超高性能なノートPCといえばゲーミングノートをイメージする人が多いと思います。よりなめらかにゲーム画面を遷移させ、コンマ何秒かのタイムラグも許さないハイエンドなゲーミングノートは、上級ゲーマーだけでなく、ハイスペックなノートPCを求める人には最適の選択肢と言えるでしょう。しかし、今回紹介する「ThinkPad P1」はゲーミングノートではありません。「モバイル・ワークステーション」という位置づけの製品です。性能という点ではゲーミングノートに一歩も譲らない実力がありますが、利用シーンは異なります。
1.スペック
この記事を書いている8月21日現在、Web直販モデルは未発売で、「販売代理店モデル」のみスペックが公開されています。8月下旬にWeb直販モデルが発売される予定になっていますが、ここでは販売代理店モデルのスペック表をもとに説明します。
OSはWindows 10 ProとWindows 10 Pro for Workstationsです。前者はいいとして、後者は「なにそのfor Workstationsって?」と思いますよね。Microsoftの説明によれば「データ処理やストレージ性能の強化、障害を発見して修復する新しいファイル システムの採用、次世代 PC ハードウェアのサポート (最大4個のCPU および最大6TBのメモリ) という特徴を備えた、これまでで最もパワフルな Windows です。」とのことで、「4個のCPU」とか「6TBのメモリ」と言われても一般人的には呆然とするレベルではありますが、要は超高性能なPC(ワークステーション)の仕様に合わせ、障害修復機能も盛り込んだハイエンドなWindows、ということです。
CPUはCoffee Lake世代のCore i5とi7、そしてXeonが搭載されます。しかし、Core i5とi7に関しては型番が「8400H」だったり「8850H」だったりと、ゲーミングノートに使われているものと異なるものが含まれています。「8400H」「8850H」そしてXeon E-2176MはいずれもvPro(企業などでPCを一元管理する際に役立つ機能)対応になっています。また、Xeonについては一般のPC向けCPUではなく、マルチソケット(つまり複数のCPUを搭載すること)やECCメモリ(データ修復機能付きのメモリ)に対応していたりと、ハイエンドなパフォーマンスだけでなく、金に糸目をつけずにパワーアップするような手法とか、よりセキュアなPC環境を作り出すために使われます。ただし、ThinkPad P1には複数のCPUは搭載できません。
GPUはNVIDIAのGeForceではなくQuadroが搭載されます。GeForceがDirect Xに最適化されているのに対し、QuadroはOpen GLに最適化されており、GeForceはゲーム向き、Quadroはクリエイター(CAD、動画編集、画像編集など)向きと言われています。ただ、すみません、私は両方のGPUを搭載する製品を並べて比較したことがないので、両者の実用面での具体的な違いを体感したことがありませんし、その機会に恵まれたとしても、おそらくゲームくらいしか体感差を理解できる場面はないだろうと思います。一応「ゲーム用ならGeForce」というのは知っておいたほうがいいと思います。
RAMは8GBから32GBまでの範囲で選択でき、Xeon搭載モデルにはECCメモリが使用されます。また、搭載できる最大のRAM容量は64GBです。ストレージは販売代理店モデルだと256GB SSDもしくは512GB SSDとなりますが、おそらく物理ストレージは2基搭載可能で、SSD + HDDやSSD + SSDといった構成が可能なのではないか、と思われます。
ディスプレイは15.6インチでFHD解像度(非タッチ液晶)もしくは4K解像度(タッチ液晶)の2種類です。特に4K解像度のものは「Adobe RGB 100%」品質となっていて、動画や画像の編集、3Dモデルの制作などに向きます。
で、サイズです。これはちょっと「びっくり」するレベルですね。横幅361 mmというのは15.6インチのスタンダードノートとして見ても十分にコンパクトというか、最小クラスになります。また、重量がXeon + 4K液晶モデルですら1.84 kgしかない、というのもすごいです。「持ち歩けるラボ」という感じ。
2.筐体
この製品は15.6インチですがテンキーはありません。おそらく横幅をギリギリまで小さくした関係でテンキーを装備してしまうと「ワークステーションとして窮屈な配列」になってしまうことを嫌ったのではないかと思います。
この画像は英語配列になっていますが、販売代理店モデルは「89キー、JIS配列、バックライト付き」となります。他のThinkPad同様、直販モデルだと日本語配列と英語配列を選べるものと思います。
また、この製品ではIRカメラ(Windows Helloの顔認証に対応)の設定もありますが、キーボード面の右側に指紋センサーも見えますので、ダブルでの生体認証が可能です。
あと、さすがにベゼルもかなり細くなっていますね。ワークステーションという文言から連想される「どっしりした」イメージは全然ありません。
天板です。正直このアングルから見たThinkPadというのは「どれもほとんど同じ」です。しかし、この製品の場合、ThinkPadロゴが黒く染められていて(普通はシルバーです)、ちょっと異色な感じがしますね。タダモノではない雰囲気があってカッコいいです(実際にタダモノじゃないですしね)。
しかし、これでワークステーションですからねー。デザイン的にはThinkPadそのものですし、サイズ感も「むしろコンパクト」ですし…。
3.価格など
Lenovo ThinkPad P1は8月下旬からLenovo直販サイトで販売が開始されます。8月21日現在の「販売代理店モデル」の価格は315,000円(税込み340,200円)から540,000円(税込み583,200円)となっていますが、いつもウインタブで書いている通り、「Lenovoの定価に意味はない」ので、直販モデルの実売価格はこれよりもずっと安くなると予想します。だいたい30%OFFくらいでしょうか(あくまで予想)。
ThinkPad P1は超高性能PC(ワークステーション)ですが、使用目的をはっきりさせないと購入しても手に余ると思います。また、オンラインゲームを主目的として購入すると後悔することになるでしょう。私を含め一般ユーザーにはあまり縁のないところでスペックが充実しているので、クリエイターなど専門職の人、また同等のPC知識のある人に任せておいたほうがいいかもしれませんね。
4.関連リンク
ThinkPad P1:Lenovo直販サイト
コメント
ワークステーションでこの軽さと価格は安すぎな気がする。冷却性能が気になるけど、しっかり冷却されるならオンライン販売きたら買ってみようかな。
あと、Pro for WorkstationをProと差別化するために、わざわざProからReFSフォーマット機能を削除したのが気に食わない……(愚痴)
名無しさん、こんにちは。ということはクリエイター?それとも科学者?私なんかはXeonもQuadroも宝の持ち腐れになっちゃいそうですけど、それでもお金があれば欲しい、というのが正直なところ。
Windowsをあまり使わん者からするとOpenGLに強い方が嬉しいんだけどなぁ。
もっと安めでquadro載っけてくれないかなぁ
こんにちは。おお、ここにも専門家っぽい人が…。私は実用面でGeForceとQuadroの体感差も理解できてないです…。