DELL Inspiron 13(5330)の実機レビューです。13.3インチで重さ1.24 kgと持ち運びに便利なモバイルノートPCで、DELLの個人向けノートPCとしてはXPSシリーズ以外で唯一の13インチ級の製品です。
・シンプルで装飾のない、ビジネスマシンらしい外観
・Core i5/Core i7は高性能な「P型番」を搭載
・高い解像度、高い発色品質のディスプレイ
・13.3インチで重さ1.24 kgと、取り回しやすいサイズ感
ここはイマイチ
・背面の保護材がやや見苦しい
・スピーカーの音質がエンタメ利用には不十分
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Inspiron 13(5330) ノートパソコン(2023年1月31日発売):DELL
1.製品概要
製品の位置づけ
ご存知の方が多いと思いますが、DELLは世界的大手のPCメーカーです。ノートPCのラインナップも多く、個人向けにはInspironのほか、XPSやAlienware、DELL Gといった製品ブランドを手掛けています。その中でもInspironシリーズは最もワイドバリエーションで、製品サイズも13インチから16インチまで、また筐体構造もクラムシェルノート(普通のノートPCです)とコンバーチブル2 in 1を揃えています。価格帯も上位のXPSシリーズと比較するとリーズナブルで、競合他社の製品よりも全般にコストパフォーマンスが高いです。
Inspiron 13 5330はInspironシリーズの「13.3インチモバイルノート」です。筐体がコンパクトで軽量なので、PCをバッグに入れて持ち運ぶような使い方にピッタリの製品ですね。
また、システムスペックもビジネス用や学習用として十分に高く、PC負荷の高い作業も快適にこなせます。ディスプレイも高解像度で発色性能も高いので、動画視聴やWeb閲覧など、パーソナルな用途での満足感も高いと思います。
以下にスペック表を掲載します。
スペック表
Inspiron 13(5330) | |
OS | Windows 11 Home/Pro |
CPU | Intel Core i3-1315U/Core i5-1340P/Core i7-1360P |
外部GPU | なし |
RAM(メモリ) | 8GB/16GB(LPDDR5) |
ストレージ | 256GB/512GB SSD(M.2 PCIe NVMe) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 13.3インチ(1,920 x 1,200) 13.3インチ(2,560 × 1,600) |
ネットワーク | 802.11 a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.2 |
入出力 | USB Type-C(Thunderbolt 4)× 2、USB 3.2 Gen1 Type-A、HDMI、オーディオジャック |
カメラ | Webカメラ(1080p) |
バッテリー | 54WHr |
サイズ | 296.68 × 213.5 × 14.35-15.65 mm |
重量 | 1.24 kg |
レビュー機の構成
今回のレビュー機は
OS:Windows 11 Home
CPU:Core i5-1340P
RAM:16GB
SSD:512GB
ディスプレイ:13.3インチ(2,560 × 1,600)
という構成でした。
2.外観と使用感
まずはACアダプターです。モバイルノートは外出先に持ち出して使う機会が多いので、PC本体が小さくて軽くてもACアダプターが大きくて重かったりすると機動性を損ないます。Inspiron 13のACアダプターは出力が65WでノートPC用としてはやや小ぶり、実測重量も電源ケーブル込みで305 gと、「他社のモバイルノートよりも特に小さくて軽いわけではないが、まあ妥当」くらいのサイズ感でした。
天板です。外装はアルミニウム製で、DELL製品によく見られる、中央にメーカーロゴがあるだけのシンプルなデザインになっています。Inspiron 13の筐体色は「プラチナシルバー」のみです。
こちらが底面。筐体内部へのアクセスも可能ですが、今回のレビューでは内部は見ていません。DELL製品はWeb上でサービスマニュアルが公開されており、「腕に覚えがある人なら」広範囲でDIYが可能です。ただし、それなりの知識は必要になりますので、PC初心者の人にはおすすめできません。Inspiron 13のサービスマニュアルはこちらです。
Inspiron 13 5330 サービスマニュアル:DELL
スピーカーの音質についてご説明します。Inspiron 13を含むInspironシリーズには設定アプリ「MyDELL」がプリインストールされていて、MyDELLからスピーカーの音質調整やマイクのノイズキャンセリング調整が可能ですが、レビュー機ではMyDELLが利用可能な状態ではありませんでした。そのため、ここでは「MyDELLによる音質調整なし」の状態で評価します。
