レノボのノートPC「Lenovo Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9」の実機レビューです。この製品はCPUにCore Ultra シリーズ2を搭載するCopilot+ PCで、ディスプレイには2.8Kと高精細かつタッチ対応する液晶を採用するなど、非常にスペックの高い製品です。
なお、このレビューはメーカーよりレビュー機をお借りして実施しています。
・最新CPU、Core Ultra 7 258V搭載のCopilot+ PC
・高い性能と省電力性を両立
・高精細で発色品質も高く、タッチ対応するディスプレイ
・4スピーカー搭載、ノートPCとしては音質が抜群
・スリムで美しく、質感の高い筐体
ここがイマイチ
・オンデバイスAIは今のところ使い道が限られる
・ディスプレイがグレアタイプなので映り込みが強め
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Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9:Lenovo
目次
1.製品概要
スペック表
Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9 | |
OS | Windows 11 Home/Pro |
CPU | Intel Core Ultra 7 258V |
GPU | なし |
RAM | 32GB( LPDDR5X-8533MHz, オンパッケージ) |
ストレージ | 512GB/1TB SSD (M.2 2242 PCIe-NVMe Gen4 TLC) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 15.3型IPS(2,880 x 1,800)タッチ、120Hz |
ネットワーク | Wi-Fi7(a/b/g/n/ac/ax/be)、Bluetooth5.4 |
入出力 | USB Type-C(Thunderbolt 4)× 2、USB3.2 Gen1 Type-A、HDMI、オーディオジャック |
カメラ | Webカメラ(1080p)顔認証対応 |
バッテリー | 70 Wh |
サイズ | 343.8×235.4×13.9mm(最薄部) |
重量 | 1.53 kg |
コメント
CPUのCore Ultra 7 258Vをはじめ、RAM/ストレージの容量、ディスプレイ解像度、Wi-Fiの仕様など、どこをとっても非常に高いスペックの製品です。特にCPUのCore Ultra 7 258Vは「Core Ultraシリーズ2」と呼ばれる最新の型番で、Microsoftが規定する「Copilot+ PC」の要件を満たしています。また、Core Ultraシリーズ2はCPUパッケージの中にRAMを含んでおり、(そもそも32GBと大きな容量ですが)購入後の増設や換装ができない構造です。
ディスプレイも15.3型とやや珍しいサイズで、2,880 × 1,800という高い解像度、「HDR400, 100%DCI-P3」という素晴らしい発色品質を備え、リフレッシュレートも120Hzと高速、さらにタッチ対応もします。
メーカーではYoga Slim 7i Aura Edition Gen 9を「クリエイティブノートPC」と称しており、高い性能と高いディスプレイ品質を必要とするクリエイターをはじめ、高負荷なPC作業をこなすビジネスマンにも適した製品と言えます。
レビュー機の構成
「OS:Windows 11/CPU:Core Ultra 7 258V/RAM:32GB/SSD:1TB」という構成のモデルでした。これ以外の、ディスプレイなどの構成は上記スペック表のとおりです。
2.外観
ACアダプター
ACアダプターは出力が65Wのものでサイズは今どきのノートPC用としては少し大きめかと思いました。実測重量も313 g(電源ケーブル込み)と、やや重いです。
天板と底面
天板です。筐体の外装はアルミでAl陽極酸化スタンピング=アルマイト加工が施されており、フレームはマグネシウム合金、筐体色は「ルナグレー」という、若干濃いめのグレーです。中央に大きくLenovoロゴが入っています。実機の質感は高く、ハイエンドクラスのシステムスペックに見合うものです。
底面です。中央上部に通気口が、画像下部左右にスピーカーが見えます。後述しますがYoga Slim 7i Aura Edition Gen 9は底面の2つのスピーカーに加え、キーボード面にも2つスピーカーがあり、「4スピーカー搭載」です。
側面
前面と背面にはポート類やボタン類はありません。ただ、薄さが際立って見えます(この製品の最薄部13.9 mmという厚さは一般的な15インチクラスのノートPCよりもかなり薄いです)。
左側面です。画像左からHDMI、USB Type-C(Thunderbolt 4)、イヤホンジャックがあります。
