がつきません。これは「FMVブランドのリニューアル」によるもので、製品名だけでなくFMVのロゴマークも変更されています(詳しくはこちらをご覧ください)。
富士通によればFMV Note Cは「FMVブランドリニューアルの象徴として誕生」した製品であり「若年層の感性とニーズを徹底的に反映したパソコン」とされています。
なお、このレビューはメーカーからレビュー機をお借りして実施しています。
・シンプルで突起のないノイズレスデザイン
・発色がいいディスプレイ
・ファンレスなので使用中はほぼ無音
・Made In Japanで3年間の長期保証
ここがイマイチ
・入出力ポートが少ない
販売サイトはこちら
FMV Note C

目次
1.製品概要
スペック表
FMV Note C | |
OS | Windows 11 Home |
CPU | Intel Core Ultra 5 134U/Core Ultra 7 164U |
RAM | 8GB/16GB(LPDDR5X-6400, オンボード) |
ストレージ | 256GB / 512GB SSD(PCIe Gen4) |
ディスプレイ | 13.3インチ(1,920 × 1,200) |
ネットワーク | Wi-Fi 7(a/b/g/n/ac/ax/be)、Bluetooth 5.4 |
入出力 | USB3.2 Gen2 Type-C(映像出力/PD対応)× 2 オーディオジャック |
カメラ | Webカメラ(207万画素)顔認証対応 |
バッテリー | 64Wh(動画再生 約13.6-15.1時間) |
サイズ | 297 × 210 × 13.9 mm |
重量 | 1,187 g |
バリエーションモデル
・ライト:Core Ultra 5/8GB/256GB
・スタンダード:Core Ultra 5/16GB/256GB
・ハイスペック:Core Ultra 7/16GB/512GB
※左からCPU/RAM/SSD
※レビュー機は「スタンダード」モデルでした
コメント
搭載CPUはCore Ultraシリーズ1(Meteor Lake-U)のCore Ultra 5 134U/Core Ultra 7 164Uです。AI処理チップNPUを内蔵する型番ですが、Copilot+ PCの性能要件は満たしません。また、Meteor Lakeの中でも特に低消費電力のCPUで、CPUベースパワー(TDP相当)は9Wと低く、最大ターボパワーも30Wに抑えられています(他のMeteor Lake-U型番はベースパワー15W、ターボパワー57W)。
FMV Note Cは低消費電力のCPUを搭載していることもあり「ファンレス」構造です。これ、いまどきのノートPCとしてはかなり珍しいです。冷却ファンがないので「基本的に操作中は無音」です。この画像にあるように図書館や静かなカフェなどでも周囲に気を使うことなくPC作業ができます。
一方で低消費電力なCPUは性能面で他のMeteor Lake-U型番よりも少し低めで、RAMとストレージの容量も外資系メーカー製品と比較すると小さめかと思います。特にRAMが8GBだと学校のレポート作成とかExcelやWordなどOfficeアプリを使っての事務仕事であれば問題ありませんが、AIの活用などを視野に入れるのであればRAM16GBの「スタンダード」「ハイスペック」モデルにしておくといいでしょう。
「富士通」の製品らしい、安心できる特徴があります。
これはメーカーサイトにあった画像です。「親御さんも安心」と書かれている通り、国内大手メーカーらしい特徴が記載されています。まず、FMV Note CはMade in Japanです。そしてメーカー保証は3年と長く、セキュリティソフトも3年間利用できます。これらの特徴は必ずしも学生さんとか若年層のユーザーに限らず、すべてのユーザーにとってうれしいものだと思います。
FMV Note Cに限らず、富士通のノートPCは厳しい耐久テストを実施しており、ウインタブが知る限りすべて「頑丈」です。この点もFMVノートを選ぶ大きな理由になるでしょうね。
なんといってもFMV Note Cの注目ポイントは「筐体のデザインや構造」だと思います。これから外観と使用感についてレビューしていきます。
2.外観と使用感
ACアダプター
ACアダプターの出力は45Wと、最近のノートPC用としては標準~やや小さめくらいです。ウインタブの直近のレビュー製品だと65Wのものが多いですが、FMV Note Cの場合、搭載CPUが省電力なので45Wで問題ない、ということだと思います。
ACアダプター+電源ケーブルの実測重量は248 gでした。PCとの接続はUSB Type-Cなので、社外品の急速充電器やモバイルバッテリーでも本体に充電できます。社外品を使う場合は7.5W(1.5A/5V)以上の出力のものが必要です(本体を使用しながら充電する場合は7.5W出力だと足りないと思います)。
