HPの13.3インチモバイルノート「Pavilion Aero 13-be」の実機レビューです。CPUにZen3のRyzenを搭載し、重さ1キロを切るという、非常に魅力的なパッケージングで、もちろんHPの売れ筋モデルです。メーカーサイトの製品ページやスペック表、製品価格を見ても「非の打ち所がない」ような製品なので、以前からぜひ実機に触れてみたいと思っていました。
で、先に結論を書かせていただくと、「買いだろ、これ…」ということです。
・ビジネス用、学習用として快適に使える性能。オンランゲームもいける
・美しく、手触りの素晴らしい筐体で重さ1キロ切り
・Bang&Olufsenスピーカーの高い音質
・10万円以下から購入できる価格
ここはイマイチ
・バックライトを明るくするとキートップの文字が見にくい
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HP Pavilion Aero 13-be 製品詳細:HP
目次
1.Pavilion Aero 13-be スペック
Pavilion Aero 13-be |
|
OS | Windows 11 Home/Pro |
CPU | AMD Ryzen 5 5600U / Ryzen 7 5800U |
外部GPU | なし |
RAM | 8GB/16GB(3200MHz,DDR4 SDRAM) |
ストレージ | 256GB / 512GB SSD(PCIe NVMe M.2) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 13.3インチIPS(1,920 × 1,200) |
ネットワーク | 802.11 a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.2 |
入出力 | USB Type-C(10Gbps、映像出力・USB PD対応)、USB(5Gbps) × 2、HDMI、オーディオジャック |
カメラ | Webカメラ(92万画素) |
バッテリー | 駆動時間最大10.5時間 |
サイズ | 298 × 209 × 16.9-18.9 mm |
重量 | 957 g |
バリエーションモデル
・Home/Ryzen 5/8GB/256GB
・Home/Ryzen 5/16GB/512GB
・Pro/Ryzen 7/16GB/512GB(レビュー機の構成)
※左からOSバージョン/CPU/RAM/SSD
ポイント
Pavilion Aero 13-beは3つのバリエーションモデルがあり、CPUにZen3アーキテクチャを採用するRyzen 5 5600U/Ryzen 7 5800Uを搭載しています。この1月に「Ryzen 6000番台」が発表されていますが、モバイルノートなどに搭載される省電力タイプ(型番末尾U)のモデルは4月7日現在発売されていませんし、発売されても当初は製品価格が高めに設定されると思います。このレビューではベンチマークテストも実施しますが、個人的には「Zen3のRyzen」ならビジネス用や学習用といった、本来この製品が想定される用途では十分すぎる性能になっていると考えます。
Pavilion Aero 13-beの魅力はパフォーマンスだけではありません。むしろ「筐体の出来」が最大のセールスポイントになっていると思います。13.3インチサイズで1キロを切る軽さで、HPらしい質感の高い筐体になっています。また、超軽量ながら耐久性も高く、「天面耐圧試験で300kgf」「32,000回の開閉テスト」「個々のキーの1,100万回ストロークテスト」といった過酷なテストをクリアしていますので、満員電車でめっちゃ押されても「持ち主より先に悲鳴をあげることはない」だろうと思います。
では、筐体から見ていきましょう。
2.Pavilion Aero 13-be 筐体と使用感
同梱物
同梱物です。今回は新品PCではなく、レビュー用の貸出機を使っていますので、特にペーパー類は市販品と異なっている(市販品よりも少ない)可能性があります。ペーパー類については左下の「セットアップ手順」に目を通していただければ特に困らないかと思います。
ケーブル類はACアダプター(65Wのもの)、電源ケーブル、ウォールマウントプラグが入っていました。ウォールマウントプラグは画像下中央にある「鳥の頭(通称ダックヘッドといいます)」のような形をしたもので、コンセントが近くにあって長い電源ケーブルが必要でない場合にACアダプターに直付けして使います。
ケーブル類の実測重量は「ACアダプター+電源ケーブル」が313 g、「ACアダプター+ウォールマウントプラグ」が244 gでしたから、ウォールマウントプラグで事足りる場合、持ち運びが楽になると思います。
天板と底面
天板です。レビュー機の筐体色は「セラミックホワイト」で「特筆すべきもの」でした。純白に近いホワイトで、「アニオン電着塗装(AED)」が施されており、まるで陶器のようになめらかな手触りです。筐体素材はおそらく金属製ですが、金属っぽくない感触で、ずっと撫でていたくなるような、素晴らしい質感です。
