GMKtec NucBox K11の実機レビューです。CPUにRyzen 9 8945HSを搭載するハイスペックなミニPCで、GMKtecのミニPCラインナップの中でも上位に位置する製品です。つい先日、GMKtecのハイエンドモデル「EVO-X1」もレビューしていますが、特にベンチマークスコアに関しては適宜EVO-X1と比較しながら説明します。
EVO-X1のレビュー記事はこちらです。

なお、このレビューはGMKtecからレビュー機のサンプル提供を受け、実施しています。
・非常に高性能なCPU、Ryzen 9 8945HSを搭載
・2つのファンを筐体上下に搭載、冷却性能に優れる
・デザインのいい筐体、上部のレインボーカラーがアクセント!
・筐体の開口は容易、SSDの増設・換装がしやすい
・OCuLinkポートも搭載
・品質の割に価格が安い
ここはイマイチ
・パフォーマンスモードの切替が面倒
販売サイトはこちらです
Amazon:
NucBox K11(32GB+1TB)
NucBox K11(32GB+2TB)
楽天:
NucBox K11(32GB+1TB)
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GMKtec公式サイト
NucBox K11(ベアボーン)
NucBox K11(32GB+1TB)
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1.スペック
スペック表
GMKtec NucBox K11 | |
OS | Windows 11 Pro |
CPU | AMD Ryzen 9 8945HS |
GPU | なし |
RAM | 32GB(DDR5 5600, 最大64GB) |
ストレージ | 1TB/2TB SSD(M.2 2280, PCIe4.0) ※2スロットあり、最大8TB |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | なし |
ネットワーク | Wi-Fi6、Bluetooth 5.2 |
入出力 | USB4 Type-C(映像出力/PD対応)× 2 USB3.2 Gen2 Type-A × 2 USB2.0 Type-A × 2、HDMI2.1 DisplayPort2.1、OCuLink LAN(RJ45)× 2、オーディオジャック |
カメラ | なし |
バッテリー | なし |
サイズ | 132 × 125 × 58 mm |
重量 | 622 g(実測値) |
※このスペック表はベアボーンモデルを考慮していません
バリエーションモデル
・ベアボーン(OS/RAM/SSDなし)
・RAM32GB/1TB SSD
・RAM32GB/2TB SSD
2.外観
画像中央下にある金属板は「VESAブラケット」です。NucBox K11をPCモニターの裏に取り付ける際の「金具」です。VESAブラケットの右下にあるビニール袋にはブラケット取付用のネジが入っていました。
画像中央上が保証書です。裏面にQRコードが記載されており、そこにアクセスして保証・製品登録をします。画像右にある大きめの冊子は取扱説明書。日本語を含む多言語で記載されていました。説明書の内容は必要最小限という感じで、各部名称と「日本語キーボードの適用方法」が書かれている程度でした。筐体の開口方法や筐体内部の使用説明などについての記載はなく、この点は少し不親切と感じられました。
上部に半透明のアクリル板が張られており、これが遠目だとガラス板に見えますので、高級感もあります。また、メンテナンス性も素晴らしいです!ウインタブはこの筐体を非常に高く評価しています。
それと、これはK11のみの特徴なのですが、通電時に上部ファンの部分がレインボーカラーに光ります(トップ画像をご参照ください)。
それと、中央に大きめの冷却ファンがあります。NucBox K11は筐体の上下に2つの冷却ファンを搭載しており、この画像に写っているのは「RAMとSSD用」です。もう一つのファンは底面にあり、そちらがCPU用ですね。
このデュアルファン構造により、NucBox K11の冷却性能はとても高いです(これも後述します)。
底面の中央に通気口があり、この通気口の内側に冷却ファンがあります。また、画像下部左右にVESAブラケット取付用の穴がありますね。
また、下部に排気口があり、その横にセキュリティロックスロットがあります。高負荷な作業をしていると、この排気口から熱い風が出ます。
3.内部
画像右側をご覧ください。内部の右側に初期搭載のM.2 SSDが見えます。SSDの型番はCrucial P3 Plus、CT1000P3PSSD8、PCIe Gen 4 x4接続)でEVO-X1と同じものでした。M.2 2280の空きスロット(赤枠で囲んだところ)がありますので、モノさえ用意すれば簡単にSSDの増設ができます。
