
「NiPoGi」のミニPC、「G1」の実機レビューです。NiPoGiは中国メーカー「ACEMAGIC」が展開するブランドで、ウインタブではこれまでにNiPoGiとACEMAGIC合計で4つの製品を実機レビューしていますので、「もはやおなじみ」のメーカーです。
今回レビューするNiPoGi G1はCPUにRyzen 9 8945HSを搭載する、NiPoGiブランドでは最上位のミニPCです (2025年11月22日現在)。
なお、このレビューはメーカーからのサンプル機提供によって行っています。
・Ryzen 9 8945HS搭載、外部GPU非搭載機としてはトップクラスの性能
・筐体の開口は容易、RAMやSSDの増設・換装がしやすい
・発熱は小さく、ファン音も静か
・ポート類が充実、USB4 Type-Cも搭載
ここはイマイチ
・高性能だがRyzen 9 8945HS搭載機の割にベンチマークスコアは低め
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1. スペック表
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| OS | Windows 11 Pro |
| CPU | AMD Ryzen 9 8945HS |
| RAM | 32GB (SO-DIMM×2、DDR5 5600MT/s) ※最大96GB |
| ストレージ | 1TB SSD (M.2 2280 PCIe 4.0) ※M.2 2280 PCIe 3.0/4.0対応スロット✕2 ※空き✕1 |
| ディスプレイ | なし |
| 無線通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 |
| ポート類 | USB4 Type-C (DP1.4/40Gbps) USB 3.2 Gen 2 Type-A✕2 USB 3.2 Gen 1 Type-A✕4 HDMI 2.0、DisplayPort 2.0 LAN (RJ45)、オーディオジャック |
| カメラ | なし |
| バッテリー | なし |
| サイズ | 128 × 128 × 51 mm (実測値) |
| 重量 | 624 g (実測値) |
2. 外観

同梱物です。左上が電源ケーブルでその下がACアダプターです。ACアダプターは出力が120Wと、外部GPU非搭載のミニPC・ノートPC用のACアダプターとしては大きめの出力ですが、薄型で比較的コンパクトなサイズです。
中央上にユーザーマニュアル。日本語を含め多言語で書かれています。記載内容はごく簡単で「別になくてもいいや」という感じです。マニュアルの下にあるのがHDMIケーブル、右上と右下はVESAブラケットとブラケット用のネジです。VESAブラケットはPCモニターの裏側にミニPC本体を取り付ける際に使用します (このレビューでは取り上げません)。

上面 (天板)です。NiPoGi G1は外装が樹脂製です。とは言え質感は悪くなく、安っぽさも感じられません。

底面です。中央に通気口があり、その下にVESAブラケット取り付け用のネジがあります。四隅のゴム足は接着剤で取り付けられていますが、筐体を開口する際にはこれらのゴム足を外すと筐体開口用のネジが出てきます (筐体の開口については後述します)。

前面です。画像左から電源ボタン、イヤホンジャック、USB 3.2 Gen 2 Type-Aが2つ、USB4 Type-Cが1つあります。

背面です。左からUSB 3.2 Gen 1 Type-Aが4つ、有線LAN、Display Port、HDMIポートがあります。上部に排気口があり、その右にDC-IN ジャック。
NiPoGi G1は合計で7つのUSBポート (うちUSB4 Type-Cが1つ)を備えています。映像系ではDisplay PortとHDMIがあり、USB Type-Cポートも映像出力が可能なので最大3画面出力が可能です。OCuLinkポートはありませんが、ミニPCとしてのポート数は比較的充実しているほうだと思います。

右側面

左側面
左右の側面にはポート類やボタン類はなく、通気口があるのみです。

デザイン面では「天板と側面の境目」に「ゴールドの柱」が控えめに自己主張しています。一見するとこの部分から天板を取り外せそうに思われますが、ここは着脱できません。天板のすぐ下に冷却ファンがあるので、「通気性を良くする」効果もあるんでしょうが、どちらかと言うと装飾的な意味合いが強いと思います。
3. 内部

上で説明した通り、底面の四隅にあるゴム足を外すとネジが現れ、このネジを外すと筐体を開口できます。ゴム足は接着剤で取り付けられており、外すのはちょっと大変でした。

ゴム足さえ外してしまえば開口はそれほど大変ではありませんが、ツメがあるのでギターのピックのような薄い板があるとラクです。また、Wi-Fiのケーブルなども露出しておらず、特に注意しなくても大丈夫です。