底面です。こちらも美しいホワイトで手触りもなめらかです。メンテナンス用のハッチはなく、左右にスピーカーグリルがあります。なお、この製品のスピーカーは「B&O(Bang&Olufsen) Playデュアルスピーカー」です。
側面
前面です。こちらにはポート類やボタン類はありません。開口部分がΣ型になっている(中央が凹んでいる)ので、開口はしやすいです。
背面にもポート類、ボタン類はありません。HP製品のレビューでいつも書いていることなのですが、中央の「P A V I L I O N」のフォントがカッコいいんですよねー。
左側面です。画像左からHDMI、USB Type-A、USB Type-C、そしてイヤホンジャックがあります。
右側面です。画像左からUSB Type-A、DC-INジャックです。レビュー期間中にマウスとかハブとかゲームコントローラーなんかを接続しましたが、特にUSB Type-Aポートが左右に1つずつという配置になっていて、とても使い勝手が良かったと感じました。まだまだType-Aポートは必要ですよね…。
キーボード
キーボードです。「JIS標準準拠89キー」でアルファベットキーのキーピッチは約18.7×18.4 mm、キーストロークは約1.3mmと開示されています。キーボード面の素材はおそらく樹脂製だと思いますが、とても気持ちのいい手触りです。
明るさを2段階に調整できるバックライトも装備されています。この画像はバックライトを「明るいほう」に設定して撮影しました。過去最高の明るさじゃね?と思いましたw
キーボードの使用感
しばらくテキスト入力を試してみました。打鍵感は確実で打鍵音も比較的小さめです。「HPのモバイルノートの典型」といいますか、Enterキーの右に一列あるタイプの配列なので、慣れていない人は使い始めのうち少し戸惑うかもしれません。ただ、私はこの配列のせいでミスタイプはしませんでしたので、慣れていないからといってもそこまでクセの強い配列ではないと感じました。
使いやすいキーボードであると評価できますが、唯一「バックライトが明るすぎ」だと思いましたね。バックライト輝度を「暗いほう」にすれば快適に使えますが、「明るいほう」にするとキートップの文字も見えなくなるくらいに高い輝度になってしまいます。あって困るようなものではありませんが、この明るさにはちょっと驚きました。
ディスプレイ
正面から見たところです。レビュー機は美しいホワイトでしたが、ベゼル面のみブラックです。ベゼル幅は「業界最細」とは言えないものの、十分に細く、筐体のスタイリッシュさに寄与していると思います。
ディスプレイはIPS液晶でノングレア(非光沢)タイプです。この画像はわざと映り込みが激しくなるようにして撮影しましたが、映り込みは小さいほうだと思います。
ディスプレイの使用感
決して悪い意味ではなく「標準的」ですね。手持ちのディスプレイ何台かと発色を比較してみましたが、色味は自然ですし、原色も鮮やかです。ここのところASUSの有機ELディスプレイ搭載PCを何台かレビューしていまして、さすがに有機ELと比較すると「黒の深さ」とか「色の濃さ」は見劣りしてしまいますが、IPS液晶としては十分に高く評価できます。ビジネス用、学習用として不満を感じるようなことはないと思います。
筐体その他
ヒンジを最大開口したところです。最近のノートPCはヒンジが水平位置(180度)まで開口できるものが増えていますが、Pavilion Aero 13-beはそれほど大きくは開口しません(普通に使うぶんには全く問題ありません)。また、「リフトアップヒンジ(ヒンジ開口時に筐体後部がせり上がり、キーボード面に適度な角度がつく)」構造を採用しているので、タイピングもしやすくなっています。
スピーカーの使用感
薄型軽量なモバイルノートとしては良好な音質です。そのままでも比較的クリアに音楽などを聴くことができます。
音響アプリは「B&O Audio Control」です。このアプリをオンにするだけで、一気に音にメリハリが出て、より臨場感のある音質になります。私はバブル時代のダンスミュージックを好む傾向がありまして、低音の効いた音が好みなのですが、イコライザーを調整することによって好みの音質にできました。お好みのジャンルにもよりますが、音楽や動画視聴ではイコライザーを活用したいところです。
ちょっと脱線しますが、B&O Audio Controlにはノイズキャンセリング機能もあります。今回のレビューでは試す機会がありませんでしたが、Webミーティングの際などに威力を発揮してくれそうです。
バッテリー駆動時間
実際に「普段使い」をしてみてバッテリーの消費量をチェックしました。ディスプレイの輝度は70%、音量は20%に設定し、キーボードバックライトをOFFにして使っています。
・画像加工ソフトのGIMPで簡単な画像加工(トリミングやリサイズ)を25分
・ブラウザーでWeb検索・サイト閲覧を20分
・ブラウザー上でYouTubeを開き、音楽鑑賞と動画視聴を15分(この間のみ音量は40%)
