こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。連載している「2020年春のノートPC購入ガイド」ですが、次に「各社のハイエンド・モバイルノート」という趣旨で記事を書こうとしています。しかし、ちょっと待てよ…、その前にひとつ考えたいことが出てきた…。「クラムシェルノートとコンバーチブル2 in 1の違いについて」です。「HPのハイエンドなモバイルノート」は言うまでもなく「Spectre x360 13」ですが、この製品はクラムシェルノートじゃありません。というか、最新モデルということだとHPを代表する、というかSpectre x360に匹敵する個人向けのハイエンドなクラムシェル・モバイルノートというのはないんです。
激安な中華ノートはともかくとして、ある程度以上のPCであれば、「コンバーチブル2 in 1ならクラムシェルノートと同じように使うことができる。つまり、クラムシェルノートとして使える」というのはあります。一方で「クラムシェルノートはコンバーチブル2 in 1としては使えない。タブレットモードやテントモードにはできない」というのもあります。なので、HPのようにモバイルのハイエンド機をコンバーチブル2 in 1のみにする、という戦略は別に不自然とも言えません。
しかし、「それなら全部コンバーチブル2 in 1にしたらいいじゃん?」という疑問も出てきます。また、今の世の中、コンバーチブル2 in 1よりもクラムシェルノートのほうがずっと多くの製品がありますが、これらクラムシェルノートの存在意義は?となると…どうでしょう…。でも、どうやらちゃんと棲み分けるポイントがあるようです。なお、この記事はウインタブのオピニオン記事です。独自の見解を述べているもので、常に正しい見方とは言えませんので、その点あらかじめご了承ください。
目次
1.実例1:ThinkPad X1
ビジネスノートの定番とも言えるLenovo ThinkPadシリーズ。ThinkPadシリーズの最上位モバイルラインが「Xシリーズ」です。Xシリーズに「X1 Carbon」と「X1 Yoga」というのがありまして、おそらく筐体内部に共通点が非常に多いと思われます。
こちらがX1 Carbon。14インチディスプレイを搭載するクラムシェルノートです。
ウインタブ実機レビュー:
Lenovo ThinkPad X1 Carbon (2019) レビュー - なにこれ軽い!でも安心のThinkPadクオリティ。これがThinkPadのフラッグシップ・モバイルノート!(実機レビュー)
こちらがX1 Yoga。やはり14インチサイズですが、コンバーチブル2 in 1筐体です。
ウインタブ実機レビュー:
Lenovo ThinkPad X1 Yoga(2019) レビュー - あれ?黒くない!でも使いやすさはThinkPadそのもの、そしてThinkPadらしからぬ高級感も!(実機レビュー)
この2機種はいずれも注文時に構成のカスタマイズが可能ですが、
OS: Windows 10 Home
CPU: Core i7-10510U
RAM: 16GB
ストレージ: 512GB SSD
ディスプレイ: 14インチIPS(2,560 × 1,440)
※X1 Yogaのみディスプレイはタッチパネル
という構成にして、できるだけ同スペックで比較してみました。ただし、2月18日現在X1 Carbonにはタッチディスプレイの設定がなかったので、ディスプレイの「タッチ・非タッチ」という点が異なります。また、X1 Yogaのみスタイラスペン(ThinkPad Pen Pro)が付属します。
この構成で価格を見てみると
X1 Carbon: 247,104円
X1 Yoga: 274,824円
※2月18日現在の税込み価格
両者の差額は税込みで27,720円です。ディスプレイがタッチ対応し、スタイラスペンが付属するので、X1 Yogaのほうが高価であることに合理性はありますが、ともあれ「Yogaのほうが高い」ですね。
次に筐体重量です。
X1 Carbon: 約1.09kg~
X1 Yoga: 約 1.36kg~
※メーカー製品ページ記載の数値をそのまま転記
残念ながらスペックを調整した場合の細かな重量差はわかりませんでしたが、これだけ見てもその差は明らかでしょう。圧倒的にX1 Carbonのほうが軽量です。ちなみに、ウインタブでは2機種とも実機レビューをしていますが、この2機種は筐体素材からして異なります(X1 Carbonは天板にカーボンを使用、X1 Yogaはアルミ合金)。兄弟機種で素材まで変えてくるあたり、さすが「頑丈であることを義務付けられている」ThinkPadらしいところです。
X1 YogaとX1 Carbonのように、素材が変わる、というのは他社製品ではあまり見かけませんが、それでも「コンバーチブル2 in 1のほうが重い」というのは大抵の場合成立する話です。また、「コンバーチブル2 in 1のほうが高価」というのも間違いとは言えないでしょう。
2.実例2:LIFEBOOK
日本の伝統大手メーカー富士通の超軽量PC「LEFEBOOK UHシリーズ」にもクラムシェルノートとコンバーチブル2 in 1、2つのタイプがあります。
こっちがコンバーチブル2 in 1のカスタムメイドモデル(Web直販モデル)「LIFEBOOK WU3/D2」です。
ウインタブ紹介記事:
富士通 LIFEBOOK UH95(WU3/D2)- 世界最軽量の13.3インチノートにコンバーチブル2 in 1が仲間入り。重量868 g!
