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もはや懐かしいARM版Windows、WinRT搭載タブレットは今でも使えるのか?Office専用機として使うなら今でもいけそう(かのあゆ)

Windows RT
こんにちは、かのあゆです。当初の発表から少し遅れてしまったものの、ようやくLenovoよりQualcomm Snapdragon 855を搭載したLenovo Yoga C630が発売されました(しかし、5月5日現在直販モデルは販売されていないようです)。
Lenovo Yoga C630 - Windows on Snapdragon!の13.3インチコンバーチブル2 in 1、いよいよ日本での販売がスタート !

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数多くのPCで採用されているIntel x86プラットフォームではなく、Androidスマートフォン/タブレットで採用されているARMプラットフォーム向けに移植されたWindows 10が動作しています。実は今回のYoga C630以前にも日本国内でARM版Windowsを搭載したタブレットやノートパソコンが一応存在したのです。

1.Windows RTとは

フルバージョンのWindowsをARMプラットフォームに移植するという試みはWindows 10が初ではなく、2011年にリリースされたWindows 8時代にも一度「Windows RT」として登場しています。当時サポートされていたCPUはQualcomm Snapdragon S4、NVIDIA Tegra 3/4、Texas Instruments OMAP 4470で、端末メーカーとしてはNEC、ASUS、NOKIA、Dell、Lenovo、Samsung、そしてMicrosoft自身が参入していました。

日本国内で販売されたタブレットは以下の通りになります。
Microsoft Surface RT/2
ASUS VivoTab RT
NEC Lavie Y

このうちSurface RT/2とVivoTab RTはタブレットタイプ、Lavie Yは2in1タイプのノートPCとして出荷されました。

海外ではこのほかSamsung ATIV Tab、NOKIA Lumia 2520、Dell XPS 10、Lenovo IdeaPad Yoga 11が製品として投入されていました。

2.Windows RTの特徴

RT 8.1 Update 3適用後のデスクトップ。一見するとIntel版Windowsとの見分けがつかない
Windows RTは現在のARM版Windows 10同様、Intel x86互換CPUよりも消費電力に優れたARM系CPUで動作し、UI的には通常のWindows 8/8.1と同じものを搭載したれっきとしたフルバージョンのWindowsです。

そのため、完全にスマートフォン専用OSとして設計されたWindows Phone/Windows 10 Mobileとは異なり、一般的なパソコン向けOSと同じくデスクトップモードも備えており、Windowsに標準で含まれているメモ帳やレジストリエディタ、コマンドプロンプトといったアプリも含まれていました。

また、Intel x86版Windowsとは異なり、Microsoft Office 2013が標準で付属しているのも大きな特徴の一つです。

プラットフォームの違いでマクロやアドインなど一部サポートされていない機能もあるものの、基本的にはPC版Microsoft Office 2013に準拠したものになっており、海外で販売された端末には個人利用のみ可能な「Home & Student RT」が付属していましたが、日本国内で販売された端末に関しては商用利用も可能な「Home & Business RT」が付属していました。

3.商業的には成功しなかった

これだけ見るとかなり魅力的なプラットフォームのように思えるのですが、残念ながらWindows RTは商業的には失敗に終わり、昨年ARM版Windows 10が“再登場”するまでARM向けフルバージョンWindowsの系譜は一度途絶えることになります。

ARM系CPUはもともとスマートフォンやタブレットだけでなく、組み込み機器でも利用できるように設計されているCPUだけに、当時のIntel x86系CPUと比較した場合、省電力性には優れていたものの、Intel版Windows向けアプリケーションを動作させるために必要なエミュレーション技術を実装できるだけのパフォーマンスをWindows RTが登場した時点では持ち合わせていなかったこともあり、動作するアプリはWindows Storeで配信されている「ストアアプリ」に限定されていました。

Windows Storeで配信されているアプリの数が豊富であればこの点は問題にならなかったかもしれませんが、残念ながら当時のWindows Storeで配信されているアプリの数は当時のiOS向けApp StoreやAndroid向けGoogle Play Storeと比較すると非常に貧弱でした。

