こんにちは、natsukiです。高性能なペン機能を備えたAndroidタブレットXPPen Magic Drawing Pad(2025)のレビューをお届けします。この製品は、この1年で相次いで登場したペン入力強化Androidタブレットの先陣を切ったと言えるXPPen Magic Drawing Padの、アップグレードバージョンです。変更点は、具体的には下記で解説しますが、いずれも極めて重要な部分ばかりであり、例えば型落ちセール価格で旧製品が安くなっていたりしても、「絶対に新しい2025版を買うべき」です。
おおざっぱな特徴を述べると、このXPPen Magic Drawing Pad(2025)は、はじめからイラスト作成を主要な用途として開発された製品です。ペンはEMR方式で16,384段階筆圧感知と傾き検知に対応し、実際に使って分かるその繊細なペン入力性能は、専門の液晶タブレットに匹敵します。12.2インチサイズという、Androidタブレットとしてはやや大きめのサイズは、イラスト作成において作業領域の確保に貢献します。ディスプレイ表面は、これも作業の快適さを追求して、Androidタブレットとしては異例の反射を抑えるアンチグレア加工がなされています。タイトルにしたように、イラスト作成がこれ1台で完結し、ある程度までのレベルなら「もう取り回しが面倒な液晶タブレットは要らない」と言える製品です。XPPenは液晶タブレットを主力製品としているメーカーなので、自分の首を絞めているんじゃないかと心配になりますが(笑)、もちろん、限界もありますので、そのあたりはレビューの中で解説します。
・これ1台でイラスト作成が完結する、圧倒的取り回しの良さ
・筆圧感知16,384段階で、実際の使用感も素晴らしいペン入力性能
・Androidタブレットとしては大型の12.2インチディスプレイで、作業領域を確保
・ペンは電池不要で軽量
・ペンに、芯の種類変更や、サイドボタンを封印可能など、使用感を変えるギミック搭載
・アンチグレアで反射を抑制しつつ、発色も美しいディスプレイ
・60°傾き検知にも対応
ここは注意
・処理能力からか、イラストアプリにおけるペンの追随性がやや遅い
・全体的な能力としては、1枚イラスト作成が適性
・DP-IN機能搭載で、サブディスプレイや液タブとして使用可能なのだが、映像にぼやけが生じる
なお、姉妹製品に、同等のペン入力機能を備え、ディスプレイが10.97インチとひとまわり小さく、機能的にイラスト作成よりもノート機能に特化したXPPen Magic Note Padという製品があります。メーカーからのサンプル提供によって、XPPen Magic Drawing Pad(2025)とXPPen Magic Note Padの両方のレビューの機会をいただきました。XPPen Magic Note Padのレビュー記事は、下記をご覧ください。XPPen Magic Drawing Pad(2025)が、ペン入力以外では比較的オーソドックスなAndroidタブレットであるのに対し、XPPen Magic Note Padは様々な面でそうとうに独特な製品です。

そのXPPen Magic Note Padは、レビュー後も、現在進行形で、日々の業務や趣味の研究に大活躍しています。レビュー記事より約5ヶ月継続利用している経験からも、このシリーズのペン入力品質と実用性の高さは自信を持ってお勧めできます。
目次
1.スペックとアップグレード部分
上記のように、このXPPen Magic Drawing Pad(2025)は、すでに発売済みの製品のアップグレードバージョンとなります。先行機種との相違点には「※」印を付けています。
項目 | 仕様 |
---|---|
OS | ※Android 14 |
SoC | ※MediaTek Helio G99 (MT8781) |
RAM | 8GB |
ストレージ | 256GB |
ディスプレイ | 12.2インチIPS (2,160×1,440) |
ペン | ※X3 Pro Slim スタイラス ・EMR方式 ・16,384段階筆圧感知 ・傾き検知60° |
バンド | 5G/LTE非対応 |
無線通信 | 802.11 a/b/g/n/ac、Bluetooth |
ポート類 | USB Type-C (※DP-IN対応) microSDカードスロット (※最大1TB) |
カメラ | 前面:8MP/背面:13MP |
バッテリー | 8,000 mAh リバースチャージ対応 |
サイズ | 279×192×6.9 mm |
重量 | 590 g (実測値591 g) カバー込み実測値707 g |
基本スペックを見ていきます。また、昨年度発売の旧バージョンとの違いにも適宜触れます。
OSは、旧バージョンのAndroid 12からグレードアップしてAndroid 14。じつはこれ、非常に重要で、主要イラストソフトのClip Studio Paintが、2025年秋をもってAndroid 12の動作保証を終了してしまうんですね。しかも、後で詳しく触れますが、このXPPen Magic Drawing Pad(2025)の優れたハード性能を十分に引き出すには、Clip Studio Paintが必要なんです。大手ソフトだけに、このサポートサイクルの短さは個人的に思うところはありますが、まあ仕方ありません。
