GPDのAndroid搭載ゲームマシン、「GPD XP」の実機レビューです。後継機のGPD XP Plusの情報もありますので、これから買うならPlusのほうかな、と思っている人も多いでしょうが、筐体はほとんど変わっていないので、従来モデルのレビューも参考にしていただけるのではないか、と思います(GPD XP Plusのクラウドファンディングは日本時間5月30日午前11時から開始されます。こちらをご覧ください)。
レビュー機は中国の通販サイト「Banggood」に「グローバル版」を提供していただきました。この場にて御礼を申し上げます。ありがとうございました。また、今回のレビューは、筐体部分の説明を私、ウインタブが、ゲームプレイのテストはライターのかのあゆさんが担当しています。
・Androidのゲームが物理コントローラーで楽しめる
・携帯が容易で質感の高い筐体
・リーズナブルな価格
ここがイマイチ
・スマホではないので、通話(電話)は不可
・トリガーボタンがアナログではない(微調整できない)
販売サイトはこちら
GPD XP:Banggood
※クーポンコード「BGJP4c4d」で292.99ドル
目次
1.GPD XP スペック
スペック表
GPD XP | |
OS | GPD Metro UI(Android 11) |
CPU | MediaTek Helio G95 |
RAM | 6GB |
ストレージ | 128GB UFS2.1 |
ディスプレイ | 6.81インチ(2,400 × 1,080)60Hz |
バンド | TDD-LTE:B34/38/39/40/41 FDD-LTE:B1/2/3/5/7/8/12/17/20/26/28 ※通話は不可 |
SIM | nanoSIM×2/nano SIM+microSD |
ネットワーク | 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 5.0 |
入出力 | USB Type-C、3.5mmオーディオジャック、マイク端子 × 2、microSDカードリーダー |
カメラ | インのみ5MP |
バッテリー | 7,000 mAh |
サイズ | 205-233 × 83 × 18 mm |
重量 | 330-370 g |
モジュールについて
GPD XPには3種類のモジュール(本体の右側にマグネットとコネクタで装着するパーツ)が付属します。後述しますが、「Xbox/PS 360°グリップモジュール」「FPSグリップモジュール」「MOBAハンドルモジュール」の3つで、それぞれ形状が異なるため、装着時の本体サイズも異なります。
360°:233 × 83 × 18 mm / 370 g
FPS:216 × 83 × 18 mm / 350 g
MOBA:205 × 83 × 18 mm / 330 g
また、本体の厚さ18 mmというのは「グリップ部分」を含んでいません。グリップ部分を含む厚さは41 mmとなっています。
コメント
この製品は音声通話には対応していませんので、スマホではありません(LINEやSkypeなどのインターネット通話は可能です)。
OSはAndroid 11ベースのGPD Metro UIです。CPUはHelio G95で、Antutuスコアが30万点台の、スマホであればミッドレンジクラスの性能です。ゲーム機なのでより高性能なCPUを、というのはありますが、実際のところこのCPUでまともに動かないゲームというのはそんなに多くありません。今回のレビューではライターのかのあゆさんが実際にいくつかのゲームをテストプレイしていますので、使用感については後ほど。
RAMは6GB、ストレージは128GBです。最近のAndroidゲームアプリは容量が非常に大きい(追加データ分を入れると10GBクラスのものも目に付きます)ので、ストレージに関しては256GBの設定があっても良かったとは思います。
なお、後継機のGPD XP PlusではCPUがDimensity 1200にパワーアップしており、ストレージ256GBの設定もあります。
ディスプレイは6.81インチでFHD+解像度と、一般的なスマホよりも大型です。この製品は物理コントローラーを装備していますので、ディスプレイだけでなく、筐体サイズもスマホよりはかなり大きくなっています。また、カメラも搭載していますが、イン側のみ、画素数も5MPと、どちらかというとビデオチャット用、という感じですね。
なお、GPD XPには国内正規版がありますが、今回レビューしているグローバル版でも筐体背面に技適マークおよび認証番号の記載がありました。
では、筐体から見ていきましょう。
2.GPD XP 筐体
同梱物
同梱物です。モジュールが2つ(360°とFPS、MOBAは本体に取り付けた状態でした)、ACアダプター、USB Type-Cケーブル、SIMピン、取扱説明書、そして液晶保護フィルムが入っていました。
取扱説明書はごく簡単な内容ですが、日本語の表記もありました。
本体(MOBAハンドルモジュール装着時)
MOBAモジュールを装着した状態です。左側に物理コントローラーがあり、この部分は着脱ができません。コントローラー部分は上からジョイスティック、十字キー、この2つの間にあるボタンがマッピングボタン、そして、下に3つ並んだボタンはAndroidスマホの画面下側にあるナビゲーションボタンと同じものです。
スマホとサイズを比較してみます。一緒に写っているのはASUS ROG Phone 5sです。ROG Phone 5sもディスプレイサイズが6.78インチと大柄なのですが、左側のコントローラー部分のぶんだけGPD XPのほうが大きいです。なので、この状態でもシャツの胸ポケットやジーンズの前ポケットに入れるのは難しいですね。
