こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。今回はちょっと変わったミニPCの実機レビューです。フレキシブルに変形する、折りたたみ式のキーボードを備えた変わり種「K8 MiniPC」です。ハイそこ笑わない!今回ばかりは自分で希望して試用しているわけではなく、中国の通販サイト「Gearbest」に「面白いのあるよー」と声を掛けられ、「ああ、確かに面白いよね。でもちょっとアレなんで、やめときます(「アレ」にはお好きな文言を入れてください。多分全部正解です)。」と返答したにもかかわらず、「遠慮しないでよ。もう送っちゃったし」ということで実機レビューの運びとなりました。
しかし、往々にして「希望の製品をしっかりレビュー」するよりも今回のように「事故った感じでのレビュー」のほうが実は面白かったりする、というのも事実。さて、どうなりますやら…。あ、忘れてました。この製品は中国の通販サイト「Gearbest」に提供していただきました。この場にて御礼申し上げます。ありがとうございました。
1.スペック
OS: Windows 10 Home 64ビット
CPU: Intel Atom x5-Z8300
RAM: 4GB
ストレージ: 64GB
ネットワーク: 802.11 b/g/n、Bluetooth 4.0
入出力: HDMI、D-sub、USB 3.0、USB 2.0、microSD、オーディオ
サイズ: 385 × 120 × 15 mm / 277 g
非常にユニークな製品ですが、OS、CPU、RAM、ストレージ構成は一般的な中国タブレットやミニPCと同じで、同価格帯の製品としては見劣りするところがありません。普通です。
しかし、入出力ポートでUSBポートが2つと、ミニPCとしてはやや物足りないところがある代わりに、映像出力でD-subを備えています。これは中国タブレットはもちろんのこと、ミニPCとしてもかなり珍しいと思います。
また、キーボードがついているからといって、決して重くはありません。本体重量は277 g(実測値288 g)ですから、一般的な8インチタブレットよりは全然軽いですよ。
試用機のシステム構成およびストレージ構成です。CPUは従来型のAtom Z8300で、8350ではありません。またOSはバージョン1607(Anniversary Update)なので、しばらくは大型アップデートはないですね。ストレージもしっかり64GBになっています。
まあ、この製品の面白みはスペック表にはない、というのは明らかなので、先に進めましょう。
2.筐体
ウインタブをよく読んでくれている人にはこの製品の処理性能はだいたい予想がつくんじゃないか、と思います。実際中国製品としては本当に標準的なスペックですからね。しかし、筐体のほうは予想できんだろうと思います。そりゃそうですw
まずは外箱です。少し汚れてしまっていますが、見た感じは結構ゴージャスですし、箱の構造もかなりしっかりしていて、ちょっと感心してしまいました。
同梱物です。本体のほか、英語表記のあるしっかりした記述の取扱説明書、電源アダプター、HDMI(オス)- HDMI(オス)のケーブル、そしてケースが付属します。
ただ、またしてもGearbestはEUプラグ(だと思います)を送ってきてくれました。この製品は「USプラグ(日本と同形なので、そのまま使えます)」の設定もあるんですけどね。
ちょっと気になった、といいますか、これが付属することによって製品の評価が一変してしまったのが「ケース」です。合成皮革製の、取り立ててどうということもないものですが、これがあることによってかなり便利になるというか、やる気が出ます。
この製品のセールスポイントである、フレキシブルなキーボードです。これを丸めて
こんな風に小さくたたみます。すごく簡単でコツも何もありません。速攻でできます。
で、ケースに入れる、と。
こんな感じでコンパクトにまとまります。もちろんタブレットよりも分厚いですが、サイズはこちらのほうがずっと小さくなります。ちなみにこの状態での重量は371 gでした。ただ、本体収納でいっぱいいっぱいなので、ケーブル類は入りません。しかし、本体とケースのパッケージングというか、まとまりがよく、こういうことなら持ち歩いてみたくなります。「その気にさせてくれる」付属品だと思いました。
