
こんにちは、吟遊詩人です。今回はASUS社製ゲーミングルーターの「ASUS ROG Strix GS-BE7200X」の実機レビューをさせていただきます。ゲーミングルーターというからもっとツノ(アンテナ)がいっぱい生えたものかと思っていたのですが、シックなブラックでどこに設置しても遠目ではまったく気にならないデザインです。ただ、細かく見ていくとWi-Fi7を本体のデザインに組み込んでいるなど、遊び心のあるデザインです。
ASUS様にはレビュー用機材提供していただきました。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
目次
1. スペック
| 項目 | 仕様 |
| 無線LAN規格 | IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax/be [Wi-Fi4,5,6,7相当] |
| 周波数範囲 | 2.4GHz、5GHz |
| 無線LAN通信速度 ストリーム数 |
2.4GHz:4×4 4096QAM 20/40MHz, 最大1376Mbps 5.0GHz:4×4 4096QAM 20/40/80/160MHz, 最大5764Mbps |
| 無線LANセキュリティ | WPA/WPA2/WPA3 Personal WPA/WPA2/WPA3 Enterprise |
| 有線LAN/WANポート | WAN 10GbE×1、LAN 2.5GbE×1、1GbE×4 |
| VPN | Instant Guard、VPN Client L2TP VPN Client OVPN、VPN Client PPTP VPN Client WireGuard、VPN Server IPSec VPN Server OVPN、VPN Server PPTP VPN Server WireGuard、VPN Fusion Support Surfshark |
| 消費電力 | 18W (電源アダプタ:12V/3A) |
| 対応OS | Windows 10、11 以降 macOS 12 以降、iPadOS 16 以降 iOS 16 以降、ChromeOS Linux、Android OS 12 以降 |
| サイズ | 225 x 90 x 225 mm |
| 重量 | 811g |
2. 外観

本体以外の同梱物は必要最小限という感じです。まあ、ルーターなのでそんなに色々必要ないと思います。電源アダプター、ペーパー類、LANケーブルがあり、ペーパー類は「スマートフォンアプリによるセットアップ案内、QUICK START GUIDE(取扱説明書)、Wi-Fiセットアップカード、保証書」です。
QUICK START GUIDE(取扱説明書)はクイックと自称していますが、完全な日本語で図表も豊富なため、ルーターとして設定する際にはかなり分かりやすいです。本機にはAndroid/iOS用のアプリが用意されているのですが、スマホからだけではなくPCで無線LANでの設定方法、PCで有線LANでの設定方法とページを割いて説明があり非常に好感が持てます。

さすがに10GbEが搭載されているだけにLANケーブルはCAT6(STP)のケーブルが付属しています。しかもケーブルにまでROGのロゴマークが付いています!! これは普段絶対見えないところなのに気合の入り方が違いますね。ただ、正直、実用上は、それよりはツメ折れ防止カバーを付けてほしかった。

正面です。イカツイ外部アンテナなどはなく箱型の筐体となっています。ゲーミングルーターなので当然(?!)光ります。後述しますが、正面で赤く光っているLEDはRGBで色を変えられます。意外(?!)と色の再現性は高いと感じました。筐体は電波を通過させるためにプラスチック製ですので見た目よりもずっと軽いです。
ちなみに本体を斜めに通るデザインですが、これデザインだけではなく本体基盤がこの向きに配置されています。これにより、まっすぐ配置するよりも14%コンパクト化されています。確かにこの向きに配置すれば基盤の両面にしっかり空間ができるので排熱の面で有利だと思います。特に本機はWi-Fi 7に加えて、10GbEが搭載されており、これだけで結構な発熱になると思うので、デザインと排熱の両面でいい感じです。

サイド及び上部にはお洒落な感じでスリットが入っており排熱対策はばっちりです。内部にファン等はないので熱風が噴き出すというようなことはありません。ただ、パッシブ方式の排熱方式ですので、設置は本体を立てる向きで背面と上部にはある程度の空間を取ったほうがいいでしょう。マンションなどにあるクローゼット上部に押し込めて設置する場合は、設置場所の上部と左右の空間に少し考慮した方がいいでしょう。

ポートの部分です。ポートは豊富です。上から1GbEが4ポート、2.5GbEが1ポート、ここまでがLAN用です。WAN用として10GbEが1ポートです。そのほかにUSB3.0のポートが一つあります。なお、接続しているLANケーブルは付属のものではなく、吟遊詩人の手持ちのUTPフラットケーブルです。
