
SOUNDPEATSのワイヤレスイヤホン「Clip1」の実機レビューです。耳をふさがない、爽快な装着感のイヤーカフタイプのオープンイヤー型イヤホンで、ウインタブではこれまでに数回イヤーカフタイプを含むオープンイヤー型イヤホンをレビューしています。
私自身は先日OpenRock製のイヤーカフタイプ「OpenRock E」をレビューしており、「とにかくラク」「それでいて音質も良好」ということで、このタイプのイヤホンを非常に気に入っています。今回レビューする「Clip1」は音質面でどうしてもカナル型やインイヤー型に一歩譲るイメージのあるオープンイヤー型イヤホンの音質を大きく改善し、ハイレゾ対応に仕上げた、という点がセールスポイントです。
なお、このレビューはメーカーよりレビュー機のサンプル提供を受け実施しています。
・イヤーカフタイプとしては高水準な音質
・ハイレゾ音源に対応
・耳をふさがない爽快な装着感
・周囲の音が聞こえるので屋外でも安全
・Dolby Audio対応による、さらに広がりのある音
ここはイマイチ
・LDAC接続の場合、マルチポイント接続や音質の調整不可
1. スペック
スペック表
| 項目 | 仕様 |
| ドライバー | 12mmデュアルマグネットダイナミックドライバー |
| 周波数範囲 | 20Hz – 40kHz |
| Bluetoothバージョン | 5.4 |
| 対応プロファイル | HFP、AVRCP、A2DP、HSP |
| 対応コーデック | AAC、SBC、LDAC |
| Bluetooth接続距離 | 10m |
| バッテリー | ケース:450mAh/イヤホン:45mAh✕2 |
| 最大再生時間 | イヤホン:8時間、充電ケース含む:40時間 ※急速充電対応、10分充電で2時間再生可能 |
| サイズ (ケース) | 71.5✕49✕35 mm |
| 重量 | イヤホン片耳:5g ケース込み:55.5g |
| 防水性能 | IPX5 |
特徴

Clip1はイヤーカフタイプのオープンイヤー型イヤホンながら、音質にも力を入れています。周波数帯域は20Hz~40KHz、つまりハイレゾ対応で、LDACコーデックにも対応しています。また、専用アプリの利用が前提となるものの、Dolby Audioにも対応します。SOUNDPEATS製品でDolby Audioに対応するのはClip1が初、とのこと。

もちろん装着感や使い勝手も考えられています。イヤーフック部分はニッケルチタン形状記憶合金製で柔軟性があり、手でぐにゃっと曲げてもしっかり復元します (まあ、程度問題はあると思いますが、普通に使っていて変形したりする心配はいらないでしょう)。
また、ここが「すごい!」と思ったのですが、Clip1は「左右の別」がありません。つまり、右耳用と左耳用が決まっていないんです (デバイス側で左右を識別します)。この点は使い勝手を大きく向上させるポイントだと思います。
その他、バッテリーが長持ちし、マルチポイント接続にも対応しますし、イヤホンを外すと音楽や動画が自動的に一時停止する「装着検出機能」や「低遅延モード/ゲームモード」など、たくさんの便利機能を搭載しています。
2. 外観

箱です。特筆するようなことはありません。上部に「VGP金賞受賞」「VGPコスパ対象受賞」のマークがついています。

同梱物です。ユーザーガイドは日本語を含む多言語で書かれていました。またユーザーガイドはSOUNDPEATS公式サイトの製品ページからダウンロードすることもできます。真ん中にあるのがSOUNDPEATSのマスコットキャラクター「PEATS君」のステッカー (シール)、右側がアプリのダウンロードガイドです。その下に充電用のケーブル (USB Type-A - USB Type-C)。

ケースの大きさはこんな感じです。先日レビューしたOpenRock Eや私が愛用しているカナル型イヤホン「SOUNDPEATS Engine 4」のケースよりは一回り大きく、「やや大きめ」と言えなくもないですが、おそらく携帯性には全く差がないと思います。