天板と底面
天板です。丸みを帯びた形状でほとんど装飾のない非常にシンプルなデザインです。筐体は「アルミ削り出し」で質感は高いです。
なお、この画像の通り、FMV Note Cには3つの筐体色があります(左からミストグリーン、エクルベージュ、スモークグレー)が、異なるのはキーボード面の色のみで、天板・底面・側面はすべてシルバーです。富士通ではこれを「バイカラーデザイン」と呼んでいます。
話を実機の天板に戻します。シンプルなデザインながら、よく見ると隅っこに控えめなFMVロゴがありますね…。
底面です。四隅にゴム脚があり、その外側に筐体内部にアクセスするためのネジがありますが、やはり非常にシンプルで通気口やスピーカーは見えません。まさに「ノイズレス」なデザインです。
側面

前面

背面
前面と背面です。こちらにはポート類やボタン類はありません。また、パーツ間の隙間もほとんどなく(チリが合っている)、工作精度が非常に高いと感じられます。

左側面

右側面
左右の側面についても同様に「チリが合っている」と感じられ、角張ったところもありません。そんなわけで、凄くシンプルではあるものの、よく見ると「すごく凝った」造形・造作だと思います。…こういうのって、カッコいいですよね!
「さすが富士通!」と思える筐体ではあるのですが、古くからのFMVファンには不満に感じられそうなのが「入出力ポート構成」です…。左側面にUSB Type-Cポートが2つだけ、あとはイヤホンジャックがあるのみ。FMVノートの看板モデルとも言えるモバイルノート「FMV Note U(LIFEBOOK UH)」は超軽量ながら豊富なポート構成になっていますので、個人的にも少し「あれ?」と思いました。
ただし、2つのUSB Type-CポートはいずれもGen 2規格(データ転送速度10Gbps)で映像出力とUSB PDに対応するので、多機能ではあります。
キーボード
先ほど説明した通り、キーボード面の色は天板・底面とは異なります。レビュー機の色は「ミストグリーン」でした。
キーボードは「82キー、JIS配列準拠、キーピッチ約19mm/キーストローク約1mm」と開示されています。キーピッチ19 mmというのは一般的なパソコン用キーボードと同じなので狭苦しさはありません。キーストローク1 mmというのはノートPC用として浅めです。また、このキーボードは日本語配列ながら「かな文字なし」です。スタイリッシュさを重視したFMV Note Cらしいと言えるかもしれませんが、かな文字入力の人はちょっと困るかも。バックライトはありません。
配列に強いクセはありません。ただ、右下の方向キーを大きくしたことにより右SHIFTキーが小さめなので、使い始めのうち戸惑う人もいるかもしれませんね。
キーの押下圧(重さ)は軽く、個人的にはあまり好みではありませんが、タイピングそのものは快適で、長時間のテキスト入力も問題なくこなせます。特に軽いキータッチがお好みの人に向くキーボードだと思います。また、打鍵音も静かなほうです。…まあ、せっかく筐体をファンレス構造にしたのに、キーボードがカチャカチャ騒々しかったら意味がないですよねw
もともとFMVはキーボード品質に非常に凝るメーカーですし、社内に「キーボードマイスター」という人(職位?)がいて、Note Cのキーボードも監修しているとのことなので、品質は間違いないです。
タッチパッドは大型(7.5 cm×12 cm)で表面がガラス製、手触りがなめらかで操作感が素晴らしいです。もちろんジェスチャ対応もします。
ディスプレイ
ディスプレイは13.3インチとモバイルノートの王道サイズで、解像度は1,920 × 1,200(WUXGA、FHDとも言います)ですメーカーのスペック表には「フルフラットファインパネル、高輝度・高色純度・広視野角」という説明がありましたが、発色品質は高いです。手持ちのPCモニター(27インチFHD解像度、100%sRGBの発色品質のもの)とレビュー機で同じ画像を表示させ、見比べてみましたが、全く差が感じられなかったので、Note Cはおそらく100%sRGB相当の発色品質だと思います。
なお、このディスプレイはグレア(光沢あり)タイプです。発色の面では有利ですが、映り込みはどうしても激しくなります。モバイルノートPCはいろんな場所で使うことになりますので、光源(日中の窓など)を背にして使うような場合は視認性は落ちますね。
筐体その他