右側面には画像左からWebカメラの物理シャッタースイッチ、電源ボタン、USB Type-C(Thunderbolt 4)、USB3.2 Gen1 Type-Aがあります。左右側面のUSB Type-CポートはいずれもThunderbolt 4なのでデータ転送速度は40Gbpsと高速、映像出力とUSB PDにも対応します。実際、この製品の充電にはUSB Type-Cポートを使います。
ディスプレイ
上でもご説明しましたが、ディスプレイは15.3インチと、ちょっと珍しいサイズです。IPS液晶で解像度は2.8K(2,880 × 1,800)と高く、メーカー開示では「HDR400、100%DCI-P3」という高い発色品質を備えています。また、輝度も最大500 nitと明るく(この画像は撮影の都合上、輝度を落としています)、リフレッシュレートも120Hzと高速です。さらにタッチ対応もします。
実機の発色も素晴らしく、当初「これ有機ELだよね」と思っていました。数値面で仕様が開示されているので、特に細かく感想を述べる必要もないかと思います。
設定アプリ「Lenovo Vantage」に「超高解像度」という項目と「色の管理」という項目があり、超高解像度をオンにするとブラウザー上で再生する動画の画質を上げてくれます(ただ、私が試した限り、あまり顕著な効果は体感できませんでした)。また、色の管理ではsRGBとP3の2種類を選べ、切り替えると発色の傾向も変わります(私はsRGBで使っていましたが、ここはお好みで選べばいいかと思います)。
少しだけ不満があるとすれば、「グレア(光沢)タイプであること」でしょうか。グレアタイプのほうが発色が鮮やかになりますが、映り込みが激しくなりますので、出先でPCを使うような場合には設置場所に気を使う必要があります(窓など、光源を背にして使うと映り込みがめちゃめちゃ気になります)。この点以外は文句なしですね。非常に高品質なディスプレイだと思います。
キーボード
キーボードです。テンキーはつきません。キーピッチは手採寸で約19 mmと標準的なサイズでキーストロークはやや浅めと感じられました。バックライトも搭載しており、明るさを「弱、強、自動」の3段階に調整できます。また、キーボード面の両端にスピーカーがあります。
タイピング時に指のかかりを良くするため、キートップ中央がわずかにくぼんでいます。
実際にしばらくタイピングをしてみました。キーの押下圧はやや大きめ(キーを押す力が大きめ=重い、という意味です)ですが、打鍵感はいいですし、打鍵音も小さめです。また、薄暗い場所だとキーの印字がやや見にくくなるのでバックライトの恩恵はあります。個人的にはバックライトの輝度は「弱」で十分でした。
キーボード関連では「Lenovo Hotkeys」というアプリが入っており、あらかじめいくつかのショートカットが登録されているほか、Smart Keyという、ユーザーが任意の操作を割り当てることのできるキーもあります(キーボード最上段、右から3番目のキーです)。
これがSmart Keyの機能割り当て画面です。
筐体その他
ヒンジは180度(水平位置)まで開口できます。この構造の場合、ビジネスミーティングの際などに向かい側にいる人と画面共有がしやすくなります。
スピーカー
クアッドスピーカーを搭載していることもあり、とても薄型ノートPCのスピーカーとは思えない、素晴らしい音質です。ステレオ感がしっかり出ており、低音からクリアかつバランスよく聴けます。そこらへんの安価な外付けスピーカーが足元にも及ばないレベルです。
音響アプリはDolby Accessで、イコライザーもついているので、音質の微調整も可能です。この製品のスピーカーはウインタブとしては過去最高レベルか?と感じるほどで、音楽鑑賞にも十分使える品質だと評価します。
なお、Webカメラやマイクですが、「もちろん高品質」ではあるのですが、Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9はレビュー時点ではまた「Copilot+ PCの認定を受けていない」状態だったため、Copilot+ PC固有の「Windows スタジオエフェクト」は実装されていませんでした(Copilot+ PCの要件は満たしているので、近日中にWindows Updateで固有の機能が使えるようになるはずです)。
3.性能テスト
ベンチマークテスト
ウインタブでCore Ultraシリーズ2を搭載するPCをレビューするのは今回が初めてです。そのため、ベンチマークスコアの確認前に「予備的に」ご説明したいと思います。
Core Ultraシリーズ2はAI処理チップNPUの性能が最大47TOPS(Core Ultra 7 258Vの場合。Core Ultra 5 226Vは最大40TOPS)と高く、Copilot+ PCの要件を満たしていますが、PBPが17Wと抑えられ、コア数/スレッド数も減っています。また、ライターの渋谷Hさんの投稿「IntelのCopilot+PC、Core Ultra 200V (Lunar lake) の概観」を見ると、ハイパースレッディングが廃止され、シングルコア(シングルスレッド)の性能が向上しているものの、マルチコア(マルチスレッド)の性能はCore Ultraシリーズ1のH型番と比較するとワンランク落ちることが指摘されています。
