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リネームだらけのCore 200シリーズ(非Ultra)とRyzen 200シリーズ(非AI)

オピニオン

AMD Ryzen 200シリーズ
近年、Intel・AMDの両社は最新世代から落ちた1つ2つ前の旧世代CPUを廉価版として売るようになっています。それに伴い、旧世代CPUに(多少の性能改善をするか否かは別として)新しい名前を与えて売り出す、通称「リネーム」が体系的に行われるようになりました。この稿では、2025年のノート用PUのリフレッシュ・リネームについて確認します。

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前世代と同じようで違うCore Ultra 200Uシリーズ

IntelのCore Ultra シリーズ2は、昨年の200V (Lunar lake)、200S (Arrow lake-S; デスクトップ版)に続き、Arrow lakeの残りである200HX、200H、200Uが発表され、今後徐々に製品が出てくることになっています。

これらのArrow lakeと名乗るCPUのうち、Core Ultra 200Uシリーズだけは「Meteor lakeの製造をIntel 4からIntel 3に焼き直したバージョン」で、他のArrow lakeとはアーキテクチャが異なります。他のArrow lakeに新採用されたLion CoveはHyper Threadingが廃止されており、結果として155H→255Hではスレッド数が減っています。一方で155U→255Uでは依然として従来と同じRedwood Coveが使われており、スレッド数は変わっていません。このため、他のArrow lakeでは得られた大幅なIPC向上の恩恵は受けていません。

–  Core Ultra 7 255H: 6P+8E+2LPEコア、16スレッド、TSMC N3B、Arrow lake
Core Ultra 7 255U: 2P+8E+2LPEコア、14スレッド、Intel 3、Arrow lake
Core Ultra 7 155H: 6P+8E+2LPEコア、22スレッド、Intel 4、 Meteor Lake
Core Ultra 7 155U: 2P+8E+2LPEコア、14スレッド、Intel 4、Meteor Lake

ただし、これは単なるリフレッシュではなく、Intel 4からIntel 3になったことで性能が向上しているようです。スペック表上での155U→255Uの変化を見ると、

最大クロック
– P-core Max: 4.8 → 5.2 GHz (+8%)
– E-core Max: 3.8 → 4.2 GHz (+10%)
– LPEcore Max: 2.1 → 2.4 GHz (+14%)

ベースクロック
– P-core Base: 1.7 → 2.0 GHz (+17%)
– E-core Base: 1.2 → 1.7 GHz (+42%)
– LPEcore Base: 0.7 → 0.7 GHz

となり、全体的に性能が向上しています。私が行ったMeteor lakeの実機レビューではEコアの電力特性の悪さの原因がIntel 4なのではないかと推測し、Arrow lake-UはIntel 3での電力効率の改善から低TDP設定でのマルチ性能向上が期待できると書きましたが、出てきたスペック表では特にEコアのベースクロック(低TDP設定時動作クロック)が改善しており、昨年の推測が的中していたと考えています。実際の性能や電池持ちは実際に計測してみるまで分かりませんが、全く同じ筐体・同じ消費電力でもシングル+8%、マルチは「サイレント」等の低電力モードならば+30%、「バランス」等の設定で+10~20%程度のマルチ性能向上が見込めるのではないかと思います。実機発売後の検証を楽しみにしています。

かつてのティック・タック戦略時代には、「アーキテクチャだけ更新」「製造プロセスだけ更新」のどちらかだけでもCPUに新しいコードネームを与え世代番号を刻んでいたので、「製造プロセスだけ更新」のMeteor lake-U→Arrow lake-Uでも世代番号とコードネームを刻む資格はあり、性能面で見てもシングル性能+10%前後は確定なので、こちらの面でも世代番号を新しくする資格は十分だとは思います。問題があるとすれば、異なるアーキテクチャの製品が同じArrow lakeを名乗っていることくらいでしょう。

Core 200シリーズ:Raptor lakeのリフレッシュの繰り返し

Raptor lakeは2022~2023年に第13世代Intel Coreとして発売され、その後2回リフレッシュ版が発売されました。デスクトップ版か末尾Hか末尾Uかで扱いが異なり、大まかに以下のようなリフレッシュのされ方をしています。

– Core ix-13000HX → Core ix-14000HX → (該当なし)
– Core ix-13000H → (該当なし) → Core 200H
– Core ix-1300U → Core 100U → Core 200U

このうち13000HからCore 200Hへの更新では、i7→Core 7、i5→Core 5など同じ価格セグメントであれば2~5%程度クロックが向上しています。一方でCore 100UからCore 200Uへの更新では、150U⇔250Uなどリフレッシュ前後で性能変化がないペアもあります(vPro等のセキュリティ関係の機能など目立たないところでこっそり差別化しているようですが)。基本的には「同じ値段なら新しい型番のほうがよいが、値段が違うなら安いほうで構わない」という程度の差だ、というのが私の評価です。