画像左の黄枠の部分がRAMスロット2つで、初期搭載の16GB RAMが2枚装着されていましたので、空きはありません。中央の青枠の部分がM.2 2280スロット、ここには初期搭載の1TB SSDが装着されていました。右の赤枠の部分ですが、Wi-Fiモジュール (M.2 2230スロット)とボタン電池があり、その上にM.2 2280の空きスロットがあります。SSDを増設する場合はここにM.2 2280 (PCIe 3.0もしくは4.0) SSDを取り付けられます。

こちらは底板です。格子状の溝がある部分は樹脂製、上の部分は金属製です。金属部分にサーマルパッドを剥がした跡がありますが、この部分はRAMやSSDについているサーマルパッドに密着する構造になっており、それが冷却効果を高めています。

これが装着されていたSSD (左端)とRAM (中央と右端)です。このようにサーマルパッドが貼られていて、これが一つ上の画像の金属部分に密着している、ということです。…しかし、もう少しキレイに貼ってほしかったですね。
なお、RAMはShenzhen Micro Innovation Industry製でDDR5-5600、容量16GBのものが2枚、SSDはBIWIN M350でPCIe 4.0 ✕4接続、容量は1TBでした。
4. 性能テスト
ベンチマークテスト
NiPoGi G1はGMKtecのミニPCのようにBIOSでパフォーマンスを調整する機能はなく、パフォーマンスを調整できるような設定系のアプリもありません。そのため、Windowsの電源設定を「最適なパフォーマンス」にして各種ベンチマークテストを実施しました。
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PCMarkのスコアです。ビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。ウインタブが最も重視しているテストです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 9 185H:8,099
Ryzen AI 9 365:7,896
Ryzen AI 7 350:7,718
Ryzen AI 9 HX 370:7,511
Core Ultra 7 258V:7,527
Ryzen 7 8845HS:7,446
Ryzen 9 PRO 6950H:6,987
Ryzen 7 8840U:6,949
Ryzen 7 PRO 6850H:6,858
Core Ultra 7 155H:6,849
Ryzen AI 5 340:6,767
Ryzen 5 8645HS:6,708
Core i9-13900H:6,542
Core Ultra 5 135H:6,485
Core Ultra 7 255U:6,404
Core Ultra 7 155U:6,392
Core Ultra 5 125U:6,376
Core i9-13900HK:6,344
Core Ultra 5 225U:6,334
Ryzen 5 7535U:6,021
レビュー機の搭載CPUはRyzen 9 8945HSです。PCMark 10で7,000点を越えているのは立派で、PCMark 10が想定するビジネスシーンでの利用ではごく快適に動作すると言えます。一方、他の型番との比較では「格下」のRyzen 7 8845HSに300点ほどの差をつけられており、最新型番であるRyzen AI 300シリーズとも少々大きめの差がつきました。もちろんこのくらいの差で実用上の体感差があるとも思えませんが、ちょっと不本意ではありますね。後述しますが、NiPoGi G1は高負荷時の電力消費およびCPU温度が低く抑えられており、この点がスコア差に繋がった可能性があります。

CPU性能を測定するCINEBENCH 2024のスコアです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 9 275HX:132、2,094
Core i7-14700:122、1,177
Core Ultra 7 258V:121、676
Core i9-13900HK:117、827
Core i9-13900H:117、687
Ryzen AI 9 HX 375:114、1,144
Ryzen AI 7 350:114、878
Core Ultra 9 185H:111、910
Ryzen AI 9 HX 370:110、942
Ryzen AI 9 365:109、1,008
Snapdragon X Elite:108、1,038
Ryzen 9 8945HS:108、958
Snapdragon X Plus X1P-42-100:108、754
Ryzen 7 8845HS:106、956
Ryzen 9 7940HS:106、914
Core Ultra 7 155H:105、964
Core i7-12700H:102、678
Core Ultra 7 155U:101、533
Core Ultra 7 255U:101、516
Ryzen 5 8645HS:98、585
Core Ultra 5 225U:98、482
Core Ultra 5 125U:95、533
Core Ultra 5 125H:95、516
Ryzen 9 PRO 6950H:93、774
Ryzen 7 PRO 6850H:91、765
Ryzen 7 5825U:85、590
Ryzen 3 5425U:78、365
※左からシングルコア、マルチコアのスコア
シングルコア (シングルスレッド)、マルチコア (マルチスレッド)とも、非常に良好なスコアではあります。ただし、やはりRyzen 7 8845HSとは顕著な差が出ておらず、Ryzen AI 300シリーズよりも少し低めのスコアになったと思います。一方、IntelのCore Ultraシリーズ2との比較では、Core Ultraシリーズ2がハイパースレッディングを廃止した影響もあり、マルチスレッド性能では「大きな差をつけて優位」です。

