VAIOのモバイルノート「VAIO SX14(VJS1448)」の実機レビューです。先日、VAIOモバイルとしてはハイエンドとなる「VAIO Z」の実機レビューを掲載したところですが、今回レビューするSX14はVAIO Zと同じディスプレイサイズで外観もよく似ています。一方で価格のほうはVAIO Zよりも控えめになっていますので、(決して安価でもないですけど)VAIOとしては比較的購入しやすい製品と言えます。
・14インチで最小重量999 gと軽量
・カーボン天板を採用し、高い質感とMIL規格準拠の堅牢性を兼備
・VAIO TruePerformanceによる高いパフォーマンス
・美しいデザイン
・気持ちよくタイピングできるキーボード
・注文時に広範囲なカスタマイズが可能
・VAIO Zよりもずっと低価格
ここがイマイチ
・スピーカー位置が悪く、タイピング時に音質が変わってしまう
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VAIO SX14:VAIO STORE
VAIO SX14:ソニーストア
目次
1.VAIO SX14 スペック
スペック表
VAIO SX14(VJS1448) | |
OS | Windows 11 Home/Pro |
CPU | Intel Celeron 6305 / Core i3-1115G4 / Core i5-1155G7 / Core i7-1195G7 |
外部GPU | なし |
RAM | 8GB/16GB/32GB |
ストレージ | 128GB/256GB/512GB/1TB/2TB NVMe SSD |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 14インチ(1,920 × 1,080) 14インチ(1,920 × 1,080)タッチ 14インチ(3,840 × 2,160) |
ネットワーク | 802.11 a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.1、(LTE) |
入出力 | USB 4 Type-C(Thunderbolt 4)× 2、USB 3.0 × 2、HDMI、LAN(RJ45)、オーディオジャック、(nanoSIM) |
カメラ | Webカメラ(92万画素/207万画素)顔認証対応可 |
バッテリー | 稼働時間 約17.0~30.0時間(動画連続再生の場合、約8.3~15.5時間) |
サイズ | 320.4 × 222.9 × 13.3-17.9 mm |
重量 | 999~1,139 g |
レビュー機の構成
OS:Windows 11 Home
CPU:Core i7-1195G7
RAM:16GB
SSD:512GB
ディスプレイ:14インチ(1,920 × 1,080)
VAIO SX14は注文時に細かく構成のカスタマイズができますので、いわゆる「カスタマイズモデル」に関しては決まったバリエーション構成はありません
レビューのポイント
・VAIO Zとどう違う?
・立体成型カーボン天板など、こだわりの素材の質感
・14インチサイズで最小で1キロを切る超軽量筐体の取り回しの良さ
・VAIO TruePerformanceによる性能の向上
・VAIOらしい使い勝手への配慮
2.VAIO SX14 筐体
同梱物
同梱物です。ペーパー類は多めですね。ACアダプターは電源ケーブルと一体化され、先端がUSB Type-C、実測重量は161 gと軽量でした。
天板と底面
天板です。天板素材は「カーボン一体成型」で、手触りはなめらかで気持ちのいいものでした。また、VAIOのロゴはシルバーに輝き、また後部もシルバーに塗られており、このへんはVAIO Zとは異なるデザインで、SX14のほうがちょっと派手です。
底面です。ネジがたくさんついていますが、メンテナンスハッチなどはありません。また、この画像の一番下、特に左側が見やすいと思いますが、スリットが入っています。これ、スピーカーです。SX14はステレオスピーカーを搭載していて、VAIO Zと同じ位置になります。
側面
前面です。この面にポート類やボタン類はありません。前面は斜めに傾斜している(上が長く、下が短い)ので、ヒンジ開口は容易です。
前面中央(ヒンジ開口時には上部ベゼルになる位置)にはWebカメラの物理レバーがあり、物理的にWebカメラを塞ぐことができます。
背面です。こちらにもポート類やボタン類はありません。ただ、デザインアクセントでしょうか、光沢のあるシルバーのラインが入っています。
この製品はリフトアップヒンジ構造(ヒンジ開口時に天板の後部が底面に潜り込み、キーボード面に適度な角度がつく構造)になっていますので、ちょうどシルバーのラインのあたりに保護材がついています。
左側面です。画像左からセキュリティロックスロット、通気口をはさんでUSB Type-A、イヤホンジャックがあります。
