こんにちは、natsukiです。今回は、XROUNDが発売する、本格的なノイズキャンセリング対応ワイヤレスイヤホン「FORGE NC」をレビューします。詳しくは後述しますが、この製品は、海外ですでに発売済みのもので、10月26日よりMakuakeでクラウドファンディングが開始されました。クラウドファンディングのため、価格(出資額)は出資タイミングなどで変動しますが、26日午後4時現在だと9,800円で購入(出資)ができます。
率直に言って、今回レビューさせていただいて、品質の高さに衝撃を受けました。イヤホン自体の品質も、専用アプリの性能まで合わせても、10,000円台のそれではないです。もちろん、イヤホンで10,000円台というのは、絶対値として決して安くはありません。が、この音響体験は価格以上に満足のいくものです。なお、レビュー機はメーカより提供していただきました。今回の機会をいただいたことに、この場を借りてお礼申し上げます。
目次
1.製品概要
基本スペック
ブランド:XROUND
形状:完全ワイヤレス
通信形式:Bluetooth 5.2
通信コーデック:Qualcomm aptX / aptX Adaptive
防水防塵性能:IP67
ノイズキャンセリング機能:アクティブ&パッシブ
基本的な部分を確認しておきます。XROUNDは台湾のオーディオブランドで、製品数は少ないながらも、10,000円前後クラスのイヤホンを中心に販売し、すでに一定の実績があります。
形状は、左右が独立した完全ワイヤレス型です。通信形式は、Bluetooth 5.2。もちろん、下位互換性がありますが、Bluetooth 5.X対応機種なら、より安定した通信が期待できるでしょう。通信コーデックは、基本のSBCの他、ACC、aptXとaptX Adaptiveに対応。aptX Adaptiveというのは、aptXの上位であるaptX HD(高音質)とaptX LL(低遅延)を統合した形式のようです。試しに、スペック上はaptX HDに対応しているスマホで接続したところ、接続形式はaptX Adaptiveと表示されました。いずれにしても、高音質低遅延の形式に対応しているということです。
防水防塵性能は、安心のIP67。水をぶっかけても大丈夫というレベルなので、雨や汗に濡れても問題ありません。
そして、アクティブノイズキャンセリングに対応。パッシブのイズキャンセリングというのは、ノイズキャンセリングといっても、イヤーピースで耳の穴を塞ぐという物理的な方法です。これに対し、アクティブノイズキャンセリングは、外の音をマイクで検出して、対抗する音波を発して消音するものです。これは気になる部分なので、あとで具体的に見ていきます。
以上、スペックとしては、上位のワイヤレスイヤホンとして十分なものを持っています。
2.筐体
まずは箱。静止画では伝わりにくいんですが、外箱部分には透明な斜めのスリットが入っていて、内箱の「XR」のブランドロゴがのぞいています。これ、内箱を引き出すときに、視覚効果があってめっちゃカッコいい。箱を開封するギミックでこんなにテンションの上がったガジェットは初めてです(笑)。
同梱品一覧です。ただし、これはサンプルのため、正規販売品とは異なりますので、参考程度に。正規販売品は、少なくとも、右側の平らっぽいイヤーピースが3サイズとなり、換えのサイズ違いのイヤーフックがつき、また日本語説明書も付くものと思われます。イヤーピースは、ご覧の通り、左側の丸形タイプと、右側の平らなタイプがあり、平らなタイプの方が低音が強化して聞こえます。ともかく、耳にフィットするように多様な換え部品がつくということです。なお、今回の音質のレビューは、通常の丸形を付けて評価しています。
イヤホンの形状はこのように、ただ耳に差し込むだけではなく、耳にフィットする「フック」があります。イヤホン、ケースともに、非常に高級感のある仕上がりで、持つ喜びも十分です。電池保ちについては、そうとうに保ちます。ゲームやったりYOUTUBE見たりで、2時間半使って20%消費。一日十分すぎるくらいに使えるでしょう。
その代わり、重量は完全ワイヤレスイヤホンにしては重めの5.7g。正直、ちょっと重さは感じます。ただ、イヤーピースの選択などでぴったりフィットするため、装着時の安定感は高いです。
ケースのサイズ感はこんな感じ。充電ポートの形状は、USB Type-Cです。
レビュー品は、「ブラックゴールド」のカラーとなります。この他にも、「ホワイトゴールド」のカラーバリエーションがあります。なお、Makuakeではノイズキャンセリング機能のない「FORGE(製品名にNCがつかない)」も同時に出品されており、そちらは筐体色「ブラック」のみとなりますので、ご注意ください。
3.接続と基本機能
接続は、初回使用時は自動的にペアリングモードとなるので、スマホなどの側でBluetoothを検出してつなぐだけ。特殊なことはありません。
また、操作性についてはアプリでかなりいじれるので後述しますが、基本的な機能として、イヤホンを耳から外すと自動で一時停止する機能が付いています。これ、あると便利なんですよね。
4.優秀な専用アプリ「XROUND MyTune」
このイヤホンは、専用アプリ「XROUND MyTune」を利用することで、性能をフルに活かすことができます。このアプリは、かゆいところに手が届く非常に優秀なものなので、必ず利用しましょう。Google PlayとApp Storeの両方にあります。
