ACEMAGICのノートPC「AX15」の実機レビューです。ACEMAGICは中国のPCメーカーで主にWindowsのノートPCやミニPCを手掛けています。ウインタブで中華ノートPCのレビューをするのは本当に久しぶりで、うれしくて涙が出ます(いやほんと)。現在はタブレット製品が主力になっているTeclastやALLDOCUBE(以前はCubeというブランド名でした)も、かつてはWindowsのノートPCやタブレットを精力的にリリースしていて、ウインタブでも相当数の中華ノートPCをレビューしていたんですけどね。
ウインタブがACEMAGIC製品のレビューをするのは今回が初めてです。レビュー機「AX15」は搭載CPUが「Intel N150」と低スペック機が大好きなウインタブのストライクゾーン、そして実売価格も4万円前後と、これまたウインタブのストラ…、すいません、ちょっとしつこいですね。
なお、このレビューはメーカーからレビュー機のサンプル提供を受け実施しています。
・WindowsのノートPCが4万円前後で買える!
・エントリークラスとしては高性能なIntel N150を搭載
・価格帯の割に高品質な筐体とディスプレイ
ここがイマイチ
・バッテリー駆動時間が短め
販売サイトはこちら
ACEMAGIC AX15 Intel Twin Lake NノートPC:ACEMAGIC公式ストア
ACEMAGIC AX15 Intel Twin Lake NノートPC:Amazon
目次
1.スペック
スペック表
ACEMAGIC AX15 | |
OS | Windows 11 Pro |
CPU | Intel N150 |
外部GPU | なし |
RAM | 16GB(DDR4 2666MHz, シングルチャネル) |
ストレージ | 512GB(M.2 2280 SATA) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 15.6インチ(1,920 × 1,080) |
ネットワーク | Wi-Fi5、Bluetooth 5.0 |
入出力 | USB Type-C(データのみ) USB Type-C(電源専用) USB3.2 Type-A×2、USB2.0 Type-A HDMI、オーディオジャック microSDカードリーダー |
カメラ | Webカメラ(1MP/720p) |
バッテリー | 7.6V/5,000mAh |
サイズ | 357.4 × 228.6 × 16.8 mm |
重量 | 1,653 g(実測値) |
コメント
OSはWindows 11 Proで、正規のOEMライセンスであることを確認しました。Pro版で悪いということは全くなく、むしろ歓迎ではあるのですが、AX15のように低価格な製品にあえてPro版を入れて販売する意図は良くわからないですね。
CPUはIntel N150で、開発コードネームが「Twin Lake」のエントリー型番です。以前のCeleronやPentiumと同じ位置づけと言えますが、パフォーマンスはCeleronあたりとは比較にならないくらいに向上しており、「使えるエントリーCPU」として評判もいいです。
RAMは16GBでシングルチャネル、SSDは512GBです。HWiNFOでSSDの接続を確認したところSATAでした。…まあ、CPUがN150なのでSATAでも妥当かと思います。ディスプレイは15.6インチのFHD解像度、最近主流のアスペクト比16:10ではなく、レガシーな16:9です。
では、外観から見ていきます。
2.外観と使用感
同梱物
同梱物です。ACアダプターは電源ケーブル一体式のもので出力は40W、出力の割に若干大きめと感じましたが実測重量は156gと軽いです。取扱説明書は日本語を含む多言語で、各部名称の説明やタッチパッドのジェスチャ操作説明程度と、ごく簡単なことが書かれていました。
一番上にあるのがキーボードに被せる、日本語配列用のシートです。
このシート、シールではなく「一枚のシート」です。後述しますが、思ったよりもずっと「使えるやつ」でした。
天板と底面
天板です。AX15のキーボード面や底面は樹脂製と思われますが、天板は金属製です。表面にサンドブラスト加工が施されていて「わずかにざらつく」手触りです。デザインもシンプルなので、天板に関しては安っぽさはありません。むしろ価格以上の質感と感じられました。
底面です。画像の両端にスピーカーグリルが見えますが、AX15は底面にステレオスピーカーを搭載しています。あとは通気口とゴム足があるのみ。余談ですが、かつての中国メーカーのノートPCには底面にM.2 スロットがあり、ユーザーが簡単にストレージの換装ができる構造でしたよね(参考:Teclast F15 Plus 2のレビュー)。
