こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。今回はDELLの17.3インチと大型のノートPC「Inspiron 17 5000」の実機レビューです。モバイルWindowsデバイスを主として扱うウインタブですが、実はこのサイズのノートPCの存在を高く評価していて、過去に何度も17.3インチの製品を実機レビューしたことがあります。「ノートPCでも、どうせ携帯性を犠牲にするのなら、いっそサイズが大きいほうがいいのでは?」という発想によります。いわゆるモバイル利用は考えていないが、自宅や仕事場のスペースの関係でデスクトップPCを設置しにくいとか、部屋から部屋へPCを持ち運びたい、というニーズのある人には、17.3インチのノートPCはデスクトップPCの代替と位置づけることが可能な、優れたパッケージングだと思っています。
また、レビュー機はGPUに「AMD Radeon R7 M445」を搭載していることもあり、単にサイズが大きいだけでなく、処理性能の方も十分期待できる製品だと思いました。
1.スペック
OS: Windows 10
CPU: Intel Core i5-7200U / i7-7500U
GPU: Intel HD Graphics / AMD Radeon R7 M445
RAM: 8GB / 16GB
ストレージ: 1TB HDD / 2TB HDD
ディスプレイ: 17.3インチIPS(1,600 × 900)/(1,920 x 1,080)
光学ドライブ: DVD ドライブ (DVD/CD読み書き可)
ネットワーク: 802.11 a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.2
カメラ: インのみWebカメラ(720p)
入出力: USB 3.0 x 2、USB 2.0、HDMI、SD、オーディオ、DC-IN、LAN(RJ45)
バッテリー: 42Whr
サイズ: 424 x 280 x 25.3 mm / 2.83 kg
最初にスペックを確認します。この製品はKabylake世代のCore i5もしくはi7をCPUに搭載するハイスペックマシンです。RAMは8GBが基本ですが、最上位モデルは16GBあり、上位モデルにはAMDのGPUも搭載されます。一方でストレージはSSDの設定がなく、5,400 rpmとCPUやGPUに見合わない、比較的低速なものが搭載されます。
光学ドライブや十分な数の入出力ポートも備えており、(当然めちゃめちゃ大きいですが)家庭用そしてオフィス用には十分な基本性能を持っていると言えます。ただし、個人的な感想としては、17.3インチの巨大な筺体でもあることですし、USBポートがもうひとつくらい、そしてD-sub(VGA端子)くらいはついていてもよかったかな、とは思います。
レビュー機のシステム構成、およびストレージ構成です。CPUはCore i7、RAMは8GB、ストレージ1TB HDDの「プラチナ」という上から2番めのグレードになります。
2.筺体
同梱物です。今回のレビュー機はDELLからの貸出機で、全くの新品状態ではないため、書類等は一部不足している可能性がありますので、あらかじめご了承下さい。本体の他には「クイックスタートガイド(簡単な取説)」、「安全及び認可機関に関する情報」の冊子、あとは電源ケーブルのみです。
筺体は予想通りというか、予想以上と言うか、非常に「デカイ」です。そして2.83 kgというのもかなりの重さですね。ただし、製品の性質上、これは欠点であるとは言えないし、そう考える人もいないでしょう。
筺体素材はプラスティックですが、画像の通り、天板は光沢があり、質感はいいです。決して安っぽくは見えません。
左側面です。ポート類は画像左からDC-IN、LAN、HDMI、USB 3.0 × 2、オーディオジャックとなります。比較的強い丸みを帯びた筺体であることがわかりますね。
前面(開口部)です。画像のように中央部分に「手がかり」となるくぼみがついており、開閉を容易にしています。また、通電状態を表すLEDインジケーターもこのくぼみ部分についています。サイズは大きいですが、ヒンジの開閉は比較的ラクでした。ただし、決して軽々とヒンジを開ける、というものではなく、一般的なノートPCよりもそれなりには重いです。
右側面です。左からSDスロット、USB 2.0、DVDドライブ、セキュリティケーブルスロットとなります。
底面です。やはりプラスティック素材で、バッテリーの着脱はネジを開けないとできない仕組みです。最近こういうの多いんですかね?17.3インチなら、バッテリーは着脱可能なタイプのほうがいいような気がするんですけど。
ヒンジを開けてみます。こうして画像で見ると「普通のノートPC」ですが、サイズ感は圧倒的、というか本当に大きいと感じますね。
キーボードです。まず、サイズ的には全く文句ありません。十分に大きく、余裕があります。欠落していたり、イレギュラーな配置と感じるものもありません(探せばあると思いますが、私は違和感を感じませんでした)。当然テンキーもついていますが、テンキーと他のキーの間に間隔が開いているので、特に使いにくいとか誤入力してしまう、ということもありませんでした。また、パームレストは「広大」です。
キートップはフラットで、特に加工が施されていない、シンプルなものです。また、バックライトもついていません。キーストロークはかなり浅めで、「パチパチ」系の打鍵感ですが、サイズが大きいこともあり、若干剛性感が足りない気がしました。「パチパチ」と「ペコペコ」が混じったような打鍵音となり、中央部分に軽いたわみを感じます。しかし、実用上大きな不快感があるとか、使いにくいということはありません。
17.3インチサイズでキーボードが窮屈だったり使いにくかったり、というのはユーザーにしてみれば「ありえない」話ですが、この製品に関してはその心配はいらないと思います。よくできてますよ!