USBはUSB-HDDを接続してみましたが、特に問題なく接続できました。この辺りも後述します。2.5GbEはROGマークがついておりこのポートはゲーミングPCに接続することを想定しています。このポートの通信は他のポート(おそらくWi-Fi通信を含む)よりも優先してパケットの処理が行われるようです。
3. 環境制約について
吟遊詩人のネットワークの環境制約で、「ルーター機能」の評価ができません。吟遊詩人の自宅はNURO光の10ギガプランです。NURO光はフレッツ光などと異なり、XGS-PON方式となっており、NURO光から貸与されているONU内蔵ルーター(HGW:HomeGateWay)を使うのが基本となっています。このため、市販のルーターと単純に交換して使うことができません……。
今回、本機を評価するにあたっては、ルーターモードではなく「アクセスポイント(AP)モード」で利用しています。
このため、利用不可能な機能が多数ありますのでご了承ください。
4. 使用感
開梱して、「スマートフォンアプリによるセットアップ」に従ってセットアップします。吟遊詩人はいわゆるルーターのセットアップではないので画面キャプチャなどは省略しますが、セットアップ自体は簡単です。接続方式などを順次選んでいくだけで設定できました。
ISPなどから受け取った接続情報の資料を見ながら進めれば、ほとんど迷うことはないと思います。この辺は新しいルーターは色々研究されているようで新しい機種ほど簡単になっていると感じます。
接続出来た後はアプリ上で本機のIPアドレスを簡単に調べることができます。画面上部にある「LAN IP>> 192.168.1.20」部分です。PC上でブラウザでこのアドレスに接続すればPCから細かく設定を変更することができます。
PCからブラウザで接続してログインした後のトップ画面がこちらです。詳細設定の中の方はアプリからは設定できない項目がありますので、徹底的にチューニングして使うにはPCで接続して行うべきかなと思います。まあ、本機を購入する人はPCでのゲームを中心に考えているのではないかと思いますので、問題ないと思います。
ちなみにまず、やるべきことは[管理] – [システム] – [基本設定]にあるNTPサーバーの設定です。
※吟遊詩人のおすすめのNTPサーバは「ntp.jst.mfeed.ad.jp」です。
ネットワーク機器の時間がずれていると大抵ロクなことにはなりません。
流石はゲーミングルーターだなと思ったのはトップ画面最下部の「ゲームレーダー」。有名どころのゲームサーバへのpingのステータスを表示しています。ゲームを始める前にルーターの管理画面にわざわざ表示させるかどうかはともかく、こういう情報を表示するのは面白いと思います。ゲームレーダーの上部に、ネットワークのpingの状態をグラフで表示し続けてくれているので、あれネットワーク調子悪い?なんて時には便利だと思います。
対応しているゲームの一覧は上記になります。吟遊詩人はゲームをほとんどやらないので詳しくはわかりませんが、ゲームやらない人でも聞いたことがあるタイトルがあるのでメジャーどころは入っているのではないかと思います。
LEDの設定
LEDの光り方についてPCからもアプリからも設定可能です。常時点灯、ゆっくり点滅、ウェーブ、レインボーの4パターンから選択可能で、常時点灯とゆっくり点滅は色を自分で選択可能です。
アプリから簡単に設定できますので、普段はガンガンに光らせておくけど寝る前はアプリからLEDをOFFにするなどの柔軟な運用が可能です。これができるの嬉しいですね。流石に寝るとき電気を消したら部屋にミラーボール設置してるのか?と思うほど光られると安眠妨害ですからね。
LEDはかなりきれいに発色します。色のグラデーションなども思った以上に綺麗です。ルーターのメイン機能でもないですが作りこみがすごい。こういうこだわりがいいですね。
USB アプリケーション – サーバーセンターの設定
本機にはUSBポートがついていますので、ここにUSBストレージを接続するとネットワークを介してこのストレージにアクセスできます。簡易版のNASになるということです。USBストレージはFATのフォーマットでも、NTFSのフォーマットでも使えます。ルーターのおまけ機能の簡易NASでNTFSがこんなに簡単につながるのかと古い技術者の吟遊詩人は感動しました。
USBストレージの使い勝手ですが、やはりというかSamba接続はSMBv1での接続です。つまりWindows 10以降のPCでアクセスするには、OSの設定でセキュリティ上の脆弱性があるSMBv1を有効化する必要があり、エンジニアの視点からは正直、推奨できません。
百歩譲ってLAN内だけなら、そんなに心配しなくてもいいかもしれませんが、ノートPCなどでこのLAN以外に接続する場合はその都度設定を切り替えるならいいですが、普通そんなことしませんよね?
