ASUSの15.6インチスタンダードノート「VivoBook 15 OLED K513EA」の実機レビューです。最近ASUSは「有機ELディスプレイ」に力を入れており、11月24日にたくさんの有機ELディスプレイ搭載PCを発表していますが、今回レビューするVivoBook 15 OLED K513EAはそれよりもひと足早く、10月8日に発売されました。また、非常によく似た名称の製品に「Vivobook Pro 15 OLED」という製品がありますが、それとは別製品です。
VivoBook 15 OLED K513EAは、CPUにRyzenを搭載し、外部GPU搭載モデルもラインナップされる「Pro」とは異なり、ビジネスや学習に十分な性能を確保しつつ、より購入しやすい価格で有機ELディスプレイの美しい画質を楽しめる、とても魅力的な製品です。
・有機ELディスプレイは期待を上回る発色品質
・Enterキー側面がイエロー!で使いやすいキーボード
・第11世代Coreプロセッサー搭載の高いパフォーマンス
・どう考えても割安!
ここがイマイチ
・テンキー部分の配列が個性的、少し慣れが必要か
販売サイトはこちら(ASUS Store)
VivoBook 15 OLED K513EA (K513EA-L1867T)(Core i5)
VivoBook 15 OLED K513EA (K513EA-L1869T)(Core i7)
目次
1.VivoBook 15 OLED スペック
スペック表
VivoBook 15 OLED K513EA |
|
OS | Windows 10 Home ※Windows 11無償アップグレード可 |
CPU | Intel Core i5-1135G7 / Core i7-1165G7 |
外部GPU | なし |
RAM | 8GB |
ストレージ | 512GB PCIe SSD |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 15.6インチOLED(1,920 × 1,080) |
ネットワーク | 802.11 a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.1 |
入出力 | USB 3.2 Gen1 Type-C、USB3.2 Gen1、USB2.0×2、HDMI、オーディオジャック、microSDカードリーダー |
カメラ | Webカメラ(92万画素) |
バッテリー | 稼働時間 約4.7時間 |
サイズ | 359.8 × 235.3 × 18.6 mm |
重量 | 1.8 kg |
バリエーションモデル
・K513EA-L1867T:Core i5
・K513EA-L1869T:Core i7(レビュー機の構成)
※CPU以外の構成は共通
※どちらもWPS Officeが付属
コメント
発売時期の関係もあり、プリインストールOSはWindows 11ではなくWindows 10 Homeです。もちろんWindows 11無償アップグレードが可能ですが、今回はWindows 11にはせず、Windows 10のままレビューをしました。
CPUは第11世代(Tiger Lake)のCore i5-1135G7もしくはCore i7-1165G7で、2021年のWindowsノートPCとしては標準的と言えるものが搭載されています。また、RAMは8GB、ストレージは512GB SSDのみが設定され、搭載CPUによる違いはありません。
ディスプレイはVivoBook 15 OLEDの最大のセールスポイントです。15.6インチでFHD(1,920 × 1,080)と、数値面では普通ですが、有機ELパネルが使われ、100%DCI-P3、133%sRGBの色域と、1,000,000:1のコントラスト比、0.2msの応答速度を誇ります。
これはASUSの製品ページにあった比較表です。数字だけで美しさを完全に説明することはできませんが、実際に使ってみて「うわー、めっちゃキレイじゃん!」という感想を持ったのも間違いありません。後述しますが、美しいだけでなく、輝度もすごく高い(すごく明るい)んですよね。
入出力ポートは15.6インチノートとしては標準的だと思います。少なくとも購入してすぐにポートが足りない、と感じることはないでしょう。有線LANポートは欲しかったですけどね。
あと、少し気になるのがバッテリー駆動時間の公称値です。4.7時間というのは最近の(非ゲーミングの)ノートPCとしてはかなり短いほうです。このレビューではバッテリー駆動時間についても簡単に検証していますが、個人的には「そもそもバッテリー駆動時間のメーカー公称値は全く信用できない」と思っています。駆動時間15時間とか20時間を謳う製品であっても、ウインタブの経験上「そのとおりの駆動時間になったことなど一度もない」ですから。