内部の左側にはRAMスロットが2つ。RAMについては2スロットとも初期搭載の16GB RAMが刺さっていますので空きスロットはありません(RAMを増量する場合は初期搭載のRAMを外して容量の大きなものに取り替えることになります)。RAMはTWSCというメーカーのもので、Webでは製品情報が取れませんでした。
もう一段開口するとCPUやCPU用のファンが出てくるはずですが、NucBox K11のCPUはノートPC用なので換装することはできません。なので、ウインタブではこれ以上の開口はしません。ご了承ください。
4.性能テスト
ベンチマークテスト
Performance、Balance、Quietそれぞれのモードでベンチマークテストを実施しました。
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。ビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。また、ウインタブが最も重視しているテストでもあります。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 9 185H:8,099
Ryzen AI 9 365:7,896
Ryzen AI 9 HX 375:7,837
Ryzen AI 9 HX 370:7,511
Ryzen 7 8845HS:7,446
Core Ultra 7 258V:7,527
Ryzen 9 PRO 6950H:6,987
Ryzen 7 8840U:6,949
Ryzen 7 PRO 6850H:6,858
Core Ultra 7 155H:6,849
Ryzen 5 8645HS:6,708
Core i9-13900H:6,542
Core Ultra 5 135H:6,485
Core Ultra 7 155U:6,392
Core Ultra 5 125U:6,376
Ryzen 5 7535U:6,021
Performanceモードの7,650点も素晴らしいスコアですが、Quietモードでも7,433点をマークできている、というのがすごいですね!PC Markが想定しているビジネスシーンでの利用に関してはPerformanceモードとQuietモードの体感差はほとんどないだろうと思います。
参考までに先にレビューしたGMKtec EVO-X1(Ryzen AI 9 HX 370搭載)のPassmarkスコアはこうでした。
Performance:7,835
Balance:7,697
Quiet:7,426
やはりEVO-X1のほうが高いことは間違いないですが、ビジネスシーンでの体感差はほとんどないでしょう。
グラフィック性能を測定する3D Markのスコアです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 7 258V:4,397、8,611、35,677
Core Ultra 9 185H:4,143、8,223、31,710
Ryzen AI 9 HX 375:3,973、8,727、33,713
Core Ultra 7 155H:3,924、8,338、24,476
Ryzen AI 9 365:3,895、8,885、34,303
Ryzen AI 9 HX 370:3,800、8,026、31,138
Core Ultra 5 135H:3,454、7,235、24,791
Core Ultra 5 125H:3,392、7,301、23,168
Ryzen 9 7940HS:3,362、7,776、29,076
Ryzen 7 8845HS:3,330、7,908、29,873
Ryzen 7 8840U:2,943、7,206、27,471
Ryzen 9 PRO 6950H:2,846、7,051、27,983
Ryzen 7 PRO 6850H:2,660、6,601、26,920
Ryzen 5 8645HS:2,437、6,253、24,401
Core Ultra 7 155U:2,319、5,162、19,024
Core Ultra 5 125U:2,081、4,826、19,421
Core i9-13900H:1,956、5,440、19,477
Core i7-1360P:1,786、4,991、16,779
Core i7-1355U:1,760、4,859、16,891
Ryzen 5 7530U:1,281、3,137、13,730