ヒンジを最大開口したところです。思ったよりも「体が硬い」ですねw 最近のノートPCはヒンジが180度(水平位置)まで開口する製品が増えていて、180度開口できると、ミーティングの際などに向かい側にいる人と画面共有がしやすくなります。FMV Note Cの場合、学生さんのグループワークなんかを想定すると、ヒンジは180度開口する構造のほうが良かったかな、と思います。
スピーカー・カメラ
これまで説明してきた通り、FMV Note Cは「ノイズレスデザイン」ということもあり、スピーカーが見えませんw 実際はヒンジの内側にあるようです。しかし、その割に音楽や動画鑑賞時にステレオ感がしっかり出ます。また、音質もクリアでBGM用として使うには十分かと思いますが、シビアに書くと低音は少し弱く、少々薄っぺらい音に感じられます。
音響アプリとしてDolby Accessが入っていました。このアプリを使えば利用シーンに合わせた音質の調整が可能で、イコライザーもついてますので、お好みに合わせて微調整もできます。
なお、カメラについては「Umore」という「顔や目の大きさの調整や、歯を白くしたり鼻を小さくしたりといった細かな調整も、AIによる精度の高い加工が可能なAIメイクアップアプリ」がインストールされているとのことでしたが、残念ながらレビュー機では試せませんでした。
独自のアプリとして「Float Access」というものも入っていました。これは画面キャプチャ、ウィンドウの最前面固定、クリップボード、ファイル検索、の4つの機能を長押しで瞬時に使えるアプリで、ブラインドタッチでスクリーンショット(画面キャプチャ)が撮れるおっさんにはあまり関係ないwのですが、PC操作に慣れていない人には便利で使いやすいものだと思います。
3.性能テスト
ベンチマークテスト
レビュー機の搭載CPUはCore Ultra 5 134Uでした。「1.製品概要」のところで説明した通り、低消費電力タイプのCPUです。パフォーマンスを調整できる独自機能はなく、Windowsの電源設定を「最適なパフォーマンス」にして、電源に接続して測定しました。
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。ビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。ウインタブが最も重視しているテストです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 9 185H:8,099
Ryzen AI 9 365:7,896
Ryzen AI 9 HX 370:7,511
Ryzen 7 8845HS:7,446
Core Ultra 7 258V:7,527
Ryzen 9 PRO 6950H:6,987
Ryzen 7 8840U:6,949
Ryzen 7 PRO 6850H:6,858
Core Ultra 7 155H:6,849
Ryzen 5 8645HS:6,708
Core i9-13900H:6,542
Core Ultra 5 135H:6,485
Core Ultra 7 155U:6,392
Core Ultra 5 125U:6,376
Ryzen 5 7535U:6,021
Core i7-1360P:5,929
Core i5-1340P:5,677
Core i7-1355U:5,452
Core i5-1334U:5,145
Core i7-1255U:4,834
Core i5-1335U:4,775
Core i5-1135G7:4,066
過去データに「Core Ultra 5 125U」「Core Ultra 5 135H」というよく似た型番がありますが、それらよりも低いスコアになりました。このあたり、低消費電力タイプのCPUであることが要因と思われますが、スコアは5,000点をオーバーしており、第13世代のCore i5/Core i7との比較では差がありません。事務仕事用や学習用として全く不足を感じない性能と言えます。
グラフィック性能を測定するPC Markのスコアです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 7 258V:4,397、8,611、35,677
Core Ultra 9 185H:4,143、8,223、31,710
Core Ultra 7 155H:3,924、8,338、24,476
Ryzen AI 9 365:3,895、8,885、34,303
Ryzen AI 9 HX 370:3,800、8,026、31,138
Core Ultra 5 135H:3,454、7,235、24,791
Core Ultra 5 125H:3,392、7,301、23,168
Ryzen 9 7940HS:3,362、7,776、29,076