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Ryzen 8000シリーズがRyzen 200シリーズ(AIなし)に模様替え

今年のCESで、Ryzen 200シリーズという製品がアナウンスされており、今年の第二四半期から発売されると予告されています。これは公式のスペックシートから見てもRyzen 8000シリーズの名前の付け替えのようです。

Ryzen 200

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スペック表の詳細欄の中にある開発コードネームは、200シリーズと8000シリーズは同じ”Hawk Point”になっています。両シリーズの最上位SKUどうしを比較すると、スペックは寸分たがわず同じです(探せば詳細欄の奥底に違いがあるのかもしれませんが……)。

– Ryzen 9 8945HS:8コア16スレッド、最大5.2 GHz、ベース4 GHz、Radeon 780M(12 CU)、Ryzen AIあり、45W
– Ryzen 9 270:8コア16スレッド、最大5.2 GHz、ベース4 GHz、Radeon 780M(12 CU)、Ryzen AIあり、45W

以下この調子で、下記の組み合わせが全く同じスペックを持っています。

– 8945HS = Ryzen 9 270
– 8845HS = Ryzen 7 260
– 8840U = Ryzen 7 250  (≒ 8840HS)
– 8645HS = Ryzen 7 240
– 8640U = Ryzen 5 230  (≒ 8640HS)
– 8540U = Ryzen 5 220
– 8440U = Ryzen 3 210

Intelの新命名スキームが「Core Ultra = 最新世代、Core無印 = 型落ち世代、数字は3桁」で毎年名前を更新していくというものになりましたが、AMDもこれに倣って「Ryzen AI = 最新世代、Ryzen無印 = 型落ち世代、数字は3桁」というものにしたようです。最近は型落ち世代も継続生産され廉価品枠でそれなりの流通量が出ているので、これからお買い得PCを買いたいという人は覚えておいたほうがよいでしょう。

命名スキームが分かりにくくなってきた

AMDは命名スキームに関して競合を模倣することがよくあります。最近でもRadeonビデオカードの命名スキームが変更され、元々はNVIDIAの4060に対してAMDが7600と世代内Tierの数字が2桁目か3桁目か、細かいtier分けの文字がTIかXTかなど違いがあったところ、最新世代ではNVIDIAのRTX 5070に対してAMDはRX 9070をぶつけるなど命名スキームの模倣が行われています。Ryzen 200シリーズの命名もこの一環なのかもしれません。

加えて、Phoenix Point & Hawk Pointの製品名はもともと混乱気味で、8840HS/8840Uや8640HS/8640Uのペアは根性入れて間違い探しをしないと区別がつかない(Precision Boost Overdriveのみ違う)という例があったり、Ryzen 7000シリーズ発売時には「末尾40がPhoenixで末尾45はデスクトップ用転用のDragon range」という命名スキームだったはずが、Ryzen 8000シリーズではなし崩し的にPhonix PointリフレッシュのHawk Pointに末尾45ができていたりと、無駄に分かりにくくなっていました。それを整理するという意味では、もう一度リセットするのは妥当なのかもしれません。

命名スキームに関して、悪いのはAMDだけではありません。IntelもAMDも昔の命名スキームはある程度複雑で、その結果「CPU型番であるとすぐわかる」「IntelかAMDか容易に区別できる」といったメリットがありました。最近は型番本体部分は単純化される傾向にあり、特に英数字なしの数字3桁だけのものはそれだけ取り出してもCPU型番と分からない状況です。そのうえでAMDがIntelに寄せた結果、さらに混同しやすくなっています。このまま行くと、Core 5 230(デスクトップ用のi5-14400のリフレッシュ)とRyzen 5 230(ノート用の8640Uのリフレッシュ)が共存するという未来すらありそうです。

– i7-13700H ← 間違いようもなくCPU型番
– 8640U ← たぶんCPU型番
– HX 375 ← たぶんCPU型番
– 150U ← たぶんCPU型番じゃないかな……
– 235 ← 分からない(※Intelの最新のデスクトップ用CPU)
– 250 ← 分からない(※AMDの型落ち世代のノート用CPU)

このためフルネームで書かざるを得ないのですが、”Core Ultra 5 235″の真ん中の” 5 “(前後スペースあり)や”Ryzen 7 250″の真ん中の” 7 “は正直邪魔で、”Ryzen 250″と書ければすっきりするのにと思ってしまいます。小売で「高性能Ryzen 7搭載」みたいな売り文句を見るので” 7 “もマーケティング上必要なのでしょうが、記事を書く側とすると書きにくい読みにくいのは否定できません。個人的にはせめてIntelかAMDかを区別する接頭辞と、ノート用かデスクトップ用かを区別する接尾辞くらいは欲しいなあと思っています。

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