ケース前面にはLEDインジケーターがあります。この画像ではケースを開けていますが、ケースが開いているときはイヤホン本体のバッテリー残量を、ケースが閉じているときに背面のボタンを押すとケースのバッテリー残量が表示されます。ここが黄色になったら残量が70%を切っていて、赤くなったら残量が20%を切っていますので、充電が必要です。

背面には充電用のUSB Type-Cポートと、その右側にバッテリー残量を確認するためのボタンがあります。このボタンを単押しすると、前面にLEDインジケーターが発光します。

本体を取り出してみました。先日レビューしたOpenRock Eとほぼ同サイズです。また、形状もよく似ています。ライターのnatsukiさんがレビューした「SOUNDPEATS CC」はよりイヤーカフっぽい丸みを帯びた形状でしたが、Clip1のほうはガジェットっぽいというかちょっとメカっぽい形をしています。

ドライバーは12 mmと、OpenRock E (10 mm)よりも大きく、SOUNDPEATS CCとは同じサイズです。また、画像左側に充電コネクタがあります。

横から見たところ。イヤーフック (細くなっている部分)は柔らかく、手で簡単に曲げることができますが、形状記憶合金製なので、すぐに復元します。

装着イメージです。イヤーカフタイプのオープンイヤー型イヤホンは装着感が非常によく、「つけているのを忘れる」くらいです。
3. アプリ
Clip1には無料で使えるスマホアプリ「PeatsAudio」が用意されています (Android/iOS)。また、「SOUNDPEATS」というアプリもあり、両方試しましたが機能には大差がなく、Clip1に同梱されていたガイドにはPeatsAudioのみ案内されていましたので、この記事ではPeatsAudioのスクリーンショットを使って説明します。

Clip1接続時のホーム画面です (同じ画面ですが、縦長なので2つにわけて表示しています)。ちなみに私はSOUNDPEATSのEngine 4も使っていますが、このアプリでEngine 4の設定もできます。右側の画像を見ていただくと、このアプリで設定できる項目がわかると思います。

他のLDAC対応イヤホンでも似たようなものですが、コーデックをLDACにするとDolby Audioやマルチポイント接続、ゲームモード、イコライザーが使えなくなります。よって、LDAC対応のスマホを使っている人でも、本当にLDACを適用するかは微妙なところでしょう。

