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第12世代(Alder lake)のモバイルCPUは相当速そう!(読者投稿:渋谷Hさん)

Alder Lakeは相当速い

画像出所:Intel

アメリカのデジタル製品見本市CES2022にて、intel第12世代Alder lakeのモバイル版のラインナップが発表されました(公式プレス資料その1その2)。第12世代モバイルCoreについては、次のような特徴が挙げられます
●なんと言っても速いです。1年前のノートPC(第11世代)に比べ速度が約1.5~2.5倍程度になるでしょう。
●定性的には電池持ちの(大幅な)改善も期待できますが、これはまだ正確なデータが出てきていません。
●主要なノートPCは2022年春以降に登場するでしょう。

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1.性能の見込み

ウインタブ注:記事中に「U15」「P28」といった表現がありますが、U15は「型番末尾Uで基本消費電力15Wのもの」、P28は「型番末尾Pで基本消費電力28Wのもの」を意味します。これらの型番体系についてはこの記事の最後で説明されています。

速さの目安

今までは性能の大雑把な目安としてコア数が使えましたが、第12世代は高性能コア(Pコア)と高効率コア(Eコア)という2種類のコアが混載されているため、今までのようなコア数での比較が難しくなりました。ただ、インテル公式の説明では、12世代Eコアと以前の世代コアを比べる際に、スレッド数が同じとき比較しやすい同程度の性能になるものとして扱っています。

そこで第11世代の初期フラッグシップi7-1185G7(4コア8スレッド)を基準にすると、

Core i7-12700H(14コア20スレッド)は最大2.5倍
Core i5-1250P(12コア16スレッド)は最大2.0倍
Core i5-1245U(10コア12スレッド)は最大1.5倍
Pentium 8500(5コア6スレッド)は最大0.75倍
と大まかに性能を比較できます。

Alder Lakeは相当速い

第12世代では、スレッド数がよい性能の目安になり、末尾がHかPかUで性能・消費電力がほぼ決まります。図にはありませんが、ゲーミングノート向けに発売されたTigerlake-H(8コア16スレッド)との比較では、倍率をそれぞれ半分にすると良いでしょう。

第12世代は性能がジャンプアップしており、買い替えを検討しているなら積極的に行ける世代だと思います。買い替え元がintel CPU搭載の持ち運べる(1.5 kg以下の)ノートならば、第12世代のどのCoreに買い替えてもかなり速くなるでしょう。ちょっと古い(4~5年前の)ノートからの買い替えならば、第12世代Pentiumですら速くて電池持ちが良くなる可能性が結構ある、というところです。

第12世代のモバイルCPUは、基本的には最大消費電力に応じてスレッド数が決まっています(2.0kg級H45=20スレッド、1.5kg級P28=16スレッド、1.0kg級U15・タブレット級U9=12スレッド、i3/i5/i7で多少の増減あり)。基本的には重さに合わせて最適なCPUが付くはずですが、性能が必要ならそれに合わせた重さのものを買う必要があるでしょう。

一方で、同じ電力カテゴリ内でのi3/i5/i7の差は小さくなっています。以前の世代では同じi3なのに2コアと4コアが混ざっているなど大きな差があることがありましたが、第12世代では末尾の文字(H/P/U)が同じならi7とi3の間でも2倍ほどの差は付いていません。細かく見ると、H45はi7とi5の間にスレッド数に差があります。P28・U15・U9ではi7はi5と同じスレッド数ですがクロックやiGPU等が少しずつ豪華で、i3はスレッド数が少なくなっています。

今回、PentiumとCeleronはU15とU9にしか存在せず、i5の半分のスレッド数になっています。このうちPentiumは一昔前のノート用i5~i7程度の力が見込まれ、十分に実用レベルでしょう。Celeronはターボ周波数が無効化されPentiumのさらに半分の性能と、12世代の中でも格段に遅く、Geminilake等ネットブック向けCPU程度の速度しか期待できません。