グラフィック性能を測定する3DMarkのスコアです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 7 258V:4,397、8,611、35,677
Core Ultra 9 185H:4,143、8,223、31,710
Core Ultra 7 155H:3,924、8,338、24,476
Ryzen AI 9 365:3,895、8,885、34,303
Ryzen AI 9 HX 370:3,800、8,026、31,138
Core Ultra 5 135H:3,454、7,235、24,791
Core Ultra 5 125H:3,392、7,301、23,168
Ryzen 9 7940HS:3,362、7,776、29,076
Ryzen 7 8845HS:3,330、7,908、29,873
Ryzen AI 7 350:3,324、7,135、30,225
Ryzen 7 8840U:2,943、7,206、27,471
Ryzen 9 PRO 6950H:2,846、7,051、27,983
Ryzen 7 PRO 6850H:2,660、6,601、26,920
Ryzen 5 8645HS:2,437、6,253、24,401
Core Ultra 7 255U:2,430、4,916、20,096
Core Ultra 5 225U:2,372、4,897、20,396
Core Ultra 7 155U:2,319、5,162、19,024
Ryzen AI 5 340:2,123、5,159、22,941
Core Ultra 5 125U:2,081、4,826、19,421
Core i9-13900HK:1,979、5,507、19,723
Core i9-13900H:1,956、5,440、19,477
Core i7-12700H:1,843、5,194、18,244
Core i7-1360P:1,786、4,991、16,779
Core i7-1355U:1,760、4,859、16,891
Core i5-1334U:1,386、3,672、13,157
Ryzen 5 7530U:1,281、3,137、13,730
Ryzen 7 5825U:1,242、3,226、12,859
Ryzen 3 5425U:1,122、2,848、11,949
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
3DMarkのスコアも高いです。外部GPU非搭載機としては文句なし、と言える水準です。

SSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。PCIe4.0 ✕4接続のSSDとしてはトップレベルとは言えないものの十分に高速で、実用上でストレスを感じる場面はまずないと思います。
発熱とファン音
HWiNFO 64でCINEBENCH 2024を実行中にCPU温度と消費電力を確認しました。CPU温度は最高で83℃まで上昇しましたが、これは競合機種と比較するとやや低めでサーマルスロットリングの発生もありませんでした。また、測定中のCPU電力は最高で65W弱となりました。GMKtecのミニPCでRyzen 8000HSシリーズ搭載機の場合、BIOSで最高70Wまで電力を上げることができますので、ベンチマークテスト中のCPU温度と電力を踏まえると「やや安全運転」なのかな、と感じます。
とはいえ、ガチゲーマーでもない限り、この設定は好ましいと言えるでしょう。ただ、NiPoGi G1の各種ベンチマークスコアを見る限り、日常の事務仕事では「そこまで高性能でなくてもいい」ように思われるので、低消費電力モード(最大で35Wくらいに抑えられるモード)があっても良かったかな、と思います。
ファン音について。軽作業だとほとんど音が聞こえません。ベンチマークテストなど負荷が高い場面ではファン音が聞こえますが音量は小さめで一定 (他社製品に見られるように短い間隔でファン音が大きくなったり小さくなったりはしない)、個人的にはほとんど気になりませんでした。
5. レビューまとめ
NiPoGi G1はAmazonで販売中です。通常価格は139,998円ですが、この記事執筆時点でブラックフライデーセールが開催されているのと、メーカーより読者向けにクーポンコード「45J6RFQW」をいただいており、クーポン適用後109,998円で購入できます (12月1日まで)。
CPU性能が高く (「Ryzen 9」という響きもいいですよね)、RAM32GB、SSD1TBと容量も大きめ、筐体の開口もしやすく発熱や騒音もしっかり抑えられており、パフォーマンス、日常の使い勝手とも高水準なミニPCです。ACEMAGIC (NiPoGi含む)はこの先日本市場でも存在感を高めて行くのではないか、と思いますね。
6. 関連リンク
※クーポンコード「45J6RFQW」で割引価格に(12月1日まで)
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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