CPUは、従来のMT8771からちょっとだけスペックアップ。MediaTek Helio G99(MT8781)は、このところ相次いで発売されているペン入力特化型Androidタブレットの多くに共通して搭載されているCPUです。普段使いには十分ですが、重量級ゲームには向きません。ではイラスト作成はというと、1枚絵を描くのには十分使えますが、よっぽど高解像度であったり、本格的なマンガ作成などの重たい処理だと力不足の面が出てきます。この点については、後ほど検討します。RAMは8GB、ストレージ256GBというのは変わりません。製品特性からもCPUの処理能力からも、大容量のゲームをするような機種ではないので、さしあたりこれで十分でしょう。なお、対応microSDカードの容量が、512GBから1TBに拡大しています。イラスト作成で容量を喰うとすると、作成過程を動画記録するタイムラプスをバンバン撮る場合ですね。そういうときはmicroSDカードを利用するとよいでしょう。
ペンは「X3 Pro Slim」スタイラスに変更。もともとの「X3 Pro Pencil」ともども、電池不要で軽量です。サイドボタンが1つから2つにグレードアップしました。また、Androidタブレットとしてはめずらしく、傾き検知にも対応します。ただしAndroidの場合、傾き検知に対応しているアプリは限られます。
まさかの!機能に、DP-INを搭載!つまり、パソコンの外部ディスプレイとして使用できます。これは、本機を「液晶タブレット」としても使えるかもしれないという、極めて画期的な機能で期待が高まります。もうひとつのまさかの!機能として、なぜかモバイルバッテリーとしても利用可能なリバースチャージに対応しています(笑)。この製品で必要になる機会はちょっと考えにくいですが、まあ、あって損はないでしょう。
2.本体
同梱品など
まずはハード面を見ていきます。
同梱品一式です。イラスト作成時に、誤タッチを防止する手袋も付いています。本機は、パームリジェクションが十分優秀ですが、それでも速いストロークで描いているときにスワイプしてしまったりと皆無にはならないので、集中して作業したいときにはありがたい存在です。
充電アダプターは、ちゃんと本機の最大充電電力である33Wまで出力できます。
実測で、十分にバッテリーが減った状態では、おおむね20W台後半で充電されます。
ケーブルのコネクタ部分はL字状で、取り回しを配慮した形状です。
カバーは、背面のみのシンプルな保護で、ペンの収納スペースを備えます。ただし、単純な保護以外にも、次の2点の機能上の理由から、実用上、装着は必須です。第1に、カバー無しではカメラバンプの出っ張りによって平置きができないこと。姉妹製品のXPPen Magic Note Padは、おそらくこの解決のためにカメラそのものを廃止しているくらいなので、本格的にペンを使いたい本機にとっては重要な問題です。第2に、カバー以外にペンの収納手段がないこと。XPPen Magic Note Padはペンがマグネット吸着式でタブレットにくっつきましたが、本機のペンにはマグネットなどはなく、一緒に管理するにはカバーの収納スペースにしまうしかありません。
タブレット本体
タブレット本体です。
先ほど指摘したように、本機はタブレットとしては一般的なようにカメラを備え、どうしてもカメラバンプが出っ張ってしまうため、平置きにはカバーか別にスタンドを用意することが必要になります。
ディスプレイ面にはアンチグレア加工が施されています。カメラなどのセンサー部分のみ加工されていません。
側面です。各種の要素は、基本的には横置きで最大限機能するように配置されています。横置き時に左右になる短辺に、USB Type-Cポート、電源ボタン、それとそれぞれ2機ずつ合計4機のスピーカーが配置されています。
横置き時の上側には、音量ボタンとマイク穴。
横置き時の下側には、専用キーボード接続端子があります。
本体のみ重量は、ほぼスペックシート通りの591g。
カバー込み重量は、約707g。12インチクラスというサイズ感からすると軽量です。
X3 Pro Slim スタイラスペン
付属のX3 Pro Slim スタイラスペンには、他にあまり見ない楽しいギミックがついています。
ペンは電池無しのタイプで、非常に軽量です。
サイドボタンは2つ。面白いのは、ご覧のようにボタン部分のカバーを着脱可能ということです。
サイドボタンの誤押下が嫌な場合は、このようにサイドボタンを覆って使えないようにもできるわけです。
芯には、プラスチック芯と、より抵抗の強いフェルト芯の2種類が用意されています。初期の購入特典で追加される替え芯20本 (素材が明記されていないがおそらくプラスチック芯の方か?)とは別に、換えのプラスチック芯とフェルト芯が5本ずつ付属しています。個人的には、イラストを作成するなら、やはりフェルト芯ですね。替え芯は、同じような製品の場合たいてい別売りなので、はじめからカスタマイズの余地があるのは嬉しい!
