最近、ウインタブでCore Ultraのおすすめモバイルノート5選が紹介されました。この記事を知人に見せたところ、記事中で「ベストな選択肢」として推薦されていたPrestige 13 AI Evo A1Mを買ったので、紹介した役得として簡単にレビューをさせていただくことになりました。
・第14/新第1世代(Meteor lake-H)Core Ultra 7搭載
・1 kgを切る軽量ながら耐久性が高い筐体
・省電力設定で圧倒的バッテリー持続時間ながら性能も第11世代並みを維持
・負荷時の最大性能も順当に向上
・2.8kの高解像度・HDR対応の発色品質
ここはイマイチ
・標準アダプタがないと最大パフォーマンスが維持できない
・標準設定は電力浪費寄り(※変更は簡単)
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目次
1.製品概要
スペック表
Prestige 13 AI Evo A1M | |
OS | Windows 11 Home/Pro |
CPU | Intel Core Ultra 7 155H |
外部GPU | なし |
RAM | 16GB/32GB(LPDDR5, オンボード) |
ストレージ | 512GB/1TB/2TB SSD(M.2 NVMe) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 13.3インチOLED (2,880×1,800) 60Hz HDR グレア |
ネットワーク | WiWi-Fi 7(11be)※、Bluetooth 5.4 |
入出力 | USB Type-C(Thinderbolt 4)× 2、USB3.2 Gen1 Type-A、HDMI、microSDカードリーダー、オーディオジャック |
カメラ | Webカメラ(207万画素)顔認証対応 |
バッテリー | 75Whr(JEITA 3.0 アイドル最大20時間、動画再生時最大11時間) |
サイズ | 299 × 210 × 16.9 mm |
重量 | 990 g |
※国内は法令上axまで
バリエーションモデル
・A1MG-4765JP:Pro / 32 GB / 1 TB ⁑
・A1MG-4109JP:Pro / 16 GB / 512 GB ⁑
・A1MG-7001JP:Pro / 32 GB / 2 TB
・A1MG-1103JP:Home / 32 GB / 1 TB
※左からOSバージョン/RAM/SSD ⁑パソコンショップArk経由の場合SSDカスタマイズ可
コメント
この機種はウインタブでも以前に実機レビューを行った機種の後継にあたり、990gの筐体、13.3インチのディスプレイサイズ、ステラグレイの筐体など基本的なところは同じです。
MSI Prestige 13 Evo A12M レビュー - MSI初の重量1キロ切りモバイルノート。システムスペックも高水準
前身機との相違点を列挙すると下記の通りで、ほぼCPUの変更とディスプレイの高画質化のみの違いです。DC給電が省かれたためThunderbolt 4を2つ同時に使う方は注意が必要な可能性はあります。
・CPU:第12/13世代12/14コア → 第14世代14コア
・ディスプレイ:13.3インチ1,920×1,200 ノングレア → 13.3インチ2,880×1,800 HDR グレア
・Wi-Fi 6E(11ax)Bluetooth 5.2 → Wi-Fi 7(11be)、Bluetooth 5.4 *国内法令でWiFi6相当
・DC-INジャック廃止、Thunderbolt給電のみに
・カラーバリエーションがステラグレイのみに
2.外観と使用感
同梱物
ACアダプター(65W出力、USB Type-Cポート用)と電源ケーブルが同梱されています。
天板と底面
外観はほぼ前モデルと同じで、マグネシウム合金製、艶消しでほぼ黒に近いステラグレイの筐体色です。ファンの通気は底面から背面に抜ける仕様で、開けると奥側が浮いて底面通気口に空気が通る仕様(リフトアップヒンジ構造)です。
側面
左側面にはHDMI,Thunderbolt4 (USB-C) 端子が2つあり、両方とも給電・画像出力が可能です。その隣に電源・給電インジケータがあり、一番手前にヘッドホン端子があります。右側面にはUSB-A、セキュリティロックスロット、microSDスロットが並んでいます。前面は特に何もなく、背面は排気口が空くのみです。
キーボードの使用感
ほぼ前モデルと同様と思われ、静かな打鍵音で、メカニカルっぽさのある気持ち深めのキーストロークを持ちます。キーピッチは横19 mm×縦17⁓18 mmで若干縦のほうが短く、またキー間に隙間のある配置なので最初は多少の違和感がありますが、すぐに慣れる程度です。
バックライトは明るさを3段階に調整できますが、バックライトが必要な場面では一番暗い状態にしても十分な視認性を確保できます。キーの周囲が光るのが他のビジネス機と少し違ってサイバーな印象を与えます。
ディスプレイの使用感
13.3インチ・グレア(光沢あり)・OLED(有機EL)で解像度は2,880×1,800の16:10比、標準の文字拡大率は250%です。個人的には標準の拡大率ではやや字が大きく、拡大率200%設定にしたほうがしっくりくる感じでした。色域は映画向けのDCI-P3 100%カバーを謳っており、sRGBはそのサブセットのため100%カバー、Adobe RGBの大半もカバーしており、クリエイティブ用途でも十分使えるでしょう。最大輝度は明記がありませんがHDR対応で、設定でHDRをオンにしてHDR動画サンプルを見ると非常に美しい映像を楽しめます。また、OLEDだけあって斜めから見た時もグレアであるという点以外は気になりません。