右側面。画像左からUSB Type-A、USB Type-C、HDMI、有線LAN、USB Type-Cがあります。2つのType-CポートはいずれもThunderbolt 4で、充電/給電ポートも兼ねています。
ディスプレイと使用感
ベゼル幅がわかりやすいように「白い画面」を表示しています。左右ベゼルは細く、上部ベゼルはやや太めですね。また、リフトアップヒンジ構造により、ヒンジ開口時には下部ベゼルがほとんど見えません。
ディスプレイはノングレア(非光沢)タイプです。この画像は映り込みが最も激しくなるような位置で撮影しました。さすがに外光を反射しますが、映り込みそのものはほとんどありません。外出先など、思うに任せない場所で使ってもしっかり視認できると思います。
今回のレビュー機には「1,920 × 1,080、非タッチ」のディスプレイが装備されていましたが、SX14では他に「3,840 × 2,160、非タッチ」「1,920 × 1,080、タッチ(4,096段階の筆圧対応のワコムペン入力に対応)」と、合計で3種類のディスプレイを選べます。
レビュー機のディスプレイの発色品質ですが、決して悪くはないものの「割と普通」というか、他社の上位クラスのノートPCと比較して特段美しい、という感じではありません。期待を上回ることも下回ることもないと思います。
手持ちのモニターと比較してみましたが、原色がやや淡く感じられたものの、色味としては自然なものと感じられました。
VAIO Zのレビューでも書いたのですが、この製品のディスプレイはノングレア(非光沢)タイプで、輝度がやや低めに感じられました。私の感覚だと「仕事用としては輝度70%くらいが妥当、50%だとやや暗く感じる」というもので、他社の高輝度のディスプレイを搭載するノートPCとの比較では少々輝度が足りないと思います。
もちろん通常のビジネス利用で品質が足りないということはありませんが、クリエイターの人であれば、ペン入力が可能なタッチ対応のものや4K解像度のタイプにされるといいと思います。
キーボードと使用感
キーボードです。SX14はキーボードもカスタマイズ項目になっていて「英語、日本語かな文字あり(バックライトなし)、日本語かな文字あり、日本語かな文字なし」の4種類を選べます。なお、バックライトは「日本語かな文字あり(バックライトなし)」以外にはすべて装備されています。
キーピッチとキーストロークも開示されていて、「キーピッチ約19 mm、キーストローク約1.5 mm」となっています。また「キートップに0.3 mmのくぼみあり」と、数値上はVAIO Zとほぼ同じです。薄型軽量なノートPCながら、サイズに十分な余裕があります。
VAIO Zでは「打鍵音に専用のチューニング」が施され、キーボード面もカーボン素材が使われていましたが、SX14ではそれらの記載はありませんでした。キー配列やキートップの形状、キーボード面の大きさなど、見た感じはVAIO Zと同じなので、使いやすさもほとんど変わりません。キーボード面に適度な傾斜がつき、余裕のあるキーピッチでとても快適なタイピングができます。
また、上に書いたように「打鍵音に専用のチューニング」という記載がないものの、打鍵音は小さく、静かな場所でも周囲に気を使うことなく文書作成ができると思います。ただし、大きいサイズのキー、特にEnterキーなどはやや大きめの打鍵音でした。
それと、申し訳ないのですが、キーボード面の素材については判然としません。私の印象だとカーボン素材ではないと感じられましたが、カーボンが入っているか入っていないかというのを正確に判断できませんでした。
結論として、実用面ではVAIO Zと同様、ThinkPadシリーズにも引けを取らない、素晴らしい品質になっていると思います。あと、少しレビューの間隔があいてしまったので、確証はありませんが、キーボード面の剛性感はVAIO Zのほうが少し上だったかな、と思います。
筐体その他
ヒンジを開口し、横から見たところです。このように「リフトアップヒンジ構造」が採用されていて、ヒンジ開口時にキーボード面に適度な角度がつくようになっています。リフトアップヒンジ構造は最近他社製品でもよく採用されていますが、SX14は「めっちゃリフトアップ」しますね。キーボードの打鍵感向上にも寄与していると思います。
ヒンジは最大で180度(水平位置)まで開口可能です。少人数のミーティングの際などに向かい側に座っている人との画面共有が容易となり、ビジネスシーンでは便利な構造です。
スピーカー品質
薄型・軽量なノートPCとしては音質がいいと思います。重低音は厳しいものの、低音から高音までクリアに聞こえます。
音質用のアプリにDolby Accessが入っていましたが、VAIO Zにはあった「Dolby Vison」に関する項目はなく、Dolby Atomsによる音質調整のみに対応します。Dolby Atomsは基本的に「オン/オフ」だけで低音域、高音域のメリハリを強化し、迫力のある音質にしてくれますし、イコライザーで音質のマニュアル調整も可能です。
