こんにちは、natsukiです。クラウドストレージが整備された昨今、だんだんとUSBメモリの活躍の場は少なくなってきているかもしれません。でも、シチュエーションによっては、まだまだ必要な場面はあり、私の場合も、比較的大容量のUSBメモリを常用しています。これまで、SanDiskのExtremeシリーズの64GBのものを愛用していたのですが、さらに大容量が必要になったため、上位版「Extreme Pro」の128GBのものを購入しました。実売価格で、日本国内正規品で¥9,000強、並行輸入品で約¥8,000と、相当に高価ですが、価格に見合った性能を発揮してくれる逸品です。
そこで今回は、この高性能USBメモリの定番ともいうべきSanDiskのExtremeシリーズについて、実力をじっくりチェックしつつ、ラインナップも整理してみたいと思います。
目次
1.Extremeシリーズとは
Extremeシリーズとは、SanDiskが展開する、特に高速なアクセス速度をウリにした製品群です。USBメモリのほか、SDカードやSSDでも展開していますね。
USBメモリを買うときに、スペック上で注目すべきポイントは、主に3つ。第一に「記憶容量」、第二に「物理的なサイズとデザイン」、第三に「データの読み書きの速度」でしょう。あとは、信頼性の目安としてメーカーを気にするかな。そのうち、今回の記事でこだわるのは、「速度」です。基本的な話として、USB2.0よりも、USB3.0やUSB3.1対応のUSBメモリの方が速度が速いというのは当然のこと。しかし、USB3.1対応をうたっていても、実際の速度は製品によってまちまちです。そんな中で、高速を求めるならまずコレ、というのがExtremeシリーズというわけです。
ご覧のように、USBメモリとしてはかなりのビッグサイズ。タブレットなどのとの相性はよくありません。また、ノートパソコンの場合、こいつを挿したUSBポートの周囲のポートに干渉してしまうこともあるでしょう。サイズの時点で、ある程度使うシチュエーションを限定してしまう製品ではあります。
旧版では、下位の「Extreme(型番SDCZ80)」と、上位の「Extreme Pro(型番SDCZ88)」がありましたが、2017年にリニューアルして、下位の「Extreme Go(型番SDCZ800)」と、上位の「Extreme Pro(型番SDCZ880)」に再編されました。ところが、単純にリニューアルで上位互換品になった、というわけではないので、その辺も整理しておきたいと思います。
なお、私が使っているのは、旧シリーズの「Extreme(SDCZ80-64G)」と、新たに購入した新シリーズの「Extreme Pro(SDCZ880-128G)」になります。この2本については、じっくり性能をチェックしてみます。
2.測定環境
重要な測定環境ですが、残念ながら、私はUSB3.1の機器を持っていないので、USB3.0での測定となります。具体的には、「Cube Mix Plus」のUSB Type-Cポートに「dodocool 6in1 多機能USB-Cハブ」経由でUSBメモリをつなぎ、定番の「CrystalDiskMark」のバージョン6.0.1で速度のベンチマークをとるものとします。
それから、スペックとベンチマーク数値と実際の使用感が一致しないというのも、ままあることなので、実際に大容量のファイルをコピーして、その速度も測ってみます。世にベンチマーク比較は山ほどあれど、実際に使った速度まで載せてるレビューは少ないので、個人的にはこれがメインのつもりです。乞うご期待。
なお、USB3.0は無線の干渉による影響を受ける場合があるので、Cube Mix Plusの無線を使いそうな機能はすべてOFFにして、操作はすべてタッチパネルと有線機器で行いました。
3.まず試しに、SanDiskの廉価USBメモリ「Ultra-Flair SDCZ73」を測定
まず試しに、比較対象としてSanDiskの廉価なUSB3.0対応USBメモリである「Ultra-Flair(SDCZ73-016G)」を測ってみます。速度は、公称で読み出し最大130MB/s、書き込みは特に記載がありません。Amazonで¥800弱で購入したものです。だいたい、3.0対応USBメモリとしては標準的な性能を持っていると言ってよいでしょう。サイズは小さめで、横幅をとらないのが利点です。
余談ですが、一般的にサイズが小さいUSB3.0以上対応のUSBメモリは発熱しやすく、こいつも、ベンチマークなんかとると触れないくらい発熱します。もし、ミニUSBメモリを差し込みっぱなしで使うなら、個人的には、速度を犠牲にしてでも、あえてUSB2.0対応のものを使って発熱を抑えた方が安心できると思います。このあたりは、速度と耐久性のバランスで、お好みで考えてください。