ヒンジを最大開口するとこんな感じです。フルフラットにはなりませんが、クラムシェルノートとしては十分な開口角度だと思います。
3.使用感
処理性能についてはベンチマークテストをこの後掲載します。ここではテキスト入力やWebブラウジングなどを短時間試してみた印象を書きます。まず、17.3インチのノートPCに向かって作業する場合、体感的にはディスプレイサイズは17.3インチよりも大きく感じます。これは、デスクトップPCのモニターと比較して、ノートPCのほうが目との距離が近くなるためでしょう。そのため、感覚的ではありますが、かなり大きなディスプレイサイズに感じられるんです。
ディスプレイ品質は満足できる水準です。解像度はFHDですが、発色、視野角ともよく、「キレイ」と感じられます。そして、キーボードもかなりの余裕があり、打鍵もしやすいですし、「さすが大型ノート」と言えるくらいに快適でした。
また、スピーカーの品質もそこそこです。私レベルなら十分満足できました。ただ、17.3インチである程度固定的に使うのであれば、数千円出して外付けのスピーカーを使うとより楽しいかもしれませんね。
普段使いのノートパソコンとしての欠点は、あたりまえですが「大きくて重い」ということだけです。半据え置き型として、あまり頻繁に持ち運ぶようなことをしない限り、この製品の使用感には文句は出ないと思います。長時間作業しても必要以上に疲れたりはしません。もっと言うと、デスクトップPCなんていらん、というくらいです。
4.性能テスト
この製品はCore i機であり、GPUも搭載していることから、「ドラゴンクエスト X ベンチマーク」「ドラゴンズドグマオンライン(DDON)ベンチマーク」そして「3D Mark」でテストしてみました。
参考:
ドスパラ Altair F-13(Core i5-7200U): 8,106
DELL XPS 13(Core i5-7200U): 7,405
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 7,230
NEC LAVIE Direct HZ(Core i7-6500U): 6,986
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U): 6,775
HP Spectre 13(Core i7-6500U): 6,505
DELL Inspiron 13 5000(Core i3-6100U): 6,418
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U): 6,352
HP Spectre 13 x360(Core i5-6200U): 5,859
Lenovo ThinkPad 13(Core i3-6100U): 5,409
ドスパラ Critea DX11(Core i3-6100U): 4,956
ドラクエベンチの標準品質の場合、非ゲーミングPCとしては最高レベルのスコアとなりました。メタルスライム(10,000点以上)が出ています。
参考:
ドスパラ GALLERIA QSF965HE(Core i7-6700HQ、GTX965M): 14,964
ドスパラ GALLERIA QF960HE(Core i7-4710MQ、GTX960M): 12,791
ドスパラ GALLERIA QHF960HE(Core i5-4210M、GTX960M): 10,136
ドスパラ Critea VF-HG10(Core i7-6500U、940M): 8,467
HP ENVY 17-n100(Core i7-6500HQ、GTX950M): 8,452
ドスパラ Altair F-13(Core i5-7200U): 4,115
DELL XPS 13(Core i5-7200U): 3,958
NEC LAVIE Direct HZ(Core i7-6500U): 3,787
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 3,592
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U): 3,394
HP Spectre 13 x360(Core i5-6200U): 3,304
HP Spectre 13(Core i7-6500U): 3,283
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U):3,190
Lenovo ThinkPad 13(Core i3-6100U): 2,515
しかし、最高品質にして、GeForce GPU搭載の製品と比較すると、歴然たる差がつきます。AMD Radeon R7 M445というGPUは、GeForceのGTXあたりと比較してしまうと、見劣りする、と言わざるをえないですね。
参考:
ドスパラ GALLERIA QSF965HE(Core i7-6700HQ、GTX965M): 8,981、8,568
ドスパラ GALLERIA QF960HE(Core i7-4710MQ、GTX960M): 7,677、6,374
ドスパラ GALLERIA QHF960HE(Core i5-4210M、GTX960M): 6,410、6,181
HP ENVY 17-n100(Core i7-6500HQ、GTX950M): 7,070、4,958
ドスパラ Critea VF-HG10(Core i7-6500U、940M): 6,842、4,623