XROUND MyTune:Google Play
XROUND MyTune:App Store
毎回接続するのがちょっと面倒
ちょっとだけ面倒なのは、このアプリ、使うたびにアプリを立ち上げてFORGE NCにつなぎ直す必要があります。まあ、常駐型じゃないんで、ここは仕方ないですね。
イコライザー
やはりアプリの目玉機能はこれ。イコライザーです。後述しますが、イコライザーアプリは、一般的にバランスが不安定な場合も多いのに対して、この「XROUND MyTune」のイコライザーは非常によく調整されていて、曲のジャンルに合わせてFORGE NCの性能を最大限に引き出してくれます。おまけと思わず、多用すべき機能です。
かなりガチな聴力テストによるカスタマイズ
手動で自分の好きなイコライズ調整を行うこともできる他、さらに、聴力テストを行って各自の耳の聞こえ具合に合わせたイコライズもできます。ちなみにこの聴力検査、非常に小さな音でかなりガチにやります。別の部屋で洗濯機を回していても聞こえなくなるレベル。やるときは、深夜など、できるだけ静寂に近い環境で行いましょう。
なお、実際どのくらい使うか分かりませんが、オリジナルのイコライズは他人と共有することもできます。
ノイズキャンセリングと外音取り込み機能
さあ、気になるノイズキャンセリング。特に、外部音をマイクで検知して打ち消すアクティブノイズキャンセリングはどうなんでしょう。公式ページなどの説明だと、ノイズキャンセリングのレベルを調整できそうな書き方がされていますが、実は、結果論から言うと、アクティブノイズキャンセリングは、実質的にONかOFFかだけです。
ノイズキャンセリングメニューは、ご覧のように20段階に分かれています。が、その内訳は以下の通り。
1~18:外音取り込み
19:通話時の風切り音防止モード
20:ノイキャン
つまり、アクティブノイズキャンセリングはレベル20のみです。一方、外音取り込み機能は、レベルが小さくなるほど外音を増幅します。また、その増幅も「バランス」「トーク」「トレーニング」の3つのモードがあり、どう増幅するかで違いがあります。
要するに、このFORGE NCのノイズキャンセリングは、まずは物理的に耳の穴をピッタリ塞ぐパッシブノイズキャンセリングに重きを置いて、アクティブノイズキャンセリングはそれを補うものという設計思想のようです。このことは公式サイトにも、アクティブノイズキャンセリングに頼ると閉塞感のある響きになってしまいがちなため、パッシブとアクティブを併用しているという解説があります。むしろ耳をしっかり塞いでしまう分、ノイズキャンセリングとは逆の外音取り込み機能を充実させてある感じです。
こういった設計思想のため、ノイズキャンセリングは、ONにしたとしても控えめな性能です。世の中には、本当に外部の音を大幅に消してしまうようなアクティブノイズキャンセリングもありますが、このFORGE NCについては、音響を崩さないようにするためにそこまでの極端な性能は持ちません。それでも、フィット感が高いため、十分な没入感が得られます。
操作方法を変更可能
これも重要。タッチによる操作方法を変更できます。これ、なにげにありがたいですよね。上の図は、デフォルトの状態です。音量変更が片耳に集中しているというのは、他のワイヤレスイヤホンにあまり見られないので、以下のように変更して使っています。
このように、かなり自由度があるので、自分の操作しやすいようにカスタマイズしましょう。
その他機能
この他にも、音声通話時に、電話を通した自分の声も聞こえるようにする「サイドトーン」機能、タイマー機能、エージング機能などがあります。詳しくは公式の機能解説などもご覧ください。
なお、このアプリは10月21日にリリースされたばかりということで、メーカーより「まだ不十分・不安定な部分があるかと思いますが、引き続き改善に努めてまいります」との連絡を受けています。
5.音質
肝心の音質を見ていきましょう。
聴いた瞬間分かる空間表現
聴いた瞬間分かります。音の解像度と空間表現能力が非常に優れています。とりあえず、動作確認に「原神」をやってみたんですが、開始画面でいきなり、「え!?」となっておもわず居住まいを正しました。フルートとハープの響きだけで、広大な空間が脳内に広がる……。ゲーム中でも、サイドや背後からの音の「距離感」をしっかり感じられる。3DアクションゲームやFPSなどをプレイすると、空間表現能力の素晴らしさがよく分かります。
臨場感あふれる細部の表現力
それから、音の解像度。非常に細かな表現や残響までしっかり聞こえる。この表現力があってこそ、空間を立体的に感じることができるわけです。高音から低音にいたるどの音域もクリアで、ともかく音の情報量がすごい。
迫力とシャープさを両立した低音の表現力
一般的にイヤホンが苦手としがちな低音域の表現力もばっちりです。よく、低音が強くても、音量がデカいだけで音の輪郭がぼやけてしまう製品もあるんですが、このFORGE NCはそんなことなく、例えばティンパニの音は硬質な響きがコーンッと突き抜けてくる。ロックミュージックでドラムをガンガンたたいても、しっかり細部の表現が聴き取れる。バスドラムのアタックも明確。よい、よいぞ!