後ろの部分は、消しゴムにはなっておらず、替え芯の収納スペースとなっています。
3.システム・ソフト・アプリ
システム構成
システムは、おおむね素のAndroidに近く、直感的に分かりやすい構成です。なお、モデル番号が、旧機種は「9494G」、この2025年版は「MDP1221」です。
動画配信サービスを高解像度で視聴できるかどうかのWidevineセキュリティレベルは「L1」で、高解像度視聴が可能な資格はあります。ただ、「L1」でも、サービスによって実際に高解像度視聴ができるかはまちまちで、私が有料配信サービスに加入していないため、サービスごとの対応は確認できていません。
独自のディスプレイ表示のNXTVISION設定です。姉妹製品XPPen Magic Note Padでは、物理的なボタンによってワンタッチで切り替え可能であった、モノクロへの「読書モード」、セピア色の目に優しい「アイコンフォートモード」への切り替えも可能です。実際にこの機能を使いたい場合は、いちいち設定からだと面倒なので、すべてのアプリから「NXTVISION」のショートカットをホーム画面に置くとよいでしょう。
初期ストレージは、ご覧のような構成。本機は、1TBまでのmicroSDカードによる拡張にも対応しています。
初期アプリ
初期アプリ一覧です。ただし、レビュー機のために実際の販売商品とは異なる可能性があります。というのは、メーカーの製品紹介ページでは、イラストソフト「Clip Studio Paint」「ibis Paint X」「Medibang」がプリインストールされているような書きぶりになっているのですが、実際には上の画像のように、「ibis Paint X」「Medibang」はプリインストールされているものの、「Clip Studio Paint」はプリインストールされていませんでした。まあ、Google Playからインストールすればいいだけなので、特に問題はありませんが。
基本アプリ以外のアプリとしては、なぜか「Booking.com」「LinkedIn」が入っていました。
アプリ特典
上記の3種の代表的イラストアプリ「Clip Studio Paint」「ibis Paint X」「Medibang」には、次の購入特典も付いています。
・MediBang Premium 20GBプラン:6ヶ月
・ibis Paint X プレミアム会員:3ヶ月
・Clip Studio Paint:通常30日の無料お試し期間が90日に
ただし、Clip Studio Paintは、メーカーサイトの案内通りにやっても、私の環境だと通常の30日無料にしかなりませんでした。「※初回登録の方のみ90日間(3か月)無料体験が可能です。すでに登録履歴がある場合は、30日間の無料体験になります。」との注記があり、私は、Androidのタブレット版Clip Studio Paintの無料体験は行ったことがないはずなのですが、Windows版Clip Studio Paintのライセンスを数個持ち、Androidのスマホ版は無料で継続使用しているので、何らかの干渉や判定があるのかもしれません。なお、Android版Clip Studio Paintは、スマホ版とタブレット版に分かれていて(ディスプレイサイズで判別している?)、スマホ版は1日1時間、月30時間まで常に無料で使えますが、タブレット版は、お試し期間が過ぎれば、保存ができなくなり、事実上無料で使うことはできなくなります。また、Windows版には買い切りがありますが、Android版はサブスクリプション版のみです。
独自ショートカット機能
ユーザーインターフェースの独自要素としては、ホーム画面に自在に位置を移動可能な丸いペンマークのアイコンがあり、ここからショートカットを起動できます。イラストソフトなど、よく使うものをここに配置しておくとよいでしょう。
4.イラスト作成関係の使用感
アンチグレアで発色の美しいディスプレイ
上記のように、ディスプレイはアンチグレアで反射が抑えられています。また、発色は十分に美しく、OLEDディスプレイのLenovo YOGA770(右側)と比べても、さすがに赤の発色でLenovo YOGA770がわずかに優れるものの、並べて目をこらして分かるくらいの差で、ほとんど遜色のない表現力を持ちます。