デスクトップモードは前述の通り備えているものの、こちらで動作するアプリは開発者には解放されておらず、単純にWindows標準アプリとMicrosoft Office 2013 RTを動かすだけの環境になってしまっているという中途半端な仕様も微妙さっぷりに輪をかけてしまいました。

さらにタイミングが悪いことに、以前はパフォーマンスが微妙といわれていたIntel AtomがBayTrail/CherryTrail世代になって優れた省電力性を維持したままパフォーマンス面でも通常のWindowsを動作させるには十分なレベルに達したことや、Microsoft自身がWindows 8.1 with Bingとして端末メーカーにWindowsのライセンスを無料、あるいはそれに近い価格で提供したこともあり、結局Microsoft以外のメーカーは早期のうちにWindows RT搭載端末の販売から撤退しました。

Microsoft自身もWindows RTを搭載したSurface RTでは900億円の現損を計上した結果、NVIDIA Tegra 4に強化されたSurface 2を最後に、後継モデルであるSurface 3以降から低価格モデルでもIntel CPUを採用し、Windows RT搭載端末の販売は終焉を迎えました。

4.Windows RT搭載端末の現状について

商業的には失敗してしまったWindows RTですが、Windows 8.1のリリースと同時にこちらもWindows RT 8.1へアップデートされ、Microsoft Office 2013 RTに初期バージョンでは含まれていなかったOutlook 2013 RTが追加されています。

さらにメインストリームサポート末期にはIntel向けWindows 8.1では提供されなかった「Windows RT 8.1 Update 3」がリリースされ、Windows 10の初期ベータ版に実装されていた仕様に近いスタートメニューが搭載されるようになりました。

現在はメインストリームサポートが終わっているため、この先の機能拡張は望めないものの、Intel版Windows 8.1同様各種セキュリティアップデートが受けられる延長サポートに関しては2023年1月10日まで続きます。

皮肉にもこの後登場したスマートフォン向けWindows 10 Mobileは今年12月10日で終了するため、それより先に端末の販売が終了したWindows RT 8.1搭載タブレットのほうがより長くセキュリティアップデートを受けられることになります。

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端末自体も初代Surface RTであれば中古販売価格が6,980円~と非常に購入しやすい値段になっていますが、店舗によってはIntel版Windows搭載タブレットとの違いについての説明を受けるかもしれません(見た目が通常のWindowsを搭載したタブレットとほぼ変わらないため、一般のパソコン向けアプリが動作しないWindows RT搭載タブレットを間違って購入しないようにするために仕方ないのかもしれませんが…)。

中古価格6,980円。Office 2013を購入したと思えば安いかも・・・?
かのあゆも2019年現在Windows RT搭載タブレットがどこまで実用的に使えるのか検証するために初代Surface RTを購入してきました。

WEBブラウジング自体は今でも意外と普通にこなせる。ただしメモリ不足で落ちるページも・・・
現在でも標準搭載されているMicrosoft Internet Explorer 11(デスクトップ版、ストアアプリ版)でのWEBブラウジングは普通に行うことができます。ただし、CPUがNVIDIA Tegra 3で搭載RAMが2GBと今となっては貧弱なスペックであるため、メモリ不足で正常にWEBページが表示できないケースも多かったりします。

またInternet Explorer 11自体の開発が終わってしまっているため、今後2023年のサポート終了までWEBブラウジング専用端末として使っていけるかどうかは少し不安が残ります。一応Chromiumベースとなった新Microsoft Edgeが既存のWindows 7/Windows 8/Windows 8.1向けにリリースされる予定ではあるものの、おそらくARMプラットフォームを採用したWindows RT 8.1は対象外になりそうです。

Microsoft EdgeがChromiumベースに!デベロッパー向けプレビューも配信開始。Microsoftの独自エンジンは終了へ(かのあゆ)

Officeは今でも快適。
Microsoft Office 2013 RTは現在でも快適に利用可能です。前述の通り一部サポートされていない機能はあるものの、基本的に機能面ではほぼMicrosoft Office 2013そのものなのでOffice文書の作成に関しては2019年現在でも大いに活躍してくれそうです。