下面です。画像左からイヤホンジャック、スピーカー、SIM/microSDスロット、USB Type-C、スピーカーという配置になっています。また、USB Type-Cの下あたりに通気口もついています。
左側面はグリップがある関係でかなりの厚みがあります。
上面です。右側(使用時は左側になります)にL1、L2ボタンがあり、あとは電源ボタンと音量ボタン。また、この面にも通気口があります。
右側面です。MOBAハンドルモジュールが装着されていますが、MOBAハンドルモジュールというのは実質的には「カバー」ですね。
取り外すとこんな感じ。少し奥まったところにモジュール取り付け用のコネクターがあります。モジュールの着脱は容易で、取り付け後の安定性も高く、不意に外れたりはしません。
FPSグリップモジュール
FPSグリップモジュールです。このモジュールには前面に5つ、背面に1つ、合計で6つのボタンがあり、本体左側のマッピングボタンを使って(本来は画面上に表示されるバーチャルな)各種操作アイコンに割り当てることができます。
FPSグリップモジュールを接続したところです。後述する360°グリップモジュールよりもコンパクトなサイズです。また、背面のボタンは本体左側のショルダーボタンよりも低い位置にあります。正直なところ、このコントローラーは使う人を選ぶ、というか、直感的に「使いやすい」というイメージはないですね。
360°グリップモジュール
360°グリップモジュールです。このモジュールが一番ピンときますね。本体左側と合わせるとXBOXコントローラーと同じ仕様になっています。
360°グリップモジュールを接続したところです。「これで完成形」あるいは「ゲーム機としてのイメージ通り」という感じですw 左右のグリップが同じ高さになっていますし、各種スティック・ボタンの配置も自然です。
3.GPD XP システム
ホーム画面はカスタマイズされています。このUIは「GPD Metro UI」と言いますが、Metro UIと言えばWindows 8を思い出しますよね。確かにアイコンがタイル状になっていて、「それっぽい」です。
ホーム画面とは裏腹に、設定画面は「素のAndroid」に近いです。なので、「Androidの基本的な操作・設定」については戸惑うこともないと思います。なお、レビュー機のセキュリティパッチは2021年3月5日付となっていて、いささか古いかな、と感じました。
4.GPD XP 性能テスト
参考:
Xiaomi 12 Pro(Snapdragon 8 Gen 1):971,423
ASUS ROG Phone 5s(Snapdragon 888+):846,862
ASUS Zenfone 8(Snapdragon 888):785,280
Mi 11T(Dimensity 1200 Ultra):582,178
Xiaomi Pad 5(Snapdragon 860):566,309
realme GT Master Edition(Snapdragon 778G):542,182
Xperia 1 SOV43(Snapdragon 855):511,163
Xiaomi Mi 11 Lite 5G(Snapdragon 780):500,573
Oneplus Nord CE 2 5G(Dimensity 900):430,049
Redmi Note 11 Pro + 5G(Dimensity 920):427,053
Samsung Galaxy Fold SCV44(Snapdragon 855):414,302
OnePlus Nord CE 5G(Snapdragon 750):384,505
iiiF150 R2022(Helio G95):350,565
POCO M4 Pro 5G(Dimensity 810):349,498
OnePlus Nord N10(Snapdragon 690):342,506
POCO M3 Pro 5G(Dimensity 700):330,303
Redmi Note 11 Pro(Helio G96):336,280
POCO M4 Pro 4G(Helio G96):311,030
Redmi Note 11S(Helio G96):307,755
realme narzo 50(Helio G96):287,043
DOOGEE S98(Helio G96)
Redmi Note 11(Snapdragon 680):277,105
Blackview A95(MediaTek Helio P70):227,817
CHUWI HiPad Plus(MT8183):172,713
Samsung Galaxy Note FE(Exynos 8890):177,984
OUKITEL C22(Helio A22):99,664
AGM H3(Helio P22):84,184
BlackView A55S(Helio A22):78,630
geanee ADP-503G(MT6737M):46,316
AnTuTu Benchmark v9での総合スコアは320,720点でした。Helio G95搭載機としては若干低めと言えなくもありませんが、標準的なスコアと考えてもいい水準だと思います。
この製品は「ゲームをしてなんぼ」ということだと思いますので、以下にゲームプレイの感想を述べます。なお、ゲームプレイに関してはライターのかのあゆさんが執筆しています。
4.GPD XP ゲームプレイ
ゲームに特化したAndroid端末ということで、実際に何本かゲームをプレイしてみました。なお今回実機レビューしているGPD XPはグローバル版で、ファームウェアの仕様が国内向けモデルと一部異なっており、アーケードエミュレーターやPSPエミュレーターなどがプリインストールされていましたが、国内の法や利用規約上、リスクがあるものも含まれていそうなので、この記事では触れません。Google Play Storeで配信されているタイトルのみで検証しています。