ただし、アンチグレアの結果、視野角がやや狭く、斜めから見たときに暗くなりがちではあります。比較的近くに寄って見るイラスト作業時は十分に快適なものの、サイズ的にもやや離れて見る動画視聴の場合は、気になるかもしれません。
作業領域を十分確保する、12インチサイズ
約12インチのディスプレイサイズにより、作業領域の確保も快適です。タブレット用のイラストアプリは、たいてい、メニューを最小限に格納するユーザーインターフェースを設定可能ですが、やはり最低限のメニューは出ていた方が各種操作にストレスがないのはもちろんです。12インチクラスなら、少なくともアイコンによる機能メニューくらいなら、隠さなくても邪魔にはなりません。場合によっては、上の画像のように、機能の一部をフローティング表示して確認しつつ作業することも可能です。
軽く、摩擦感も快適なペン
ペンは電池不要のため軽量で、持ちやすさも十分。サイドスイッチは、使わなければ封印もできるというのは、先に触れたとおりです。なお、太いペンが欲しい場合は、システム上、XPPenの「X3」を冠するペンであれば使えるはずですが、ペン先のキャリブレーションなど、製品ごとの最適化がどこまでなされているかは分かりません。
摩擦感は、アンチグレアディスプレイの特殊加工によって、プラスチック芯でも感じられますが、やはり、フェルト芯は非常に快適です。素晴らしい。
ジッターと視差も優秀
斜めに線を引いたときに出るゆがみ「ジッター」は、ご覧の通りほとんどありません。
本機はフルラミネーションディスプレイを採用し、アンチグレア処理も、フィルムではなくディスプレイへの直接加工のため、ディスプレイの厚さによるペン先と反応点の差、いわゆる「視差」もごくわずかです。この2点は、専門の液晶タブレット並みの、素晴らしい性能と言えるでしょう。ただし、デフォルトでは、上の画像のように、ポインターがわずかに右にずれていました。
これは、「設定>高度な機能>手書きのオフセット設定」で調整可能です。
私の場合は横に「-5.0dp」でちょうどよい塩梅になりました。
処理能力は、1枚イラスト向け


Antutuのバージョンは「11」です。10ではありませんのでご注意下さい。
Helio G99は、重量級ゲームなどには向きませんが、一般的な動作には十分な処理能力を持ちます。Antutu v11 (v10とのスコア互換性なし)およびGeekbench 6のスコアは上記の通り。
イラスト作成の場合、当然、使用イラストアプリ、サイズやブラシ、レイヤー数などによって使用感は大きく代わりますが、一通り使ってみた感じでは、ibis Paint Xで一般的なサイズであれば、イラスト作成に十分快適な動作をします。具体的には、A4サイズは、一般的なカラー印刷解像度350dpiは、2,894×4,093ピクセルとなりますが、このくらいのキャンバスサイズで、太さ数十ピクセル程度のブラシ、レイヤー20枚くらいであれば、問題ありません。
ただし、「MediBang」「ibis Paint X」「Clip Studio Paint」いずれでも、ブラシに一定の遅延は感じられます。「J notes」などのノートアプリより遅延は大きくなります。一般的な線画や塗りには問題ありませんが、ハッチングや文字を走り書きで書くのは気になるというくらい。このあたりは、Helio G99の処理能力の限界かもしれません。
最高にスムーズな筆圧感知、繊細なだけにアプリの設定も詰めよう
筆圧感知16,384段階はダテではなく、繊細な表現が可能です。もっとも、「MediBang」「ibis Paint X」「Clip Studio Paint」を含め、一般的なAndroidのイラストアプリは、指やタッチペンなどの雑な入力を前提とした設定になっている場合が多いので、本機の力を十全に行かせるように、イラストアプリの筆圧設定を見直すことは必須です。また、アプリによっても感度の反応に差があり、色々と設定を詰めて描いてみた感覚としては、Clip Studio PaintとMediBangは同じくらい繊細に筆圧に反応してくれるのに対して、ibis Paint Xは、筆圧カーブを調整しても、一定の筆圧から急に濃くなる現象が見られました。
