こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。先日記事にしたライター募集の件ですが、何名かの方にご連絡をいただいております。いきなりなんですけど、さっそくライター「トモタカさん」の記事を公開いたします。この方と記事投稿の打ち合わせをしている中、「ウインタブさん、Buildっすよ、Build。とりあえず記事書きますからよかったら掲載して下さい」ということで原稿を送ってこられました。こちらも面食らってしまったのですが、内容は素晴らしく、私には書けない方向性の記事なので、大歓迎させていただきつつ掲載します。
目次
1.//Buildとは
//Buildとは、Microsoftが毎年サンフランシスコで開催している開発者向けイベントです。通常はC#などのプログラミング言語や、Microsoft AzureやVisual Studioといった、プログラマー向けの新情報が発表されます。
しかし、今回の//Build 2016はちょっと様子が違いました。開発者向け情報が例年に比べて少なめで、一般ユーザも影響を受けそうな項目がいくつも発表されたのです。この記事ではウインタブ読者に向け、//Build 2016 1日目基調講演よりMicrosoftが示す近未来をご紹介します。
2.Cortana(コルタナ)の大幅進化
今回の発表で最も多くの時間が割かれたのは、Cortanaでした。Cortanaとは音声アシスタント機能で、よくiPhone/iPadのSiriと比較されます。Windows 10に向かって「ハロー、コルタナ」と呼ぶと自動的に起動して、こちらの質問に応じて、アプリを起動したり、今日の天気を教えてくれます。
ロック画面からCortanaにアクセスできるようになりました。
Android版のCortanaも実演されました。
Outlookの操作もCortanaで行えます。会話で添付ファイルの中身を検索したり、
予定の変更を命令すると「その時刻には、既に予定が入っていますが?」と聞き返してくれます。
メール画面もCortanaから……開けますが、テキストはキーボードで入力しなければならないみたいです。今後の進化に期待です。
SkypeでCortanaと会話。ホテルの予約を行っています。
3.Microsoft Edgeのパスワードログインを、生体認証で
Windows Helloがアップデートされました。これはWindows 10に搭載された生体認証機能です。顔認識や指紋認証でWindowsにログインする事ができます。このWindows HelloがMicrosoft Edgeにも搭載されました。
ウェブサイトでパスワードを入力せずに、生体認証で一発です。ちょっと見えにくいですが、右手の人差し指を、Surfaceキーボードの指紋認証にかざしています。
4.ペン機能の強化
デジタル定規が追加されました。
今まではぐちゃぐちゃの線しか描けませんでしたが
デジタル定規を使えば、きれいな直線を描けるように。
PowerPointでも使えます。
雲形定規も搭載されました。Illustratorで正確な曲線を引けるようになりました。
5.マップに機能追加
マップにも新機能が。ちょっと見えにくいですが、地図上に引いた線から距離を計測できます。
富士山のような高低差があっても一瞬で計測可能のみならず
3D表示で高さも分かりやすく見ることができるようになりました。
6.Wordなどの機能追加
文章修正機能もアップデート。Word上でザザッと打ち消し線を書くと、その部分の文章を削除してくれます。
ラインマーカーでぐにゃぐにゃにマーキングしても
きれいに整形してくれます。
手書きの文字を認識して、Cortanaで応答させる機能も発表されました。
7.新発表! Win32アプリ→Windowsストアアプリに変換機能
Desktop App Converter が発表されました。これは旧来のデスクトップアプリを、Windowsストアアプリに変換するソフトウェアです。
1600万以上存在するWin32アプリを、簡単にストアアプリに移植可能に。
8.Holo Lensの出荷発表と実演
MicrosoftのVR機、Holo Lensが出荷開始です。