Ryzen 7 8845HS:3,330、7,908、29,873
Ryzen 7 8840U:2,943、7,206、27,471
Ryzen 9 PRO 6950H:2,846、7,051、27,983
Ryzen 7 PRO 6850H:2,660、6,601、26,920
Ryzen 5 8645HS:2,437、6,253、24,401
Core Ultra 7 155U:2,319、5,162、19,024
Core Ultra 5 125U:2,081、4,826、19,421
Core i9-13900H:1,956、5,440、19,477
Core i7-1360P:1,786、4,991、16,779
Core i7-1355U:1,760、4,859、16,891
Core i5-1334U:1,386、3,672、13,157
Ryzen 5 7530U:1,281、3,137、13,730
Ryzen 7 5825U:1,242、3,226、12,859
Ryzen 3 5425U:1,122、2,848、11,949
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
3D MarkのスコアもPC Markのスコアとよく似た傾向が見て取れます。第13世代のCore i7-1355Uとほぼ同等くらいですね。PCゲームが楽しめるようなスコアとは言えませんが、ごくライトなタイトルであればプレイできると思います。また、趣味レベルのイラスト制作や画像加工もこなせるでしょう。
SSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。FMV Note CのSSDはPCIe Gen4と開示されており、規格の割に高速とは言えないものの、実用上は十分な速度が出ています。
バッテリー駆動時間
Windowsの電源モードを「最適な電力効率」、ディスプレイ輝度を70%に、音量を30%に設定し、下記の作業をしました。
・画像加工ソフトGIMPで簡単な画像加工を約25分
・ブラウザー上でYouTubeの動画・音楽視聴を約60分
・ブラウザー上でテキスト入力を約20分
上記トータルで約105分使用し、バッテリーの消費量は15%でした。単純計算で1時間あたり8.6%のバッテリー消費、バッテリー駆動時間は11時間30分強となります。
CPUが低消費電力タイプであるということもありましたし、NPUやGPUに高い負荷がかからなかったこともあり、この結果はCore Ultra搭載機としては素晴らしいと思います。これなら出先で終日バッテリー駆動が可能だと思います。
発熱とファン音
FMV Note Cはファンレスなのでファン音はしません。使用中はほぼ無音と考えていただいていいです(ただし、キーボードの操作音とかはしますけどね)。
発熱についても異常性は感じられませんでした。ただし、ベンチマークテスト中などPC負荷の高い場面ではキーボード面の上部が熱を持ちますし、発熱量はやや大きめでした。キーボードが熱くなって不快、というほどではありません。このあたりはファンレス構造なのである程度は仕方ないものと思います。
4.レビューまとめ
FMV Note Cは富士通WEB MARTで販売中で、4月27日現在の価格は143,000円からです(製品ページにある10,000円OFFクーポンを使用した価格)。また、レビュー機の構成「スタンダードモデル・Core Ultra 5/16GB/256GB」だと167,000円です。
スペックとかパフォーマンスという次元で語ってしまうと外資系メーカーの製品よりも少しお高めに感じられますが、とにかく筐体が美しく、工作精度も「さすが富士通!」と言える水準で、「上質」という言葉がピッタリ来る製品です。また、日本製である、3年間の長期保証がつく、そして日本の大手メーカーである富士通製である、というのも大きな安心感を与えてくれると思います。
メーカーサイトを見ると「若い人(Z世代)向け」ということが強くアピールされていますが、ウインタブとしては必ずしも若い人に限定する必要はなく、どなたが使っても気持ちの良いノートパソコンだと思いました。というか、おっさんでもこういう「さり気なく上質」な工業製品って好きですよね?
5.関連リンク
FMV Note C:富士通WEB MART

2014年、低価格な8インチWindowsタブレットに触発されサイト開設。企業でユーザー側代表としてシステム開発や管理に携わっていました。「普通の人」の目線で難しい表現を使わず、様々なガジェットを誰にでもわかりやすく紹介・レビューします。
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