どうも。ひつじです。私のことに興味のある人が万が一いらっしゃれば、割とオーディオに興味があることに気づいてくださっているかもしれませんが先日ゆないと氏がレビューされていたKhadas Tone 2 Proが気になってたんですよね…。
昔はTI(テキサス・インスツルメンツ)かWolfsonが強かったDACチップ界隈においてシーラスロジックや旭化成、そしてESSの存在感は増しており、私自身もESSのDACチップを搭載したオーディオはいくつか試しましたが「24bit/192KHz」が上限だった時期の製品からは、再生時のbit数やサンプリングレートにかかわらず、そもそもの製品スペックとして隔世の感さえあるなと思っています。
今回はKhadas Tone 2 Proをゆないと氏からお借りした上でES9016をパラレル駆動しているPioneerのヘッドホンアンプ兼DACのU-05と比較したレビューをお送りしたいと思います。「ガチめ」のオーディオ機器と比較した場合にどのような結果になるのかをお伝えできればいいなと思っています。(Khadas社様、ゆないと氏、ありがとうございます!)
なお、すでに何度かお伝えをしている機種のレビューなので、外観などの一部情報は割愛させていただきました。ご容赦ください。
1.スペック
これは何度も記載しているので、さっくりと。ゆないと氏の記事から転記させて頂きます。
【本体】
■カラー:ブラック、レッド、ブルー
■素材(ボディ・ボリュームノブ):航空機グレード アルミニウム
■素材(ボトムカバー):ABS、ポリカーボネート
■素材(フットパッド):シリコン
■DACチップ:ESS ES9038Q2M
■オペアンプ:OPA1612 ×4
■USBプロセッサ:XMOS XU216
■対応OS:Windows 7, 8, 10 / MacOS / Linux / Android /iPad OS & iOS
■サイズ:17.0mm x 88.0mm x 61.5mm/68.0mm(with RCA)
■重量:100g
【DAC性能(バランスRCA)】
■THD+N特性:0.000126%(-118dB)
■ノイズ:3.5uVrms
■ダイナミックノイズリダクション:121dB
■クロストーク:200kΩ: >120dB
■出力:200kΩ: 4.0Vrms
■周波数特性:20Hz-20kHz, ±0.15dB
【DAC性能(RCAシングルエンド)】
■THD+N特性:0.000158%(-116dB)
■ノイズ:2.0uVrms
■ダイナミックノイズリダクション:119dB
■クロストーク:100kΩ: >118dB
■出力:100kΩ: 2.0Vrms
■周波数特性:20Hz-20kHz, ±0.15dB
【ヘッドフォンアンプ性能(4.4mmバランス)】
■出力インピーダンス:2.4Ω
■THD+N特性:300Ω: 0.000158%(-116dB)
■THD+N特性:1kHz, 150Ω: 0.000158%(-116dB)
■THD+N特性:1kHz, 32Ω: 0.000282%(-111dB)
■ノイズ:117dB
■周波数特性:20Hz-20kHz, ±0.15dB
【ヘッドフォンアンプ性能(3.5mmシングルエンド)】
■出力インピーダンス:1.2Ω
■THD+N特性:1kHz, 150Ω: 0.000200%(-114dB)
■THD+N特性:1kHz, 32Ω: 0.000282%(-111dB)
■ノイズ:69dB
■周波数特性:20Hz-20kHz, ±0.15dB
【DACサンプリングレート】
PCM 384kHz / 32bit、DSD512 ネイティブ再生
個人的には「384KHz/32bit」対応でDSD再生対応というのはESSのDACである以上そりゃそうか、という印象ではあるのですが、お借りして予想外だったのはRCAながらバランス出力に対応していること。2万円クラスのDACでバランス出力に対応しているというのはとてもありがたいですね。RCA⇔XLRに対応したバランスケーブルを探せば、アンバランス環境以上に外的ノイズの低減を狙うことも可能でしょう。
ちなみにNintendo Switchとの組み合わせに関しては動作確認が取れませんでした。ChromeOSについては音声出力が可能です。
2.使用感
この点はゆないと氏が詳細にレビューくださっているので簡潔に。
はっきり言ってしまうと、LEDのカラーによって動作状況を判断する仕様はおしゃれだがマニュアルを参照しないと正直どういう動作状況か理解しがたい点、ボリュームノブのプッシュ操作が、実際は押下ではなくスライド操作である点は使い勝手をやや悪くしているとは思います。
また、上記のポイントにより結果として手で保持して操作をする方が使い勝手が良い、というのが正直なところです。ケーブルは多少余裕をもって用意しておきましょう。
ただ筐体のデザインなどは非常に良く、アルミの質感も上々。意表を突くようなデザインが施されたりもしていません。小型ではありますが価格相応以上の筐体品質を確保しているので他のオーディオ機器との溶け込みは良好です。手に取りやすいところに設置しておいても不満が出たりはしないと思います。
3.音質
試聴環境
試聴にあたって、以下のような環境を用意しました。
■ASUS ChromeBook Flip C434TA→Tone 2 Pro→外部ヘッドホンアンプ→ATH-AD2000
■自作PC→Tone 2 Pro→外部ヘッドホンアンプ→ATH-AD2000
■自作PC→U-05→外部ヘッドホンアンプ→ATH-AD2000