側面

ACEMAGIC AX15 前面

ACEMAGIC AX15 背面
前面と背面です。これらの面にはポート類やボタン類はありません。筐体が薄型であることがよく分かると思います。
右側面です。画像左からmicroSDカードリーダー、USB 2.0 Type-A、USB3.2 Gen1 Type-A、イヤホンジャックがあります。
左側面です。画像左からUSB Type-C(充電専用)、USB 3.2 Gen1 Type-A、HDMI、USB 3.2 Gen1 Type-Cです。なお、AX15の2つのType-Cポートのうち1つは充電にしか使えず、もう1つはデータ転送にしか使えません(映像出力や充電には非対応)。
キーボード

ACEMAGIC AX15 キーボード
キーボードです。英語配列でテンキーもつきます。キーピッチは手採寸で19mmに少し足りないくらい(18.5mm以上はあります)、キーストロークは標準的くらいです。バックライトはありません。
キーボードの右側にややクセがあります。私がテストしていて気になったのは右下の方向キーの影響で右SHIFTキーが少し食い込んだ位置にあり、使い始めのうち戸惑いました。それと、私はテンキーをあまり使いませんので、試用中特に困りませんでしたが、テンキー側にENTERキーがありません。このあたり、テンキーを多用する人には少し使いにくいかもしれません。

ACEMAGIC AX15 キーボード(日本語のシート装着時)
同梱物のところでお見せした日本語カバーを取り付けてみました。単に置くだけ、なのですが、シートにキートップに合わせた凹凸がついているので、装着時の安定性は高いです。
で、打鍵感ですが、個人的にはむしろカバーを装着した状態のほうが気持ちよく使えましたw もちろん悪く言えば「ぐにゃぐにゃ」な感触ではあるのですが、カバー無しのときには少し安っぽく感じられたタイピングの感触が、カバーを装着することによって静音性が増し、むしろちょっと高級な感じになりました。
ちなみに私は「キーボードだけはうるさい」人間でして、仕事用のキーボードには少しお金をかけていますので、この点に関して的はずれなことを書いているとは思いません。もちろんメカニカルキーボードのようなカチッとしたタイピング感を好む人には不満かもしれませんが、少なくとも「低価格帯のノートPCにラバー製のカバーを付けただけ」という先入観を覆してくれるくらいの使用感だと思います。
なお、キーボード面の左右にスピーカーグリルのようなものが見えますが、ここにスピーカーはありません。これは「デザイン」です。
ディスプレイ
ディスプレイは15.6インチのFHD(1,920 × 1,080)解像度です。アスペクト比16:9で、現在主流となっている16:10のディスプレイと比較すると横長に感じられますが、もともとこのアスペクト比が主流だったので、特に違和感はありません。
視野角も広く、メーカーの開示通りIPS液晶が使われています。発色について、AX15を単体で仕事用として使うぶんには十分キレイだと感じました。しかし、100%sRGBクラスの品質ではありません。手持ちのPCモニター(99%sRGBのもの)と比較すると原色がややくすんで見え、鮮やかさに欠けます。おそらく45%NTSCクラスの発色品質でしょう。
…と、ちょっと厳しいことを書いてしまいましたが、製品価格を考えれば満足できる品質だと思います。
その他・スピーカー
ヒンジはほぼ水平位置(180°)まで開口できます。最近のノートPCはこのように開口角度が大きいものが増えていて、ここまで開けると、ミーティングの際などに向かい側にいる人と画面共有がしやすくなります。
スピーカーの音質は大手メーカーの上位モデルには及びません(まあ当然ですよね)。しかし、製品価格を考慮すると十分な品質だと評価できます。さすがに低音は弱く、全体的に少しこもった感じの音ではありますが、ステレオ感がしっかり出ていますし、動画視聴などは快適でした。じっくり音楽を聴く、という音質ではないものの、作業中にBGMを流すくらいなら満足できますね。
ACEMAGIC AX15にはメーカー独自の設定アプリはありませんが、音響に関しては「Realtek Audio Console」というアプリで調整が可能です。イコライザーもついていますので、割と細かな調整にも対応しています。
3.性能テスト
一応ベンチマークスコアを掲載しますが、Core UltraとかRyzen AI 300とかの最新かつ高性能なCPUを搭載する製品のスコアとは比べるべくもありません。「ベンチマークスコアありき」になってしまうと、Intel N150というCPUの本質を見誤るような気もします。「Core Ultraよりもずっと性能が低い」なんてことは誰でもわかっている話ですよね。