なので、オンデバイスAI性能を別とすれば、各種ベンチマークテストの結果はCore Ultraシリーズ1と大きくは違わないのではないか、ということが想定されます。
ベンチマークテストおよびバッテリー駆動時間のテストにあたり、設定アプリLenovo VantageにあるPCのパフォーマンス・電源設定を「AIにお任せ」としました。…いやね、せっかくの「AI PC」ですし…。
では、実際のベンチマークスコアを確認してみましょう。
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。どちらかというとビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。このテストではCPU性能の影響が大きいとされますが、テスト内容にグラフィック系のシミュレーションも含むため、GPUの性能も少なからず影響します。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 9 185H:8,099
Ryzen AI 9 HX 370:7,511
Ryzen 7 8845HS:7,446
Ryzen 9 PRO 6950H:6,987
Ryzen 7 8840U:6,949
Ryzen 7 PRO 6850H:6,858
Core Ultra 7 155H:6,849
Ryzen 5 8645HS:6,708
Core i9-13900H:6,542
Core Ultra 5 135H:6,485
Core Ultra 7 155U:6,392
Core Ultra 5 125U:6,376
Ryzen 5 7535U:6,021
過去データにある「Core Ultra 7 155H(Core Ultraシリーズ1の高性能タイプ)」とほとんど同じスコアになりました。これをどう見るか、ということについては上にご説明した通り、コア数/スレッド数が少なく、PBPも低いという、パフォーマンス面では本来ハンデになるような仕様でありながら健闘した、と見るべきでしょう。
また、6,821というスコアはPC Markが想定する「ビジネスシーンでの利用」では申し分のない、高水準なものです。
CPU性能のみを測定するCINEBENCH 2024のスコアです
参考(過去データから一部抜粋):
Core i7-14700:122、1,177
Core i9-13900H:117、687
Ryzen AI 9 HX 370:110、942
Snapdragon X Elite:108、1,038
Ryzen 9 8945HS:108、958
Snapdragon X Plus X1P-42-100:108、754
Ryzen 7 8845HS:106、956
Ryzen 9 7940HS:106、914
Core Ultra 7 155H: 105、964
Core Ultra 7 155U:101、533
Ryzen 5 8645HS:98、585
Core Ultra 5 125U:95,533
Core Ultra 5 125H:95、516
Ryzen 9 PRO 6950H:93、774
Ryzen 7 PRO 6850H:91、765
Ryzen 7 5825U:85、590
Ryzen 3 5425U:78、365
※左からシングルコア、マルチコアのスコア
ここでも上記の「予備的」説明の通り、シングルコアでは過去データでトップレベル、マルチコアではCore Ultra 7 155Hに及ばない結果となりました。
グラフィック性能を測定するPC Markのスコアです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 9 185H:4,143、8,223、31,710
Core Ultra 7 155H:3,924、8,338、24,476
Ryzen AI 9 HX 370:3,800、8,026、31,138
Core Ultra 5 135H:3,454、7,235、24,791
Core Ultra 5 125H:3,392、7,301、23,168
Ryzen 9 7940HS:3,362、7,776、29,076
Ryzen 7 8845HS:3,330、7,908、29,873
Ryzen 7 8840U:2,943、7,206、27,471
Ryzen 9 PRO 6950H:2,846、7,051、27,983
Ryzen 7 PRO 6850H:2,660、6,601、26,920
Ryzen 5 8645HS:2,437、6,253、24,401
