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内蔵GPU(iGPU)の進化で、もう外部GPU(dGPU)はいらない?

オピニオン

内蔵GPU(iGPU)の進化で、もう外部GPU(dGPU)はいらない?
GPU(Graphics Processing Unit)は、主に映像表示や画像処理を高速に行うための演算装置です。まあ、およそWindows PCを使っている人に対して「GPUが何をするものなのか」を詳しく説明する必要もないでしょう。また、「GeForce搭載のPCイコール高性能PC」と考える人も多いと思いますし、その考えは間違いとも言えません。

PCに搭載されるGPUは、下記の3種類に大別できます。

種類 構成 一般的な用途 相対的な性能
iGPU(内蔵GPU) CPUと一体化 日常作業、軽量ゲーム、動画再生 低〜中
dGPU(外部GPU) CPUとは独立した専用チップ ゲーム、動画編集、AI、3DCG 中〜高
eGPU(外付けGPU) 外部パーツ、USB4/OCuLinkで接続 拡張用、後付けの高性能化 中〜高

「iGPUよりもdGPUのほうが高性能」「PCでゲームをするならdGPUが必要」「画像加工や動画編集といったコンテンツ制作にもdGPUが不可欠」…このあたりは、多少PCに詳しい人なら「常識」と言えるでしょう。

しかし近年、CPUアーキテクチャの進化は目覚ましく、iGPU(IntelのArc iGPU、AMDのRadeon 800Mシリーズ)の性能も飛躍的に向上しています。もはや「軽作業用」という枠を超え、旧型のエントリーdGPUを凌ぐ実力を備えている、とすら言えそうなのです。

1. 外部GPU(dGPU)が必要とされてきた用途とは?

GeForce RTX50シリーズのイメージ画像(出所:NVIDIA)

GeForce RTX50シリーズ(出所:NVIDIA

現代のPCにおける「グラフィック」の重要性は非常に高く、「dGPU=高性能」というイメージは決して間違ったものではありません。また、以下のような用途ではdGPUの搭載が「必須」とされます。

用途 dGPUが必要とされる理由
AAAクラスのPCゲーム 高解像度・高画質設定での描画、レイトレーシング対応、高フレームレートの維持など、システム負荷が非常に大きいため
高度な動画編集 4K以上の解像度や、複数のエフェクト処理・カラーグレーディングに対応するにはGPUの演算力が不可欠
AI処理 AI画像生成や、大規模言語モデルのローカル実行にはGPUによる高速な行列計算が有効(とされる)
3DCG・CAD・VR リアルタイム描画、複雑なモデリング、3Dレンダリングなど、高いGPU処理能力と大容量のVRAMが必要

これらの作業においては、従来のiGPUでは「動作はするがダルすぎて現実的ではない」もしくは「そもそも動かない」ことも多いです。そのため、長年にわたりdGPUは「高度な、あるいは専門的な用途には不可欠」とされてきました。

2. 内蔵GPU(iGPU)でも「ここまでできる」

Intel Arc 140V

Intel Arc 140V

しかし、最新のiGPUは大きく進化しており、ウインタブの実機レビューでも「かつてのGeForce GTX 1650に匹敵する、あるいは凌ぐ」と評価することも少なくありません。以下の表は、ウインタブが計測・蓄積してきたベンチマークスコア(3D Mark)をもとに、iGPUとdGPUの実力を比較したものです。なお、この表は「ざっくりしたもの」でして、レビュー機種によっては例外的に高い、あるいは低いスコアをマークしたものもありますので、目安程度とご理解ください。

プロセッサー / GPU 3DMark
Time Spy
Fire Strike Night Raid 備考
Core Ultra 9 185H(Arc iGPU) 4,143 8,223 31,710 FHD中設定の軽量ゲームが快適
Ryzen AI 9 365(Radeon 880M) 3,895 8,885 34,303 GTX1650に迫る実力
GTX 1650 Laptop(実測平均) 約3,600 約8,200 旧世代dGPU。iGPUとの境界線?
RTX 3050 Laptop(実測平均) 約4,330 約9,560 iGPUをやや上回るエントリーGPU
RTX 5070 Laptop 14,923 32,826 84,510 高負荷向けの上位GPU