レビュー期間中、ACEMAGIC AX15を使ってウインタブの記事執筆をしてみました。PC負荷の小さい作業がほとんどで、
・画像加工ソフトGIMPで簡単な画像加工
・ブラウザー上でテキスト入力
・動画視聴
・Web閲覧
こんな感じです。この程度であれば全くストレスを感じません。GIMPで画像ファイルを開く際にごく僅かに反応が遅れる程度で、これに目くじらを立てる人もいないだろうと思います。一方で
・ソフトウェアのダウンロードとインストール
・ソフトウェアの初回起動
・Windows Update
・マルチタスク
に関してはIntel CoreやAMD Ryzenとの差を感じました。画像加工ソフトのGIMPは構成ファイル数がかなり多く、インストール及び初回起動(ソフトウェア側で環境設定をする)には、「もともと結構な時間がかかる」んですが、ACEMAGIC AX15では一段ともたつきが大きかったですね。特に初回起動の際は「あれ、アイコンをクリックしているのに無反応…」というくらいに遅かったです(正確に測定していませんが、アイコンをクリックしてから起動画面が出るまでに1分くらいかかったと思います)。
あと、これは軽微ではあるのですが、ブラウザーでYouTubeを再生しているときにGIMPを起動した際、YouTubeで流れていた音楽が一瞬途切れる、という現象もありましたね。ブラウザーにせよ、画像加工ソフトにせよ、起動してしまえば安定性が高く、使っていてストレスを感じることはありませんでしたが、これまで書いてきた通り「ときどきスペック不足が顔を出す」という気はしました。
あと、これも皆さんわかっていると思いますが、動画のエンコーディングであるとかPCゲームには向きません。
ではベンチマークスコアを。今回は個々のスコアについてはコメントを控えます。
ベンチマークスコア
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。ビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。ウインタブが最も重視しているテストです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 7 155H:6,849
Core Ultra 5 135H:6,485
Core Ultra 7 155U:6,392
Core Ultra 5 125U:6,376
Ryzen 5 7535U:6,021
Core i7-1360P:5,929
Core i5-1340P:5,677
Core i7-1355U:5,452
Core i5-1334U:5,145
Core i5-1335U:4,775
Core i5-1135G7:4,066
グラフィック性能を測定するPC Markのスコアです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 7 155H:3,924、8,338、24,476
Ryzen AI 9 365:3,895、8,885、34,303
Ryzen AI 9 HX 370:3,800、8,026、31,138
Core Ultra 5 135H:3,454、7,235、24,791
Core Ultra 5 125H:3,392、7,301、23,168
Ryzen 7 PRO 6850H:2,660、6,601、26,920
Ryzen 5 8645HS:2,437、6,253、24,401
Core Ultra 7 155U:2,319、5,162、19,024
Core Ultra 5 125U:2,081、4,826、19,421
Core i7-1360P:1,786、4,991、16,779
Core i7-1355U:1,760、4,859、16,891
Core i5-1334U:1,386、3,672、13,157
Ryzen 5 7530U:1,281、3,137、13,730
Ryzen 7 5825U:1,242、3,226、12,859
Ryzen 3 5425U:1,122、2,848、11,949
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
CPU性能のみを測定するCINEBENCH2024のスコアです。
参考(過去データから一部抜粋):
Ryzen AI 9 HX 370:110、942
Ryzen AI 9 365:109、1,008
Snapdragon X Elite:108、1,038
Ryzen 9 8945HS:108、958