Core Ultra 7 155U:2,319、5,162、19,024
Core Ultra 5 125U:2,081、4,826、19,421
Core i9-13900H:1,956、5,440、19,477
Core i7-1360P:1,786、4,991、16,779
Core i7-1355U:1,760、4,859、16,891
Ryzen 5 7530U:1,281、3,137、13,730
Ryzen 7 5825U:1,242、3,226、12,859
Ryzen 3 5425U:1,122、2,848、11,949
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
グラフィック性能に関してはCore Ultraシリーズ1よりも確実にレベルアップしています。一般にPCゲームではシングルコア性能が重視されるということもありますし、レビュー機が搭載するCore Ultra 7 258Vの内蔵GPU(Intel Arc 140V)の性能が従来の内蔵GPUよりも高くなっているというのもあると思います。
このスコアであればPCゲームも十分楽しめそうな感じですよね。
SSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。PCIe4.0 ×4接続のSSDらしく、非常に高速です。
バッテリー駆動時間
Windowsの電源モードを「最適な電力効率(もっとも省電力なモード)」に、設定アプリLenovo Vantageで「シナリオ:自動(システムにお任せ)、電源:適応パワーモード(これもシステムにお任せ)」に、ディスプレイ輝度を70%に、音量を30%に、キーボードバックライトを「Auto」にして下記の作業をしました。
・画像加工ソフトGIMPで簡単な画像加工を36分
・ブラウザー上でYouTubeの動画・音楽鑑賞を28分
・ブラウザー上で文書作成を20分
上記トータルで84分使用し、バッテリー消費は14%でした。単純計算だと1時間あたり約10%、バッテリー駆動時間は約10時間となります。
過去のレビュー記事からCore Ultraシリーズ1搭載機のバッテリー駆動時間を確認したところ、Core Ultra 7 155Hで7時間半程度、Core Ultra 7 155Uで7時間半~8時間半程度、という感じでした(あくまでウインタブの測定ベースです)。また、Core Ultraシリーズ1搭載機で(ウインタブの測定ベースで)駆動時間が10時間を越えたものはありません。
バッテリーに関してはレビュー機のコンディションとか、おそらく季節(室温)とかによっても変動しますので、今回のテスト結果だけで断定はできませんが、少なくとも「Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9のレビュー機」に関してはCore Ultraシリーズ1の過去データよりも良好な結果になった、ということは言えます。
また、このことは上記の「予備的」説明にも沿った結果と言えるでしょう。
発熱とファン音
文書作成や表計算などの事務作業ではほぼ無音です。ベンチマークテスト中の発熱とファン音も小さく、ほとんど気になりません。…いやほんと、特に書くことはないです…。
4.レビューまとめ
Lenovo Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9はレノボ直販サイトで販売中で、12月14日現在の価格は249,810円から、となっています。システムスペック面では(ゲーミングや高度な科学技術計算、CADソフトなど専門的な用途を別とすれば)文句なしの水準だと思いますし、パフォーマンスも期待を裏切らないものでした。
残念ながら「売り物の」オンデバイスAI性能に関しては現状しっかりテストできる環境が整っていませんし、対応するソフトウェアも見当たらない状況なので、評価はできません。AI処理性能を別とすれば、Core Ultraシリーズ2の性能は「特にグラフィック性能に関してはやや大きく改善した」と言えるものでしたが、マルチコア(マルチスレッド)性能に関してはCore Ultraシリーズ1よりも少し後退した感があります。その代わり、省電力性は向上したと言っていいと思います。
また「ベンチマークテスト!!」と言うばかりではなく、筐体のデザインや質感、ディスプレイの発色品質、スピーカーの音質といった部分では「さすがレノボの上位モデル!」と言える品質でしたね。製品トータルで見て価格に見合う価値のある製品だと思います。
5.関連リンク
Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9:Lenovo
2014年、低価格な8インチWindowsタブレットに触発されサイト開設。企業でユーザー側代表としてシステム開発や管理に携わっていました。「普通の人」の目線で難しい表現を使わず、様々なガジェットを誰にでもわかりやすく紹介・レビューします。