こんにちは、natsukiです。ここまで、ドローンについての記事をたびたび書かせていただいていますが、いきなりFPVドローン(ドローン視点で操縦するドローン)だと、操縦技術面、規制面で、なにかとハードルが高いと感じる人は多いと思います。今回は、とりあえず買ってみようか、ではじめられ、その後、いろいろ足していくことでスペックアップできる格安トイドローンを紹介します。4年前の製品ながら、なぜか最近Banggoodで再販がはじまった「JJRC R010」です。バッテリー3つ付いて約2,000円という超格安価格。とりあえずこれを買って、遊びながら興味やスキルに従ってステップアップしていくとよいでしょう。
目次
1.主要スペック
飛行モードは「高度維持機能無し」で高い運動性能
このJJRC R010の飛行モードは、「高度維持機能無し」です。いわゆる「アングルモード」というやつです。このモードは、自動でホバリングしないため、常に操縦者がスロットルを調整して、高度を調節する必要があります。つまり、操縦にそこそこの難易度がある。とはいえ、まったくの素人でも、しばらく練習すれば十分飛ばせるようになるでしょう。
メリットとしては、高度維持機能があるドローンに比べて、パワーと運動性能が段違いです。これは実際に飛ばせば分かるんですが、高度維持機能があると、かえって、高度の微調整ができず、精密な操作ができません。また、多くの機体で、高度維持機能があると機体の傾きの自由度も狭く、風に非常に弱くなってしまいますが、高度維持機能無しなら、多少の風なら抵抗できます。
モーターサイズは、パワフルな716サイズ
同サイズのEachine E010が615サイズ(太さ6mm、高さ15mm)のモーターを積むのに対し、このJJRCはワンサイズ大きい716サイズ(太さ7mm、高さ16mm)のモーターを採用しています。もちろん、大きい方がパワーがあり、スピードだけでなく、風への抵抗力もあります。これ以上大きくなると、今度は重すぎるので、サイズに対して最適のモーターです。
多様な飛行機能
ボタン操作による「宙返り(フリップ)」、精度はアバウトながら操縦者の元へ自動で戻ってくる「ワンキーリターン」、ドローンの向きではなく操縦者との相対的位置に基づいて操縦する「ヘッドレスモード(通称ガメラモード)」での飛行が可能です。特にヘッドレスモードは、初めて飛ばすにはとっつきやすいかもしれません。
プロトコルは「Bayang」
某焼きそば……ではなく、操縦に使われる電波の形式です。はい、ここ、めっちゃ重要。JJRC R010が採用しているBayangプロトコルは、ドローン界隈ではかなり広く使われているプロトコルで、複数の形式に対応したマルチプロトコル操縦機であれば、まず間違いなく操縦可能です。
一般に、この手のトイドローンは、ドローン本体の制御性能は意外にも非常に高く、しかし、操縦機がチャチなためにその運動性能を十分に活かせていないんです。ところが、ほとんどのトイドローンはプロトコルが独自で、付属の操縦機じゃないと操縦できない。このJJRC R010は、メジャーなプロトコルを採用しているため、より精度の高いちゃんとした操縦機を使うことで、その性能を十分に発揮させてやることができるというわけです。
電池3つ付きを選べる
案外、重要なポイントです。このくらいの手のひらサイズのドローンは、飛行時間がせいぜい5分程度なので、バッテリーの数が遊べる快適性に直結します。それから、ドローンのバッテリーは消耗品でもあるし、率直に言って歩留まりも決してよくないので、出来るだけ多く持っておきたいんです。もろもろ分かっていて、はじめから後述のような他のバッテリーの導入を考えているのなら話は違いますが、そうでなければ、バッテリー3つ付きを選択することを、強く推奨します。
あ、そういうわけで、バッテリーの初期不良はけっこうあります。ダメなのは、風船のように膨れてしまっています。なので、開封時には動画を撮っておいて、真っ先にバッテリーをチェックしましょう。
2.ステップ1 ― とりあえず飛ばして遊ぼう
私は、JJRC R010そのものは持っていないのですが、Eachine E011、JJRC H67、FC(フライトコントローラー、つまり内部基板)のバラ買いと、内部的にほぼ同等の機体をいろいろといじくり回してきました。それらの経験からすると、デフォルトのコントローラーは操縦精度が悪く、屋内で練習するのはなかなか厳しいかと思います。一方で、屋外のそれなりに開けたところで、大雑把に飛ばす分には十分楽しめるでしょう。先述のように、パワーがそこそこあるので、そよ風程度ならものともしません。ただし、高度を取るのはやめたほうがいいと思います。
なお、JJRC R010付属の操縦機は技適を通っていないらしいので、自己責任でご利用ください。内部的にはJJRC R010付属の操縦機とほぼ同等の部品を使っていると思われる、技適付きの「Makerfire Armor 65 Lite用操縦機」が、1,000円強なので、扱っているのは「Makerfire」という別の通販サイトのみになりますが、そちらを使ってもいいでしょう。ただ、どちらにしろ操縦精度はよくないので、次のステップ、本格的なマルチプロトコル操縦機でこそ、機体の真価は発揮されます。