それならFTP共有の方がいいです。FTPというと古い方式で結局セキュリティ、ヨワヨワじゃない?と思われがちですが、本機はTLSをサポートしていますので、セキュリティ、ツヨツヨです。ちなみにFTPクライアント側の設定ですが、FTP接続で、ポートは21、暗号化方式に「FTPS – FTP over TLS/SSL」や「明示的なFTP over TLS (Explicit FTP over TLS/SSL)」を選択すれば初回のみ証明書の確認画面を挟みますが以降は普通に接続可能です。
FTPのベンチマークはとっていませんが、接続したUSB-HDDが大してスピードが出ないのでネットワークよりもここがボトルネックになると思います。どちらかというと家庭内LANでみんなが見れる場所にファイルが置けるのがメリットだと思います(クラウドと違い課金不要ですし、LANなので、ギガも消費しません)。Android端末からもファイルマネージャーで接続できることは確認済みです。
管理 – システム – サービス
なんと本機sshでアクセスできるんです!設定は画面キャプチャのようにsshを有効にして、適当なポート番号を指定し、公開鍵を貼り付けて適用するだけ。これでセキュリティもばっちりな状態root権限でターミナルアクセス可能です。これで「いろいろ」できますね!
admin@GS-BE7200X-AF5C:/tmp/home/root# uname -a
Linux GS-BE7200X-AF5C 5.4.281 #1 SMP Tue Oct 21 10:12:10 UTC 2025 aarch64 ASUSWRT
OSはASUSWRTです。いじるにしても自己責任ですので、これ以上は触れないようにします。
5. 性能テスト
本機の性能を評価していきます。接続としてはHGWの10GbEと本機の10GbEを直接LANケーブルで接続し、2.5GbEにPCを接続、そのほかの端末はWi-Fiで接続してテストしています。
HGWの配下にはMesh Wi-Fi(Wi-Fi5)が構築してあり、常時20台近いWi-Fi端末が稼働しています。このネットワークは家電であったり、プリンタであったりさほど速度が必要ないものが接続されています(youtubeを観たり、調べものしたりするタブレットなどの端末はこちらに接続します)。
また、HGW自体もWi-Fi機能(Wi-Fi6)があり、こちらには高速接続したい端末(主にPCです)が接続します。性能評価時は深夜でネットワーク自体も混んでいない時間帯にWi-Fi6への接続も可能な限り避けて実施しました。
性能テスト1. 2.5GbE接続
ゲーミングルーターの主戦場である2.5GbEにPC(GMKtec Nucbox K6)を有線接続(PC側も2.5GbE)してspeedtestで速度を計測しました。
かなり良好なスピードですね。LANが2.5GbEなのでUPLOADに関してはほぼ上限といっていいでしょう。DOWNLOADに関しても2Gbpsを超えていますので、文句はないですね。
ちなみにPCを直接HGWの10GbEに接続してテストを行うとこのくらいの性能です。HGW直結の方がDOWNLOADが少し早いとはいえほぼ誤差といっていいでしょう。つまり、本機は2.5GbEでの接続では全くスピードが落ちていないといっていいでしょう。
これがPC側が10GbEを搭載しているのなら話は変わってきますが、標準で10GbEを搭載しているPCはまれだと思うので、現状最強のスピードが出るといっていいでしょう。2.5GbEからの接続は優先制御もあるようなので基本的にはPCと本機を直接接続した方がいいようです。
性能テスト2. Wi-Fi7接続
続いてWi-Fi7で接続してみます。端末は我が家で最新のPixel9です。
Pixel9で本機にWi-Fi7で接続した際の性能です。
参考にPixel9でHGWにWi-Fi6で接続した際の性能です。
これがWi-Fi7の実力なのか2Gbps越えのスピードが出ました。本機への接続時は5GHz/バンド幅160MHz/4×4 MIMOで接続しました。HGW接続時は6GHz/バンド幅160MHz/4×4 MIMOで接続しました。
利用周波数が違うだけで、バンド幅は同じですが、少し早いというのはWi-Fi7の効果(4096QAM)でしょうか。また、JitterもWi-Fi7の方が少なくなっており、通信自体の品質も良いことがわかります。