こちらはクラムシェルノートのカスタムメイドモデル「LIFEBOOK WU2/D2」。どちらもめちゃめちゃ軽い筐体が魅力の製品です。
ウインタブ実機レビュー:
富士通 LIFEBOOK WU2/C3(UHシリーズ)レビュー - 13.3インチで世界最軽量のモバイルノートは基本性能も操作性も抜群!(実機レビュー)
※1世代前のモデルですが、現行モデルと大きな差はありません
ここでもシステム構成をできるだけ同一にして比べてみます。
OS: Windows 10 Home
CPU: Core i5-8265U
RAM: 8GB
ストレージ: 256GB SSD
ディスプレイ: 13.3インチIPS(1,920 × 1,080)
※WU3/D2のみディスプレイはタッチパネル
この構成で価格を見てみると
コンバーチブル2 in 1 : 160,560円
クラムシェルノート: 139,702円
※2月18日現在の税込み価格(会員価格です)
ThinkPadの場合と同様に、コンバーチブル2 in 1のWU3/D2のみディスプレイがタッチ対応し、スタイラスペンが付属する、という違いがありますが、価格差は20,858円あります。次に筐体重量を比較してみます。
コンバーチブル2 in 1 : 約868g
クラムシェルノート: 約747g~
※メーカー製品ページ記載の数値をそのまま転記
この製品はバッテリーを2種類から選べます(25Whのものと50Whのもの)。ここでは25Whのバッテリーを選んだ場合の重量で比較していますが、やはりコンバーチブル2 in 1のほうが重くなりますね。ただし、「それでも868 g」なんで、ThinkPadほど大きな差とは言えないように思います。1キロを切っていたら「もはや超軽量」でいいですよね。
ここでは実例を2つしか挙げていませんが、それでも「同スペックの製品同士で比較すると、クラムシェルノートのほうが価格が低く、重量も軽い」ということは一般論として言えるのではないかと思います。
3.機種選びのポイント
軽くて割安なクラムシェルノート
これまで述べてきたとおり、ノートPC選びで価格と軽さを重視するならクラムシェルノート、ということは言えるでしょう。ただし、価格にしても重量にしても「そんなに簡単な話ではない」ですよね。この記事では「同一メーカーでほぼ同等クラスのPC」を使って比較しましたが、低価格なコンバーチブル2 in 1だってありますし、重くて高価なクラムシェルノートだってあります。メーカーとか製品ブランド、スペックなどによってこの辺は「なんとでもなる」でしょう。ただし、1キロを切るような超軽量なコンバーチブル2 in 1というのは探すのが大変です。ここで例示したLIFEBOOKのほかは(法人向けですが)HPのElite Dragonflyくらいしか思いつきません(私が思いつかないだけかもしれないです)。
なので、価格はともかくとして、軽さにこだわるのならクラムシェルノートかな、と思います。
ペン入力するならコンバーチブル2 in 1
コンバーチブル2 in 1という製品ジャンルは「もれなくタッチ・ディスプレイ」です。一方でクラムシェルノートの場合、タッチ・ディスプレイを装備する製品もありますが、その数はあまり多くありません。もしも、「マウス操作のかわりにディスプレイを直接タッチして操作できれば便利」というお考えならコンバーチブル2 in 1でもタッチ・ディスプレイ搭載のクラムシェルノートでも大丈夫だと思います。
ただし、「ペンを使って画面に直接絵を描きたい」のならクラムシェルノートでは無理です。クラムシェルノートでもSurface Laptop 3のように、非常に高性能なペン入力ができる製品はあります。しかし、クラムシェルノートの形態で精緻なイラストやマンガを描くのは無理ですね。画面に直接絵を描くならタブレットモード、あるいはそれに近い形態にしないと、まともに絵は描けません(画面にメモ程度の書き込みをするのならクラムシェルでも大丈夫です)。キーボードがめちゃめちゃ邪魔になってしまいますから。
なので、ペン入力をするのならタブレットモードにできるコンバーチブル2 in 1をおすすめします。
テントモードは不要?
