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Panther Lake - GPU性能がすごい2026年最強CPU

オピニオン

Panther Lake:GPU性能がすごい2026年最強CPU
今回は、先日発表されましたIntelの次世代ノートPC向けCPU「Panther Lake」の概要と性能について説明していきます。

Panther Lakeとは:Intel 18Aで製造される新世代CPU

Panther Lake (PTL)は、来年発売予定の次世代のノートPC向けCPUです。その最大の特徴は、メインとなるCPUタイルがIntelの新しい製造プロセス「Intel 18A」で製造される点にあります。今回の発表 Panther Lake Unpackedも、アリゾナで開催されたIntel 18Aプロセスの進捗を披露するイベントに合わせて行われました。

このPanther Lakeは、現在発表されているLunar Lake (LNL)とArrow Lake-H/U (ARL-H/U)の両方の後継となる製品です。CPU、GPU、I/Oなどを組み合わせるタイルアーキテクチャを採用しており、タイル数は3つで、これはLNLの2つ・ARLの4つの中間となります。設計思想としては、LNLをベースに、ARL-Hのように高性能・大型化できるよう発展させたものと位置づけられるでしょう。

3つの製品バリアントとタイル構成

Panther Lakeには、使用するタイルによって大きく分けて3つのバリアントが存在します。

Panther Lake バリアント表

  • 大型CPU+大型GPU 4P+8E+4LPE+12Xe の構成は、強力なiGPUを搭載し、dGPUなしで完結することを狙った製品です。
  • 大型CPU+小型GPU 4P+8E+4LPE+4Xe の構成は、高性能なdGPUを別途搭載するゲーミングノートPCか、高いCPU性能が必要だがiGPU性能はさほど必要ないビジネス向けノートPCでの採用が想定されます。
  • 小型CPU+小型GPU 4P+0E+4LPE+4Xe を搭載した製品は、薄型軽量のウルトラモバイルノートPCから、比較的手頃な価格帯のバリュークラスの製品まで、幅広く採用されることになるでしょう。

また、一部では 具体的な型番に関する噂 も出ており、最も高性能な大型GPU搭載モデルは「Core Ultra X」という名称になるようです。

今回のPanther Lakeでは、CPUタイル、GPUタイル、IOタイルのそれぞれに2種類のバリエーションが用意されており、製品の用途に応じて柔軟に組み合わせることができるタイルアーキテクチャの利点が、いよいよ本格的に発揮されることになりそうです。

Panther Lakeの性能

CPU性能:順当な世代進化とIntel 18Aの成果

PCの基本的な体感速度を左右するシングルスレッド性能は、最大周波数時にLunar Lakeに比べ10%、Arrow Lake-Hに比べ5%程度向上するようです。公開されたグラフを読み解くと、中間的な周波数では同電力時性能は12%程度向上しているようです。これは、CPUアーキテクチャの改善によってクロックあたりの性能が5〜10%程度向上したことと、同電力での動作クロックそのものが若干引き上げられたことによるものと考えられます。競合製品と比較した場合、Raptor Lake、Meteor Lake、あるいはAMDのStrix PointといったCPUに対して、2割増し程度のシングルスレッド性能になるでしょう.

Panther Lake シングルスレッド性能

Panther Lake シングルスレッド性能

次に、複数のコアを同時に使用するマルチスレッド性能です。高性能なPコアの数はArrow Lake-Hの6コアから4コアに減少しますが、これまでは補助的だったLPEコアが性能に貢献できるようになり、各コア自体の性能も向上しているため、全体としては性能が向上しています。特に大型CPUタイルを搭載する製品では、Arrow Lake-Hと比較して同じ消費電力で15%程度の性能向上が見込まれています。

旧世代のRaptor Lakeと比較すると、同じ消費電力であれば性能は2倍に達します。また、競合のStrix Pointと比較した場合、消費電力が45W以下の領域ではPanther Lakeが、それ以上の高消費電力領域ではStrix Pointが優位になるという関係性になりそうです。

Panther Lake マルチスレッド性能

Panther Lake マルチスレッド性能

CPU性能を総合的に見ると、比較的順当に1世代分の進歩を遂げていると言えます。

GPU性能:エントリーゲーミングも視野に入る大幅強化

GPUタイルは、コア数がLunar LakeやArrow Lake-Hの8Xeコアに比べ、1.5倍の12コアに増えた大型版と、逆に半減して4コアになった小型版の2種類があります。製造プロセスは大型版が前世代と同じTSMC N3、小型版がIntel 3と見られています。

使用するアーキテクチャは「Xe3」へと更新されているように見えますが、内部アーキテクチャの世代としては第2世代のBシリーズ“Battlemage”に属することが今回発表され、少し複雑なブランディングとなっています。

発表会では、高性能な大型GPUの性能のみが紹介されました。グラフを読み解く限りその性能向上は非常にシンプルで、Lunar Lakeに比べて1.5倍のコアがあり、1.5倍の電力を使うと、1.5倍の性能が出る、という関係が基本となります。LNLと同じ消費電力であれば1.2倍の性能、最大クロックまで動作させた場合はLNL比2倍の電力で1.7倍の性能を発揮するようです。

Panther Lake GPU概観

Panther Lake GPU概観

実際のゲームにおけるフレームレート(FPS)をLunar Lakeと同一電力で比較したテストでは、平均で10%向上し、特にフレームレートが落ち込む「コマ落ち」の最悪時には25%程度の改善が見られたとされています。コマ落ちが発生する状況はGPUの計算能力がボトルネックになっている場合が多いため、同じ電力で20%以上の性能向上という数字は、信頼できるものと言えそうです。