ドスパラ Altair F-13(Core i5-7200U): 3,436、—
DELL XPS 13(Core i5-7200U): 3,379、—
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U): 3,260、—
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 3,085、—
NEC LAVIE Direct HZ(Core i7-6500U): 3,068、—
HP Spectre 13(Core i7-6500U): 2,869、—
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U):2,751、—
HP Spectre 13 x360(Core i5-6200U): 2,484、—
Lenovo ThinkPad 13(Core i3-6100U): 2,393、—
DELL Inspiron 13 5000(Core i3-6100U): 2,387、—
ドスパラ Critea DX10(Core i3-6100U): 1,960、—
※左から標準品質、最高品質の順。非ゲーミングPCは標準品質のみ測定しています。
DDONベンチでも傾向は同じです。GPU非搭載機よりは高いスコアとなりますが、GeForce搭載機とは歴然とした差がついてしまいます。
参考:
ドスパラ GALLERIA QSF965HE(Core i7-6700HQ、GTX965M): 5,344、16,987
ドスパラ GALLERIA QF960HE(Core i7-4710MQ、GTX960M): 4,014、11,109
ドスパラ GALLERIA QHF960HE(Core i5-4210M、GTX960M): 3,680、10,771
HP ENVY 17-n100(Core i7-6500HQ、GTX950M): 2,769、4,638
ドスパラ Critea VF-HG10(Core i7-6500U、940M): 2,621、8,816
ドスパラ Altair F-13(Core i5-7200U): 930,4,028
DELL XPS 13(Core i5-7200U): 910、3,970
NEC LAVIE Direct HZ(Core i7-6500U): 885、3,768
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 871、3,710
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U): 857、3,608
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U): 784、3,608
HP Spectre 13(Core i7-6500U): 705、3,256
HP Spectre 13 x360(Core i5-6200U): 749、3,414
Lenovo ThinkPad 13(Core i3-6100U): 679、3,183
DELL Inspiron 13 5000(Core i3-6100U): 632、3,096
※左からFire Strike、Sky Diverのスコア
3D Markでもこの傾向は変わりませんでした。以前Kabylake世代のCore i5を搭載する「ドスパラ Altair F-13」と「DELL XPS 13」のテスト結果が極めて良好だったことから、Kabylake世代のCore i7を搭載しているこの製品に期待するところ大だったのですが、「GPU積んでる割には…」というのが正直な感想です。もちろんAMDにせよNVIDIAにせよ、ある程度高性能なGPUを搭載すればスコアはもっと上がるはずですが、この製品の性能評価としては「ビジネスマシンとしては優秀、しかしゲーミングPCの性能ではない」ということができるでしょう。
5.まとめ
DELL Inspiron 17 5000はDELL公式サイトで販売中で、価格は税込みで88,538円から、となっています。またレビュー機(Core i7、RAM8GB、ストレージ1TB HDD、FHDディスプレイ、AMD搭載)の価格は税込み109,058円となっています。また、この記事を書いている1月29日現在だと、「15,000円オフのクーポン」が製品ページに掲載されており、これよりも15,000円安く購入することができます。DELLはよくクーポンセールをやるので、それに合わせて購入するのが賢いと思います。
ひと通り使用してみて、改めて17.3インチのノートPCの良さみたいなことを認識できました。このレビュー記事では筺体のパッケージングは絶賛、突っ込んだ性能面のテストでは期待はずれ、という評価になっていますが、性能面に関しては「Radeon(GPU)を搭載している割には」という意味であって、ビジネスノートとしては文句なしのハイスペックマシンであることは間違いありません。
そうなると価格が気になりますが、レビュー機のスペックで10万円そこそこ(セールなら10万円を切ります)というのはどう思いますか?私は明らかに格安だと思います。ノートPCとしては極めてサイズが大きく、そのために携帯性を大きく損なっているかわりに、デスクトップPCに引けを取らない使いやすさを提供してくれる製品です。こういうニーズのある人は少なくないのではないでしょうか?