なお、本機はペンの傾き検知にも対応し、確実に機能していることをClip Studio Paintにて確認しました。ただし、従来、Androidタブレットで傾き検知に対応している製品は非常に少なかったためか、アプリ側で傾き検知に対応しているものは案外ありません。上記3アプリだと、Clip Studio Paintは対応、ibis Paint XとMediBangは非対応です。
描いてみた
実際の作例です。にゃんこ。
使用アプリは、個人的にAndroid環境で使い慣れているibis Paint X。まず、全体の初期設定で、筆圧カーブを修正して、反応最小出力をゼロにしました。XPPen Magic Drawing Pad(2025)は、筆圧段階が細かいだけでなく、反応最小荷重もスペック上3gで、実感としてそっと触れる程度で反応するため、こうすることで、非常に薄い表現が可能で、重ね塗りをとても楽しく作業できます。ただし、実はこのあたりの繊細さはClip Studio PaintとMediBangの方が優れるのは、上記の通り。
長毛種のモフモフを、平筆1本で! デフォルトの平筆の、濃さ太さと筆圧の連動を適宜調整するのみで描いています。
筆圧でモフモフをコントロールするのが気持ちいい。モッフモフ。
極薄の陰影表現もキマる。
完成です。
実際に描いてみての限界点 ― イラスト作成には十分、それ以上の高度なことには力不足の面も
実際に描いてみると、一定の限界も見えます。Windows環境でClip Studio Paintを使って描く場合との比較で、本機が不利なのは、次のような点です。
まずは、先述のように、ブラシの遅延。一般的な描き方なら十分実用レベルです。一方、ハッチングなど、素早い動きを重ねるような描写には、やや苦手です。ただし、ペンの感度自体は文句なしに素晴らしいものです。
また、あまり大きいサイズのキャンバスやアニメーション作成など、大きく処理能力を使う作業には向きません。あとは、ファイルや素材の管理など、イラスト作成の周辺的な作業は、やはりWindowsの方が管理しやすいのは当然ですね。総じて、1枚のイラストを仕上げるのには十分。より高度な作業や、作業環境の構築を行おうとすると不足が見えてくるかというあたりです。
5.優れたペン性能をフルに活かせるのはClip Studio Paint
このXPPen Magic Drawing Pad(2025)には、先述のようにClip Studio Paintとibis Paint X、MediBangの期間限定ライセンスも付属し、また実際、この3つは普及率も高いイラストアプリです。なお私は普段、WindowsではClip Studio Paint、Androidではibis Paint Xを主に使っています。そういった使い慣れの都合から、上記ではibis Paintで描きました。
ただ、実際に使い比べてみると、しっかり使いこむなら、このXPPen Magic Drawing Pad(2025)の優れた性能を使いこなせるのは、Clip Studio Paint一択です。特に、以下2点において、他2アプリより決定的に優位です。
まず基本的な話として、ペンの傾き検知に対応しているのはClip Studio Paintだけです。他2アプリは、傾き検知に対応しません。
第2に、Clip Studio Paintは、他2アプリに比べて、ブラシごとの筆圧設定がより繊細に可能です。
例えば、塗り重ねで濃さや質感を表現したり、乗算で影を書き込むブラシは、繊細な濃さの表現が可能なように、こういう筆圧グラフが使いやすいでしょう。
一方、線画用ブラシは、好みによるものの、比較的安定した太さにしたいならこのような設定になります。このように、Clip Studio Paintなら、ブラシごとの用途や特性に合わせて、カーブを繊細に調整できます。
ibis Paint XとMediBangも、もちろんブラシごとに筆圧感度と太さや濃さを調整することはできるものの、かなり大味です。XPPen Magic Drawing Pad(2025)は、このくらい細かい調整にしっかり応えてくれるハードの性能があるということです。
