前回の続きとして、2025年前半時点でのノート向けCPUの特徴を見ていきます。後編は旧世代のバリュー製品向けCPUとなります。なお、前編では最新CPUについて説明していますので、こちらもあわせてご覧ください。

現在の最新世代は、電池持ちの改善とCopilot+PCへの対応が焦点になっており、電池持ちが旧世代の1.5~2倍に達する製品が多く出ています。とにかく電池持ちを重視したいという方は、最新世代のLunar lake等から選ぶことをお勧めします。


CPU世代別のノートPC各機種の実測実用バッテリー持ち分布表。データは当サイトの実機レビューのほか、実用環境でのバッテリー持ち実測テストを行っているレビュワーとして、notebookcheckさんとthe比較さんの比較的新しいレビューを参考にしました。
逆にここを重視しないのであれば、旧世代のバリュー品でも最新世代と極端に差があるわけではありません。性能面で見れば純粋なベンチマーク性能の差は10~20%の範囲内ですし、その差が直に体感時間に反映されるような、PCの使用中ずっとファンがフル回転するような使い方をしている人はそう多くはないでしょう。各コアの不稼働時間の多い「ネットとオフィス」用途であれば、前世代CPU搭載のバリューモデルでも体感差は小さく、コスパで選んでも問題はないでしょう。
2025年現在バリュー製品として発売されている前世代CPUには以下のようなものがあります。
・Meteor lake:快適な性能で、電池持ちはまあまあ。
・Zen 4世代:快適な性能で、電池持ちはまあまあ水準。
・Raptor lake:快適な性能だが、グラフィックは弱く、電池持ちは最新世代と比べると見劣りする
・Zen 3+世代:快適に使えるが全体的にワンランク落ちる。
目次
Meteor lake (Core Ultra 100H, 100U)
・快適なCPU性能、高めのグラフィック性能、そこそこのバッテリー持ち
ここがイマイチ:
・最新世代からは全体的に少しずつ劣る。Copilot+PCも非対応
・Cinebench 2024 シングル: 90-110
・Cinebench 2024 マルチ: 500-1000
・Crossmark: 1400-1900
・Time Spy Graphics: 3000-4200
・バッテリー実測: 6-10時間
・価格帯(2025春): 11万円~、10万円台から20万円台まで分布
Meteor lake (Core Ultra シリーズ1)は2023年末から発売されており、コア数の多い100Hシリーズと少なめの100Uシリーズが発売されています。最新CPUのArrow lake-U (Core Ultra 200U)は100Uシリーズを若干改善したものになります。
Core Ultra 100Hシリーズは、性能は”普通に高い”と言える範疇で、最新世代のArrow lakeと比べて若干落ちる程度で、マルチスレッド性能だけならCore Ultra 100HシリーズはCore Ultra 200V (Lunar lake)やSnapdragon X Plus/無印 (コア削減版)を上回ります。グラフィック性能も高めでポータブルゲーミングPCの初代MSI Clawに採用された実績もありますが、Time Spyの数字が良好でも実ゲームではいまいちFPSが伸びない傾向があり、同世代ならZen 4世代のほうがゲーム向きです。
Core Ultra 100Uシリーズはコア数が少なくマルチスレッド性能も落ちます。さらにグラフィックコアも半減になっており、事務用中心になるでしょう。以前の検証記事でも書いたのですが、Meteor lakeは相対的にEコアが弱いので、Pコアが多い100Hシリーズは悪くないのですが、Eコア比率が高い100Uシリーズは微妙というのが個人的な評価です。[200Uシリーズではこの部分が改善されているようですが、100Uシリーズは製造工程やソケット互換性の都合200Uシリーズへの衣替えはしやすいので、比較的早期に置き換わるのではないかと思います。
バッテリー持続時間は、平均を取れば型落ちCPUの中では良い程度で、機種間のばらつきに埋もれる水準のため実機レビューをちゃんとチェックしたほうが良いでしょう。最新世代のLunar lakeやSnapdragon Xが「どれを買っても長時間駆動する」と言い切れるのに比べれば短くなります。最終的にはMeteor lakeを選ぶかどうかは価格次第でしょうか。
Zen 4世代 (Ryzen 7040, Ryzen 8000, Ryzen 200)