では、筐体と使用感を確認していきます。
2.VivoBook 15 OLED 筐体と使用感
同梱物
同梱物です。ACアダプターは電源ケーブル一体型のコンパクトなものでした。厚みがあり、しっかりとした内容の取扱説明書(グレーの表紙)、保証書、ASUS独自のアプリ(各種設定や製品登録ができるもの)「MyASUS」の案内、初期不良の際などに連絡できる電話番号が書かれた「必ず初めにお読み下さい」の一枚もの、WPS Officeのライセンスカード(VivoBook 15 OLEDは全モデルWPS Officeが付属します)、そして「いつもの茶封筒」です。
茶封筒の中身は「元気の出るカード、シール」です。私が知る限りVivoBookシリーズを購入するとこれがついてきます。天板をにぎやかにしてくれそうですね。
天板と底面・スピーカーの使用感
天板です。VivoBook 15 OLEDは天板素材が金属(おそらくアルミ合金)です。先日レビューしたハイエンドモデル「Vivobook Pro 16X OLED」では独自のデザインになっていましたが、この製品の天板デザインは「普通のVivoBook」ですね。
底面です。両サイドにスピーカーグリルがありますが、それ以外に大きな特徴はありません。なお、スピーカーは「harman/kardon」チューニングによるステレオスピーカーとなっています。ここでスピーカーの音質について感想を述べます。
スピーカーの使用感
ノートPC用のスピーカーとしては素直な音質で好感が持てました。変にこもった音質ではなく、クリアに聴けます。ただし、音量は小さめですし、当たり前ですが低音は弱く、迫力のある音にはならないですね。
音響アプリのDTS Audio Processingをオンにすると「全域が持ち上がる」感じになり、メリハリが強化されます。また、イコライザーもありますので、低音を少し強調したいなどのニーズにも応えられます。
全体的に「ノートPC用スピーカーとして想定の範囲内」ではありますが、その中でも高品質なものに仕上がっていると思いました。
側面
前面です。中央にヒンジ開口用の凹みがありますが、ポート類やボタン類はありません。
背面にもヒンジが見える以外、特に何もないですね。通気口も見えません。
右側面です。画像左からmicroSDカードリーダー、イヤホンジャック、USB Type-C、USB 3.2 Gen1 Type-A、HDMI、DC-INジャックがあります。
左側面です。画像左からUSB 2.0 Type-Aポートが2つ。VivoBook 15 OLEDはUSBポートが合計で4つあり、マウス接続やUSBメモリースティックの接続には不自由しません。しかし、USB Type-Cポートはデータ伝送専用になっていて、映像出力や充電/給電には使えません。映像出力はHDMIポートのみとなります。
キーボードと使用感
キーボードです。アルファベットキーのキーピッチは手採寸で約19 mm弱(18.75mmくらいかと思います)、キーストロークはノートPCとして標準的~やや浅めくらいです。私はVivoBookを過去に何度かレビューさせてもらっていますが、その経験で言うと「いつものVivoBook」ですね。Enterキーのみキートップの側面がイエローに塗られていて、デザインアクセントになっています。
アルファベットキーと記号キーの部分については比較的素直な配列だと思います。ただし、テンキー部分はちょっと変則的で、加減乗除キーが上部に集められ、テンキー側のEnterキーが他のキーと同じサイズになっています。
キートップはフラットで、特に加工はありません。また、このキーボードはバックライトがありません。キートップの印字がはっきりしているので、薄暗い場所でも特にバックライトの必要性は感じません。真っ暗なら別ですが、まあ真っ暗な場所でPCを使うことも少ないか、と。
キーボードの使用感
上にも書きましたが、キー配列は比較的素直ですし、しっかりした打鍵感が得られる、いつものVivoBookのキーボードだと思います。打鍵音も比較的小さめで、「強打しなければ」カフェなどでも周囲の迷惑にはならないと思います。
しばらく使っていて、左上の「全角/半角」キーとESCキーがかなり小さく、IME切り替えの際などに少しミスタイプが発生してしまった、という点と、やはりテンキー部分の配列が少し特殊なのが気になりました。私のように文章を書くのが主用途の場合、この程度の配列のクセは特に気になりませんが、数値入力が多い人は慣れるまでちょっとイラっとするかもしれないですね。ただ、VivoBookのテンキーはみなこのタイプのテンキーなんです。