Ryzen 7 5825U:1,242、3,226、12,859
Ryzen 3 5425U:1,122、2,848、11,949
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
グラフィック性能も高いですが、Core Ultra 7シリーズ1、シリーズ2、Ryzen AI 300シリーズと比較すると低めになりました。とはいえ、このくらいのスコアであれば、ちょっと古めのゲームタイトルなら高画質でプレイできるはずですし、最新のAAAタイトルでも画質を落とせば動作するでしょう。
モード間のスコア差もそれほど大きくはありませんが、PCゲームをプレイする場合は少しでもパフォーマンスを上げたくなるのが人情だと思いますので、Performanceモードを使うことになるんだろうと思います。
ここでも参考までにGMKtec EVO-X1のPassmarkスコア(Performanceモード)を掲載しておきます。
Time Spy:4,094
Fire Strike:9,078
Night Raid:34,923
Steel Nomad:3,589
Port Royal:1,932
3D MarkについてはEVO-X1にはっきりとした差をつけられたと思います。
CPU性能のみを測定するCINEBENCH 2024のスコアです
参考(過去データから一部抜粋):
Core i7-14700:122、1,177
Core Ultra 7 258V:121、676
Core i9-13900H:117、687
Ryzen AI 9 HX 375:114、1,144
Core Ultra 9 185H:111、910
Ryzen AI 9 HX 370:110、942
Ryzen AI 9 365:109、1,008
Snapdragon X Elite:108、1,038
Ryzen 9 8945HS:108、958
Snapdragon X Plus X1P-42-100:108、754
Ryzen 7 8845HS:106、956
Ryzen 9 7940HS:106、914
Core Ultra 7 155H:105、964
Core Ultra 7 155U:101、533
Ryzen 5 8645HS:98、585
Core Ultra 5 125U:95,533
Core Ultra 5 125H:95、516
Ryzen 9 PRO 6950H:93、774
Ryzen 7 PRO 6850H:91、765
Ryzen 7 5825U:85、590
Ryzen 3 5425U:78、365
※左からシングルコア、マルチコアのスコア
シングルコア、マルチコアとも高いスコアになりました。シングルコアではIntel勢よりもやや低め、マルチコアではIntel勢を凌ぎます。
モード間のスコア差としては、シングルコアについては3モードで同じスコア、マルチコアではQuietモードでの落ち込みが確認できました。
参考までにGMKtec EVO-X1のPassmarkスコア(Performanceモード)を掲載しておきます。
Performance:116、1,184
Balance:116、1,170
Quiet:116、1,007
CINEBENCH 2024についてもEVO-X1には差をつけられていますね。
シーケンシャルリード/ライト(SEQ1M Q8T1およびSEQ1M Q1T1)ではPCIe4.0 ×4接続のSSDとしては標準的~やや高速な部類ですが、ウインタブの過去の実機レビュー経験に照らすと「十分に高速だが最速レベルではない」、ランダムリード/ライト(RND4K Q32T1およびRND4K Q1T1)も同様ですが、直近でレビューしたPCIe4.0 ×4接続搭載機と比較するとやや高速な部類と言えます。
発熱とファン音
HWiNFO 64で「CINEBENCH 2024のマルチコア測定時」のCPU温度「CPU(Tctl/Tdie)」の最大値、CPUパッケージ電力の最大値を確認しました。
モード | 最高温度 | 最大電力 | 騒音 |
Performance | 82.2℃ | 70W | やや耳障り |
Balance | 79.2℃ | 54W | Performance より若干静か |
Quiet | 66.9℃ | 35W | 一時的に 音量上がる |
発熱は大きくありません。Performanceモードも82.2℃まで上昇しましたが、この程度であればサーマルスロットリングの発生もなく、高負荷時でも問題なくCPU性能をフルに発揮できると思います。