競合製品との比較については、公式プレゼンでは「i9-12900HKはM1 maxより(同一消費電力でも)速い」と主張していますが、これは「有利な条件で測れば嘘ではない」という程度と見込まれます。概ね、U15(12スレッド)はRyzen 5 5600UやApple M1と、P28(16スレッド)はRyzen 75800HやM1 Pro (8core)と、H45(20スレッド)はM1 maxと比較できる速度になるでしょう。ただ、Intel、AMD、Appleで得手不得手がやや分かれてきた印象で、計測法(ベンチマーク方式)の種類によって上下関係は変わると思います。

なお、Intel第12世代CPUを搭載したノートPC製品は未登場ではありますが、速度テストは(1)OEMメーカーの試作テスト結果の漏洩 (2)デスクトップ版のコア数とクロックを制限したシミュレーションの結果 (3) intel公式の説明、といった各種の指標が一致して同じ結果を示しており、「前世代とはスレッド数で比較できる」という方式はおおむね成り立っているようです。

Alder Lakeは相当速い

intelが「i9-12900HKはM1 maxより(同じ30Wでも)速い」と主張しているスライド。

電池持ちの予想

電池持ちのほうは「高効率コアが搭載されたことで電池持ちがよくなることが期待できるが、情報が少ないので確たることは言えない」というのが現状です。ここから先は「なぜ期待できるか」を簡単に説明します。

体感的な「電池持ち」に影響するのは、ブラウジング、動画再生、テキスト編集といった軽~中負荷時の消費電力です。多くのノートPCの実測結果をもとにすれば、軽~中負荷に対して、(過去発売された)IntelやAMDの製品が最大の60%程度の電力を消費してしまうのに対し、電池持ちがいいと言われるM1は20%程度しか消費しないことが分かっています。M1でも最大負荷をかけ続ければ2時間程度で落ちてしまいますので、一般的な「電池持ち」は最大負荷ではなく軽~中程度の負荷で認識されていると言ってよいでしょう。

一般的なクロック制御では、反応の遅さ=「もっさり感」を減らそうと、少しでも負荷が増大すればアグレッシブにクロックを上げていくため、低負荷時でも案外電力を消費しています(電源プランの詳細設定である程度変えられます)。試しに手元のCore i3-1005G4搭載機でYouTube視聴+ブラウザゲームで負荷をかけてHWiNFOで計測したところ、CPU使用率は20~30%程度の時間が多いのですが、その程度の使用率でも頻繁に最大クロックまで上がり(図左)、結果としてCPU使用率25%程度でも最大電力(18W)の60%程度(11W)を使用するという結果になりました(図右)。

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Alder Lakeは相当速い

Core i3-1005G4搭載機(電源プラン=電源に接続+バランス)にてYouTube視聴+ブラウザゲーム実行時に1秒インターバルで記録したCPU使用率、クロックおよびCPU消費電力の散布図

M1やintel第12世代Coreのような異種コア混載CPUの場合、低~中負荷の場合には最大消費電力の少ない高効率コアを使用し、高効率コアの手に余るときだけ高性能コアに任せるといった形で低~中負荷時の消費電力を削減することが期待されます(ウルトラモバイル向けのLakefieldで最初に異種コアが導入されたのはこういった目論見によるものです)。特にWindowsでは様々なバックグラウンド処理が走っていますが、高効率コアはこれらの処理の電力効率改善に特に寄与すると説明されています。

前回、デスクトップ版発売に合わせて書いた記事では、デスクトップ版で中程度(ゲーム)以下の負荷では電力効率が大きく改善し、前世代より改善したのは当然のこと、全力で回せば240Wもの電力を消費する12900Kでも軽作業ならば競合製品のRyzenよりも電力効率で勝ることを紹介しました。このあたりはEコアの恩恵が大きいでしょう。