あと、Enterキーのみキー側面がイエローに塗られている、という点はちょっとしたデザインアクセントと考えるべきでしょうが、アルファベットキーとテンキーの境目が直感的にわかるので、実用面でも便利と感じました。
ディスプレイと使用感
VivoBook 15 OLEDの最大のセールスポイントである「有機ELディスプレイ」ですが、上の「スペック」のところでご説明したとおり「100% DCI-P3、133%sRGBの色域」「600nitの輝度」「コントラスト比1,000,000:1」となっていますので、ここで視力の悪い私が「わあ、きれいですねー」などと感想を述べるのもどうかと思いますが、一応…。
ディスプレイの使用感
とにかく「鮮やか」の一言です。有機ELパネルは「黒がしっかり黒い」という特徴があるため、原色が引き立ちます。手持ちのモニターと比較すると鮮やかさは別物ですね。また、もともと輝度が600nitと高いため、ディスプレイの明るさは50%くらいで十分と感じました。
忠実な発色と鮮やかな発色、というのは別です。なので、クリエイターなど、繊細な色の識別が必要なお仕事をされている人も納得か、と言われれば、私には何とも言えません。メーカーが開示している数値を確認していただくのが一番かと思います。一方で、そういうレベルではなく、一般人(w)で「鮮やかできれいな画面を」という人には強くお勧めできます。このディスプレイを使ってしまったらもう液晶には戻れない、と感じるレベル。
あと、これは仕方ないと思いますが、グレア(光沢)タイプのディスプレイなので、設置場所によっては映り込みが気になります。素晴らしい発色性能を生かすため、置き場所には気を使いましょう。
ディスプレイの保護機能について
ASUS製品には「My ASUS」というアプリが入っています。有機ELディスプレイ搭載製品についてはディスプレイを保護する設定があります。この画像はMy ASUSのものですが、「ピクセルリフレッシュ」と「ピクセルシフト」です。これは常にオンにしておくと良いでしょう。また、今回のレビューでは検証していませんが、ユーザー側としても日頃からディスプレイに同じ画像が長時間表示されないようにするなど、多少の気配りが必要だと思います。
筐体その他
VivoBook 15 OLEDはASUS製品でよく見られる「エルゴリフトヒンジ(リフトアップヒンジ)構造」ではありません。ヒンジを開口してもキーボード面に角度はつきません。また、この画像はヒンジを最大開口したところなのですが、実用上は全く問題ないとは言え、開口角度はやや狭めです。
バッテリー駆動時間
ウインタブではソフトウェアによる測定ではなく、実際にしばらく使ってみて、バッテリー消費量を確認するというアナログな手法を取っています。今回は、
ディスプレイ輝度を50%に、音量を30%に設定し
・ブラウザー上で文書作成を約30分
・You Tubeの動画視聴を20分
・画像加工ソフトを使い、簡単な画像編集を20分
使ってみました。測定時間は70分、バッテリー消費量は32%でした。単純計算だと1時間あたり約27%のバッテリー消費、駆動時間は3時間半~4時間弱ということになります。メーカーの公称値が「約4.7時間」ということなので、「まあ妥当」だと思います。一部の製品のように「駆動時間20時間、でも実際に使ってみると8時間」みたいなことにはなっていないですね。
この製品はスタンダードノートなので、電源接続をして使うケースが多いと思いますが、外出先で長時間使うような場合はACアダプターを一緒に持っていくほうがいいでしょう。
発熱とファン音
まず、VivoBook 15 OLEDの本来の使い方、というか、オンラインゲームや複雑な動画編集などをしない、という前提だと発熱もファン音も全く気にしなくて大丈夫です。ファン音はほぼ聞こえません。
一方、これからご説明しますが、ベンチマークテスト中は、それほど耳障りではないものの、ファン音がします。ただし、他機種と比較して音量が耳障りということはなく、むしろ静かな部類だと思います。また、発熱についても数回ベンチマークを回した程度ならキーボード面上部が多少熱を持つくらいで、「熱くてキーボードが触れない」などということにはなりません。なので、VivoBook 15 OLEDについては発熱、ファン音とも心配する必要はないと評価します。
3.VivoBook 15 OLED 性能テスト
VivoBook 15 OLEDはゲーミングPCではないのですが、設定アプリのMy ASUSにパフォーマンスを調整できる項目があります。今回はここを「パフォーマンスモード」にしてテストしました。
スコアの目安(2021年水準)※あくまで「目安」です | |
GeForceなど外部GPU搭載機 | 5,000以上 |
