最近のノートPCはどんどん薄型化・軽量化が進んでいますよね?個人的にも重さ1キロを切るモバイルノートなんかは「いいなあ」と羨ましく思います。しかし、「その代償」として「入出力ポート」の数が削減される傾向も見て取れます。
目次
1.実例で見る「ポート構成の個性」

DELL XPS 13(9350)のポート構成
たとえば、DELLのXPS 13はUSB Type-Cポートが2つしかなく、イヤホンジャックすら非搭載です。USB Type-AやHDMIもないので、必要に応じてハブやアダプターを使用する前提(の設計)です。富士通のFMV Note C(実機レビュー記事)も同様に、Type-Cポート2つとイヤホンジャックのみという極めてシンプルな構成です。

Lenovo ThinkPad T14 Gen 6のポート構成
一方、LenovoのThinkPad T14 Gen 6はThunderbolt 4ポートが2つ、USB Type-Aが2つ、HDMI、イヤホンジャック、さらに有線LANポート(RJ45)も備えており、拡張性に優れた構成です。
このように、ノートPCのポート構成は機種ごとに大きく異なります。しかしPC購入の現実として「CPU/RAM/SSD/ディスプレイなどのスペック」や「(特にモバイルノートの場合)薄さとか軽さ」のほうが重視されるのではないか、と思います。
2.USB Type-Cは万能なのか?
ノートPCのポート数が減少傾向にある(と私が思っている)要因として「USB Type-C」の存在が挙げられます。確かにUSB Type-Cは充電・データ転送・映像出力をこなせる便利な端子です。
ただし、見た目が同じでも中身は異なります。「規格によって転送速度がまちまち」ですし、「映像出力(DisplayPort Alternate Mode)非対応」「PD(USB Power Delivery)非対応」というものもあります。ちょっとレア、というかノートPCでは見かけませんけど「充電専用」のUSB Type-Cポートもありますね。
見た目は同じでも仕様はまちまち。これがUSB Type-Cの落とし穴です。特に「映像出力できると思ってHDMI変換アダプターを買ったが映らなかった」「PD対応だと思ったら給電できなかった」といったトラブルは、実際によくある話です(恥ずかしながら私も経験があります)。
私の経験上、PCモニターでUSB Type-Cポートがついているものは少なく(モバイルモニターならほとんどついていますけどね)、この場合、ノートPC側にUSB Type-Cポートしかなければ「USB Type-C – HDMIなどの映像端子」の変換アダプター(ハブ・ドッキングステーションなど)が必要になります。もちろん「変換アダプターを忘れた」場合は詰みますw
つまり「USB Type-Cさえあれば大丈夫」とは限りません。ポート数が少ない機種ほど、実はスペックの確認が重要になります。
3.「ブースト」は可能
上で例示したDELL XPS 13の場合「USB Type-Cポートが2つしかない」ですが、そのいずれもがThunderbolt 4規格です。つまり、データ転送速度は40Gbpsと「最高速」ですし、映像出力やUSB PDにも対応、さらにPCIeトンネリングにも対応しているので外付けGPUなど「本来はPC内部のスロットに直結するような機器」の接続も可能です(ただしPCIe機器は相性問題があります)。よって、ハブやドッキングステーションを用意する前提であれば「思いつく周辺機器はすべて接続可能」です。
また、FMV Note CのUSB Type-Cポートも「Gen 2規格」で、データ転送速度は10Gbpsと速く、映像出力やUSB PDに対応しますので、XPS 13のThunderbolt 4よりは劣りますが、ハブやドッキングステーションを用意する前提なら実用性は高いです。
このように、ポート数が少ないノートPCの場合、USB Type-Cポートが高規格であることがほとんどなので、ハブやドッキングステーションによる「ポートのブースト(変換・増量による利便性の確保)」は可能です。ハブやドッキングステーションの価格はポート数などによりピンキリですが、メーカー純正品は概して高価です(軽く2万円以上しますね…)。またUGREENなどサードパーティ製のもので機能を絞り込んだものなら3,000円くらいから購入できます(高価なものは数万円します。これもピンキリ)。
一方で、ハブやドッキングステーションは「外付けパーツ」なので、PCと一緒に外出先に持ち出すのがウザいとか、一緒に持っていくのを忘れた、といったことも懸念されます。また「PCを買う時点ですでにこれらを購入することを考える」というのは感覚的にはアントニオ猪木の名言「出る前に負けること考える馬鹿いるかよ!」(YouTubeショートへのリンク)が思い出されます…。
4.USB Type-AやHDMI、有線LANポートは現役、よく使われる
次に、USB Type-AやHDMI、有線LANポートの重要性(必要とされる頻度)について考えてみましょう。