パッケージのお披露目です。
医療系ソフトウェアのデモです。3Dの人体模型を透視して、共有しています。
このデモ、3名で行っています。会場の2名に加え、遠隔操作のオレンジ色の人が参加しています。離れていても同じ視界を共有できます。
今回の映像でHolo Lensの視野角が明らかになりました。数値公表はまだですが、どうも視野角は狭いようです。
販売価格は$3000。日本円で約33万円で、しかも注文には審査が必要です。まだまだ一般ユーザの手に届くまで時間がかかりますね。しかし、将来的にWindows Phoneやタブレットと連携して、新しいアプリの幅が広がるのが楽しみです。
9.BOTと機械学習でチャットを便利に
Microsoft Bot Framework が発表されました。
BOTとはロボットの意味です。会場ではドミノピザの BOT が紹介されました。
チャットでピザ注文について質問すると、会話を解析して、自然な返答をしてくれます。もちろんチャットから注文もできます。
在庫がない場合、店舗システムと連携して「注文できないよ」と返答してくれます。賢い。将来的にはいろいろなチャットサービスを通して、会話から商品の購入や予約ができるようになるでしょう。
10.Windows 10のアップデートは今夏予定
ここまで書いた機能は、まだWindows 10に搭載されていません。今夏のWindows 10のアップデートで、いくつかの機能が使えるようになると思われます。
11.ある盲目のプログラマーの日常
ある盲目の男性は、特殊なメガネを使って、日常の障壁を乗り越えています。
メガネが路上の危険を知らせたり
会話相手の情報を教えてくれます。
実はこの男性、Microsoftで働くプログラマーです。動画は架空の未来の話ではなく、いま起きている事だったのですね。
「可能性を想像しよう。」//Build 2016 基調講演は、このキャッチコピーで幕を閉じました。Microsoftが提唱する未来が、少しだけ垣間見えたイベントでした。発表された新機能は順次公開されていくそうです。Windows 10やWindows Phoneで使えるようになるのが待ち遠しいです。
12.総括
個人的に印象的だったのは、Desktop App Converterです。Win32アプリケーションをWindowsストアアプリに移植できたら、膨大なソフトウェアがWindowsストアで選べるようになります。
実際は開発者が変換作業をしなければなりません。とはいえ、過去の制作ソフトを簡単に変換できるなら、たいしたものです。
一方で、Vectorのようなソフトウェア頒布サイトの未来が心配になりました。Windowsストアはスタート時の不調が影響し、旧来のWindows向けソフトウェア頒布サイトは安泰でした。しかし今後はその状況が変化するかもしれません。
Windowsストアが充実するのは良い事ですが、アクセス数減少により旧来の頒布サイトが閉鎖し、それに巻き込まれる形で自然消滅するソフトが出ないか心配です。
また、自然言語解析とBOTを組み合わせた、Microsoft BOT Frameworkも興味深いです。現在公開されているのは英語版ですので、日本語対応はまだ先と思われます。しかし将来的に対応言語も広がるでしょう。チャットの自然な会話から、物品の注文や質問が行えるようになれば、とても便利です。
反面、サポートセンターや電話窓口の人々は職を失うかもしれませんが……。
さて、当エントリーは非技術者向けに//Build 2016 1日目基調講演を紹介しました。 当記事では一般ユーザに関連の深い内容を記しましたが、LinuxのbashシステムをWindowsに移植した発表など、開発者向けの発表も多数行われました。
//Buildは3日間続きます。4月2日まで様々な新情報が公開される事でしょう。いくつかの生放送は無料で閲覧できます。最新情報・最新技術をいち早くチェックしたい人は、自身の目で発表中継をご覧になってはいかがでしょうか。
13.関連リンク
Build 2016:Microsoft公式サイト(英語)
コメント
面白かったです。
デスクトップアプリがある限りは、頒布サイトは無くならない気がしますけど、どうでしょうかね?