高性能なビジネスノートパソコン | 4,000以上 |
中位のノートパソコン | 3,000以上 |
エントリーノートパソコン | 2,000以下 |
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。グラフィック性能に特化したテストの3D Markなどと比較するとCPU性能の差(影響)が大きめですが、テスト項目にグラフィック処理も含んでいますので、CPU性能だけでなく、外部GPUを搭載する製品のほうが高いスコアが出ます。
スコア5,017点とというのは非ゲーミングノートとしてはとても高いと言えます。ウインタブの実機レビューで、第11世代Coreや第4世代Ryzenを搭載する製品はどれも期待を裏切らない、というか、想定を上回るスコアをマークしてくれます。また、個人的には「節目」と言える5,000点をオーバーした、ということに喜びを感じてしまいますw
ともあれ、PC Markでこれだけのスコアが出るのであれば、ビジネスシーンで性能不足を感じることはまずないでしょう。非常に快適に使えると思います。
続いてCPU性能のみを測定するCINEBENCH R23のスコアです。ここではCore i7-1165G7搭載機としては標準的といえるスコアになっています。
続いてグラフィック性能を測定する3D Markのスコアです。ここは「低い」です。Core i7-1165G7搭載機であれば、例えばFireStrikeなら4,000点は越えてくれないと…、というのが正直な感想です。
一応時間をずらして数回測定しましたが、スコアは改善されませんでした。レビュー機の個体差なのか、あるいはUEFIでなにか設定すべきなのか、原因はちょっとわかりませんね。
一応弁護しておくと、このスコアでもビジネスシーンでは困らないと思いますし、その他の利用シーンでも外部GPU非搭載機としてグラフィック性能が悪い、ということはありません。
ラストはSSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。VivoBook 15 OLEDのSSDは「PCI Express 3.0 x2接続」と開示されており、その仕様にふさわしい速度になっています。ビジネス用途ではオーバースペックと言えるくらいの速度です。動画などの大容量データを扱う際にも快適だと思います。
4.VivoBook 15 OLED レビューまとめ
ASUS VivoBook 15 OLEDはASUS Storeで販売中で、12月9日現在の価格は下記のとおりです。
・K513EA-L1867T:Core i5:84,800円
・K513EA-L1869T:Core i7:99,800円
※税込み価格
※クリスマスセール(12月24日まで)による割引価格
※1月31日まで「30日間無料返品保証」
ウインタブで「VivoBookの15.6インチ」をレビューさせていただくのはこれが初めてではありません。よって、筐体品質とか使い勝手については「少し慣れている」ほうだと思います。VivoBookの15.6インチはEnterキーの側面が別色だったり、上にご紹介した「茶封筒」がついていたりと、適度な遊び心と個性を備えつつ、使用感は「真面目なスタンダードノート」です。
今回レビューしたVivoBook 15 OLEDは、その真面目なスタンダードノートのディスプレイを有機ELにしてしまった、というところに特徴があり、その効果は非常に大きいと思います。やっぱり「ディスプレイがキレイ」というのは動画やWebサイトを見ても全然違いますし、この製品の場合、「ディスプレイがキレイでうれしいからPCの電源を入れる」まであると思いますね。
ASUSは最近精力的に有機ELディスプレイのノートPCを投入していますが、その中にあってこのVivoBook 15 OLEDは「非常に購入しやすい、というか、他社の有機ELでないスタンダードノートと比べてもむしろ安い」価格になっていると思いますし、PCとしてのパフォーマンスも期待を裏切りません(3D Markはちょっと残念でしたけど)。
心配なのは短期間のレビューでは検証できない(できたとしてもお借りしている製品なので検証しようとは思わない)「有機ELパネルの保護」ですね。上にご説明したとおり、My ASUSでディスプレイを保護する機能はありますが、それでも「My ASUSの機能をオフにして画面の消灯やスリープをさせずに長時間放置」するような使い方は厳禁だと思います。
いいなあ、有機EL…。
5.関連リンク(ASUS Store)
VivoBook 15 OLED K513EA (K513EA-L1867T)(Core i5)
VivoBook 15 OLED K513EA (K513EA-L1869T)(Core i7)