PCのベテランユーザーほど「USB Type-Aが使えないなんてありえない!」んじゃないでしょうか?私の場合は「USB接続のマウス、USBメモリースティック、ポータブルSSD、(以降はデスクトップPCでの話ですが)Webカメラ、キーボード、スピーカー」がUSB Type-A接続になっています。
HDMIは、PCモニターやプロジェクターとの接続において、現在も非常に広く使われています。上にも書きましたが、据え置き型のモニターとかプロジェクターだとUSB Type-Cポートがないものも多いです。また、有線LANはビジネス環境での安定した通信や、大容量データのアップロード時などにおいて、今もなお信頼できる選択肢です。
つまり、これらのポートは「まだまだ余裕で現役」ですし、私としては「使用頻度も高い」です。ハブやドッキングステーションによる「ブースト」でも問題ありませんが、「そんなもん、本体についているほうがいいに決まってる!」ということです。
5.想定される周辺機器から考える
自分にはどのポートが必要なのか。これを判断する一つの手がかりが、「周辺機器の洗い出し」です。以下のような機器をどれくらいの頻度で使うかを見直すことで、必要な端子が見えてきます。
・外部モニター(HDMI、DisplayPort、USB Type-C)
・USBメモリ、プリンター(USB Type-A)
・外付けSSD/HDD(USB Type-A/USB Type-C/Thunderbolt)
・SDカードリーダー(フル規格/micro規格)
・マウス・キーボード(Bluetooth または USB)
・有線LAN(RJ45ポート)
・USBハブ・ドッキングステーション(PD・映像出力対応)
使わないものに備える必要はありませんが、「ないと困るもの」にはあらかじめ気づいておきたいところです。
6.用途や立場ごとの注意点
ビジネス用途:
出先でのプレゼンや会議ではHDMIが即戦力となり、有線LANの信頼性が必要なケースもあります。USB Type-CのみのPCでは、変換アダプターを常に携帯する必要があるかもしれません。
学生:
学校の設備が古い場合、USBメモリやUSBプリンターの使用頻度が高く、USB Type-Aが1ポートでもあると安心です。また、自宅でデュアルディスプレイ環境を構築する場合も、HDMI端子があると手軽です。
クリエイター:
外付けストレージやSDカードの使用頻度が高いため、ポート数や速度(USB4やThunderbolt対応)にも注意が必要です。映像出力に関しても、2枚以上のモニターを使うなら端子構成の確認は必須です。
7.まとめ
私は「ノートPCのポートは多いほうがよい。USB Type-AポートやHDMIポートは今でも必須だと思うし、できれば有線LANポートも欲しい」と思っています。これ、オピニオンとして「この記事の結論」です。しかし、この点は人それぞれの考え方がありますので「正解」はありません。
重要なのは、購入しようと思っているノートPCのポート構成が「自分の使い方に対して足りるのかどうか」を見極めることです。
8.関連リンク
「スペック信仰」に待った! 記事一覧
Copilot+ PCとは?要件と「NPUが本当に必要か」を冷静に考える
CPUは最新でなくても大丈夫!仕事・勉強・娯楽に最適なノートPC選び
ノートPCのメモリは16GB以上が必須?本当に8GBでは足りないのか? - 用途別に考えるRAM容量
ノートPCの「ちょうどいい」ストレージ容量は?1TBが正解?用途と予算に合わせて考える
NPU、RTX、AI…今のPCで「使えるAI機能」って何? -「AI搭載PC」の現実と限界
GPUとは何か。iGPUとdGPUの違い、そしてNPUとの関係は?難解な用語の意味も解説
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
▶ 筆者プロフィール・ウインタブについて
コメント
FCCLがFMV Note Cを発表したとき、信じられないという思いを私はしました。「よくこの商品企画がFCCLで通ったな」と思ったのです。曰く、「ノイズレス」とのこと。私にとってはLifebookのキーボードのカーソルキーがきちんと逆T字に配列されていることが正義であり、豊富なインターフェースを搭載しながら堅牢性の高い筐体設計ができることが日本メーカーの矜持だと思っていたからです。
確かにMacBookやSurfaceしか買いたくないと思う層は一定数いることは認めざるを得ません。
しかし「パソコンは道具である以上、デザインがいくら良くても機能が不十分ならそれは道具ではない」と私は考えていたので、クリエイターがMacBookを使うのは理解できます(ディスプレイのち密さ・発色の良さから写真家がモニターとして利用する意義はわかります)が、デザインだけで選ぶのは辞めておいたほうがよい、といろんな人に言ってきました。
FCCLには冒険する体力はあまりないのではと心配しており、今までの路線を踏襲するモデルが今後も販売されることを望んでおりますので、FMV Note CやDell XPSがどれだけの人に受け入れられるのか、ある意味恐怖感を持ちながら見守りたいと思います。
ただ、日本メーカーには、緻密な筐体設計のノウハウを放棄するような愚かな真似だけはしてほしくない。そんなことしたら本当に中華ノートパソコンに駆逐されてしまうでしょう。