Snapdragon X Plus X1P-42-100:108、754
Ryzen 7 8845HS:106、956
Core Ultra 7 155H:105、964
Core Ultra 7 155U:101、533
Ryzen 5 8645HS:98、585
Core Ultra 5 125U:95,533
Core Ultra 5 125H:95、516
Ryzen 7 PRO 6850H:91、765
Ryzen 7 5825U:85、590
Ryzen 3 5425U:78、365
※左からシングルコア、マルチコアのスコア
最後にSSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。ACEMAGIC AX15のSSDはSATA接続ですが、このスコアは一般的なSATA SSDよりやや高めです。NVMe SSDとは速度面でかなりの差があり、非常に大きなデータを扱う場合には少し遅く感じるかもしれませんが、通常のビジネス用途であれば快適に使えるレベルです。
バッテリー駆動時間
Windowsの電源モードを「最適な電力効率」に、ディスプレイ輝度を70%に、音量を30%にして下記の作業をしてみました。
・ブラウザー上でYouTubeの動画・音楽鑑賞を約30分
・画像加工ソフトGIMPで簡単な画像加工を約20分
・ブラウザー上でテキスト入力を約70分
上記トータルで約120分使用し、この間のバッテリー消費量は51%でした。単純計算だと1時間あたり25.5%のバッテリー消費、バッテリー駆動時間は約4時間となります。
ウインタブではIntel N150(Twin Lake)搭載のノートPCのレビュー実績が乏しいこともあり「思ったよりもバッテリー持ちが悪い」と感じました。実際、Core Ultraシリーズ2、特にLunar Lakeは性能が非常に高いにもかかわらず驚異的とも言えるバッテリー持ちを実現していますので、それを考慮すると物足りない、と言わざるを得ないですね。
ただし、ACEMAGIC AX15は「15.6インチのスタンダードノート」なので、外出先でモバイル利用をする機会はあまり多くないと思われ、その意味では「こんなもんでいいかな」とは思います。外出先にAX15を持っていく場合はACアダプター、あるいは急速充電器を一緒に持っていくほうがいいでしょうね。
発熱とファン音
ACEMAGIC AX15は冷却ファンを搭載しています。Intel N150ならファンレス設計も可能のような気もしますが、仕事用のPCとしてはファンがついている方が安心かもしれないですね。高負荷時にははっきりとファン音が聞こえますが、音量は小さめですし、音質も耳障りなものではありません。個人的にはあまり気になりませんでした。
また発熱も全く気にならなかったです。ベンチマークテスト中にキーボード面上部に少し熱を感じましたが、全く熱くはならず、「そう言えば少し熱を感じるね」くらいのレベル。「ぬるい」とまでも行きません。
4.レビューまとめ
ACEMAGIC AX15はACEMAGIC公式ストアとAmazonで販売中で、5月25日現在だと4万円前後で購入ができます。
CPUのスペックは確かに低めではあります。しかし、かつてのCeleronとは別物と言っていいくらいに性能が向上しており、Officeソフトやブラウザー上で動作するWebアプリくらいであればストレスなく動作します。記事中でも触れましたが、ソフトウェアのインストールとかWindows Updateの際などに少々非力さを感じる場面もありましたが、これらは毎日発生する作業ではありませんので、普段使いではあまり気にしなくていいと思います。
この製品、もはや「かつての中華ノートPC」ではありません。筐体品質も高いですし、ディスプレイもキレイ、レビュー期間中のシステム挙動も安定していました。しいて中華っぽいと感じたのは「キーボードの日本語シート」くらいでしょうか。しかしこれも予想を遥かに上回る使いやすさでした。
ウインタブ読者のメインノートPCとしては少し弱いと思いますが、サブPC、あるいはリビングルームで使う家族共用PCとしては素晴らしい製品だと思います。4万円なら買って後悔することはないでしょう。
5.関連リンク
ACEMAGIC AX15 Intel Twin Lake NノートPC:ACEMAGIC公式ストア
ACEMAGIC AX15 Intel Twin Lake NノートPC:Amazon
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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