マメに「ジャイロリセット」を忘れずに
コツというか、知っておいた方がいいこととして、ジャイロセンサーが非常にデリケートなため、クラシュすると簡単に狂います。両スティックを「同時に右下」でリセットされるので、フライト前には毎回必ずやっておくようにしましょう。
3.ステップ2 ― 高度なマルチプロトコル操縦機でも操縦可能
先に触れたように、このJJRC R010は、プロトコルが「Bayang」であることが判明しており、この「Jumper T8SG V2 Plus(V3)」のような、高い操作性を持つマルチプロトコル操縦機でバインド(接続)して操作することが可能です。マルチプロトコル操縦機についてのお勧め機種は、以下の記事をご覧ください。
初めてなら、「Jumper T8SG V2 Plus(V3)」か「Jumper T-Lite」になると思います。Banggoodでも扱っていますが、Amazonでもそこまで価格は変わりません。Amazonで買う場合は出品者が多数いるので、どこがよいかはレビューなどを見てご判断ください。とりあえず、設定が比較的簡単なのは「Jumper T8SG V2 Plus(V3)」です。Amazonで10,000円ちょいで買えます。すでにやや古い製品ながら、操縦性能に関しては新しい製品と比べても見劣りすることなく、なにより、単三電池で稼働する、ネット上で検索すれば情報を簡単に見つけられるなど、マルチプロトコル操縦機としては、扱いやすさは抜群です。価格的にもうちょっと安い「Jumper T-Lite」は、内部ファームウェアがより高度なもので、できることは多いんですが、電池が特殊だったり、設定に実質パソコンが必要だったり、使用や設定により習熟が要ります。
以下の映像は、Jumper T8SG V2 Plus(V3)とEachine E011のバインドを説明したものです。Eachine E011もJJRC R010も、Bayangプロトコルなので、設定方法は完全に同じです。もちろん、操縦機が別のものだと設定は違います。
とりあえずは、バインドできる状態まで。操縦機の設定画面のチラつきは撮影によるもので、実際にはありません。さらに、宙返り、ワンキーリターン、ヘッドレスモードや、スティック感度の細かい調整もできますが、それは長くなるのでここでは割愛します。いきなり全部やるのではなく、実際に飛ばしながら、物足りなくなれば追加で設定していけばいい部分なので。ともかく、これらの高度な操縦機を使えば、練習すればするほど非常にスピーディーかつ緻密な操作が可能になっていきます。この楽しさを知ると、もう抜け出せない。
鍛錬次第で、このくらい精密操作もできます。さすがにこれは、操縦機の感度の設定を詰めて、それなりに飛ばし慣れているからこその飛行ですが。それでこの程度というツッコミには、ブラシレス機の方がもうちょいうまく飛ばせる……と言い訳しておきます。
4.ステップ3 ― FPV機へも改造可能
Eachine TX06などのFPVカメラをはんだ付けすることで、FPV機への改造も比較的簡単です。
このFC(フライトコントローラー)基盤は、Eachine E011のもので、JJRC R010とは配置などがちょっと違うものの、機能的には同等のものです。端子類も、位置のずれはあっても、同じものが付いているはずです。さて、カメラへの電源供給ですが、赤で丸を付けた2カ所から取ることができます。どちらでもかまわないんですが、個人的な経験からは、Eachine TX06をつなぐなら右側のバッテリープラグからよりも、左側の電源端子(3.3V)を利用した方が、挙動が安定するのでお勧めです。もっとも、はんだ付けの難易度は左側の方が小さい分高いですが。
はんだ付けしました。カメラを直接つないでもいいですが、プラグにしておくと、メンテナンスがしやすいし、カメラを他のラジコンなどに使い回すこともできます。プラグは、Eachine TX06なら「JST 1.25mm 2ピン」で、1つは付属してきます。追加で欲しい場合は、例えばこちらなどをどうぞ。
あとは、カメラをキャノピーに固定して、これにて、完成。なんと、総額3,000円台で、FPVドローンが手に入ってしまいます。
キャノピーは既存のものをカメラに合わせて削ったりしてもいいし、見栄えを気にしなければ、テープなどで絶縁して、その上に輪ゴムで留めてすらかまいません。
また、別にゴーグルも用意する必要があります。詳細は長くなるので、ここでは割愛しますが、初めて買うなら「Eachine VR004(TX06とのセット)」か「BETAFPV VR01」のどちらかがお勧めです。
なお、FPV用のカメラを利用するにあたっては、映像電波を飛ばすために、非常に時代錯誤で、実効性も合理性もない電波法の規制がありますが、その件については、以下の記事などをご覧ください。
今こそドローンをはじめよう! 日本でドローンを楽しむための資格は?免許は?