Alder Lakeは相当速い

高効率コア(Eコア)と高性能コア(Pコア)の分担で理想的に消費電力を削減できた場合の模式図。Eコアは元Atomで、軽作業はAtom、もっさりしそうならCoreの出番という割り振りになる。

また、M1の電池持ちは、そもそも基礎性能が高いゆえにクロックをあまり上げなくていいという面もあり、同じARMでもSnapdragon 8cx搭載のWindows on ARMはちょっとした作業でもクロックが上がりがちで思ったより電池が持ちません。第12世代は基礎性能が底上げされており、EコアはARMのLITTLEコアに比べてかなり性能が高いので(Jasper lake以上でLakefield発表時にbig.Biggerだと説明されています)、そちらも期待できそうです。

果たしてモバイル版でもEコアによる軽作業の省電力化が実現できているか、触って確かめたいところです(ただし、ゲーミングノートはdGPUもついていて消費電力を考えていないのが通例なので、P28を触ってみたいです)。

2.搭載機種と発売時期

第12世代モバイルCPUは重い順、H45→P28→U15→U9の順に出るようです。

H45搭載のゲーミングノートは、比較的早期に出るようです。MSIはVECTOR GPシリーズ(17in:2.9kg, 15in:2.38kg)やCrosshairシリーズ(17in:2.66kg, 15in:2.25kg)などCore i9-12900HK等を搭載したPCを紹介しており、公式サイトは台湾のMSIショップ店頭で買えるような記述になっています。DellのAlienware x14/x15/x17を始めとして、著名なゲーミングノートのブランドは、第12世代を搭載した後継機種が春ころまでには出るようです。

P28を搭載した「普段から持ち歩けるノートPC」が登場するのは、2022年の4月前後になりそうです。CES2022にあわせ、DellからXPS 13 Plus (Core i7-1280P等選択可、1.24kg~)、レノボからThinkPad X1 Nano Gen 2 (Core i7-1280P等選択可、0.97kg~)やThinkPad X1 Carbon Gen 10 (12世代PかUから選択可、1.12kg~)などが発表されています。このほかテスト情報から、富士通やサムスンなど大手のほか、MSI Prestige 14 (1.29kg)やONE XPLAYER (0.82kg)の後継機種が第12世代のP28を搭載するようです。

1.0kg前後のモバイルノートや2in1向けのU15は、現在のところ搭載機の機種名が出てきておらず、発売は春から夏ごろまでずれ込みそうな気配です。ただ、U15はH45やP28と同じソケットで同じマザーボードに刺さるので、P28でテストはできますし、供給されればすぐ発売は可能でしょう。

タブレット級のU9は専用の小型のソケットでSoCの製造が別になることから、発売開始は春遅く以降、夏ごろになるのではないかと思います。

ラインナップ

第12世代モバイル版は細かい品目(SKU)の区分が非常に多いのですが、重要なのは末尾の文字です。

末尾H = 45W ≒ 20スレッド = M1 maxに近い = 半据え置き向け(2.0kg級)
末尾P = 28W ≒ 16スレッド = M1 pro (8core)に近い = 普通のノート(1.5kg級)
末尾5U = 15W ≒ 12スレッド = M1に近い = 軽量ノート(1.0kg級)
末尾0U = 9W ≒ 12スレッド = 9W = ハイエンドスマホ~M1 = タブレット用
これに加え、i7ならやや豪華、i3はちょっと性能で劣る、程度に考えておくのが良いでしょう。

Alder Lakeは相当速い

H45のラインナップ(クリックで拡大します)

Alder Lakeは相当速い

P28のラインナップ(クリックで拡大します)

Alder Lakeは相当速い

U15のラインナップ(クリックで拡大します)

Alder Lakeは相当速い

U9のラインナップ。こちらはintel公式スライドが間違っており、末尾は”5U”ではなく”0U”になる。(クリックで拡大します)

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