まず配置ですが、キーボードでテキスト入力をしながらBGMを流す、という使い方をする場合、パームレストに置いた手首が干渉し、少し音質が変化します。ちょっとこもった音になってしまいますね。
スピーカー音質そのものは悪くありません。ただし、ノートPC用スピーカーなので低音が効くとか高音が伸びる、的な感じではありません。しかし、音量を上げればかなり大きな音が出ますし、実用品としては十分すぎる品質だと思います。じっくり音楽を聴くのであればイヤホンとか外部スピーカーを接続するほうがいいでしょう。
前面(上の画像)と背面(下の画像)です。こちらにはポート類やボタン類はありません。しかし、背面の様子がちょっとヘンかな…。
Inspiron 13は「リフトアップヒンジ」構造です。ヒンジを開口すると天板の後部が接地し、その結果キーボード面に適度な角度がつき、タイピングがしやすくなります。そのため、天板に傷がつくのを防ぐ目的でこのようにプラスティック製の保護材がついているのですが、これが美観を損ねるというか、Inspiron 13の美しいデザインにはちょっとマイナスと感じられます。
これがリフトアップヒンジ構造です。DELL製品に限らず、最近のノートPCには広く採用されている構造で、実際にタイピングがしやすくなります。なので、この構造そのものはいいと思うのですが、保護材はもう少し目立たないものにして欲しいですね。
左右の側面です。左側面(上の画像)には左からHDMI、USB Type-C × 2があり、Type-Cポートは2つともThunderbolt 4です。また、Inspiron 13にはDC-INジャックはついておらず、充電/給電はType-Cポートを使います。
右側面(下の画像)にはUSB Type-Aポートとイヤホンジャックがあります。
キーボードです。日本仕様のキーボードは83キーの日本語配列で、キーピッチは19.05 × 18.05 mmと開示されています。また、明るさを2段階に調整できるバックライトもついています(バックライト色はホワイトです)。
キーピッチおよびキートップのサイズはノートPCとして標準的なもので狭苦しさはなく、また配列も素直なほうだと思います。しいて言えば右側のEnterキーの周辺のキーが英語配列の名残と思われる、少々変形したものになっていますが、実用上は支障はありません。
実際にしばらくタイピングしてみましたが、全く「慣れ」を必要としなかったですね。よって使い慣れないが故のミスタイプもほとんどありませんでした。右下の方向キー(上下方向)くらいかな、キーサイズが小さくてちょっと気を使ったのは。
打鍵音も静かな部類ですが、Enterキー(キーサイズが大型なこともあり)やや打鍵音が大きく、静かな場所で使うにはちょっと気を使うことになると思います(Enterキーだけは静かに押しましょう、ということです)。
それと右上に「電源ボタン兼指紋センサー」があります。このキーだけ他のキーよりもかなり重く(押下圧が大きい)なっているので誤って押してしまう可能性は小さいと思いますが、作業中に押してしまうと(当然)画面が真っ暗になってしまいますので、ちょっと焦りますw
ほとんどのノートPCは多かれ少なかれ配列にクセがあります。サイズをコンパクトにするために仕方のないところではあるのですが、Inspiron 13のキーボードはクセが小さく、どなたが使ってもすぐに慣れることができるものになっていると思います。
正面から見たところです。ベゼル幅は細めで、美しいデザインになっていると思います。
Inspiron 13 5330のディスプレイはレビュー機が搭載する2,560 × 1,600解像度のものも、もうひとつの1,920 × 1,200解像度のものも、どちらも100%sRGBの発色品質になっています。実際にブラウザー(Edge)上で「花」の画像を表示し、手持ちのPCモニター(IPS液晶、100%sRGB、1,920 × 1,080解像度のもの)と比較してみましたが、色の鮮やかさはほぼ同じでした(当たり前…)。また、メーカー開示にはありませんが、視野角は広く、角度をつけて見ても画面が白っぽくなりませんので、IPS相当の液晶が使われていると思います。
ビジネス用、学習用として、また動画視聴などパーソナルな用途でまったく不満を感じない品質のディスプレイだと評価できます。なお、2種類のディスプレイですが、CPUがCore i3のモデルが1,920 × 1,200解像度、Core i5/Core i7のモデルが2,560 × 1,600解像度となります。つまり、注文の際に自由にディスプレイ解像度を選べる、というわけではありません。
3.性能テスト