・全般に高いCPU性能、高めのグラフィック性能、そこそこのバッテリー持ち
ここがイマイチ:
・最新CPUに比べ性能がちょっとずつ低い。Copilot+PCも非対応
・Cinebench 2024 シングル: 95-110
・Cinebench 2024 マルチ: 600-1000
・Crossmark: 1500-1900
・Time Spy Graphics: 2000-3200
・バッテリー実測: 5-9時間
・価格帯(2025春): 8万円~、中心は10万円台
ノート用のZen 4世代Ryzenは2023年から発売されており、Phoenix / Phoenix 2 / Hawk Point というマイナーバージョンがあります。現在市場にあるのはHawk Pointに該当するRyzen 8000シリーズで、これからそのリブランディングであるRyzen 200シリーズが増えていくでしょう。
最新世代と、Coilot+PCに対応していない以外は、CPU・GPU性能ともに全体的に少しずつ低い程度で、PCMark 10も7000点前後になる製品が多く一般的用途ではトップクラスの性能ですし、GPU性能もハンドヘルドゲーミングPCで好評を博したZ1 Extremeと同等で、重いゲームも画質を落とせばギリギリ遊べるなど、モバイルPC向けとしては最も高い部類に入ります。Ryzen 200という名前は「Ryzen AI 300と比べてAIがなくて性能がちょっと低い」という実態をうまく表しているように思います。
バッテリー持続時間は”悪くない程度”で、最新世代のLunar lakeやSnapdragon Xが「どれを買っても長時間駆動する」と言い切れるのに比べれば短くなりますが、Meteor lakeや後継のRyzen AI 300シリーズと同程度で、Raptor lakeと比べると平均値では上になりますが、機種ごとのばらつきに埋もれる程度なのでここを重視するなら実機レビューの確認は必須です。
Ryzen AI 300シリーズと比べた場合、限界まで速くはないですしやCopilot+PC対応では違いがあるものの、「ネットとオフィス」中心ならばさほど差はありません。それでいて類似製品の販売価格では5万円ほどの差がついている場合がしばしばあり、個人的には価格性能比(コスパ)で考えてこちらの方に食指が動くことが多いかなと思います。
Raptor lake (Core 第13世代, Core 100U, Core 200U, 200H)
・現在でも十分通用するCPU性能を持つ
ここがイマイチ:
・バッテリー持ちは最新世代と比べると見劣りする
・Cinebench 2024 シングル: 90-110
・Cinebench 2024 マルチ: 400-900
・Crossmark: 1400-1900
・Time Spy Graphics: 1400-1600
・バッテリー実測: 4-7時間
・価格帯(2025春): 7万円~、中心は10万円台
ノート用Raptor lakeは2023年から発売されており、Intel第13世代として「Core ix-13xxxH」「Core ix-13xxP」「Core ix-13xxU」という名前で販売されているほか、微調整したバージョンが「Core 1x0U」「Core 2x0U」「Core 2x0H」という名前にリブランディングされています。後者はCore Ultraシリーズと間違いやすいですが、Ultraがないのと、数字の1桁目が0である(Ultraは数字1桁目が5)あたりを目安にして区別するとよいでしょう。
Raptor lake、特に13000Hシリーズ/Core 200Hシリーズは、CPU性能の面では新しい世代と比べて見劣りせず、電力制限が厳しくないならMeteor lakeとも互角です。グラフィック性能は最新世代の上位機種と比べれば半分ですが、「ネットとオフィス」用途なら十分な性能があります。
Raptor lake世代のはっきりした弱点はバッテリー持ちの悪さで、実測値の平均は今回比較したCPUの中では一番短くなっています。持続時間重視のチューニングをした機種なら7~8時間持つものもないことはないですが、バッテリー持ちを重視するなら機種別の実機測定レビューをよく見たほうがよいでしょう。
