こんにちは、natsukiです。クラウドファンディング「GUREENFUNDING」で、世界初のRLCDカラー電子ペーパータブレットを称する「Eyemoo S1」が支援を募集しているので、紹介します。この製品は、おおざっぱに言うと、OSにAndroidを採用し、カメラやペン入力機能を備えた10インチクラスの電子ペーパータブレットです。ここまで書くと、先日ウインタブでもレビューした「BOOX Tab Ultra C」と非常に似た製品ということになります。では、BOOX Tab Ultra Cとの違いは何かというと、最大のものは、ディスプレイに「RLCDカラー電子ペーパー」を採用しているということです。このタイプの電子ペーパーを採用したタブレットは世界初との触れ込みなので、これが一体いかなるものなのかは実物を見ないと評価のしようがないのですが、現在確認できる紹介画像や動画を一見しただけで、同じく「電子ペーパー」を名乗ってはいても、BOOXなどに採用されて久しい「E-Ink電子ペーパー」とはかなり性格が異なることが見て取れます。はたして実際の使用感が一体どのようなものになるのか、非常に気になる製品です。
目次
1.Eyemoo S1 ― スペック
Eyemoo S1 |
|
OS |
Android 12 |
CPU |
MT6769V/CZ(Helio G85) A75(2.0Ghz)×2、A55(1.8Ghz)×6 |
RAM |
6GB |
ストレージ |
128GB(microSDカード非対応) |
ディスプレイ |
10インチ カラーRLCD 解像度:1,600 × 1,200 ピクセル 240カラーDPI 色数:16.7M リフレッシュレート:60Hz フロントライト有り |
LTEバンド |
なし |
SIM形式 |
なし |
ネットワーク |
802.11 a/b/g/n/ac(2.4GHz/5GHz)、Bluetooth 5.0 |
入出力 |
USB Type-C(USB2.0、5V/2A充電)、(3.5mmオーディオジャック?) |
カメラ |
リア:13MP、フロント:5MP |
スピーカー |
ステレオ |
バッテリー |
6,000 mAh |
サイズ |
228.5 × 177 × 10 mm |
重量 |
480g |
ペン |
形式:USI2.0 筆圧段階:4,096 バッテリー:USB Typ-eC 充電式/100mAh サイズ:長さ164.5mm、太さ9.5mm 重量:約20g |
スペックについては、GREENFUNDINGの他、Eyemoo公式サイト等の情報も総合しています。CPUは、GREENFUNDINGには記載がありませんが、メーカーサイトにはMT6769V/CZと明記されています。するとAntutuベンチマークはヴァージョン9で約20万点くらいのはず。BOOX Tab Ultra Cに搭載されているSnapdragon 665(非公表だが実機で確認)も同レベルのため、このサイズの電子ペーパータブレットとしては妥当と思われます。ストレージの拡張に非対応なのは残念ですが、動画を撮るような機種ではないので、128GBあれば、さしあたりは問題無いでしょう。オーディオジャックについては、付いているようにも、USB Type-Cに含まれるようにも読めるのでよく分かりません。
ハード構成としては、カメラとペン入力を備える一方、専用キーボードはありません。電子ペーパーディスプレイながらカメラを備えるというのは、書類のペーパーレス化がはかどって嬉しい点です。
全体的に見て、おおむね、BOOX Tab Ultra Cに近いスペックなので、イメージとしては下記のBOOX Tab Ultra C実機レビュー記事も参考にしてください。ただし、とにもかくにも「RLCDカラー電子ペーパー」次第でまったく異なる使用感となる可能性が大いにあります。
BOOX Tab Ultra C レビュー - 電子書籍や手書きノート機能はもちろん、もはやWEB閲覧やオフィスアプリの使用も快適、従来品とは次元の違う最先端”カラー”電子ペーパー(E-Ink)タブレット!:ウインタブ実機レビュー記事
2.見どころと気になる点
「RLCDカラー電子ペーパー」とは?
そもそも、「RLCDカラー電子ペーパー」とは何なのか?