Inspiron 13が搭載するCPUは3種類、Core i3-1315U、Core i5-1340P、そしてCore i7-1360Pです。今回のレビュー機はCore i5-1340Pを搭載していましたが、当然のことながらCore i3-1315Uよりは高性能、Core i7-1360Pよりは低性能、ということになります。また、ビジネス系ノートPCに搭載される第13世代のCore i5は「Core i5-1335U」と「Core i5-1340P」であることがほとんどです。省電力タイプ(型番の末尾が「U」)よりもバランスタイプ(型番の末尾が「P」)のほうがコア数/スレッド数が多く、性能も高いです。よってInspiron 13のCore i5搭載モデル(今回のレビュー機)は他社のCore i5-1335U搭載の製品よりも高いベンチマークスコアになることが予想されました。
ベンチマークテスト
ベンチマークテストの実施にあたり、Inspiron 13を電源に接続し、Windowsの電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定しました。
なお、Inspiron 13のようなビジネスPCの場合、あまりガチでベンチマークスコアを見て頂く必要はないです。そもそもベンチマークテストは常に同じスコアが出るわけではなく、測定タイミングによって5~10%くらいは簡単に上下します。なので、同じCPUを搭載している製品と著しくスコアが違っていなければOK、というくらいに考えていただければ、と思います。
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。どちらかというとビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。このテストではCPU性能の影響が大きいとされますが、テスト内容にグラフィック系のシミュレーションも含むため、外部GPUの性能も少なからず影響します。
参考(同クラスのノートPCのスコア):
HP Pavilion 15-eh(Ryzen 7 5825U):5,954
DELL Inspiron 14 5430(Core i7-1360P):5,929
DELL Inspiron 14 5435(Ryzen 7 7730U):5,915
VAIO SX12(2022)(Core i7-1260P):5,761
dynabook GZ/HW(Core i7-1360P):5,742
富士通LIFEBOOK NH WN1/H1(Core i7-12700H):5,614
VAIO F14(Core i7-1355U):5,553
dynabook AZ/HV(Core i7-1260P):5,503
MSI Prestige 13 Evo A12M(Core i7-1280P):5,500
Lenovo ThinkPad X13 Gen 4(Core i7-1355U):5,452
VAIO SX14(Core i7-1280P):5,452
MSI Modern 15 B13M(Core i5-1335U):5,419
MSI Modern 14 C12M(Core i7-1255U):5,366
VAIO SX14(Core i7-1195G7):5,278
Lenovo ThinkPad X13(Core i7-1165G7):5,205
Lenovo IdeaPad Slim 550 14(Ryzen 5 5500U):5,076
ASUS Zenbook 17 Fold OLED UX9702(Core i7-1250U):5,074
DELL Inspiron 14 AMD(Ryzen 5 5625U):5,031
非常に高いスコアになっていると思います。Core i7と比較しても遜色がないですね。Core i5でここまでのスコアが出るのであれば、あえて高価なCore i7搭載モデルにする必要はないのでは?と感じます。PC Markが想定するビジネスシーンではストレスなく使えると思います。
グラフィック性能を測定する3D Markのスコアです。ゲーミングPCでは最も重要になるテストと言えますが、レビュー機は外部GPUを搭載しておらず、スコアは低めになることが予想されました。
参考(同等クラスのノートPCのスコア):
MSI Prestige 13 Evo A12M(Core i7-1280P):15,330、20,071
DELL Inspiron 14 5430(Core i7-1360P):14,220、18,640
VAIO SX12(2022)(Core i7-1260P):14,055、18,529
VAIO F14(Core i7-1355U):13,655、16,810
dynabook GZ/HW(Core i7-1360P):13,424、16,779
Lenovo ThinkPad X13 Gen 4(Core i7-1355U):13,177、14,122
富士通LIFEBOOK NH WN1/H1(Core i7-12700H):13,129、18,071