総じて、電源をつなぎっぱなしで使うことが大半でバッテリー持ちを重視しない場合には、価格が下がったRaptor lakeはコスパのいい選択肢になりえるでしょう。10万円弱のミニPCでもそこそこ見かけ、同世代のデスクトップ版の無印と比べてもCPU性能は遜色なくGPU性能はむしろいいので、エントリー向けデスクトップから市場を奪う形で勢力を伸ばしています。このほか第12世代Alder lakeの在庫処分もまだ散見されますが、こちらはRaptor lakeと基礎設計を共有しており、Raptor lakeより性能・バッテリー持ちがちょっと下がったものと見なして構いません。
Zen 3/Zen 3+世代 (Ryzen 5000, Ryzen 7030 / Ryzen 6000, Ryzen 7035)
・ネットとオフィスなら十分快適な性能
ここがイマイチ:
・現在発売されている製品中では一番古いグループ
・Cinebench 2024 シングル: 85-95
・Cinebench 2024 マルチ: 350-800
・Crossmark: 1200-1700
・Time Spy Graphics: 1500-2500
・バッテリー実測: 4-8時間
・価格帯(2025春): 7万円~、中心は10万円台
ノート用Zen 3であるCezanneは2021年にRyzen 5000シリーズとして発売され、その後リフレッシュ版のBarceloがRyzen 7030シリーズとして発売されています。2022年にはそれに改良を施したZen 3+世代のRembrandtがRyzen 6000シリーズおよびRyzen 7035シリーズとして発売されています。
CPU性能面で見るとさすがに最新世代からは一段劣り、Raptor lakeにも一歩届かない程度ですが、ブラウザーとOfficeを使っている限りは十分快適な性能でしょう。Zen 3+のRyzen 7035はグラフィック性能が強化されており、AAAタイトルは厳しいですが古いゲームならそこそこ遊べるでしょう。Zen 3のRyzen 7030はCPU・GPUとも性能がさらに低くなりますが、やはりブラウザーとOfficeを使う程度なら十分です。バッテリー持ちに関してはさすがに新しい世代と比べるとかなり差があるのは否めません。
現在は、これらを搭載したノートPCが大手メーカー製品の特価品枠で売られていることが多く、特に10万円行くか行かないか程度の価格帯のものが価格比較サイトでは人気になっています。このほか似た価格帯でミニPCが多く出ており、これらはデスクトップPCの市場を奪う形で勢力を伸ばしています。ただZen 4世代が相応に安いので、現在はそちらがライバルであるようにも見えます。
Alder lake-N (N100等)、Twin lake (N150等)、Mendochino (Ryzen 7020)
・Cinebench 2024 シングル: 60前後
・Cinebench 2024 マルチ: 200-300
・Crossmark: 750
・Time Spy Graphics: 300-500
・バッテリー実測: 4-7時間
・価格帯(2025春): 4万円~、中心は7万円前後
おまけとして当サイトで取り上げることの多いAlder lake-Nにも触れておきます。
Intelの型番Nのシリーズは、ネットブックのほかNASやサイネージなどの組み込み用途を想定したブランドラインですが、その最新世代に当たるN305やN100などAlder lake-N、およびそのリフレッシュ版であるN355やN155などTwin lakeと呼ばれる製品群は、「パソコンとして使える最低ライン」程度の性能は有しネット閲覧やOffice作業は問題なくできるので、以前から最廉価エントリークラスのWindowsミニPC用CPUの定番になっています。機種も豊富でNAS運用前提のものなど面白い商品もあります。ノートやタブレットでもまま採用例があり、最近新規リリースになった機種すらあります。
AMDはこれに対抗する形で、元々2020年に発売していたZen 2世代のカットダウン版をRyzen 7020シリーズ(コードネームMendocino)として投入しました。こちらは採用数があまり伸びませんでしたが、2025年でもまれにセール品に入っていたりします。
どちらのCPUもノートPCでは4万円台から製品がありますが、5万円台以下の場合はCPU以外の部分の品質が厳しいものが多いです。実用レベルのWindowsノートになるとの7万円くらいですが、これはRaptor lakeやZen3世代の特価品と同じ価格帯で、そちらのほうが性能が2ランクほどいいため、現状こちらのエントリークラスCPUは選択肢にはなりにくいという印象です。
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