スピーカーの配置はVAIO Zと同様に、前面のパームレスト下なのですが、この配置は少なくとも音楽鑑賞(BGM鑑賞)としては適していません。音楽を聴きながらテキスト入力をすると、スピーカー部分が手で隠れてしまい、音質が変わってしまいます。他社製品によくみられるように、スピーカー位置は底面もしくは左右側面のほうが良かったと思いますね。
バッテリー駆動時間
いつものように、レビュー機で「ありがち」な使い方を1時間ほどやってみて、バッテリー消費量を確認しました。
ディスプレイ輝度を70%に、音量を25-30%程度、バックライトは「自動」に設定して
・テキストエディタで文章入力を40分
・ブラウザー上でYouTubeを開き、音楽鑑賞を20分
・同じくYouTubeで動画視聴を20分
この作業のトータル時間は60分でした(上の3つを合計すると80分になりますが、20分間は「ながら」で使いましたので、実際の使用時間は60分です)。これでバッテリー消費は14%でした。単純計算だとバッテリー駆動時間は7時間強、ということになります。この結果はVAIO Z(Core i5-11300H搭載)とほぼ同じです。
いつも書いていますが、ウインタブは「バッテリー駆動時間のメーカー公称値」は全く信用していません。経験上「公称値のせいぜい半分」が実稼働時間であることが多いです。なので、SX14の駆動時間についても特に悪いとは思いません。というか、比較的ライトな使い方であったにせよ、7時間バッテリー駆動するのであれば、ほぼ終日外出先で使えると思いますので、「むしろ良好」だと思います。
発熱とファン音
パフォーマンスモードにして3D MarkのTime Spyを5回ほど連続して実施して発熱とファン音をチェックしました。この場合「ファン音はします」。非ゲーミング用のノートPCとしてはやや大きめのファン音となり、一時的に最大で60dbくらいの騒音になりますが、音質はそこまで耳障りという感じではありません。
ベンチマークテストなど、高負荷の作業をせず、ファンモードを「サイレントモード」にして使う場合はほとんどファン音はしませんので、ビジネスシーンではほぼ無音と考えて結構です。
発熱も低めで、キーボード面上部と底面がやや熱を持つものの、タイピングが不快になるほどの発熱量ではありませんでした。側面からの排気は少し熱かったですが、配置的に作業に支障をきたしたり、隣の人に不快感を与えるという可能性は低いと思います。
3.VAIO SX14 性能テスト
VAIO SX14には「VAIOの設定」というアプリがプリインストールされていて、キーボードバックライトの設定やFキーの機能割り当て、充電モードの設定(バッテリー残量80%で充電をストップし、バッテリーを保護する機能など)などができますが、パフォーマンスに関連する項目に「CPUとファンの動作モード」というのがあります。各種ベンチマークテストの実施にあたり、「電源に接続」した状態で動作モードを「パフォーマンス優先」としました。
スコアの目安(2022年2月水準)※あくまで「目安」です | |
GeForceなど外部GPU搭載機 | 5,000以上 |
高性能なビジネスノートパソコン | 4,000以上 |
中位のノートパソコン | 3,000以上 |
エントリーノートパソコン | 2,000以下 |
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。SX14は「ビジネスモバイルノート」なので、このテストが性能の目安として最も参考になると言えます。
レビュー機はモバイルノート・スタンダード用としてはハイエンドと言えるCore i5-1195G7を搭載しています。1195G7は他社製品でよく見かけるCore i7-1165G7よりも新しい型番で、クロックスピードが若干高くなっています。
それを踏まえても素晴らしいスコアが出たと思います。VAIOのPCには「VAIO TruePerformance」という技術が使われていて、より高いパフォーマンスになっています(とVAIOでは言っています)が、外部GPUを搭載せず、高TDP版でもないCPUで5,278点というのは「最高レベル」と言っていいでしょう。
続いてCPU性能のみを測定するCINEBENCH R23のスコア。ここはCore i7搭載機としては「標準よりやや高い」くらいのスコアです。特にマルチコアのスコアが高めになりました。
グラフィック性能を測定する3D Markのスコアです。まず、最近レビューした外部GPU非搭載の他機種と比較してみましょう。
ASUS ExpertBook B9 B9400CEA(Core i7-1165G7):1,832、5,142、11,928
Lenovo ThinkPad X13(Core i7-1165G7):1,762、4,785、12,663