デフォルトのバランスはドンシャリ寄りながら、アプリによる調整であらゆるジャンルに対応
このFORGE NCは、製品紹介ページのグラフで見るとすべての音域をまんべんなく鳴らす性質のように見えますが、実際聴いてみると、低音と高音がやや強めで、いわゆるドンシャリ寄りの響きとなっています。そのため、なまじ音の解像度が高いだけに、ときによっては全体の響きのバランスが悪く感じる場合があります。しかしご安心あれ。先述のように専用アプリによるイコライズが非常に優秀で、曲のジャンルに合わせてしっかり調整してくれます。
いくつか例をあげてみます。ボーカル曲だと、「LiSA – 紅蓮華 / THE FIRST TAKE」や、「[Alexandros] – 閃光 (MV)」などは、デフォルトのフラットなイコライズだと、伴奏の表現力が前面に出て、対するボーカルがやや引っ込み気味な印象を受けます。この場合は、素直にイコライザーを「ボーカル」にしてみましょう。すると、紅蓮華はしっかりとLiSAの息づかいにフォーカスされるし、閃光ならベースとドラムの圧倒的な臨場感はそのままにサビをリードするボーカルのテンションを満喫できる。うーん、幸せ。
ベルリンフィルの公式チャンネルなどの、クラシックのオーケストラ曲の場合は、デフォルトのイコライズだと、高音倍音が鋭く響きすぎて、金管セクションを中心にややささくれだった印象を受けます。こちらはイコライザーを「マイルド」にしてみましょう。すると、コンサートホール感のあるぐっとまとまった響きになります。これならばペトレンコもにっこり。
こういうアプリによるイコライズ調整は、正直なところ、私が今まで出会ったものは、どれもなんらかの不自然さが出てしまう感じがして、個人的にあまり好きではありませんでした。が、この製品の専用アプリ「XROUND MyTune」はとてもよくできている。イヤホンは、どうしても製品の個性によって得意不得意のジャンルができてしまうものですが、FORCE NCは、アプリとの組み合わせで全ジャンルに対応することに成功しています。
6.まとめと販路、価格
この「FORGE NC」は、Makuakeでクラウドファンディング中(12月9日まで)で、10月26日午後4時現在の最低価格(支援額)は税込み9,800円から、となっています。なお、Makuakeのページにはノイズキャンセリング機能のない「FORGE(製品名にNCがつかない)」も掲載されていますので、ご購入に際してはお間違えのないよう、ご注意ください。
約10,000円というと、高級イヤホンに片足つっこむかどうかの価格帯ですね。そして、実際にレビューしてみた素直な感想を言うなら、この製品の満足度は10,000円なんてもんじゃないです。一聴しただけで分かる、優れた空間表現能力と、全音域にわたる音の解像度の高さ。秀逸なアプリのイコライザーで、あらゆる音楽ジャンルに対応。操作性も、自分の使いやすいようにカスタマイズ可能。ノイズキャンセリングは、控えめな性能ながら、没入感は十分。ゲーム、自宅で落ち着いて音楽鑑賞、カジュアルに歩きながらやスポーツのお供に、あらゆる状況で使える。
一点だけ注意があるとすれば、このイヤホンが十分に実力を発揮するには、AndroidもしくはiOS向けの専用アプリが必須だということです。つまり、基本的にスマホやタブレットを親機として使うという前提になります。パソコンからでは、ゲーミングやカジュアルに楽しむくらいなら十分な実力を持ちますが、本来の性能は引き出しきれません。
イヤホンにこだわりのある人はもちろん、それほどイヤホンに詳しくなくても、5,000円台くらいの「まあ悪くはない」ワイヤレスイヤホンと比べたなら、聴いた瞬間に次元が違うことがはっきり分かるくらいの品質なので、いい音で聴きたいけれどイヤホンの詳しいことはよく分からないという人にもお勧めできます。いやこれは、すごいイヤホンが出てきました。
7.関連リンク
製品本体
聴き心地を自在変換!音響マニアの独自技術を集結したイヤホン「FORGE NC」:Makuake
FORGE NC スマートノイキャン完全ワイヤレスイヤホン:公式サイト
専用アプリ「XROUND MyTune」
XROUND MyTuneアプリ|2大新機能を徹底解説!:公式解説
XROUND MyTune:Google Play
XROUND MyTune:App Store