※「-」としているものは未測定
※レビュー機種によってスコアにばらつきがあります

このように、Core Ultraシリーズ1(Meteor LakeのH型番)やRyzen AI 300シリーズ(Strix Point)ではiGPUの性能が非常に高く、GeForce GTX 1650を上回るグラフィック性能を備えています。また、まだ搭載PCが販売されているRTX 3050との比較でも「肉薄する」レベルです。

ただし、これはあくまでも「3D Markというベンチマークテスト」の結果に過ぎず、個別のゲームタイトルでは必ずしもこれと同様の結果が出るとは言えません。

それと、RTX 5070のスコア( 製品レビュー記事 )を見ていただければ一目瞭然ですが、いかにiGPUの性能が上がったとは言え、最新のdGPU上位型番には歴然たる差をつけられているのも間違いありません。

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3. GPUは性能だけで選ぶものではない

iGPUとdGPUの性能差について見てきましたが、PCを選ぶうえで、GPUはあくまで構成要素の一つであり、ほかの条件とのバランスが重要であることは言うまでもありません。

dGPUを搭載するノートPCは以下のような特徴を持ちます(もちろん例外もあります)

・本体サイズが大きくなる(冷却機構や電源回路の都合)
・重量が増える(多くは2kg以上)
・バッテリー駆動時間が短くなる(dGPUは消費電力が非常に大きい)
・価格が高くなる(GPU非搭載機よりもざっくり数万円高い)

一方で、iGPU中心のノートPCには以下のような特徴があります。

・軽量・薄型モデルが多く、携帯性に優れる
・ファンレスや静音設計の製品もある
・長時間のバッテリー駆動が可能
・価格が比較的安価で、手に取りやすい

たとえば、毎日PCを持ち歩く営業マンが、高性能なPCを使いたいからと言ってGeForce RTX搭載機を使うのは現実的とは言えません。一方で、自宅でじっくり作業をするのなら、重量や消費電力よりもパフォーマンスが重視されるでしょう。

また、クリエイター用途でも、必ずしもdGPUが必要とは限りません。YouTube用のFHD動画編集や、それほど複雑でない画像加工程度であれば、最新のiGPUでも実用に足りるケースが増えています。ちなみにウインタブでも記事執筆のために簡単な画像加工をしますが、ウインタブ程度であれば(なんなら)Intel N100(Intel UHD Graphics内蔵)でも特に不自由は感じません。

つまり、GPUは「いかつければ(超高性能であれば)いい」というものではなく、「どこで」「どのように」「どのくらいの負荷で」使うのかという観点から、他の要素とのバランスで選ぶべきパーツと言えます。

4. まとめ -「本当に必要か?」を問い直す

これまで述べてきた通り、かつては「ゲームや動画編集をするならdGPUが必須」とされていました。しかし、ウインタブで最新のノートPCをレビューしていて「それってもはや常識とは言えない」と感じることが多いです。最新のiGPUは、旧世代のエントリーdGPUに匹敵し、軽量ゲームやFHD動画編集、画像処理であれば「dGPUなし」で完結できるくらいの実力があります。

「念のため」「将来のため」という理由でdGPU搭載機を選ぶ、というのは間違いではありません。でも、結果として大きくて重く、高価なPCを持て余す可能性もあります。

もちろん、AAAゲームや高度なAI処理、VRといった用途ではdGPUの力が不可欠です。また、ウインタブ的に「ロマン」の話をすると、「GeForceっていいよね!」という漠然とした思いもあり「だからPC選びって楽しいのよね!」というのもわかります。わかりすぎます。

とは言え、dGPU搭載機にはサイズとか価格といった、用途によってはネガティブな要素もありますし、iGPUで十分対応できる場面は確実に増えています。

この特集は「スペック信仰に待った!」ですから、そのテーマに合わせてまとめると「iGPUの進化を正しく知り、自分にとって「ちょうどいい性能」のPCを選びましょう!ということです。

5. 関連リンク

スペック信仰に待った!記事一覧

執筆者:ウインタブ
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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