Lenovo ThinkPad X1 Carbon Gen 11(Core i5-1335U):11,795、14,774
HP ENVY x360-bf(Core i7-1250U):10,684、14,119
ASUS Zenbook 17 Fold OLED UX9702(Core i7-1250U):10,931、13,960
HP Pavilion 15-eg(Core i7-1355U):10,518、13,584
富士通LIFEBOOK CH WC1/G3(Core i5-1240P):10,009、11,202
MSI Modern 15 B13M(Core i5-1335U):8,868、13,287
DELL Inspiron 14 5435(Ryzen 7 7730U):7,610、16,401
Lenovo ThinkBook 15 Gen 5 (AMD) (Ryzen 5 7530U):6,883、13,730
※左からWild Life、Night Raidのスコア
外部GPUを搭載しない製品の場合、画像の一番右、Night Raid(外部GPU非搭載機向けの軽量なDirectX 12対応のテスト)のスコアを見るようにしています。そのNight Raidのスコアですが、やっぱり非常に高いです。
これだけのスコアが出るのであれば息抜きにPCゲームも楽しむくらいのことはできると思います(ゲームタイトルによってグラフィック設定を調整する必要はあります)。「あくまでベンチマークスコア」ではありますが、Core i7いらず、と感じてしまいます。
SSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。PCIe NVMe Gen3 x4接続のスコアと思われますが、十分に高速ですね。ビジネスシーンや各種のエンターテイメント用途でSSDの速度面での不満はまず感じない水準だと思います。
バッテリー駆動時間
実機レビューのため、レビュー機を数時間使用しましたが、そのうちの約1時間、実際の利用シーンにある程度合わせる格好でバッテリー消費量をチェックしました。
Windowsの設定メニューにある「電源モード」を「トップクラスの電力効率」に設定し、キーボードバックライトを点灯(2段階の明るさのうち、暗いほう)、ディスプレイ輝度を70%に、音量を30%にして下記の作業をしてみました。
・GIMP画像加工を約15分
・ブラウザー上でYouTubeを開き、動画・音楽鑑賞を約20分
・ブラウザーを開き、Webサイト閲覧を約20分
・テキストエディタで文書作成を約15分
※上から3番めのWebサイト閲覧時のみディスプレイ輝度100%
トータルで約70分使用し、バッテリー消費は約30%でした。単純計算で1時間あたり約25.7%のバッテリー消費、バッテリー駆動時間は約4時間ということになります。これ、モバイルノートとしては短いですね。CPUが高性能なP型番であったこと、作業中にディスプレイ輝度を上げた場面があったことも評価が辛口になってしまった一因かと思います。ディスプレイをもっと暗くするとか、音を出さないなどの節約をすれば、実際にはもう少し(プラス1時間くらい?)は駆動時間を伸ばせたかも、とは思います。
発熱とファン音
ベンチマークテスト時以外はほとんどファン音は聞こえず、発熱も気になりませんでした。ベンチマークテスト中はファン音、発熱とも大きくなりますが、「一般的な水準」であり、使っていて特に騒々しくて不快であるとかキーボード面が熱くて不快である、という感じはありませんでした。
4.レビューまとめ
DELL Inspiron 13(5330)はDELL公式サイトで販売中です。10月31日現在の価格は税込み87,292円(Core i3-1315U/RAM8GB/SSD256GB/1,920 × 1,200ディスプレイ)から、となっています。また、レビュー機の構成「Core i5-1340P/RAM16GB/SSD512GB/2,560 × 1,600ディスプレイ」だと127,000円です。
筐体デザインは良くも悪くも「シンプル」で、過剰な装飾もなく、それでいて質感は高く、仕事用あるいは学習用のPCとしては好感が持てます。ただし、例えばMicrosoft Surfaceシリーズのような個性はなくそっけない印象もあります。「俺がInspironだ!」という主張はないですねw この点は好き嫌いがわかれると思います。試用していて個人的に「気に食わん」と思ったのは筐体背面にある保護材が目立ちすぎる、という点くらいでした。
モバイルノートとしてのサイズ感、キーボードの使いやすさ、ディスプレイの発色品質については「期待通り」でした。「外観はおとなしいが中身はすごい」という感じ。ベテランPCユーザーにも受けが良さそうですし、変なクセがないので初めてモバイルノートを購入するという人にもおすすめの製品です。