まずは、製品映像を見てみましょう。
特性を示した表は、ご覧の通り。そんなうまい話があるのか? まあ、新技術の宣伝ですからね。
発色数は16.7万色、リフレッシュレートは60Hzと、一般的なディスプレイとして通用するスペックです。これらの性能は、比較映像を見ても分かるように、E-Inkの電子ペーパーとは別次元です。となると、素朴な疑問として出てくるのは、これは「電子ペーパー」と呼んでいいものなのか?ということです。
技術的に見ると、RLCDとは、「リフレクティヴ(R)」+「液晶ディスプレイ(LCD)」の略で、自然光を反射することで、ディスプレイそのものの発光に頼らずに視認性を確保する技術のようです。GREENFUNDINGには、技術的な説明としては下記サイトがリンクされています。
反射型液晶(Reflective LCD)とは?ディスプレイ技術の基本概念をわかりやすく解説:THE SIMPLE IT用語解説
明るく鮮明な反射型ディスプレイ:東北大学ECEI
ううむ、やはり、「E-Inkの電子ペーパー」とは、根本的に別物ですね。公式動画や、試作品のレビュー動画を見る限り、ディスプレイにそれなりの映り込みが見られるのも気になる点です。既存の製品のイメージでいうと、「電子ペーパー」に寄せた「カラー液晶ディスプレイ」といった感じでしょうか。もちろん、ディスプレイ自体が発光しなければ「紙のような目に優しい表示」は達成できるわけで、実用上のポイントは、実機が自然光下でどの程度の視認性と発色性を発揮するかでしょう。
なお、近い特性をもつ既成の製品としては、モノクロRLCDを搭載したAndroidタブレット「HiSense Q5」や、カラーディスプレイながら紙のような表示を目指すTCL社の「NXTPAPER」シリーズなどがあります。いずれも、日本では手にしにくい製品ですが、YOUTUBEなどには実機映像が多数上がっているので、興味のある人はのぞいてみてください。
システム・アプリ面は通常のAndroidタブレットと同じ?
BOOXシリーズは、OSにAndroidを採用しているとはいえ、E-Ink電子ペーパーの特性に合わせて、一般的なAndroidとはまったく異なるインターフェースや設定機能を持ち、主要機能となるアプリも、多機能文書リーダーアプリやノートアプリ、文書キャプチャアプリをはじめとして、独自のものを備えています。
一方で「Eyemoo S1」は、特にそういった独自のシステムやアプリについての言及はありません。こういったことからも、製品特性としては、E-Inkでのイメージの「電子ペーパータブレット」よりも、「通常の液晶ディスプレイタブレット」に近いのかもしれません。
筐体
筐体は金属製で、かなり引き締まった印象。ちなみに、リアカメラが4眼と2眼の画像がありますが、スペックからすると、2眼の画像が正しく、それぞれカメラとフラッシュのようですね。側面には、電源と音量ボタン、そしてステレオスピーカーと初期化用の穴があります。
ペンはUSI2.0形式
ペンはUSI2.0形式と、形式が公表されています。後述のように、GREENFUNDINGでは支援プランにはペンは付属しないようで、オプションで追加できるかどうかはぼかした表現になっていますが、形式が分かっていれば、サードパーティー製のペンの導入も容易です。USI2.0は、現在、さほどメジャーな形式ではないものの、Google Pixel TabletとAmazonのFire Max 11という大手製品が採用しているため、それ用のペンであればスペック上は行けるはずです。
さて、気になる精度ですが、いかにスムーズで精緻な使用感を得られるかは、筆圧段階だけでは示せないので、これも実機次第というところでしょう。現状、BOOXは、非常に高いペン精度を誇りながらも、アイビスペイントなどの本格的イラストアプリの使用は困難です。Eyemoo S1なら、ペンの性能次第で、イラスト用途にも期待できるかもしれません。
カメラ付き
カメラの画素数は、リアカメラが13MPと、スマホなどと比べれば控えめながら、文書のペーパーレス化には十分な画素数です。フロントカメラ5MPも、通話用と考えれば十分でしょう。
3.支援と支援額
「Eyemoo S1」は、クラウドファンディングサイトGREENFUNDINGで9/15まで支援を募集中です。記事執筆現在、目標額は大幅にクリアしていて、プロジェクトは成立。製品を受け取る支援プランとしては、最も安価な、一般販売予定価格より12%OFFの64,060円のプランがすでに完売。10%OFFの65,520円のプランも完売。9%OFFの66,248円のプランは200名の枠がほぼ残っている状態です。クラウドファンディングでは、早い者勝ちでプランによってずいぶん価格差が付く場合も多いのですが、このプロジェクトはご覧の通り乗り遅れても価格差が少ないので、かなり良心的なプラン設定と言えます。ペンについては「追加支援可能」との記載もあり、基本プランには含まれないようです。
なお、海外のクラウドファンディングサイトINDIEGOGOでも支援を募集していて、こちらは記事執筆現在、399ドルから。日本円にして、おおむね5万円台後半になると思います。クラウドファンディングの不安定さとローカライズを考えれば、妥当な価格差でしょう。
