FJDynamicsのDCポータブルバッテリー「PONY 500」の実機レビューです。FJDynamicsは「デジタル化、自動化、新エネルギーに注力するロボティクス企業」で、公式サイトを見ると農地管理システムとか自動操舵システム、掘削機ガイダンスシステムなど、産業ハードウェア、ソフトウェアを得意としています。しかし、日本のAmazonにもこのPONY 500のほか、ポータブル発電機も出品しており、この先は一般消費者向けの製品にも力を入れていく方針のようですね。
FJDynamicsの日本語公式サイト
なお、このレビューはメーカーから実機をサンプル提供して頂いた上で実施しています。
・コンパクトなサイズで504Whの大容量
・ファンレスで静音
・USBポートを5つ装備、5台のデバイスを同時に急速充電可
・数日間はコンセント入らずでPCやスマホが使える。グループキャンプでも便利
ここはイマイチ
・ACコンセントがないので、家電製品には使えない
・容量の割に軽量だが、気軽に持ち運べる重さでもない
・XT-60ポートは多くの人にはニーズがないのでは?
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1.PONY 500 製品概要
まずはスペック表をご覧ください。
FJD PONY 500 Portable Power Station | |
容量 | 504 Wh |
バッテリータイプ | 三元系リチウムイオン電池 |
最大出力 | 500 W |
充電可能回数 | 1,000+ |
充電(入力)/ 時間 | 100W / 5時間 |
防塵性能 | IP4X |
動作温度/湿度 | -20℃~55℃/0℃~45℃ |
ポート(本体) | XT-60 × 2、USB Type-C(PD3.1/140W) |
ポート(DC BOX) | USB Type-C(100W)、USB Type-C(65W)、USB Type-A(18W)× 2 |
サイズ | 221 x 146 x 82 mm |
重量 | 約3.55 kg(本体のみ)/ 約3.95 kg(DC BOX込み) |
PONY 500は、日本では珍しい位置づけのバッテリーだと思います。容量504Whというのはポータブル電源と変わらないくらいに大きく、しかしACコンセントは装備していません。ここ最近ウインタブでもポータブル電源のレビューに取り組むようになってはいますが、このPONY 500の製品仕様にはちょっと面食らいました。
なお、ウインタブでこの製品を「ポータブル電源」とは呼ばず、その理由は「ACコンセントがない」ためです。おそらくこの解釈は一般的なものだと思います。
ACコンセントがないだけでなく、本体にはUSB Type-Cポートが1つだけしかなく、他に「XT-60」ポートを装備しています。XT-60ポートはドローンなどのラジコン製品とか、産業機器に用いられている規格で、そのままではガジェットや家電などには使えません。この規格は私にも馴染みがないですね。Amazonで調べてみるとUSB Type-Cに変換するアダプターが販売されているようですが、今回のレビューではXT-60ポートは使用していません。
一方で、PONY 500にはDC BOXという外付けパーツが付属しており、DC BOXを接続することによってUSB Type-C × 2、USB Type-A × 2も使えるようになります。また、出力も大きく、本体のUSB Type-CポートはPD3.1規格で最大140W出力(ただし、デバイス側でPD3.1に対応している必要があります)、DC BOX側のUSB Type-Cポートも100Wと65W、USB Type-Aポートは18Wでの出力が可能です。なので、USB Type-Cポートを3つ利用すればノートPCを3台同時に充電できます。
筐体サイズは504Whのバッテリーとして同等容量のポータブル電源よりもかなりコンパクトで軽量です。また、PONY 500は「ファンレス」なので、動作音もありません。この点もポータブル電源とは異なります。
ただし、本体のみで約3.5 kg、DC BOX込みで約4 kgというのは「ちょっと中途半端」かと思います。モバイルバッテリーのようにバッグに入れて気軽に持ち運べる感じではありませんし、自動車に積んで出かけるのであれば「別にもっと重くても問題ない」でしょうし。
でも、この記事内でも触れますが、私、この製品にピッタリの利用シーンに遭遇しました…。
2.PONY 500 外観