6.その他使用感
カメラ
カメラは、アウトカメラ13MPで、明るい環境であれば、わりと発色もよく、健闘しています。もっとも、暗さや動きにはもちろん弱く、また、なまじ12.2インチの大画面なので、撮った後に確認するときに、細部の潰れは目立ちます。大手メーカーのスマホ並みとはとうていいきませんが、イラストの下絵に使うくらいなら十分使えるといったところでしょう。
スピーカー
スピーカーは、一般的な動画鑑賞には十分で、音楽鑑賞も贅沢を言わなければ聴けるくらいに鳴ってくれます。また、4スピーカーのため、ちゃんと縦持ち時と横持ち時で切り替わって、どちらでもステレオ音声を楽しめます。
デジタルノートとしても便利
今回のレビューでは、イラスト作成に焦点を当てましたが、はじめに触れたように、現在のところ、私は同等の処理能力とペン性能を持つ姉妹機XPPen Magic Note Padを、デジタルノートやプレゼン用端末としてフル活用しています。通常、ノートアプリはイラストアプリよりも処理が軽量なため、イラストアプリほどのペンの遅延は出ません。手書きデジタルノートとして使っても、十分な活躍が見込めるでしょう。サイズ的には、おおむね、現実のB5サイズになります。
なお、縦向きで利用する場合は、どうしてもペン先がややズレます。その場合は、記事中で紹介したオフセット機能で調整が可能です。
7.DP-IN機能
注目の、パソコンのディスプレイとして使える「DP-IN」機能です。
パソコンにUSB接続すると、このような画面になるので、「DP-in Screen Sharing」を選択すると、パソコン側からは外付けディスプレイとして認識されます。
不可解なのが、2つめのディスプレイとして認識した後、Windows設定の解像度の指定で、なぜか本機のぴったりの解像度は選択肢に表示されません。このため、解像度が合わず、XPPen Magic Drawing Pad(2025)側のディスプレイは、小さな文字も十分判別できる程度ではあるものの、細部がぼやけてしまいます。
もっとも、Windows版のClip Studio Paintにて、筆圧はもちろん、傾き検知も確認しました。機能としては、液タブとして利用可能です。その場合、ペン入力は案外快適ながら、ピンチイン/アウトなどのタッチ入力にはやや重さを感じます。いずれにしても、ぼやけが生じる以上、「どう見えるか」を常に確認しつつ作業する液タブとして使いたいなら致命的です。サブディスプレイとしての用途は、現状のシステムではあくまでオマケと考えるべきでしょう。
8.まとめ
やはり実際に使ってみて分かるこの製品の素晴らしさは、これ1台でイラスト作成が完結する、圧倒的な手軽さです。また、12.2インチという、タブレットとしては大きめのサイズも、イラスト作成をより快適に行える重要なポイントです。かつ、ペン入力の繊細さにおいては、本職の液晶タブレットにひけを取らない性能を持ちます。純粋なペンの描画性能で、十分な性能のパソコンに液タブをつないだ場合に劣るのは、唯一ペンの遅延が多少あるということだけでしょう。ただこれも、一般的なイラスト作成のペンの運びであれば、十分実用レベルです。
私や娘のようなイラストライトユーザーの場合、「1台で完結する」手軽な取り回しの良さは非常に重要です。実際のところ、我が家には、ちゃんとした液晶タブレットがあるにも関わらず、長らく、「そこそこのペン入力性能」を持つWindowsタブレットであるCube Mix Plusがイラスト作成マシンとしてずっと (娘の教育の都合上iPadを導入するまで)現役でした。



せっかく高性能な機材があっても、設定や立ち上げが面倒であまり使わないというのはよくある話です。このXPPen Magic Drawing Pad(2025)は、イラスト作成をグッと身近にしてくれる製品です。ライトユーザーにとっては、まさに液タブ要らずとなるでしょう。
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