性能テスト3. MLO接続
続いて、Wi-Fi7の中でも目玉機能と吟遊詩人が思っているMLO(Multi Link Operation)を試していきます。その前に、MLOって何者?という方のために簡単に説明します。
これは複数の周波数帯を束ねて一つのSSIDで使うものです。本機だとデュアルバンドなので5GHzと2.4GHz帯の二つの電波帯域を束ねて速度向上、通信の安定性の向上を実現するものです。
Pixel8からMLOで接続した際の性能です。
参考に同時刻のMLOではないWi-Fi7で接続した際の性能です。これはやや想定外の結果となりました。実はこれ計測ミスや設定がおかしいんじゃないかとそれこそ毎晩色々計測したのですが、結果はこれ以上よくなりませんでした。本機のMLOはどうやらNSTRモード(Non-Simultaneous Transmit and Receive)にしか対応していないようです。
これは2周波数を束ねるが両方の周波数を同時に使うわけではないということです。つまり速度は向上しません。代わりに例えば、5GHz帯の天敵であるDFSで5GHz帯の送受信が止まったとしても2.4GHz帯が繋がっているので通信断にはならないということです。
よし、早速検証と行きたいのですが、気象レーダーや航空機のレーダー波はいつ来るかわからないため確認出来ません。
じゃあ、逆に2.4GHz帯なら電子レンジ使えば一発で帯域を汚染できるじゃんとやってみたのですが、上記のMLOの結果を見てわかる通り、通常5GHz帯で通信しているようなので2.4GHz帯が使えなくても性能は低下しないんです……。
ただ、例えばWi-Fi7で接続して、大量のデータをダウンロード中に気象レーダーを検知して5GHz帯通信断となって、あ~初めからやり直しというような事態は避けられそうなので、基本MLOを使うようにした方がいいかもしれません。
MLOに対応しないWi-Fi5の端末などで接続するとWi-Fi5(802.11ac)で接続します。MLOだから繋がらないということはありませんのでルーター側で設定さえしてしまえば特に意識する必要はないかもしれません。また、端末側もMLO登場後間もないのでドライバを含めてまだこなれていない感じです。
6. まとめ
ASUS ROG Strix GS-BE7200XはAmazonや家電量販店などで販売中で、11月24日現在の価格は30,000円弱 (29,000円や29,800円のところが多い)です。
丁寧な作りこみとツノ(外部アンテナ)などが生えていないシンプルな筐体はかなり好印象でした。本当はルーターとして使ってAiProtectionやVPNなどの付加機能を試したかったですが、それを抜きにしても性能は良好です。
VPNなどはアクセスポイント(AP)モードでも使えてもいいんじゃないかと思うのですが、アクセスポイント(AP)モードにするとメニューから消えてしまい試すことができませんでした。欲を言えば、WAN側が10GbEなんだからLAN側にもう一口2.5GbEを付けてもいいんじゃないかと思いました。2.5GbEの口は現状ゲーミング用になっているようですので、ここにHubをつなげて複数台の端末をつなげるのは想定外の使い方になりそうです。多少不満はありますが、有線接続で使うと恐らく最高の環境で戦えるるはずです。
さらに、美しいLEDライティングの筐体と最新のWi-Fi7が使える点を考慮すれば、価格に見合う価値があると納得できます。スペックだけで比較するとライバルも多いかもしれませんが、アプリの作りこみ、筐体のデザイン、「ROG」のマインドなどを考慮すればゲーミングルーターとしてはしばらくはトップ集団に君臨するのではないかと思います。
7. 関連リンク
ガジェットを買ったり、便利なアプリやサイトを見つけると人につい教えたくなり周りから煙たがれて、それなら記事にすればいいじゃんとウインタブに投稿し始めたら、いつの間にかライターに。万人受けはしないかもしれないけど、誰かが共感してくれたらうれしいです。▶ サイト紹介・ウインタブについて












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