上記の通り、合計で約60分使用し、バッテリー消費は15%でした。単純計算だと、この使い方でのバッテリー駆動時間は7時間弱くらいとなります。メーカーの公称値は「最大10時間30分」なのですが、「良好」な結果だと評価できます。どのメーカーの製品であってもバッテリー駆動時間は「メーカー公称値のせいぜい半分」というのがウインタブの経験則なので…。脇目も振らずひたすらPCに向かう、ということでなければ、ビジネスシーンや学校で、「だいたい終日は使える」と思いますね。なお、バッテリーの駆動時間は個体差もありますし、お使いになるソフトウェアによっても大きく変動してしまいますので、この結果はあくまで目安程度に考えていただければと思います。
発熱とファン音
発熱・ファン音ともに小さめです。後述しますが、今回私、何を思ったか(ゲーミングノートでもないのに)オンラインゲームも1時間ほどプレイしてみましたが、ゲーム中でも発熱量は小さめで、キーボード面の上部がぬるくなる程度、CPU温度も65度を越えませんでした。また、耳を澄ますとファン音がしますが、ほとんど気になりませんでした(ゲームタイトルによって異なる結果になる可能性もあります)。
3.Pavilion Aero 13-be 性能テスト
Pavilion Aero 13-beには「OMEN Gaming Hub」がインストールされていました。このアプリは本来ゲーミングPC向けのもので、画像のようにシステムのモニタリングができるほか、「ブースト」というパフォーマンス調整機能もあります。ただし、この機能は「使っていないタスクを無効化する」「メモリをリフレッシュする」などがメインで、「ブーストすれば一気にパフォーマンスが上がる」という感じではありません。また、実際にベンチマークテストを実施してみて、スコアにはあまり影響を及ぼさないことも確認しました。そのため以下に記載するベンチマークスコアはOMEN Gaming Hubによる調整はしていません。
ベンチマークテスト
参考(外部GPU非搭載のノートPC):
ASUS VivoBook Pro 15 OLED(Ryzen 9 5900HX):6,157
VAIO SX14(Core i7-1195G7):5,278
Lenovo ThinkPad X13(Core i7-1165G7):5,205
Lenovo IdeaPad Slim 550 14(Ryzen 5 5500U):5,076
ASUS VivoBook 15 OLED(Core i7-1165G7):5,017
dynabook MZ/HS(Core i7-1165G7):4,967
ASUS ExpertBook B9 B9400CEA(Core i7-1165G7):4,927
VAIO Z(Core i5-11300H):4,740
Lenovo ThinkPad E15 Gen 3(Ryzen 5 5500U):4,638
MSI Summit E13 Flip Evo(Core i5-1135G7):4,572
HP ProBook 430 G8(Core i5-1135G7):4,131
VAIO SX12(Core i3-1005G1):3,401
MSI Modern 15 A10M(Core i3-10110U):3,234
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。グラフィック性能に特化したテストの3D Markなどと比較するとCPU性能の差(影響)が大きめですが、テスト項目にグラフィック処理も含んでいますので、CPU性能だけでなく、外部GPUを搭載する製品のほうが高いスコアが出ます。
Pavilion Aero 13-beが搭載しているRyzen 7 5800Uですが、ウインタブでは過去にこのCPUを搭載するPCをレビューしたことがありません。今回が初です。スコアのほう、非常に高いですね。外部GPUを搭載しないビジネス系のノートPCの場合、個人的にはPC Markのスコアが4,000点もあれば十分、というか、使っていて不満を感じることもないだろうと考えていますので、5,751というスコアなら文句なし、と言っていいと思います。
参考(外部GPU非搭載のノートPC):
ASUS VivoBook Pro 15 OLED(Ryzen 9 5900HX):1,482、12,108
ASUS VivoBook 15 OLED(Core i7-1165G7):1,497、5,555
VAIO SX14(Core i7-1195G7):1,441、6,039
Lenovo ThinkPad X13(Core i7-1165G7):1,392、4,807
VAIO Z(Core i5-11300H):1,388、6,197
MSI Prestige 15 A11(Core i7-1185G7):1,226、4,119
Lenovo ThinkPad E15 Gen3(Ryzen 5 5500U):1,160、7,312
※左からシングルコア、マルチコアのスコア
続いてCPU性能のみを測定するCINEBENCH R23のスコアです。このテスト、「シングルコアのスコアについてはIntel Coreがやや優勢、マルチコアについてはRyzenがIntel Coreを圧倒」という傾向が出ます(ただし、第12世代CoreとRyzen 6000番台についてはデータがなく、この限りではありません)が、Pavilion Aero 13-beではその傾向を踏襲しつつ、シングルコア、マルチコアとも非常に良好なスコアとなりました。