これは私の個人的見解です。コンバーチブル2 in 1でよくアピールされる「テントモード」とか「スタンドモード」ってありますよね?これ、正直なところ特にありがたみは感じません。もちろんこのモードが必要、と考える人もいるんでしょうけど、私は手持ちのコンバーチブル2 in 1(過去に何台か使っています)でテントモードやスタンドモードを常用したことはありません。ただし、タブレットモードに関しては、上に説明したペン入力の際や電車の中、あるいは寝タブ的に、ちょくちょく使うことがあります。でもペン入力をほとんどしない身としては、またタブレット製品をやたらと持っている身としては、別にクラムシェルノートで不便は感じないです。
4.まとめ
クラムシェルノートとコンバーチブル2 in 1のどちらが優れているか、ということはわかりません。そう簡単に結論なんて出せっこないがな、ということです。ウインタブではクラムシェルノートもコンバーチブル2 in 1も、この先ずっと紹介記事を掲載したり、実機レビューをしていきます。
冒頭に触れた「コンバーチブル2 in 1ならクラムシェルノートと同じように使うことができる。つまり、クラムシェルノートとして使える」「クラムシェルノートはコンバーチブル2 in 1としては使えない。タブレットモードやテントモードにはできない」というのは正しいとしても、クラムシェルノートならではのメリットというのも大きい、ということは言えますね。この記事では「価格」と「重量」にフォーカスしましたが、「そもそもタッチ・ディスプレイが必要か」「ペン入力なんてするのか」「テントモードで何をしろというのか」ということはよく考えておくほうがいいです。
もしも「タッチ・ディスプレイは使わない。ペン入力にも魅力を感じない。正確に大量の文字入力をしたい」のなら、コンバーチブル2 in 1に余計なお金を払うのは無駄かもしれません。逆にいまこの瞬間はわからないけど、この先「タブレットとしても使いたい。ペン入力もしたい」という気持ちになる可能性があるのなら、コンバーチブル2 in 1にしておくほうが安心でしょう。
今回は筐体構造について触れましたが、PC選びというのはいよいよ奥が深いし、世の中には魅力的な製品が山ほどあります。で、予算は限られている、と。そういう中で自分に一番合うPCを選ぶのは大変ですし、また楽しくもありますよね!
コメント
テントモードは外付けキーボードも持ち出してバリバリ文章を書きたいときに使っています。ノートPCのキーボードも打ちにくいということはないですがどうしても打ち心地はリアフォなどに劣るので……
大変参考になりました!
個人的には『テントモード』お絵描きをする際に便利と感じました
『描きやすい角度』を別のスタンドを買わずに作ることができます(卓面に滑り止めシートなど工夫もいりますし、フットプリントはかなり大きくはなりますが)
会社で使う際にスタンドモード必須です。
と言うのも、会社でデスクトップのデュアルディスプレイ+ノートパソコンのスタイルなのですが、机が手狭でモバイルディスプレイのように配置したいが為にスタンドモードが必要となっています。
デスクトップとノートパソコンをMousewithborderでマウスとキーボードのみ共有させ、重いマクロを実行してる間でも片方で仕事を継続しているという兼ね合いもあります。