ちなみに、「一度初期化」したところ、これらのエミュレーターのアイコンの多くが消えてしまいました。
原神
まずは現在モバイル向けゲームでは重量級クラスとなる「原神」をプレイしてみました。ゲームコントローラー自体はサポートされているようなのですが、残念ながらGPD XPの物理ゲームパッドはサポートされていないため、この製品の標準機能であるキーマッピングツール(マッピングボタン)を使用して各種操作を割り当てる必要があります。ただし割り当ててしまえばNintendo Switch等のコンシューマ機と同じ感覚で快適にプレイすることができます。
デフォルトのグラフィック設定は「中」でした。GPD XPのCPU、GPU性能から考えて、これ以上の設定にしても快適なプレイは厳しいでしょうが、デフォルト設定であれば目立つようなフレーム落ちも感じられませんでした。Snapdragon 888やSnapdragon 8 Gen 1といったハイエンドクラスの端末でも結構端末の発熱が目立つアプリですが、GPD XPではクーリングファンが内蔵されていることもあり、ゲームプレイ中の発熱が気になることもありませんでした。
ストリートファイターIV チャンピオン・エディション
AndroidやiOSでは往年のNEOGEOタイトルの移植など、格闘ゲームもいろいろとリリースされていますが、今回は個人購入している「ストリートファイターIV チャンピオン・エディション」をプレイしてみました。こちらはGPD XPでも特にストレスなく快適にプレイすることができます(そもそもこのゲームにはグラフィック設定自体が存在しません)。
「ストリートファイターIV チャンピオン・エディション」ではバーチャルパッドによる操作も当然対応していますが、やはり格闘ゲームは物理パッドでプレイしたいものです。こちらはゲームプレイ中の操作のみになりますがGPD XPの物理ゲームパッドもネイティブでサポートしており、左スティック、操作キーともに移動やコマンド入力が可能です。アーケードのスティックとは異なるものの、やはり左スティックでのコマンド入力は気持ちがよく、コンシューマ機やアーケードと同じ感覚で各種必殺技コマンドを入力することができます。十字キーの入力も快適です。
Real Racing 3
EAからリリースされている「Real Racing 3」もプレイしてみました。こちらに関してもGPD XPのボタンマッピング機能を利用しなくても標準で物理ゲームパッドをサポートしています。リリースされたのが2013年と今となっては古いタイトルではありますが、現在でもアップデートが積極的に行われており、Helio G95を搭載するGPD XPではやや処理落ちする場面も見られました。
残念ながらL3、R3ボタンがアナログ式ではないため、アクセルワークを細かく調整する・・・のは難しいものの、このゲーム自体がリアルシミュレーション寄りのタイトルということもあり、やはり物理ゲームパッドのほうがプレイしやすいと感じました。ただしスティックでのハンドル操作時に反応が若干クイックすぎるかな・・・という印象は受けました。
Call of Duty Mobile
FPS専用パッドモジュールも付属しているということで、「Call of Duty Mobile」もプレイしてみました。こちらも残念ながら物理ゲームパッドをネイティブにサポートしていないので、GPD XPに備わっているキーマッピング機能(上の画像がそうです)で各種操作を割り当てる必要がありますが、リロード操作などをGPD XP本体右側にセットしたFPS専用パッドモジュールに割り当てることで、あまりこのジャンルのゲームをプレイしないかのあゆでも割と快適にプレイすることができました。
5.GPD XP レビューまとめ
今回のレビュー機、GPD XP グローバル版は中国の通販サイト「Banggood」で販売中で、5月26日現在の価格は292.99ドル(38,084円)となっています。なお、この価格はクーポンコード「BGJP4c4d」を適用したものです(クーポンは30台限定で、6月30日まで有効)。
冒頭に書いた通り、今回のレビューは筐体部分については私、ウインタブが、ゲームの操作感についてはライターのかのあゆさんが担当しました。まず、筐体の出来ですが、携帯ゲーム機を多く手掛けるGPD社の製品らしく質感は高いと感じましたし、モジュールのたてつけもよく、また、コントローラー部分の操作感も期待を裏切らないものでした。
ゲームプレイに関しては、かのあゆさんが「Helio G95とその同等クラス」のCPUを搭載するスマホを数多くレビューした経験があることもあり、「どんなゲームで挙動を試したらいいのか」ということをある程度わかった上でテストしています。この記事を公開する前に、私とかのあゆさんで、この製品をどう評価するかについて少し打ち合わせをしました。
CPUがHelio G95である、という時点で「ハイエンドとはいえない」ですよね?一方で、そのぶん価格が手頃である、とも言えます。かのあゆさんとしては、「Helio G95でもほとんどのゲームが快適にプレイできるので、『その範囲』でゲームタイトルを選べば十分楽しめるのではないか。この価格だからこそ欲しい、と思う人が多いのではないか。」という見解でした。
最新モデルのGPD XP Plusのクラウドファンディングは5月30日からINDIEGOGOでスタートする予定になっており、最小構成の早割価格は2,660香港ドル(約43,500円)になるようです。この価格は「思ったよりも安い」と感じます。ただし、配送は8月予定とのことなので、おそらく実機を手にできるのは「夏休み明け」くらいになるんじゃないか、と思います。
XP Plusを待つも良し、いま手に入るXPのほうを安く購入するも良し、だと思いますね。
6.関連リンク
GPD XP:Banggood