また、Microsoft OneDriveとの連携機能も利用可能なので、自宅ではWindows 10環境で作業し、出先でWindows RT搭載タブレットを取り出してドキュメント編集の続きを行うことも可能です。Microsoft Officeはサブスクリプション向け製品であるOffice 365を除けばそれ自体が2万以上する高価な製品なので、ハードウェア込みで6,980円で購入できると思えば今あえて購入するというのも悪くはないかもしれません。

アプリ環境を構築するのは厳しいかも・・・
ストアアプリに関してはWindows RT発売当初もラインナップ的にソフトウェアが出そろわず微妙でしたが、現在ではさらに悲惨なことになっており、当時サポートされていたFacebookやTwitter公式アプリはすでにWindows RTのサポートを終了済みで、旧バージョンのダウンロードすら不可能な状態になっています。

Photoshop ExpressやAdobe Readerなど、一部のアプリに関してはまだWindows RTをサポートしているものの、これらのアプリに関してもいつWindows RTのサポートを打ち切るのかわからない状況です。TwitterやFacebookは最悪Internet Explorer 11経由でアクセスすれば問題ありませんが、個人的に痛いのはGIMPに代わる、Windows RTでもサポートされている画像編集ソフトがない点でしょうか。

ゲームアプリもゲームロフトの「Asphalt 8」など、まだWindows RTをサポートしているものもあるものの、本数に関しては以前よりもさらに減っている印象です。

Windows RT搭載タブレットが発売した2012年当時もそうでしたが、後継OSであるWindows 10が発売され、Universal Windows Appsが登場した今となってはWindows RTで実用的なアプリ環境を構築するのは厳しくなっている印象です。

5.まとめ

現在ではかなり安価な価格で中古が出回っているWindows RTタブレットですが、これまで書いてきたとおり、2019年現在では対応アプリの本数もかなり減っていることもあり、アプリを入れて実用的に使うのはかなり厳しい状況です。

タブレットとして本格的に使いたいのであればIntel版Windowsを搭載した“普通の”タブレットか、あるいはAndroidタブレット、iPadを購入した方が幸せになれると思います。ただMicrosoft Office専用タブレットとしては今でも十分実用的に利用可能なので、低価格で購入できるOffice専用タブレットとして運用するのであれば悪くない選択肢でしょう。

2023年1月のサポート終了まではWindows RT本体、Office 2013 RTのセキュリティアップデートが配信されますので、メインのパソコンと併用して使うサブタブレット的な利用方法が一番無難かもしれません。

久しぶりに日本で復活したARM版Windowsを搭載するLenovo Yoga C630は搭載されているCPUが大幅にパフォーマンス向上したSnapdragon 850を搭載していることもあり、32bitアプリに限定されるもののIntel版Windows向けのデスクトップアプリも動作可能でWindows RTの弱点を克服しています。

ただ現状の価格に関してはIntel Coreシリーズを搭載したWindowsタブレットと比較しても高価なこともあり、当時4万円台から購入できたWindows RTタブレットから大幅にコンセプトを変えてきたのかなというのが正直な感想です。

「ARMで動くフルバージョンのWindows」は個人的にはロマンを感じているので、ARM版Windows 10に関しては今度こそ成功してほしいと思います。

6.関連リンク

Windows RTの未来は明るいのか? - 海外メディアから
紗々っちネーション(かのあゆ個人ブログ)

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コメント

  1. なお より:

    大量に仕入れたらすごく安くなるので、(更にゲームとかで遊ばないように)新入社員研修用に配ってる企業もありますよ

    RT2は、flash対応なので泥版が出る前くらいには、艦これおじさんに人気でした
    (RT2+WiMAXで運用)

  2. 匿名 より:

    WEBとYoutubeが見られ、ARMとx86版の両方がありソース置いてあって弄れるPPSSPPはRTでも動かせる様になるそうなので初代は無理でもTegra4を積んだ2ならホテルに泊まった際の暇つぶし端末としてはワンチャンあり

  3. 匿名 より:

    無印Windows RTはもうWindows RT 8.1にあげる術はないのでしょうか?