LenovoがThinkPad Xシリーズの最上位機種である「X1 Extreme」の2019年モデルを発売しました。高性能機ぞろいのXシリーズにあって、ひときわ高いスペックを誇る一方、X1 Carbon(2019)のような超軽量な筐体ではなく、やや大きめで重いサイズ感であるという点に読者の賛否がわかれそうに思います。
1.スペック
最初に言っておきますと、おそらく筐体は従来モデルと「ほぼ同じ」です(「ほぼ」というのは後述します)。サイズがピッタリ同じ(重量のみ従来モデルが10グラム単位まで表示され、ニューモデルは100グラム単位までの表示なので、表記は若干異なります)ですし、外観上も「ほぼ」差がわかりません。
しかし、主要構成も細かい部分も変更点がたくさんあります。まずCPUですが、第9世代のCore i5とCore i7に変更されました。ゲーミングノートにも使われている高性能CPUのCoffee Lake(型番末尾H)であるという点は同じで、vPro(法人など組織のPC一元管理に役立つ機能)対応のもの(Core i5-9400H、Core i7-9850H)を選択可能であるという点も変わりません。
GPUは従来モデルのGeForce GTX1050TiからGTX1650に変更されました。これはNVIDIAが新世代(Turing)のGPUをリリースしたことに伴うもので、自然といえば自然です。
RAMは最低で8GB、最高で64GBまで搭載でき、ストレージはSSDを2基搭載可能で、それぞれ最大で2TBまで選べるので、合計で最大4TBまで大きくすることができます。また、RAID0(ストライピング。データを分散させて保存するので読み書きが超高速)もしくはRAID1(ミラーリング。同じデータを2つのストレージに保存するので一方が故障してもデータは保持される)の設定もできます(無料)。
ただし、2TBのSSDというのはさすがに高価で、定価ベースだと「軽く20万円」かかります…。
ディスプレイは15.6インチと、Xシリーズとしては最大サイズで、解像度はFHDと4Kを選べます。FHDは2種類あって、一方が明るさ300nit(普通レベル)と500nit(非常に明るい。またHDR対応)を選べ、4Kのほうは有機ELディスプレイとなり、非タッチ、タッチ(後日追加予定)を選べます。特に4Kのほうで有機ELを採用しているという点と非タッチディスプレイが選べるようになったというのが変更点です。
入出力ポートも高規格です。2つのType-CポートはThunderbolt 3ですし、Type-Aの2つをあわせ、合計で4つのUSBポートを装備しますし、HDMIやSDカードリーダー(フル規格)も備えます。ただし、有線LANについては筐体にRJ45ポートはなく、アダプターを経由しての接続となります。
ThinkPad Xシリーズは「すべてモバイルノート」ですが、X1 Extremeのみサイズ感は微妙ですね。ディスプレイサイズが15.6インチということもあり、横幅は一般的なスタンダードノートと変わりません。薄型に仕上がっていますが重量も非タッチディスプレイのモデルで1.7 kgありますので、バッグに入れて毎日持ち運ぶのは少々しんどいと思います。
2.筐体
記事の冒頭に書いたように、この製品は従来モデルと全く同じサイズです。実寸を見てもモバイルノートというよりはスタンダードノート(半据え置き型のノートPC)という感じですね。スタンダードノートのジャンルでも、最新モデルの多くは横幅が360 mm前後になっていますし。
しかし、薄型であり、スタンダードノートとしてみれば軽量であるというのは間違いないです。モバイルノートとしてみると大きいし重いですけど。このへんはクルマ社会とは言いにくい日本(特に大都市圏)では微妙なサイズ感かもしれません。
従来モデルと「ほぼ」同じ、と書いたのですが、相違点もあります。天板ですね。おなじみの「黒無地」ではなく、カーボン調の模様が入っています。外観上の変更点はここだけだと思います。
キーボードです。15.6インチサイズながらテンキーはありません。
こちらは先日実機レビューした従来モデルのキーボードです。打鍵のしやすさは文句なしの水準だと思います。また、テンキーがないという点は賛否がわかれるところだと思いますが、個人的にはテンキーを装備することによりアルファベットキーが左にオフセットされてしまうよりは、この製品のようにテンキーを省き、自然なポジションでキーボード入力ができるほうが好みです。数値入力が多い人はテンキーつきのほうが歓迎でしょうけどね。
側面と入出力ポートの配置です。従来モデルから変更はありません。
ウインタブでは従来モデルを実機レビューしています。筐体はほとんど変わっていませんので、従来モデルの実機レビュー記事も参考になると思います。
Lenovo ThinkPad X1 Extreme レビュー - 抜群の使いやすさにゲーミングノートの性能!さすがはThinkPadシリーズのフラッグシップ!(実機レビュー)
3.価格など
Lenovo ThinkPad X1 Extreme(2019)はLenovo直販サイトで販売中で、7月21日現在の価格は税込み199,022円から、となっています(週末セール価格)。
ThinkPadの中でもハイエンドモデルばかりのXシリーズにあって、最高価格にして最高性能、そして最大サイズの製品ですが、この製品がピッタリはまる人というのは日本では意外に少ないような気もします。CPUやGPU性能を見ればX1 Carbon(2019)よりもこのX1 Extremeのほうが上ですが、ビジネスモバイルPCとしては重量1.09 kgのX1 Carbonのほうが扱いやすく、性能面でもゲームや動画編集なんかをメインにやらない限りX1 Carbonで十分すぎるくらいだと思います。
また性能面を追求するのであればゲーミングノートやクリエイターノートのほうが数段高性能です。ただし、これらの製品はX1 Extremeよりもずっと大きくて重いですけどね。
「1台のPCで仕事にも遊び(ゲーム)にも使いたい」とか「趣味で動画編集をしたい」とか、(ワークステーションのPシリーズは別として)せっかくだからハイエンドなThinkPadがほしい、という場合ならX1 Extremeはおすすめです。