続いて本体を見ていきます。これがキーボード面。右側がタッチパッド兼パソコン本体になります。キーボードの素材はシリコン?シリコンゴム?ゴム?ちょっとよくわかりませんが、素人的にはゴムという理解でいいです。まさにそんな感触です。サイズ感は悪くない、というか、テンキーレスのフルキーボードです。ちゃんと6列あり、省略されているキーも見当たりません。もちろん英語配列ですけどね。配列上は一番右端の1列が少し癖があるかな、と思います。私は個人的に「Enterキーは端っこでないとイヤ」な性分なので。
もちろんキーはめちゃめちゃ柔らかいです。画像だとわかりにくいと思いますが、キーを押すとへこむ、というか変形します。キーストロークは標準的なノートPCより深め、また標準的なデスクトップPCよりは浅めですが、中途半端に深いように思います。このへんはまた後ほど…。
筐体の右側面です。すごくわかりやすいですが、パソコンとしてのパーツはこの箱に入っています。箱の右側には入出力ポートの一部があり、左からUSB 3.0、USB 2.0、オーディオジャック、microSDスロット、リセットボタン、電源ボタンです。
便宜的に「上面」といいます。この面にもポート類がありますね。左からHDMI、D-sub、DC-INとなります。
使ってみて感じたのは、DC-INの位置は側面のほうがよかった、ということと、USBポートはできればもう一つほしかった、ということです。後述しますが、この製品はキーボードが一体化していますけど、必ずしもこのキーボードを使わなくてはならない、ということではなくて、外付けのキーボードをつないでしまう、という使い方もあるので、そんな場合にはUSBポートに不足感があります。
これがアンテナです。撮影のために立てていますが、寝かせてしまえばほとんど目立ちません。また、タッチパッドも見えますね。このタッチパッドはジェスチャ対応なので、私と違ってタッチパッドを活用している人なら快適に使えると思います。
タッチパッドの上にはLEDインジケーターがあります。電源ONの状態だと一番上が青く光り、スリープ状態のときは真ん中が赤く光り、ロック状態のときは一番下が黄色っぽく光ります。この製品はディスプレイを持たないため、本体側にステイタスを表示する機能があったほうがいいですよね。
底面です。この製品はファンレスで、底面に通気口がついています。
これが全体像です。かなり薄型であることがわかりますね。
3.使用感
もっとも気がかりなのは「キーボードの打鍵感」じゃないでしょうか?ご心配なく!「悪い」ですよ。いいわけないじゃないですか!入力した時の感覚は「パコペコ」という感じですし、キーを押し込むとキーの下に隠れている機械パーツの感触がよくわかります。ひとつひとつのキーを意識してしっかり押し込まないと心配になる感じです。実際には軽めに押してもきちんと認識されるのですが、打鍵感が頼りなく、感触も悪いので、ついそう感じてしまいます。
上のほうにも書いたように、いっそキーストロークはもっともっと浅めのほうがよかったのではないか、と思います。中途半端に深いからゴムっぽい感触が強くなっているように思いました。
このキーボードでウインタブの記事を書いてみましたが、長時間のテキスト入力には向きません。打鍵そのものが気持ちよくないということと、心理的に一つ一つ意識してキーを押し込むような打ち方になるので疲れてしまいました。
ただし、「正常に機能するキーボード」であることは間違いありません。気持ちよさとか打鍵感はメカニカルキーボードと対極に位置しますが、これもまたキーボードです。なんのこっちゃ。要するに、最低限キーボードとしての機能は満たしているので、例えばwebブラウジングとか動画視聴といった、あまり忙しくキーボードを操作しない使い方なら特に文句はない、と思います。
そして、意外ですが、私、この製品の具体的な使い道みたいなのがイメージできました。
キーボードがあるだけありがたいと思え!