VAIO SX14(Core i7-1195G7):2,069、5,422、14,536
ASUS ExpertBook B9 B9400CEA(Core i7-1165G7):1,832、5,142、11,928
Lenovo ThinkPad X13(Core i7-1165G7):1,762、4,785、12,663
VAIO Z(Core i5-11300H):1,571、4,213、11,375
MSI Summit E13 Flip Evo(Core i5-1135G7):1,498、4,213、11,048
ASUS VivoBook 15 OLED(Core i7-1165G7):1,433、3,431、8,281
ASUS VivoBook Pro 15 OLED(Ryzen 9 5900HX):1,415、3,529、7,815
Lenovo IdeaPad Slim 550 14(Ryzen 5 5500U):1,106、2,912、6,173
※左からTime Spy、Fire Strike、Wild Lifeのスコア
グラフィック性能を測定する3D Markのスコアです。このテストでは「Intel Core(内蔵GPUにIris Xeを搭載する型番)がRyzenよりも優勢」という傾向があります。今回もまた、その傾向通りですね。決して悪いスコアではないものの、第11世代のCore i7には及ばない結果となりました。
ストレージの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。このスコアは非常に高く、ほぼすべての操作で速度面の不満は出ないだろうと思います。
オンラインゲーム
Pavilion Aero 13-beはゲーミングノートではなく、また外部GPUも搭載していませんが、ちょっとだけオンラインゲームを試してみました。私が一番やりこんでいる「Wreckfest」というゲームです。
システム要件(最低):
CPU:Core i3 with 2.8 GHz/AMDの同等品
RAM:8GB
GPU:Geforce GTX560/Radeon HD 7770
システム要件(推奨):
CPU:Core i5 with 3.0 GHz/AMDの同等品
RAM:8GB
GPU:GeForce GTX970/Radeon R9 380X
「そこまで重量級ではないが、そこまで軽量級でもない」という感じです。
「ゲームができるかできないか」という基準は人によって違いますし、ゲームジャンルによっても異なる印象になるとは思います。例えばFPSゲームで高いスコアを出せるような人なら、ディスプレイのリフレッシュレートの高低でもスコアが変わってくると思いますので、あくまでも「下手くそなカジュアルゲーマー」という目線で書かせていただきますが、Pavilion Aero 13-beでこのゲームを1時間くらいプレイしてみたところ、フレーム落ちがひどいとかグラフィックが汚いということもなく、割と普通にプレイできてしまいました。
本格的にオンラインゲームをやり込むのであればこの製品ではなく、外部GPUを搭載するゲーミングノートをおすすめしますが、仕事や勉強の息抜きにちょっとゲームをするくらいであればPavilion Aero 13-beでも十分いけると思います。少し古めのゲームなら相当数のゲームタイトルがプレイ可能でしょう。
4.Pavilion Aero 13-be レビューまとめ
HP Pavilion Aero 13-beはHP公式ストアで販売中で、12月9日現在の価格は税込み98,100円から、となっています。レビュー機の構成(Windows 10 Pro/Ryzen 7/RAM16GB/512GB SSD)だと税込み129,601円です。また、この製品は下記の通りレビュー後CPUの型番がより新しいものに変更され、より性能が向上しています。
・Ryzen 5 5600UがRyzen 5 5625Uに
・Ryzen 7 5800UがRyzen 7 5825Uに
この製品、非常に高く評価できます。特に素晴らしいと感じたのが筐体のデザインと質感ですね。筐体色「セラミックホワイト」は純白と言っていいくらいに美しく、アニオン電着塗装による手触りの良さも他社PCには見られない、とても気持ちのいいものでした。また、ベンチマークスコアを掲載しましたが、モバイルノートPCとして非常に高い性能を備えています。ディスプレイやキーボード、スピーカーの品質も高水準でした。さらに「重さ1キロ切り」というダメ押しも入りますw
実際のところ、「気に食わない」と感じた箇所はほとんどありませんでした。せいぜい「バックライトを明るくするとキートップの文字が見えにくい」くらいですかね、ネガティブな評価になったのは。PavilionというのはHPの中で最上位の製品ブランドではありません。しかし、この製品、モバイルノートとしてはトップクラスの出来の良さだと思います。さすが世界最大のPCメーカーの売れ筋モデル!と思いました。
5.関連リンク
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