すぐに野良のソフトウェア頒布サイトが消える事はないでしょう。野良サイトにも重要な役割がありますし、例えば窓の杜のようにレビューを主体とするサイトならば、重要性は高いです。
一方で、Vectorを名指ししたのにはもう一つ理由があります。経営状況が悪いのです。3月18日には株主優待制度の休止も発表されました。
http://ir.vector.co.jp/library/settle/
Vectorの経営難はゲーム事業の失敗が要因ですが、Windowsストアの隆盛により、じわじわとアクセス数・売り上げは落ち、ダメージになると予測しています。なにより昨今のMicrosoftの戦略を受けて、Vectorの投資家は渋い対応になる事には違いありません。
デスクトップアプリがある限り、頒布サイトは必要なのは事実です。とはいえ、ただ頒布だけを行うサイトは、Windowsストアがデファクトになったとき厳しくなるのでは。という程度には考えています。
Vectorは頑張って起死回生の一発を放って欲しいです。
Windows BridgeはProject Astoria(泥アプリ移植)が頓挫して
最近良い噂を聞かないのでがんばってほしいっすね
とりあえずをProject CentennialをDesktop App Converterとして発表までこぎつけたのは素直に喜びたい
しかし一番リリースに時間要すると言われているので、これからが勝負ですね
CentennialはWindows Bridgeの中でも本丸ですし
UWPの命運がかかっているので、Astoriaの二の舞は許されないと思います
Project Astoriaが頓挫したのは残念ですが、私としてはある種の納得感があります。凄い速さで進化するAndroid/iOSを追いかけて移植するのは技術的に難しいし、戦略としても不思議です。
昨今の流れを見るに、IslandwoodやWestminsterを横目に起きつつ、Xamarinや.NET COREの成長に賭ける方向にシフトしているように見えます。Microsoft系技術→Android/iOS and Windowsの出力の流れを作り出そうとしている。と勘案しました。
Desktop App Converterは、基調講演の中では少ししか触れられませんでした。実際の完成度はどうなのか。続報に注目しています。
デスクトップアプリがストアアプリにコンバートできても従来の販売サイトは継続するでしょう。
PC設定やバックアップのユーティリティや内部までがっちり保護するようなセキュリティ対策ソフトなどは構造上ストアアプリ化できないことや、Windows Phone系の開発やストア登録を試した人なら解りますが、iOS以上に制約があります。特にアダルト系は家庭用ゲーム機並にリジェクト(審査不通過)されます。
Windows BridgeがiOS主体になりましたが、アプリの操作の統一性やそういったWondows Phoneの強固なセキュリティポリシーやストアの倫理的な面からしてもAndroidからの移植は思ったよりもメリットは小さかったかも知れません。
iPhone みたいにWindows 10 (Mobile)でも待機状態からのコルタナ起動、それもデスクトップPCもできるようになればいろいろ楽になりそう。
今までの情報をオーバーレイする程度のVRメガネと違ってリアル空間にバーチャルオブジェクトを配置するHolo Lens、とても魅力的ですがPepperよりも高くて審査有りの狭き門とは・・・。今までのVRメガネの後追いと思ってる人を驚かせながらちょっと頑張ればの普及期(機)が来るような今後に期待。
あと最後に出てる「ハンディキャップの方々向けのサポート機能」、GoogleもAppleもこのへんはあまり積極的には見えないのでMicrosoftが強力に推し進めて実用的な実装をできるようになれば「両悪色々あってでもやはりMicrosoftでないと。」と言う状況になるでしょうね。
訂正: 両悪 → 良悪
長文コメントの最後の最後に・・・(大汗)
ご指摘の通りだと思います。Windowsストアは審査が厳しく、登録の為の日本語情報も分かりにくいと感じています。私がWindowsストアにアプリ登録した時より日が経っているので、今は好転しているかもしれませんが。
なので、まだまだ野良(?)のソフトウェア頒布サイトにも重要な役割があると思います。
> ハンディキャップのある方へのサポート
たしかにMicrosoftがこのタイプの映像を公開するのは、これが初めてではありません。治具は長年の蓄積があって活用の幅が見えてくるものですから、MicrosoftとWindowsの継続的な取り組みが期待されますね。
すばらしい内容ですね。
外部ライター、悪く無いですよ!!!!
ブログ運営ますますアクティブになっていくのではないでしょうか。
今後も期待しています。
ありがとうございます。励みになります!
