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NPU、RTX、AI…今のPCで「使えるAI機能」って何? -「AI搭載PC」の現実と限界

オピニオン

AI搭載PCのイメージ画像「ASUSの超軽量 Copilot+ PC(ASUS Zenbook SORA)」「次世代AI PCでジブン史上最高のPC体験を(HP OmniBook Xicon)」「ビジネスに最適な14型AI PC(Lenovo ThinkPad X9 14)」など、PCメーカーのWebサイトでは「AI」「Copilot+ PC」という文言がさかんに使われています。しかし、これらのPCで私たちが「いますぐ使えるAI機能」にはどんなものがあるんでしょうか?

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先日掲載した記事「Copilot+ PCとは?要件と「NPUが本当に必要か」を冷静に考える」では、NPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)の役割やCopilot+ PCの要件についてご説明しました。今回はその続編として、PCで「いま」使えるAI機能について整理してみたいと思います。

1.PCでのAI処理、仕組みをざっくり整理

まずは基本的なことから。一般にPCの「CPU」にはCPU・GPU・NPUの3つのチップ(プロセッサ)が内蔵されています。ただし、NPUについては比較的新しく、かつ上位クラスの型番にしか内蔵されていません。

・CPU:オールマイティな「頭脳」。AI処理にはあまり向きません
・GPU:もともとは映像処理用ですが、画像生成や機械学習に強い並列処理能力を活かし、AI処理でも活躍
・NPU:AI処理専用の回路。省電力で高効率、スマホでもよく使われています

ただ、重要なのは「すべてのAI処理がローカル(オンデバイス)で完結しているわけではない」というか「ローカルで完結しているAI処理はまだ非常に少ない」という点です。おなじみのChatGPTやMicrosoft Copilotなどはクラウド側で処理されており、PCの性能(特にNPU)の影響をほとんど受けません。

2.NPUでできること(いまのところ)

次に、NPUを搭載したPCで「現時点で実際にできるAI処理」には下記のものがあります。

・チャットAI(ChatGPT, Copilotなど):
 基本的にはクラウド依存。NPU非搭載でも問題なし。
・Windowsスタジオエフェクト:
 Webカメラの背景ぼかしや目線補正などを行うAI機能。これらはNPUを搭載したPCでのみ使えるものが多く、特に「アイコンタクト補正」はNPUがないと使えない。Copilot+ PCではより多くの機能が動作。
・Cocreator(画像生成機能):
 2025年5月現在、Snapdragon X、AMD Ryzen AI 300、および Intel Core Ultra 200V(Lunar Lake)搭載の Copilot+ PC で利用可能。ただし生成画像の品質はまだ不十分。
・音声処理/リアルタイム字幕表示(Live Captionsなど):
 一部NPU対応。使い所は限定的。

つまり、「今すぐ体験できるNPUの恩恵」はまだ少ないです。主にWebミーティングや音声処理など軽量な用途に絞られ、「リッチなAI体験」とは言いがたいです。

3.RTXとRadeon(GPU)で使えるAI

ここでは主にNVIDIAのGeForce RTXシリーズ、特にRTX 30/40/50シリーズを念頭にご説明します。私の理解では、RTXシリーズとは「リアルタイムレイトレーシング(ゲームなどの3Dグラフィックをより現実的に描写する技術)に対応するGPU」という認識でしたが、それだけでなく、「Tensorコア」と呼ばれるAI処理専用の演算ユニットも搭載しています。これにより、Stable Diffusionなどの画像生成や、動画のアップスケーリング・ノイズ除去といったローカルで完結するAI処理にも強みを持っているのです。

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一方、AMDのRadeon RX 9000シリーズ(RDNA 4アーキテクチャ)も第2世代のAIアクセラレータを搭載し、Stable DiffusionやFSR 4などのAI機能が強化されつつあります。NVIDIAと比べるとソフトウェア最適化ではまだ課題もありますが、性能面では着実に進化しており、今後の選択肢として無視できません。

・画像生成(Stable Diffusionなど)
 Tensorコアなどによる高速化が著しい。
・動画アップスケーリング/ノイズ除去:
 例:RTX Video Super Resolution
・AIアップスケーリング技術:
 DLSS 4、FSR 4など。ゲーム用途でも活躍。

これらはコンテンツクリエーションでの「リアルなAI活用」の例であり、ハードウェアの進化が実感できる分野でもあります。ちなみに私は「活用できていない」です。

4.誰にとってAI機能が「意味がある」のか?

一般ユーザー・Web会議ユーザー・クリエイター向けに、AI機能の有用性を表したイラストAI機能の恩恵を受けられるかどうかは、PCの使い方によります。

・一般ユーザー:Copilotや画像生成AIなど、ほとんどがクラウド依存。ハード性能にはあまり関係ない。
・Web会議を多用する人:NPUによるノイズ除去や背景ぼかしは便利。ただし劇的な差が出るとも思えない。
・クリエイター:RTXによるローカルAI処理(画像生成・動画強化など)は実用性が高い。

つまり、「AI機能があるPC=誰にとってもメリットがある」というわけではなく、活用できる人が限られているというのが現実です。

5.「AIでできること」から考えるPC選び

AI機能が使えるかどうかでPCの選び方が変わるのは事実ですが、重要なのは「それが自分に必要かどうか」です。

「いまのところ」NPUを活かせるのはWeb会議や一部の画像生成、音声処理といった限られた用途です。一方で、画像生成や動画処理のような本格的なAI活用にはGPU(特にRTXなど)が有効であり、使用するソフトウェアの構造にもよりますが、NPUは関係ありません。

つまり、「どんなAI機能を、どれだけ使うつもりか?」をはっきりさせることが、AI搭載PCを選ぶ上での出発点です。

6.まとめ:AI搭載PCの実力とつきあい方

「AI搭載PC」や「Copilot+ PC」という言葉が注目されていますが、AI機能への対応度合いだけが高性能PCの基準ではありません。

「AI搭載=高性能」というのは間違いではないが、どんなAI機能が使え、自分がそれを使いたいのか、を理解することが本当の判断基準です。

現時点では、使えるAI機能はまだ限られており、多くはクラウド処理に依存しています。AI処理の恩恵を受けられるのは一部の用途にとどまるため、NPUやRTXが「必須」という状況にはなっていません。

大切なのは、「自分の用途で、AI機能が本当に意味のあるものかどうか」を見極めること。それが、AI時代のPC選びにおける最も現実的なアプローチです。

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