同梱物です。取扱説明書(日本語です)、ACアダプター、充電用のUSB Type-C – USB Type-Cケーブル、そしてDC BOXです。PONYへの給電はUSB Type-CもしくはXT-60を使い、最大100W入力となります。レビュー品の同梱物にはXT-60ケーブルは含まれていなかったため、基本的にはこの画像に写っているACアダプターとUSB Type-Cケーブルを使うことになります。もちろんサードパーティの急速充電器でも充電は可能です。
前面です。PONY 500の外観は非常にシンプルで、前面のみにポートと電源ボタンがついています。ただ、この画像にあるようにポートはカバーで覆われています。
カバーを外すとこんな感じ。上部にUSB Type-CポートとXT-60ポート × 2、下部に電源ボタンとLEDインジケーターがあります。モニターはついておらず、バッテリー残量は5つのLEDランプで表示されます。この画像では5つのランプのうち2つが点灯していますので、残量は「だいたい40%くらい」ということです。
側面には何もありません。筐体素材はアルミで、かなり「がっしり・ずっしり」した質感です。前面と背面がやや明るめのブルー、この画像(側面)も含め、前面と背面以外は濃いグレーです。この画像は右側面のものですが、左側面も全く同じ形状なので、掲載は省きます。
背面です。こちらに外付けパーツのDC BOXを接続します。接続用のコネクターがありますが、それ以外にポート類やボタン類はありません。
上面です。ちょっと高級感のあるレザー製(おそらく本物のレザーです)のハンドルがついています。
底面です。こちらにはポート類やボタン類はなく、各種認証マークが付いています。PSEマークもありますね。ちなみにPSEマークは「蓄電池のうち、直流(DC)で出力されるもの」には届出・表示が義務付けられていますが、ACコンセントを備え、交流で出力されるポータブル電源の場合は表示義務はありません。
続いてDC-BOXです。このように薄い弁当箱のような形状で、4つのUSBポートが装備されています。それぞれのポートには出力できる最大のワット数も表示されています。
DC BOXを本体に装着してみました。着脱は非常に簡単です。装着は「カチッとはめるだけ」ですし、中央の長方形の突起(レバーになっています)を押し込めば全く力を入れなくとも外せます。
これらの画像を見ていただくと「あえて外付けパーツにする意味があるのか」と思いませんか?DC BOXの着脱により、劇的にサイズが変わるとか重さが変わるという感じではありません。着脱により重量は400 g程度変化しますが、もともと約3.5 kgあるPONY 500が約4 kgになったところで感覚的には大差ないです。もともとの重量が1kgで、DC BOXを装着すると1.5 kgになる、というのなら話はまだわかりますけど…。
3.PONY 500 性能評価
メーカーに問い合わせをし、下記の点を確認しています。
・PONY 500の最大出力(給電能力)は500Wである
・デバイスを充電できるUSBポートはDC BOX接続時だと全部で5つあるが、5つのポートを同時に最大出力で使うことができる
で、今回のレビューでは「5台を同時に最大出力で充電できるか」という検証はできていません。これまでポータブル電源の実機レビューでは「430Wの電気ポットと600Wの電気コンロ」を使って検証してきましたが、PONY 500は「DCのみ」なので、ポットもコンロも使えませんし、私はPD3.1規格(140Wで充電できる)のデバイスも持ってないんです…。
ただし、できる範囲で、ということで、同時期にお借りしていたLenovo Legion Pro 5i(USB Type-Cポートでの充電だと最大100W)、手持ちのノートPC(最大65W)、スマホ(最大20W)で確認してみました。いずれも概ね最大出力の80%~90%程度のワット数が出ていましたので、妥当な出力になっていると判断しました。
一方で、PONY 500を充電する場合、入力が最大で100Wなので、ゼロ%から100%までの充電に要する時間は計算上だと5時間です。テスターでチェックしましたが、92~93Wくらいで充電されましたので、実際にはもう少し時間がかかると思います。これをどう見るかについてはなんとも言えませんが、504 Whという大容量なので、個人的には「まあ妥当」だと思います。
なお、動作音は「しません」。ポータブル電源だと冷却ファンを内蔵しているため、そこそこ大きな動作音になりますが、PONY 500はファンレスのため、一切動作音がありません。また、私が試した限り、発熱もほどんどありませんでした(5台同時に急速充電するなど、高負荷環境では試せていません)。
4.PONY 500をもって北海道へ