念のため、GREENFUNDINGにしてもINDIEGOGOにしても、あくまでクラウドファンディングであり、資金は「支援」であって「購入」ではありません。リスクについては、各サイトの規約を十分に確認してください。試作品のレビューがかなりネット上に上がっているので、製品が完成しないリスクは低そうですが、スケジュールが遅れたり、実際の品質について未知数であることは覚悟が必要です。
この「Eyemoo S1」は、「電子ペーパー」をうたいつつも、見れば見るほど、どうもBOOXなどの「E-Ink電子ペーパー」とは根本的に特性が異なる製品のようです。それだけに、いったいどういう新たな使用体験をさせてくれるのか興味深い、クラウドファンディングにふさわしい斬新な製品です。
4.関連リンク
目に優しいディスプレイ・60Hzリフレッシュレートでスムーズに漫画や電子書籍をカラーで楽しめる!世界初・フロントライト搭載のRLCDカラー電子ペーパータブレット「Eyemoo S1」:GREENFUNDING
Eyemoo EPaper S1:Eyemooメーカーサイト
World’s First Color RLCD Epaper with front-light:INDIEGOGO
コメント
電子ペーパーの重要性である目に優しい所と省電力性能が気になるところ。こういうのこそレビューして欲しい。
省電力の仕組みについても、よく見ると、E-Inkは「画面切り替えを行わなければ電力を消費しない」(なので、省電力なのは資料閲覧や電子書籍閲覧の場合で、WEBブラウジングなどを行うと、普通に消耗する)というのに対して、この製品は「バックライトを照らさない分電力を節約できる」というもののようなので、根本的に違い、実際のところどの程度の省電力性があるのか、確かに非常に気になるところです。
説明聞くと電子ペーパーではないね。
生どら焼きという焼き菓子みたいなもんか。
少なくとも、E-Inkとは、かなり方向性が違うように思います。
まあ、E-Inkがディスプレイとして尖りすぎとも言えますが。
昔(1998年頃)、シャープのザウルスでフロントライト付き反射型カラー液晶のモデルが売られていたけど今の時代に合わせてパネルが高解像度化しandroidタブレットに載ったような感じなのかも。
これはまた、すごい機種を引っ張り出してきましたね。ということは、「世界初のカラーRLCDタブレット」はザウルスの方か!? いや、あれを「タブレット」と呼べるかどうかや、技術面でも別物なのかもしれませんけど、どうなんでしょう?
E-INKはともかく反射型液晶泥タブ(NXTPAPERシリーズ)と比べて
結局何がどう世界初なのか結局最後までよくわからんかった
日本でも知られるTLCの現行シリーズなんだから比較説明したほうがよかったかも
「RLCDカラー電子ペーパー」なるものが、正直、どんなものか未知数です。
宣伝では「電子ペーパー」という言葉を使ってはいるものの、少なくともE-Inkと根本的に方向性が違うということだけは確かのように思えるので、そこは書きました。
NXTPAPERは、確かに製品が目指す方向性はかなり近いように思え、記事中でも一応言及しましたが、日本では(10sなどが一時期販売さえていたとはいえ)ほとんど無名なのと、私自身も実機を見たことがなく体感としてどの程度その特性を達成しているか分からないため、あまり詳しくは触れませんでした。
あとは、上のコメントでザウルスを上げている方がいらっしゃいますが、その他、ゲームボーイアドバンスなど、一時期、日本では「反射型カラー液晶」の製品が多く出回っていたものの、さすがに時代が開きすぎるので、少なくとも体感としては別物になっていると思うんですよね。
つまり、私の判断では、この製品、やはり実機を見るまでよく分からないんです。そういう意味で、クラウドファンディングらしい、怖さと面白さのあるプロジェクトだと思います。
Pebble Timeの反射型メモリー液晶が一番近いか? Pebble Timeの場合は、書き換えなければ超低消費電力という電子ペーパーと似た特徴を持っていたので、広義で電子ペーパと呼ばれていました。
フルカラーなのにどう見ても色再現性が悪いのも気になります。低消費電力の為に犠牲になっているという事でしょうか。
パネルのメーカーがどこなのか知りたいですね。
恥ずかしながらPebble Timeを初めて知りました。情報ありがとうございます。なるほどこういうのとも相性良さそうですね。そして、確かにパネルがどこか分かれば、予想のしようもあるんですけどねぇ。
初めまして。
RLCDディスプレイといえば10年以上前に東芝からリリースされたDynabookの高級機に使われていました。私はメルカリで中古で買った実機を持っています。
DynabookではバックライトをOn/Offで切り替えられましたが、こちらはフロントライトで対応しているようです。
書き込みにあるとおりザウルスにも使われていましたので「世界初」は言い過ぎかも?と思いますが、世界的にリリースされる機種としては「世界初」と言っても過言ではないかもしれませんね。