さて、この「Ultra-Flair(SDCZ73-016G)」の場合、速度のベンチマーク結果は次のようになります。
最上段が、シーケンシャルアクセス(シーケンシャルリード・シーケンシャルライト)で、まとまったデータの読み取り書き込み速度の目安となります。下3つが、ランダムアクセス(ランダムリード・ランダムライト)で、小規模なデータを頻繁にやりとりする、例えば、OSやソフトの動作などに影響する値と考えておけばいいでしょう。単なるデータ置き場として使うなら、最上段のシーケンシャルアクセスのみ見ておけば十分なはずです。公称値が読み出し最大130MB/sなので、まずまず、期待通りの数値と言えるでしょう。そして、USBメモリなどの小型外部ストレージは、ランダムアクセスが苦手だということもよく分かります。
4.旧Extremeシリーズ
ではいよいよ、Extremeシリーズの実力を見ていきます。まずは、旧版から。
旧Extremeシリーズは、先述のように、下位の「Extreme(SDCZ80)」と上位の「Extreme Pro(SDCZ88)」があります。「Extreme(SDCZ80)」は、2012年発売、容量は16GB・32GB・64GB・128GBをラインナップ。「Extreme Pro(SDCZ88)」は、2014年発売で、容量は128GBのみ。そして、このExtremeシリーズが他のUSBメモリと一線を画すのは、内部構造がSSDだそうで(!?)、公称値であるシーケンシャルアクセスが高速なのはもちろん、通常のUSBメモリが苦手とするランダムアクセスにも、それなりのスコアをたたき出すところです。
上の画像は、私が持っている64GBの「Extreme(SDCZ80-064G)」です。筐体はプラスチック。USB端子はスライド式になっており、ボタンをスライドさせると、バネ仕掛けで「カチンッ」と小気味よく飛び出ます。では、購入以来ほぼ毎日使って酷使してきたこの「Extreme(SDCZ80-064G)」を、あらためてベンチマークを取ってみます。公称値は、64GBのものの場合、読み出しが最大245MB/s、書き込みは最大190MB/s、です。
……さすが、というべきか、USBメモリの数値じゃないですね。シーケンシャルライトが遅くなってしまっていますが、CrystalDiskMarkの古いバージョンを使うと160MB/sくらい出るので、計測方法によるものと思われます(CrystalDiskMarkのバージョン差による計測方法の違いについては、この記事では触れません。適当にググってください)。また、後述のように、実際にコピーしてみると、瞬間的には書き込みで150MB/sくらい出ているのが確認できます。
この数字がどのくらいすごいのかというと、次のデータをご覧ください。
これらは、SSDとeMMCの速度を計測したものです。CrystalDiskMarkのバージョンが5のため、対応する数値の順番が違いますので、ご注意ください。ご覧のとおり、SSDには遠く及ばないものの、eMMCとならまったく遜色ありません。それどころか、シーケンシャルアクセスならExtremeシリーズの方が優れています。つまり、理論上は、USBメモリにOSやソフトを入れて使っても、eMMCのPCの本体ストレージに入っている場合と変わらない快適さで使えるということです。
実際、ずっとこの「Extreme(SDCZ80-064G)」を、拡張ストレージとして活用し、ポータブルが可能な様々なソフトもこちらに置いて使ってきましたが、使用感は非常に快適で外部ストレージであることによる遅延を感じたことはありません。まあ、もちろん、使用ソフトなどによるでしょうけれども。OSの運用までは、やっていません。
なお、上位の「Extreme Pro」は、公称で読み出しが最大260MB/s、書き込みは最大240MB/sとなります。こちらは、所持していないので実際の実力のほどは分かりませんが、公称値だけを見るなら、旧Extremeシリーズは、下位の「Extreme」と上位の「Extreme Pro」の差は書き込み速度くらいで、そんなに決定的な性能差はないことになりますね。まあ、だから下位版を買って使っているんですけれど。
5.新Extremeシリーズ
さて、2017年にリニューアルされた新Extremeシリーズです。新シリーズでは、下位が「Extreme Go(SDCZ800)」の名称になり、容量は64GBと128GBの2種類をラインナップ。上位は「Extreme Pro(SDCZ880)」の名称のまま、旧版では白かった筐体が黒になり、容量は128GBと256GBをラインナップしています。
下位「Extreme Go」は安くなった分、スペックダウン?