PONY 500のレビューのため、というわけではないのですが、たまたま北海道に帰省することになり、「ついでにキャンプしちゃえ!」ということに…。ただ、いつもはマイカーにキャンプ道具を積んで出かけるのですが、今回は新幹線での帰省だったので、「できるだけ荷物を減らさなくちゃ」というのと、「移動中とキャンプ場では電源確保ができない可能性がある。また、事情があって両親宅も使えない。」というのがありました。私は毎日ウインタブの記事を更新しているので、旅行(今回は帰省)でも必ずPCも使います。
日程は2泊3日、海外ではなく国内の移動であったにも関わらず、これだけの大荷物です…。大型スーツケースの中には一人用テントやコット(簡易ベッド)、寝袋などのキャンプ用具に加え、PONY 500も含まれていました。スーツケースの重量は計測していませんが「非力な私だと重くて担げず、新幹線や特急列車の網棚には乗せられなかった」くらいでした。
北海道へは外付けパーツのDC BOXは持って行かず、本体のみ持参しましたが、たとえ400 g程度(DC BOXの重量)とはいえ、分離できる構造であることをありがたいと感じました。…PONYの構造のメリットを身をもって理解した、ということです。
また、持っていったケーブルは「USB Type-C – USB Type-C」の一本のみ。PONY 500は本体だけだとUSB Type-Cポートが1つあるだけなので、複数のケーブルを持っていったところで意味がありません。帰省中(キャンプや電車の移動などすべての場面)はPONY 500とUSB Type-CケーブルのみでノートPCとスマホの充電をすべてまかないました。
ちなみに、帰省の行程で北海道内でのキャンプ1泊のほか、盛岡のビジネスホテルでも1泊しましたが、ホテルでもPONY 500のお世話になりました。もちろんホテルにはACコンセントがありましたけど、私はPCとスマホのACアダプターは持って行かなかったので…。
PONY 500を持っていったことにより、確かに3.5 kgの荷物増とはなったのですが、ACアダプターやケーブルなど、ごちゃごちゃした荷物を持っていく必要がなくなり、「持ち物管理」がラクだったのと、ACコンセントのことを一切心配せずに済んだのは良かったと思います。
2泊3日の行程で、PONY 500のバッテリー残量は「LEDインジケーターが2つ消えたのみ(50~60%程度の残量が残った)」でした。今回は「帰省」だったので両親と過ごす時間もそれなりにありましたし、(北海道だけに)レンタカーを運転した時間も長かったのですが、おそらく相当ヘビーにPCを使っていたとしてもPONY 500が残量切れになることはなかったと思います。
5.PONY 500 レビューまとめ
FJDynamics DC ポータブルバッテリー PONY 500はAmazonで販売中で、通常価格税込み69,800円のところ、製品ページに9月30日まで有効の10,000円OFFクーポンがありますので、59,800円で購入ができます。
レビュー機を受け取った当初、「どういう使い道があるのか…」と思いました。504Whという容量はもちろん魅力ではあるのですが、「ACコンセントがない」となると、ウインタブ読者とか私には実質的に「ガジェットの充電専用」になりますよね?それでいて重さも約3.5 kg(DC BOX込みだと約4 kg)と結構なものです。
しかし、レビュー開始後すぐにPONY 500にピッタリの利用シーンが訪れました。なるほど、ACコンセントが期待できないような環境でも、PONY 500があれば数日はパソコンで仕事ができるし、スマホのバッテリー切れも心配せずに済みます。また、数人のグループでキャンプに行く場合でも、PONY 500を持っていけば全員のスマホやPCの充電を賄えます。ただし、電気コンロとかポット、電気毛布などAC電源が必要な家電製品には使えませんけどね。
XT-60ポートを使うニーズのある人は別として、PONY 500は「パソコンの充電もできる、多ポートで超大容量・大出力のモバイルバッテリー」と理解するのがわかりやすいです。実際のところ、Amazonで「モバイルバッテリー 超大容量」で検索してもここまで大容量な製品は見当たらず、容量で競合するとしたらポータブル電源(ACコンセントあり)になります。
ポータブル電源との比較では「ACコンセントがないかわりにサイズが劇的に小さく、軽い」ということが言えます。その意味では「モバイルバッテリーとポータブル電源の隙間を埋める製品」と言えるかもしれません。
必ずしもすべての人にニーズがある製品とは言えませんが、ご自身の利用パターンに合いそうなのであれば買ってよし、な製品だと思います。