これは音質の調整項目です。画像左はあらかじめプリセットされているイコライザー、真ん中は手動で好みの音質にできるカスタムイコライザー、そして画像右が「アダプティブイコライザー」です。健康診断なんかでよくやる「聴力テスト」を周波数ごとに行い、その結果を受けてアプリが最適な音質にしてくれるというものです。私はレビューでは様々な設定を試しましたが、最終的にアダプティブイコライザーを使うことにしました。
4. 使用感
装着感
Clip1に限らず、イヤーカフタイプのオープンイヤー型イヤホンの装着感は素晴らしい!の一言です。OpenRock Eのレビューでも書きましたが、使い始めのうち、耳たぶに少しだけ異物感があるものの、使っていると「つけているのを忘れるレベル」になります。軽く、圧迫感もほとんどありません。
また、私はメガネを掛けていて、耳掛けタイプのオープンイヤー型イヤホンだとメガネのツルが干渉してしまいますが、イヤーカフタイプだとそれがないので、さらに快適です。
操作性
Clip1はタッチ操作に対応しています。本体の「背」の部分 (装着時には耳たぶの裏側になります)をタップすることで曲送りや音量調整ができますが、左右それぞれ「2回タップと3回タップの2種類のみ」です。つまり、合計で4種類の操作割り当てができる、ということです。なので、実質的に「音量上げ、音量下げ、曲送り、曲戻し、再生/一時停止」から選ぶことになりますね。
タッチ操作は便利ですが、寝転がって使っているとたまに枕やクッションなどが干渉して意図せずに音量が上がったり下がったりします (デスクワークなどではほぼ誤動作の危険はありません)ので、誤動作が気になる場合はアプリでタッチ操作を無効化すれば良いでしょう。
音漏れ
オープンイヤー型イヤホンは構造上音漏れします。また、カナル型だと(アクティブノイズキャンセリング機能がないとしても)装着するだけである程度外部の音を遮断できますが、オープンイヤー型は外部の音に対して「まるっきり無防備」ですw
この「音漏れ」と「外部の音に対して無防備」という2点から、どうしても「使用に適さない場面」が出てきます。具体的には電車の中とか図書館などですね。電車の中だと騒音が大きいので音量を上げたくなりますが、上げると音漏れも大きくなってしまい、周囲の人に迷惑がかかりますので、結局使えないでしょう。また、図書館のような非常に静かな場所での利用にも向きません。
自宅で家族に協力してもらい、音漏れをチェックしてみました。スマホで音量を30%くらいにセットして音楽を聞き、至近距離から確認したところ、はっきりと分かるくらいに音漏れしていました。ただ、音量を極端に上げず、周囲の人との距離が1メートルとか2メートルある場合は問題ないです。私はリビングでClip1を使って音楽を聴いたり、動画を観たりしましたが、家族と至近距離になるようなこともないので、家族からのクレームは一切ありませんでした。
音質
Clip1の大きなセールスポイントは「ハイレゾ対応」という点です。私のスマホはGoogle Pixel 8でLDACに対応しており、ハイレゾ音源も数十曲所有しています。ただし、ハイレゾ音源の高い周波数を聞き取ることはできません。というか40,000 Hzとかを聞き取るのは無理でしょ?また、私は年齢が高くなっており、若い人なら聞き取れる高音も聞こえません。
LDAC接続でハイレゾ音源を聴いてみましたが、そもそも私は「低音LOVE」な人間でもあり、LDACとAACの音質を識別することもできないので、それならAACで繋いでイコライザーを効かせるほうがいいや、となりました(上に書きましたが、LDAC接続ではイコライザーもDolby Audioも使えません)。
次にDolby Audioです。もともとオープンイヤー型のイヤホンは「音の広がり」が感じられる聴こえ方になります。ライターの吟遊詩人さんのコメントを拝借すると「カナル型は密室で音楽を聴いている感じ、オープンイヤー型はシアターで音楽を聴いているような感じ」ですね。
イヤーカフタイプのオープンイヤー型イヤホンの音質が見た目の印象よりも遥かに高水準であることは過去のレビューでも明らか、と思っていますが、今回は手元にあるOpenRock Eと聴き比べをしてみました。
OpenRock Eの音質も高く評価しましたが、低音域・高音域ともClip1のほうがよく聴き取れました。また、個々の楽器の音がより鮮明に聞き取れるのもClip1のほうです。仮に「眼の前に演奏者たちがいる」とした場合、「OpenRock Eは10メートルくらい離れているが、Clip1だと5メートルくらいである」という感じでしょうか。Clip1のほうがダイレクト感があります。
ただし、この形状のイヤホンの場合、「聴き疲れしない」という点も重要かと思います。その観点ではClip1のダイレクト感よりもOpenRock Eの「気持ち距離感のある音」のほうが快適に使えるかもしれません。
また、Dolby Audioですが、これをオンにすると、さらに音の広がりを感じられます。上に書いた通り、もともとこの形状のイヤホンは広がりのある音質なのですが、それをさらに進めた感じです。出来上がりの音質 (Dolby Audioオン、アダプティブイコライザーオン)はもはや手持ちのカナル型イヤホンと遜色のないレベルです。
アプリに「ゲームモード」があり、ゲームモードをオンにすると私の感覚ではほとんど気にならないくらいまで遅延は軽減されました。個人的には「これならゲーム用としてもOK」ですが、シビアにゲームをすると気になる人がいるかも知れないです。
5. まとめ
SOUNDPEATS Clip1はAmazonで販売中で、12月23日現在の価格は7,984円です (20%OFFになっています)。
イヤーカフタイプのオープンイヤー型イヤホンとして、装着感については期待どおり、音質は他のイヤーカフタイプよりも上だと感じました。音漏れの問題や外部の音を遮断しない構造のため、利用場所を選ぶ、という点を除けば、音質にこだわりのある人も納得できるのではないか、と思います。
6. 関連リンク
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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