一方、小型GPUの性能は、大型GPUのコア数・性能・消費電力が全て1/3にスケールダウンしたものと考えてよいでしょう。ここから性能を推測すると、最大クロックで動作させた場合、Lunar Lakeの8コアGPUと比較して約67%の電力で約57%の性能を発揮できる計算になります。これは、Meteor Lake-UやArrow Lake-U、デスクトップ用Arrow Lake-Sに搭載されていた4コアGPUとほぼ同等の最大性能であり、Raptor Lake-Hの96EU iGPUの約1.3倍の性能が、最大でも20W前後の消費電力に収まるようになった、と理解するのがよさそうです。

Panther Lake GPU性能

Panther Lake GPU性能

この性能を他のGPUと比較してみましょう。大型の12コアGPUは、消費電力35WでNVIDIAの前世代ミドルローのRTX 3050を超え、50W時には2世代前のRTX 2060に匹敵、70W動作時には現世代のRTX 4050の背中が見える程度、競合のStrix Pointの2倍の性能を示すと計算されています。これは、なんとか「エントリーゲーミング」を名乗ることができるレベルの性能と言えそうです。

AMDのRyzen AI Maxシリーズと比較すると、AI性能では半分程度になりますが、消費電力は3分の1から半分程度に収まります。あちらは特殊なメモリ構成を必要とする特化した設計ですが、Panther Lakeはあくまで一般的な内蔵GPUの範疇で高い性能を実現していると言えるでしょう。

小型の4コアiGPUはその1/3の性能ですが、おおよそ PS4無印やSteam deck に匹敵する性能で、発売当時は高性能だったRaptor Lake-H 96EU iGPUを超えますから、4Kモニターを複数接続して問題ないですし、ドライバの成熟もあって古いゲームなら問題なく動くでしょう。デスクトップ版Raptor Lakeの32EU iGPUに比べると4倍の性能が期待でき、ミニPCとしても使い勝手がいいでしょう。

また、内部のデータ伝送路であるファブリックがLunar Lakeをベースとしたものに変更され、キャッシュ制御も強化されているため、Meteor LakeやArrow Lakeで見られたような特定の状況下での性能低下は発生しないと考えられます。

NPU性能:Copilot+に対応し効率化

AI処理を専門に行うNPUの性能は、Lunar Lakeと同等です。ただし、Arrow Lakeと比較すると、Windowsの「Copilot+ PC」の要件に対応している点が進化点です。また、チップ上の実装面積は40%以上も削減されており、設計の最適化が進んでいることがうかがえます。特定の計算処理における効率も向上しています。

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バッテリー持続時間と消費電力

バッテリー持続時間については、グラフを読み解く限りArrow Lake-Hに比べ最大クロック時の消費電力が削減されているほか、Lunar Lakeと比べると同電力同タスクで処理時間が1割減りますから、一定の改善が期待できます。発表会では、動画再生時やアイドル時、ストレージにアクセスする際の消費電力が、Arrow Lakeはもちろん、省電力性能に優れたLunar Lakeと比べてもさらに低下していると主張されました。しかし、このあたりは実際の製品で検証してみないと分からない部分も多く、現時点では程度を断定することはできません。

メモリサポート

Panther LakeではLunar Lakeと異なりオンパッケージメモリは廃止され、通常のメモリが最大128GBまで搭載可能とされています。以前から株主総会で、オンパッケージメモリを採用すると在庫管理責任がIntelとOEMの間での押し付け合いになりがちで不都合だということが言われていたので、順当と言えば順当でしょう。大型iGPU搭載製品ではLPDDR5のみながら9600MT/sという高速のメモリが搭載できiGPU性能を底上げできる一方、小型CPU搭載製品では安価な6800MT/sまでと安価なメモリまでのサポートとなっています。

新プロセス「Intel 18A」の素性

今回の発表は、Panther Lakeそのものだけでなく、それを製造する「Intel 18A」プロセスの実力を示すものでもありました。

CPUのシングルスレッド性能を見ると、同じ消費電力で約12%高い性能が出ています。アーキテクチャの進歩を加味しても、Intel 18Aプロセスは、TSMCの3nmプロセスよりも電気的性能が5〜10%程度優れていると言えそうです。その名前が示す通り、TSMCの3nmより高性能で、「2nm級」を名乗るにふさわしいプロセスであるように見えます。

また、噂されている製品リストにおけるコアの無効化の割合を見ると、これまでの世代と大きく変わっていません。これは、Intel 18Aがすでに十分な歩留まり(良品率)を確保できていることを示唆しています。発表された最大クロックが期待よりも少し低めでしたが、これはおそらく歩留まりを優先し、安定供給できる範囲に設定したためだと思われます。

一方で、チップ面積の縮小率(スケーリング)に関しては、TSMC N3とほぼ同程度であり、この点が唯一、競合に後れを取っている部分かもしれません。

結論として、Intel 18Aは目標としていた通りの性能と歩留まりを、すでに達成したと見てよいでしょう。TSMCの3nmと比較して、電気的な性能は1世代分優れていますが、面積は同程度ということで、完全に突き放したわけではないものの、「2nm級」を名乗る資格は十分にありそうです。今後登場するであろうTSMCのN2プロセスとの比較も楽しみなところです。

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