まず、下位の「Extreme Go SDCZ800」ですが、スペックを見ると、読み出し最大200MB/s、書き込み最大150MB/sと、……アレ? 旧「Extreme(SDCZ80)」よりスペックダウンしてしまいました。
その分、実売価格は安く、旧「Extreme」がだいたい 1GB=¥100 前後の価格で推移していたのに対し、新「Extreme Go」は、半額近い価格です。64GBのが¥3,000台で、128GBのが¥6,000台で買えます。まあ、読み出し200M/s、書き込み150MB/sでも、十分な速度ですからね。
もう一点、注目すべき事があります。Amazonなどには、大量にベンチマークがアップロードされていますが、それらを見ると、新「Extreme Go」は、ランダムアクセスが軒並み低いことが分かります。安くなった分、残念ながら、OSやソフトをUSBメモリ側に入れるという使い方には適さなくなったようです。
上位「Extrome Pro」は、さらにハイスペックに進化
一方、上位の新「Extreme Pro」は、さらに性能を上げ、公称で読み出し最大420MB/s、書き込み最大380MB/sを誇ります。これはもはや、SSD並みといっていい速度です。
で、記事冒頭の画像ですが、これが新たに購入した「Extreme Pro(SDCZ880-128G)」です。価格は、だいたい 1GB=¥150 程度で推移しているようで、ここは旧「Extreme Pro」とさほど変わりません。
「Extreme(SDCZ80)」と比べてみると、幅、厚みが一回り大きくなり、筐体が金属製であるところが違います。ポートは同様に、スイッチをスライドすると、バネ仕掛けで飛び出します。ともかくサイズはデカいので、あんまりUSBポートが隣接している場合は、これを挿していると他のポートが塞がれたりもしますので、そこは注意です。
初期状態はプロパティで見るとこんな感じ。exFATでフォーマットされ、実際の使用可能領域は約119GBです。3MBほど埋まっているのは、オマケで付いてくるデータ暗号化ソフトです。
それでは、その実力のほどを、実際にベンチマークを取って見てみましょう。
USB3.0でも、これだけの速度が出ます。一方、ランダムアクセスは、旧「Extreme」とさほど変わりませんでした。それでも、eMMCに匹敵する速度は出ているので、もし、USBメモリにOSや各種ソフトを入れるような運用をするなら、新「Extreme」シリーズでは、「Extreme Go」ではなく「Extreme Pro」を購入すべきでしょう。
ただし、実際に使用していると、筐体の素材の差を差し置いても、明らかに「Extreme(SDCZ80)」より発熱があります。ポータブルソフト程度ならいいですが、OSまで入れて運用するとなると、発熱によるスペック低下や破損がちょっと心配。
6.実際のファイルコピー速度は?