誤解があるので書きます。
デスクトップアプリコンバーターはただ単にexeやdllをまとめてパッケージ化しWindowsStoreで配布できるようにしただけの物です。なのでUWPアプリになるというのは少し誤解を生むと思います。10mobileでは動きませんし、使うAPIもWin32などが含まれています(ですが、パッケージ化することでUWPのAPIも使えるようになるらしい)
あとインク機能ですが、マイクロソフトさんは機能に「WindowsInk」と名前を付けたので、書いてくれると嬉しいです。(Wacomさんとも手を組んでひと暴れするらしいです。)
Build2016をライブで見ていますが、個人的にすごい機能(いや危険な・遊び心が走り出す)はBashが動くだと思っています。ぜひ記事に書いていただけると嬉しいです。
おおっ、ご指摘ありがとうございます。
私は本職ではデベロッパーですが、ウインタブはもっとライトな方々が読むのかなと思って、技術的な事は捨象して書きました。なので、正確な表現より平易で分かりやすさを重視しました。それにより誤解が生じたならば恐縮です。
Desktop App Converterについても、WindowsInkについても、全くご指摘の通りです。ありがとうございます。
Wacomさんとの協業の部分は初めて知りました。タレコミありがとうございます。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1604/01/news074.html
> Build2016をライブで見ていますが、個人的にすごい機能(いや危険な・遊び心が走り出す)はBashが動くだと思っています。ぜひ記事に書いていただけると嬉しいです。
私もDay1 Keynoteではbash移植が最も興奮しました。Day2でのXamarin無償化や、iOS Emulatorも凄かったですね。Service Fabricも面白い。私の今の開発メイン機はMac Book Proですが、Windows 10への移行が現実的になってきました。
bashについては、ニーズがあれば検討します。でも、私のウインタブ寄稿は、この記事が初めてです。テクニカル比重がどれくらいだと良いのか、ウインタブ本来の良さが活かされるのは、どういう記事か。まだまだ模索中です。ウインタブさんと相談しながら状況を見たいと思います。
PowerShellですべてを賄うのかと思ったら、そう来たか。
ExchangeやSharePoint、ADなんかを扱う人にはこれから先もPowerShellはなくてはならないものでありつづけるんでしょうが。
変態シェル芸集団がtwitterで歓喜の声を上げていました、、、、、、。
もう、嫌な予感しかしない。
MacってOSが嫌なんですよね。特に最近はメモリー管理が気に入らない。
MacってUNIXだからLinuxのアプリ開発にも使える(もちろんLinuxで実機テストはしますよ)ところが唯一のiOSアプリ開発以外の利点だったのに、bashで消えましたね。
これで、アプリの提出もMac必要なくなったら、Mac捨てるかも。
ザマリン使いたいけど、まだまだ資料が足りていないんだよな~。
UWPアプリも資料が足りていないせいで、ファイルの読み書きするだけでも大変。
既存のWindowsクラシックアプリからコードを流用がほとんどできないのが辛い。
せっかくLumia950xl買ってテスト環境をそろえたのに。
面白い。ほかのビルドの記事とは違う切り口で良い。
個人的にはBash 興味あります。
cygwinとかmingwでごそごそしなくてもよくなるのかーと。
Bashには期待しちゃいますよね、開発者としては。
ただ、cygwinの凄いところはコマンド群のトレースがわりかしマトモなところ。
Windowsベースのコンピュータで、どれほどの互換性を持たせてくるのかは期待を持ってウォッチしたいですよね。
Buildと言えば、今回のBuildの中ではWindows phoneに関する発表が皆無で、メディアによっては「リングにタオルが投げ込まれた」「見切った」とまで掛かれている有様。
Windows10になってからは日本でも一気に多種のモデルが発表される位に活気づきだしているのに、今回のBuildでWindows phoneについてほとんど触れられなかった事にはSNSのタイムラインでも不安や失望の声で溢れています。
この件についてウィンタブさんやトモタカさんなりの考察記事を読んでみたいです。
自分としては、マイクロソフトはどうにかUWPアプリを増やしたいんだと思います。Xamarinを無償化したりしているのは、C#で、iPhoneアプリを作ってもらい、一緒にUWPを作ってもらおうと考えているのだと、思います。
まずは、アプリを増やさないとWindowsPhoneは広まりませんから。
10 Mobileとしてはアップデートは継続しているけどまだスポットライトをあてられるレベルじゃないんでしょう。安定性しかり、機能しかり。
Windows Phone に関しては7.5の時と同様に日本先行でLumiaが少し後追いと過去のイヤな感触も感じながらも、前回と違って日本市場とはいえ複数社で多種多様なラインナップとHPが最上位と言って良い機体を出すことでユーザーとしては以前よりも不安は少ないです。
今回話が上がらなかった点は、やはりWIndows Phone 8系機体へのWindows 10 Mobileのオンラインでのアップグレードの提供が大幅に遅れたことや小規模の改良やバグ取りは順次進んでいる物の「あらためて発表する新機能や今後の新しい展望が特になかった」、と言うだけのことではないかと。
どちらかというとWindows Phoneがどうのよりも過去のWindowsや他のOS用のアプリケーションをWindows 10用やユニバーサルアプリに取り込むことを優先して相乗効果でWindows 10 Mobileへの注目度も上げたいのでは、と思います。