なお、自作PCは準ファンレス。ヘッドホンアンプはLME49990というチップを使用したキット品(電源はトランス仕様)のものを用意しています。少なくとも解像度や全体の音質はU-05以上のものを有している、とだけお伝えしておきます。
DACを動作させる際のソフトはfoobar2000。どちらのDACもASIOを使用して再生させることが可能な環境です。(=ビットパーフェクト)
なお、音源はヨルシカのCD「創作」をflac変換したものを使用。主に「嘘月」という楽曲を比較に使用しています。
音質
Tone 2 ProはDACもヘッドホン端子も基本的には同じ音質傾向ですね。フィルタやゲイン設定で大きく音質が変わる様子はありません。(ゲイン設定は今回使用したヘッドホンの能率がかなり良いためかもしれません。能率の悪いヘッドホンを使用した場合は印象が変わると思います。)
フィルタについて、一番音質のバランスが取れているのはMINI FASTかと思います。ただ大きな差異はないので好みの範疇でしょう。しいて言うなら「FAST」と「SLOW」の違いは結構分かりやすいかもしれません。
U-05と比較してダイナミックレンジが狭い点は否めないのですが、価格として明らかに差がある機種同士です。これは仕方のないところだと思います。価格通りの点ではありますが迫力の表現やダイナミクスの付け方、音のディテールの表現はU-05に分があります。一方、Tone 2 Proは可聴域でのノイズ感がほとんど気にならないです。
ただ、Tone 2 Proの出音は個性的ですね。全体的にサラサラとした音質(コンデンサーホン的な鳴り方に少し近い)です。迫力よりも滑らかさで聴かせてくれる質だと言えます。過去に所持していた製品の中だとKENWOODのKAF-A55の鳴り方に比較的近く、そこから癖を少し薄めてS/N比を上げたような感じですかね。特にヘッドホン端子での試聴は上位互換に近いと言えるでしょう。
面白いのはそのままの出音で高域が補完されているような(いわゆるアップサンプリングして倍音を付与したような)音質をしていることです。相応にプリエコーのような付帯音もどことなく感じられます。無論これは個性の範囲ですから「欠点」や「気になる点」ではありません。これはこれでいいんです。
ただ、少し気になって波形を分析してみました。(16bit/44.1KHzの音源を再生し、Roland Rubix24とREAPERを用いて24bit/96KHzにて録音したものを比較。録音後にノーマライズを実施。)一部手作業で処理しているので多少の誤差はお許しを。
まずU-05とTone2 Proは波形上位相が逆でしたが、これは特にデメリットのない話なので気にする必要はないでしょう。
ただ20KHz付近~より高域についてU-05に比べて波形が持ち上がっているのが分かります。この傾向は切り出した箇所以外でも再生中常に感じられるポイントでした。
この20KHz辺りは人の可聴域限界付近ですから多少の違いは気にすることでもありません。(さらに言えばほんのわずかにU-05の方が出力ゲインが大きく、ノーマライズを実施したので相対的にフロアノイズはTone 2 Proの方が目立つはず)
ただ、この相対的な高域の持ち上がりが倍音があるかのように感じさせている理由である気もします。「原音再生」とは多少違うかな、というポイントにはなりますが個性的な出音を持つDACはサブ機にちょうど良いのではないでしょうか。
過去に使用したことのある製品との比較も含め、全体的な素性としてはONKYOのSEシリーズやMUSILANDのMonitor 03 US Dragon等と比較しても1クラス上の製品かな、とは感じました。単純に音質がより良い、という点もありますがこのクラスで音質に個性がある、というのは十分推せる理由になりますね。
無論「初めてのPC用DAC」としては望外なクオリティだと思いますし、そこからオーディオの沼にハマってしまったとしても、10万円超級のDACなどに手を出さない限り愛着の持てる個性派として存在感を発揮してくれるものと思います。プリメインアンプやヘッドホンアンプを搭載した3万円前後のDAC等よりも使用できる期間・満足度を踏まえたコスパは高いかもしれません。
4.価格など
「Khadas Tone 2 Pro」は、HiFiGOにて199.90ドル(約20,743円)で発売中です。選択できるカラーは黒・青・赤の3種類です。HiFiGOは日本への発送にも対応しており、DHLやFedexなどによる比較的速い配送方法、5~10日で届く配送方法、郵便の3つから選べます。(ゆないと氏記事より引用)
おおよそ2万円のPC用DACとして考えれば、筐体の品質や大きさ、音質等で良好な製品だと思いますね。今回据え置きタイプのオーディオ機器として活用をしていますが、バスパワーで小型な点を活かしてポータブルDACとして使用しても面白いのではないかと思います。
また、普段ノートPCのヘッドホンジャックなどで音楽を聴いている人にとっても良い製品だと言えるでしょう。最近だとTWSタイプのイヤホンなどを購入したことで有線タイプのイヤホン等を余らせている方も多いと思いますが、そういった既存資源を活用しつつ音質向上を狙える製品です。
少なくとも2万円のミニコンポ等のヘッドホンジャックで聴く音楽よりははるかに「ピュアオーディオ」だと言えますし、手元でボリューム操作できる快適さやゲームプレイ時の遅延の少なさも見過ごせないポイントです。ヘッドホンを使えばご近所の方や家族に迷惑をかけずに音楽や動画も楽しめますしね。
個人的にはとてもいい製品だと感じます。オーディオの入り口としてだけではなく、「使い分けできるDACが欲しい」といった方にもお勧めできる製品だと感じました。