最後に、以上の「Ultra-Flair(SDCZ73-016G)」「Extreme(SDCZ80-064G)」「Extreme Pro(SDCZ880-128G)」に、実際に大容量のファイルをコピーして、書き込みにかかった時間をストップウォッチで計測して、書き込み速度を比較してみます。読み出しは、どれも十分高速なので、省略。
書き込むファイルは、以下の2種類です。
まず、シンプルに、単体の大規模ファイル。仮想化したDVDのisoファイルをコピーしてみます。ファイル単体で3.82GBあります。
それから、楽譜コレクションのフォルダ。容量は3.36GBですが、細かいファイルが大量に入っており、フォルダ数232フォルダ、ファイル数は1821に及びます。
結果は、以下のようになりました。
Ultra-Flair(SDCZ73-016G)
3.82GB(1ファイル):6分05秒
コピーのはじめは、ベンチマーク通りの約30MB/sのスピードが出ますが、すぐに10MB/s程度に落ち着いて、最後までそのままでした。
3.36GB(1821ファイル・232フォルダ):6分32秒
ファイル1つのときと比べ、さほどスピードは変わらず、健闘しました。やはり、はじめは速度が出ますが、すぐに落ちて、だいたい7MB/s~10MB/sくらいで推移しました。
Extreme(SDCZ80-064G)
3.82GB(1ファイル):1分37秒
さすがに速い。しかし、速度にムラッ気があります。瞬間最大速度では、約150MB/s越えをマークしました。
3.36GB(1821ファイル・232フォルダ):4分43秒
こちらは、速度が安定せず、思ったよりもてこずりました。それでも、「Ultra-Flair(SDCZ73-016G)」よりは十分速いのが見てとれます。
Extreme Pro(SDCZ880-128G)
3.82GB(1ファイル):16秒
恐るべき事に、一貫して約250MB/sを維持。速度の安定感がハンパではない。4GB弱のデータを、たった16秒という、バケモノぶりを見せつける結果となりました。Extreme Proの名はダテじゃない。
3.36GB(1821ファイル・232フォルダ):40秒
絶句! あ、圧倒的じゃぁないか……
というわけで、実際のコピー速度においては、スペック上の数値をはるかに上回る形で、「Extreme Pro(SDCZ880-128G)」が凄まじい強さを見せつけました。ただ、「Extreme(SDCZ80-064G)」は、約4年間、毎日のように使い続けているので、そのことによる劣化は考慮していいかもしれません。
7.まとめ
ご覧のように、SanDiskのExtremeシリーズは、看板に偽り無しの優れた製品であると思います。特に上位の「Extreme Pro(SDCZ880)」は、ベンチマークの数値以上に、実際の使用でその圧倒的な優秀さを見せつけるところが素晴らしいですね。
スペック的には、新「Extreme Pro」>旧「Extreme Pro」>旧「Extreme」>新「Extreme Go」の順になります。せっかくのExtremeシリーズなので、「Extreme Go」には価格面で妥協せずに高性能路線を貫いて欲しかった気もしますが、通常のデータ置き場としてなら、これでも十分な性能ですもんね。数GBを越えるような大容量の書き込みをたびたび行う用途や、さまざまなソフトをポータブルで持ち歩く場合には、上位の「Extreme Pro」を購入すべきでしょう。
もっとも、OSを入れるような、常時負荷のかかる運用だと発熱が心配でもあります。この画像は、「Extreme Pro(SDCZ880-128G)」をUSB2.0ハブでつないで計測したものです。シーケンシャルアクセスが激減しているのはやむを得ないところですが、ランダムアクセスはさほど減少していないところに注目です。OSを入れる場合は、発熱の様子を見て、あえてUSB2.0接続を行うというのも手かもしれません。
ともかく大容量で快適な速度のUSBメモリを探しているなら、やはり、このExtremeシリーズで決まりでしょう。決して安価ではありませんが、それだけの快適さを実際に体感できる製品ですよ。
8.関連リンク
SanDisk エクストリーム プロ SDCZ880:Amazon
SanDisk エクストリーム GO SDCZ800:Amazon
コメント
丁寧なレビューでとても参考になりました。
ありがとうございます。