「騒音」については防音設備のない部屋(体感的にはごく静かであった)でPerformanceモード時に53dB程度まで上昇しました。測定環境が整っていないためdBの数値についてはあてになりませんが、Performanceモード時はCINEBENCH測定中、常に大きめのファン音がしており、耳ざわりに感じられる人もいると思います。BalanceモードではPerformanceモードよりも若干ファン音が小さくなりました。Quietモードでは一時的にやや大きめのファン音がしたものの、総じて騒音は小さいです。また、いずれのモードでもEVO-X1と比較するとファン音は少し小さめです。
個人的にはこの表で最も重要なのが最大電力だと思います。PerformanceモードはCPUパッケージ電力の最大値が70Wに達し、Ryzen 9 8945HSのcTDP最大値54Wを越えています。この「70W」というのはGMKtecがNucBox K11の製品ページで謳っている最大電力と一致します。
「それよりも」です、Quietモード時の最大電力35Wというのが素晴らしいかと。これまでベンチマークスコアを掲載してきましたが、Performanceモードにはそれなりの差をつけられていたものの、Performanceモードの半分の電力でもPC Mark 7,000点オーバーの実力があるのなら、電気代が爆上がりしている昨今、「日常的にはQuietモードで全く問題ない」ということが言えると思います。「ここ一番」のときだけPerformanceモード、という感じの使い方がいいんじゃないでしょうか。
5.レビューまとめ
GMKtec NucBox K11はAmazon、楽天、GMK公式サイトで販売中です。3月21日現在の価格は下記の通り。Amazonではセールになっておらず、楽天と公式サイトではセール中です。セールの有無により価格が変動しますので、購入にあたっては3つの販売サイトの価格をよく確認されることをおすすめします。
Amazon:
NucBox K11(32GB+1TB):121,700円
NucBox K11(32GB+2TB):133,500円
楽天:
NucBox K11(32GB+1TB):96,750円
NucBox K11(32GB+2TB):104,250円
※製品ページのクーポンを使用した価格です
GMKtec公式サイト
NucBox K11(ベアボーン):71,500円
NucBox K11(32GB+1TB):89,400円
NucBox K11(32GB+2TB):96,800円
GMKtecのミニPCは2024年のM7シリーズ(NucBox M7 / M7 Pro)から筐体が新しくなり、NucBox K11でも新筐体が使われています。また、他の新筐体モデルと異なり、上面ファンがレインボーに光る、というのは「個人的にはちょっとうれしい」ですw
この新筐体、メンテナンス性とデザイン性が大きく改善されたと思います。ただし、先日レビューしたEVO-X1は「さらにガラッと変わってしまった」んですけどね。
ベンチマークテストのところでEVO-X1と比較しましたが、性能面では間違いなくEVO-X1が上です。しかし、その性能差を大きいと見るか小さいと見るかは人それぞれです(個人的には自分のPCの用途から見て、EVO-X1との性能差は無視してもOKだと思っています)。
次に「コスパ」ですが、「NucBox K11の圧勝」でしょう。EVO-X1は32GB+1TBモデルでも13万円台になりますから、性能差を考慮してもK11のほうがずっとお買い得だと思います。
EVO-X1にするか、それともK11にするか、という検討では「性能」「価格」「筐体構造」がポイントになってきますが、ウインタブとしての評価はこうです。
性能:EVO-X1が上
価格:K11のほうがお買い得(コスパがいい)
筐体構造:お好みで(EVO-X1のほうが新しいが、K11の筐体も古くはなく、メンテナンス性も高い)
それともう一つ、「NPU性能」つまり「省電力でAI処理をする」という点でもEVO-X1が上です。しかしEVO-X1もK11もバッテリー駆動するノートPCではなく、電源接続が必要なミニPCなので、そこまで省電力性を気にしなくていいのではないか、ということと「オンデバイスAIについてはソフトウェア面で全く進捗しておらず、現状は無視しても一向に構わない」と思っていますので、個人的には「評価の対象外」とします。あとは読者の方々のご判断かと。
GMKtecというのは技術面が非常にしっかりした会社で、OSのライセンス不正はありませんし、メーカーサイトではOSイメージやドライバーも用意されています(ダウンロードページはこちら)。また、このレビューでも確認していただけたと思いますが、冷却面での信頼性も非常に高いです。
6.関連リンク
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