現在、国会でもドローンがらみの議論は一見盛んですが、制度といい議論といい、いかに実際の技術とかけ離れた形だけのつじつま合わせに始終しているか、こうしてたかだか数千円の製品をちょっといじってみただけでもよーく分かるかと思います。念のため強調しておきますが、私は規制そのものは必要だと思っています。ただ、規制する側される側ともに正しい知識を持ち、現実の技術水準をきちんとふまえて規制の目的を定め、その目的に応じた実効性・公平性を持つものになって欲しいと願うだけです。
5.ステップ4 ― ファームウェアを入れ替えて、アクロバティックな飛行へ
この話は、きっちり説明し出すと非常に長くなるため、ここでは「できる」ということだけに止めておきます。はじめに述べたように、このJJRC R010の飛行モードは「アングルモード」です。一方、本格的なアクロバティック飛行は、センサー類の介入を取っ払った「アクロモード」という飛行モードでこそできます。まあ、JJRC R010は安価なトイドローンなんで、アクロモードができないのは当然なんですが……、いや、それが、やろうと思えばできるんですよ。
この端子からは、なんと、ドローンを動かすファームウェアの書き換えが可能で、FPVドローンの世界でも一般的な「Silverware」というファームウェアを導入することもできるんです。これを行えば、アクロモードによる本格的な飛行ができてしまいます。さすがに、そこまでやるには専用の機材でパソコンにつないでいろいろとやらなくてはいけないので、かなり面倒です。
そこまでやるくらいなら、いっそ、Silverware導入済みFCに、FCそのものを換装しちゃえ、という手もありますけどね。これでも、1,000円台半ばなんで。
6.その他 ― バッテリーあれこれ
ドローンのバッテリーは、何度も飛ばしたり、あるいはずっと放置していると、簡単にへたってしまいます。JJRC R010については、換えバッテリーについて、2つの手段があります。ひとつめは、他のドローンへの汎用性は低いけれど改造無しで使えるバッテリーを買う方法。これは、実質、Banggoodで買う以外の入手は困難だと思います。もうひとつは、高度なFPVドローンでも使うHVリポバッテリーを使えるように改造してしまうこと。こちらは、バッテリーそのものはAmazonで安価に買い足しができるし、もっと高度なFPVドローンで遊ぶようになっても、そのバッテリーは使い回せます。
……え、いずれにしてもけっこうお金がかかるって? はい、ドローンの世界って、バッテリーは基本消耗品だし、管理もデリケートなんで、本体以上にバッテリーのあれこれの方にお金がかかることはめずらしくないんですよね。「ドロ沼」へ、ようこそ!(笑)
そのまま使える強化換えバッテリーはBanggoodで
このJJRC R010に合う換えバッテリーは、Banggoodで扱っている、以下の2種です。2種といっても、バッテリーそのものは同じで、付属の充電器が違うだけですけど。デフォルトのバッテリーよりも「放電レート(C)」が高く、よりパワフルです。
5PCS 3.7V 260MAH 45C Lipo Battery USB Charger Set
5PCS 3.7V 260MAH 45C LIPO Battery Charger Sets
ご覧の通り、セールによって変動はあるものの、かなりいいお値段がします。5つで3,000円は越えてしまうでしょう。だったら、手間はかかりますが、以下の、HVリポバッテリー対応に改造してしまう方が、パワーもアップするし、バッテリーの買い足しは容易だし、さらに高度なドローンへも使い回せるしで、個人的にはお勧めです。
HVリポバッテリー対応への改造
HV(ハイボルト)リポバッテリーは、その名の通り、通常のリポバッテリーよりも電圧が高く強力です。高いといっても、プラス0.1V~0.15V程度で、JJRC R010はHVリポバッテリーにも十分耐えられるはずなので、そこはご安心ください。なお、電圧が違うので、充電器も別に必要です。バッテリー、充電器、改造に必要なコネクタは、いずれもAmazonで比較的安価(海外通販とあまり変わらないという意味で)に手に入ります。