ということです。言いかえると「本格的にテキスト入力をするのなら、外部キーボードを接続してミニPCとして使いましょう。キーボードの使用頻度がそれほど高くない操作、例えば出先でテレビに接続してwebブラウジングとか動画を見るだけならこのキーボードで十分ですよ」となります。
自宅でブログを書いたりWordで文書を作成するなら外部キーボードは必須です。その場合、この製品のキーボードは使わずに適当に丸めておけばいいんです(ただし、コツがいります。不用意に丸めるとキーボードが生きてるので誤動作しますから)。
出張とか客先でのプレゼンということならこの製品のキーボードは十分使えます。テキスト入力がしにくいといっても大量の文字入力とかでなければそれほど困りません。上に書いた通りケースの出来はいいので持ち運びは簡単ですし、出張先のホテルでテレビに繋げば、資料の手直しとかは簡単にできると思います。もちろんいざとなれば長文のテキスト入力だってやろうと思えばできます。疲れますけどね。
こうやって割り切って考えれば、実はこの製品、かなり有望なのでは?と思いました。
4.性能テスト
この製品は上に書いた通り、典型的な中国のAtom機のスペックです。ですが、一応恒例の「ドラゴンクエスト X ベンチマーク」をやりました。
参考:
GPD WIN(Atom X7-Z8700): 2,829
Beelink BT7(Atom X7-Z8700): 2,488
Jumper EZBook Air(Atom X5-Z8300): 1,929
ドスパラ Diginnos Stick DG-STK4S(Atom x5-Z8500): 1,871
Cube iWork 11 Stylus(Atom X5-Z8300): 1,817
ONDA V919 Air CH(Atom x5-Z8300): 1,801
Jumper EZpad mini 3(Atom x5-Z8300): 1,717
Chuwi Hi 10(Atom x5-Z8300):1,658
YEPO 737S(Atom x5-Z8300):1,631
ドスパラ Diginnos DG-D10IW3(Atom x5-Z8300): 1,570
GOLE 1(Atom x5-Z8300): 1,556
ドスパラ Diginnos DG-D09IW2SL(Atom x5-Z8350): 1,509
Teclast X98 Plus 3G(Atom x5-Z8300): 1,464
Onda OBook 20 Plus(Atom x5-Z8300): 1,448
Cube iWork 8 Ultimate(Atom x5-Z8300): 1,448
DELL Inspiron 11 3000(Celeron N3050): 1,446
Onda V80 Plus(Atom x5-Z8300): 1,434
Chuwi Hi 10 Pro (Atom X5-Z8300): 1,424
PIPO X10(Atom X5-Z8300): 1,346
やっぱり普通ですね。Atom Z8300なら1,500近辺という水準で違和感はありません。特によくもなく、悪くもなく、という感じです。
テスト中、筐体はやや発熱しました。危機感を覚えるほどではないですが、柔らかいキーボードの見た目と裏腹な感じがしました。特に異常性は感じませんけど、長時間高負荷な作業をすると多少速度低下するかもしれません。
5.まとめ
K8 Mini PCは中国の通販サイト「Gearbest」で販売中で、11月22日現在の価格は168.99ドル(17,555円)です。当初この製品をややキワモノ的に捉えていたのですが、「キーボードありき」で考えることがよくもあり、悪くもある製品だと思います。つまり、「キーボードの品質に期待してはいけない。しかし、正常に機能し、小さく折りたためるキーボードがついていることによって使いみちが広がる」ということです。
スティックPCを含むミニPCのジャンルは今後一定の地位を確立するのではないか、と思いますし、この冬にミニPCの購入を検討している人もいると思います。K8 Mini PCはミニPCとしてはやや低スペックながらRAM4GB、ストレージ64GBと比較的余裕もあり、期待した性能は発揮してくれます。また、セールスポイントであるキーボードは打鍵感などを期待すべくもありませんが、出先にテレビさえあればすぐ使える(HDMIケーブルと電源ケーブルなども必要です)という気軽さ、ケースに収納した際の携帯性の高さは大きな魅力になります。出張や旅行の際に手荷物に加えようという気になれます。また、外付けキーボードを接続すれば自宅などで軽作業メインのパソコンとして快適に使うこともできます。
とはいえ、周囲の人にこれを見せれば注目を浴びるのは間違いないでしょうねw そんなわけで、キーボードに注目してしまうとキワモノっぽい、というのはそのままに、実は意外に頼れる存在になるのではないか、という印象もありました。
6.関連リンク
K8 Mini PC:Gearbest
コメント
こういう怪PCのくせに不足のないスペックというのは用途がハマれば普通に良かったりしますからね…D-subも付いてるし
かぜさん、こんにちは、コメントありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。あと、ガジェット好きなら素通りしにくい、というのもありますねw キーボードは厳しいっすけど。
この手のキーボードはいくつか持っていますが、疲れが激しいので長文には向きませんね
だけど、時々しか入力しないような使い方をする人や持ち運ぶ必要のある人には良いかもしれませんねえ
これで防水、洗えるタイプだったら考えてしまってた
こんにちは、コメントありがとうございます。実は防水なんですよね。ただ洗えるほどの防水性はないと思います。実機レビューでも怖くて試してません。読者レビューできなくなるし…