VAIO Z(Core i5-11300H):1,571、4,213、11,375
MSI Summit E13 Flip Evo(Core i5-1135G7):1,498、4,213、11,048
Lenovo IdeaPad Slim 550 14(Ryzen 5 5500U):1,106、2,912、6,173
※左からTime Spy、Fire Strike、Wild Lifeのスコア
SX14のスコアは外部GPU非搭載機としては過去最高だと思います。Tyme Spyで2,000点越え、FireStrikeで5,000点越え、ということなので、少し古めのオンラインゲームなら余裕でプレイできそうなレベルだと思います。ビジネスシーンでは「すごく凝ったPowerPointのスライド作成」も可能なんじゃないでしょうか。まあ、「とんでもないレベルのパワポ職人」には叱られるかもしれませんけど。
ラストはSSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。SX14はSSDの接続方式が「PCIe Gen4(メーカーの表現だと「第4世代ハイスピードSSD」)」で、スコアのほうも「ビジネスノートとしては強烈に速い」と言えます。オーバースペック、という言い方は適切じゃないと思いますが、普通に仕事用に使っていて、「恩恵があるのかよくわからない」くらいの速さです。
4.VAIO SX14 レビューまとめ
VAIO SX14(VJS1448)はVAIO STOREおよびソニーストアで販売中で、3月1日現在の価格はVAIO STOREで税込み142,400円から、ソニーストアで税込み128,099円から、となっています。今回レビューした「Windows 11 Home/Core i7-1195G7/RAM16GB/512GB ハイスピードSSD/FHDディスプレイ」という構成のモデルだとVAIO STOREで231,300円です。
VAIO STOREでは現在3つのキャンペーンが開催されています。
●「新規会員登録(無料)」をして、25万円以上のPCを購入する場合は25,000円の割引が受けられる(クーポンコードがもらえる)
→VAIO STOREのすべてのPCが対象(VJS1448でも使えます)
VAIO ストア新規会員登録お得な特典:VAIOストア
●「新生活応援キャンペーン」で最大70,000円の値引きが受けられる。
→製品価格に反映済みなので、何もする必要はありません
VAIOストア 新生活応援キャンペーン:VAIOストア
●「新生活応援キャッシュバックキャンペーン」で10,000円(学生は15,000円)のキャッシュバックが受けられる
→個人ユーザーおよび学生が対象
VAIO新生活応援 キャッシュバックキャンペーン:VAIOストア
今回のレビュー機の場合、10,000円のキャッシュバックが受けられ、さらに初めてVAIO製品を購入する人がカスタマイズによって250,000円以上となる場合はさらに25,000円の割引が受けられる、ということになります。なお、「新生活応援キャンペーン」による割引については購入時点の価格に反映済みです。
先日VAIO Zの実機レビューを終え、少し間を置いてSX14をレビューさせてもらいました。VAIO Zはフルカーボン筐体の妥協なきハイエンドモデル、こちらのSX14のほうはそれよりもいくぶんマイルド(性能も筐体も価格も)な仕上がりですが、ビジネスノートPCとしての評価はVAIO Z、VAIO SX14でそんなには違いません。筐体のデザインもよく似ていますし、SX14のほうが価格が低いとは言っても決して「安価なPC」ではありませんので、当然安っぽい使用感ではありません。
VAIO ZではCore i5-11300H搭載モデルを、VAIO SX14ではCore i7-1195G7搭載モデルを試用しましたので、単純にパフォーマンス比較はできませんが、「妥協なき」ということならTiger Lake-H35のCore i7-11390Hを搭載するVAIO Zのほうが上ですし、キーボードの打鍵感もVAIO Zのほうが若干優れているとは思います。
個人的には、両者の品質差は小さく、その割に価格差が大きいので、SX14のほうを選ぶと思います。私、自分で購入するなら「ThinkPad推し」なのですが、ここ最近立て続けにVAIO PCのレビューを経験し、「ThinkPadよりも好みかもしれん」と思いました。VAIOはThinkPadとは全く似ていない製品ですが、超軽量な筐体は剛性感も高く、仕上げに国内メーカーらしい精緻さも感じられましたし、キーボードの打鍵感も素晴らしいものでした。
ちょっとネガティブな評価をするとすれば、「スピーカー位置」ですかね。ここだけは改善して欲しいと思いました。国内で販売されているモバイルノートとして、安価とは言えませんが、お金を出す価値がある製品だと思います。