改造に必要なのは、「JST-PH 2.0mm」コネクタです。Amazonにも大量に出品者がいるので、「JST PH 2.0」で検索をかけて、そのとき安いものでいいと思います。なお、中国発送で納期が長いものもあるので注意。もうちょい高度なドローンだと、ケーブルの太さ(瞬間的な出力に関わる)にもこだわりたいところですが、JJRC R010のモーター出力なら、あんまり気にしなくていいと思います。
これを、バッテリーを仮付けして適切な長さを測って切って、バッテリーコネクタの端子にはんだ付けします。このとき、要注意なのが、安物のJST-PH 2.0コネクタは、信じがたいことに、ケーブルの色のプラスマイナス(赤黒)が逆になっているものがあります。もともと付いているコネクタと形状をよく比較して、絶対に極性を間違えないようにしてください。
それから、バッテリー収納部も改造が必要です。詰め物は、100円ショップやホームセンターなどで売っているクッションテープが便利ですが、べつに何でもいいです。これにて改造完了。
以下、HVリポバッテリーと充電器の、Amazonのリンクを貼っておきます。
6本 GNB リポバッテリー 380mAh HV 1S 60C 3.8V/4.35V JST-PH 2.0:Amazon ― お勧めの最新のHVリポバッテリー。これでなくても、「JST PHコネクタ」「250mAh~350mAh程度」のものなら何でもいいんですが、この製品が、安くて高出力で大容量でその割に軽いと、ほぼ従来の製品の完全上位互換のため、他のバッテリーは販売終了になっているものが多いようです。
1S リポバッテリー充電器 USB充電ボード 6チャンネル マイクロJST 1.25 JST-PH 2.0:Amazon ― 一気に6本充電できる充電器。通常のリポバッテリー用と、HVリポバッテリー用があるので注意。
2本 1S LiPoバッテリー充電器 USB充電器 4CH JST-PH 2.0 mCPXコネクタ:Amaozn ― 上記の充電器と、どちらでもお好みで。
電圧チェッカーは持っておこう
ドローン用のバッテリーは、適正電圧で保管しないと、あっというまに劣化してしまいます。通常のリポバッテリーなら3.7Vプラスアルファ、HVリポバッテリーなら3.8Vプラスアルファあたりで保管しましょう。そのためには、バッテリーチェッカーが必要です。Amazonで買うなら、とりあえず以下のどちらかをお勧めします。なお、同等品が大量に出品されているので、リンクは一例です。
【1s専用】リポバッテリーチェッカー(Micro JST 1.25 JST-PH 2.0コネクタ):Amazon ― 使い方がシンプル。
Guokukey 容量テスター【航空機専用の】バッテリーチェッカー 1-7Sリポ電池:Amazon ― 電圧を測るだけならシンプル。多セルバッテリーにも対応。
ちなみに、このタイプは安いんですが、無駄に(?)いろんな情報が表示されて、一発で電圧を表示してくれないので、あまりお勧めできません。
7.まとめと価格
JJRC R010は、バッテリー3つ付きで2,000円程度という、超格安ドローンです。それでいて、ご覧の発展性を持ちます。なんか、本体の紹介より、どう改造するかの方が長くなりましたが、それだけ遊び尽くせる機体ということです。こいつをあれこれといじくり回すことで、ドローンに関する様々な知識や技術も、自然と身についてきます。
正確な価格は、記事執筆現在、バッテリー3つ付きのものが16.99ドル(1,906円)の送料2.63ドル(295円)で、アプリから買うともう一声安く、となっています。先述のように、初めて買うなら、バッテリー3つ付きのバージョンを推奨します。また、色は好みですが、屋外で飛ばすなら、青の方がクラッシュしたときに見つけやすいですね。案外、重要かも。ともかくこのお値段なので、まずは買って遊んでみましょう。
8.関連リンク
JJRC R010:Banggood
法令遵守でドローン 記事一覧