発色・解像度・最大輝度、角度依存性の低さのいずれも13.3インチのモバイルノートとしては最上級です。リフレッシュレートが60 Hzなのも、ゲームを中心に動かす機種ではないので十分でしょう。一つだけ気になるとすればグレアの反射がそこそこあることで、日中の屋外で使うとそこが気になる可能性があります。
スピーカーとカメラ
本体側に2スピーカーがあり、音質設定用アプリとしてDTS Audio Processing(デフォルトでオン)、調整用にRealteck Audio Consoleが入っています。さすがに軽量ノートのため、良いスピーカーと聞き比べれば重低音が少ないシャリシャリ音で解像感も低くはっきり違いが分かりますが、画面テスト用のHDR動画サンプルのジャズ音楽も聞き慣れてくると没入して聞くことができる程度の品質はありました。
カメラは2メガピクセル=FHD画質です。Web会議・顔認証用のインカメラなので、その目的に使うならこれで十分でしょう。物理シャッターがついているので、閉めておけばうっかりカメラを起動させても安心です。MSI標準機能でスピーカーとマイクの「AIノイズキャンセリング機能」があり、Zoomなどの起動時に自動設定されていました。Tobii /experienceというアプリが付属しており、Webカメラのエフェクトやユーザ検出(自動ロック等)が行えます。
筐体その他
ヒンジは180度開口可能です。また、F12キーを押すだけで簡単に画面を反転できます。最近はこのような構造のノートPCが増えていますが、ビジネスミーティングの際などに向かい側にいる人と画面の共有が容易になりますし、「あると便利」な構造です。
3.性能テスト
今回はインストールが重いベンチマークアプリ(Cinebench 2024, 3DMark)は割愛しています。性能テスト中、HWiNFOで監視・記録し、Windows Defenderや検索Indexerが時たま走り、特別なクリーンアップは行っていない状況で実施しています。
メーカー指定の電源モード(ユーザーシナリオ)は標準の「MSI AI Engine」というアダプティブなモードのほか「超高パフォーマンス」「バランス」「サイレント」「Super Battery」の4種類があり、F5キーをFnボタンなしで押すと簡単に切り替えられます。特記していない場合は標準モードで、ディスプレイの明るさ設定「50」で計測しています。
ベンチマークテスト
CPUの基礎ベンチマークとしてCinebench R23の結果を電源モードごとに測定したのが以下の結果です。このうち「超高パフォーマンス」に関しては、純正以外のアダプタを使うと最高パフォーマンスを維持できず、少し落ちた値になります(ハードウェア的な問題というよりソフト的な制御に見えるので、eMarker付きのケーブルなどがあるといいのかもしれません)。
前モデルと最高性能を比較すると、シングル性能はやや上、マルチ性能のスコアは1.3倍になっています。第13世代の末尾”H”と比べると遅くなっていますが、これは本機種が電力低めで駆動しており、同CPU搭載でも大型のMSI Prestige 16 AIStudio B1Vはi7-13700Hと同等以上の性能になっています。
「超高パフォーマンス」は2年前の大型機に近く、「バランス」は第12世代搭載モバイルノートの高性能モード並、「サイレント」は第11世代Core i7-1165G7と体感的に同等の値で、「Super Battery+節約機能」の最小電力設定でも第10世代i5以上のスコアになっています。
MSI Prestige 16 AI Studio B1V (Core Ultra 7-155H):1827 / 16421
MSI Prestige 13 Evo A12M (Core i7-1280P):1667 / 9514
Surface Laptop Studio 2 (Core i7-13700H):1847 / 14184
HP Spectre x360 14-ef (Core i7-1255U):1666 / 7671
ASUS ROG Strix G15 G513RW (Ryzen 9 6900HX):1580/ 14830
ASUS Vivobook Pro 15 OLED (Ryzen 7 5900HX):1482 / 12108
Lenovo ThinkPad X1 Carbon Gen 9 (Core i7-1165G7):1470 / 5513
Lenovo Yoga Slim 750i(14) (Core i7-1065G7):1183 / 4174
Microsoft Surface Laptop Go (Core i5-1035G1):1006 / 3559
iGPUは、3DMarkを使わず、インストール不要なものの中である程度実効性のある値を出す「ユニティちゃんが踊るWebGLベンチマーク」を用い、High Qualityモード・4k最大化表示の平均FPSを記録しました。「超高パフォーマンス」ではHP Spectre x360 14-euより高く、「サイレント」では第12世代iGPU並みでした。
MSI Prestige 13 AI Evo A1M (Ultra 7-155H): サイレント 20、超高パフォーマンス 32
HP Spectre x360 14-eu (Ultra 7-155H): クール 24、パフォーマンス 29
ASUS ROG Flow Z13 GZ301 (i5-12500H): サイレント 18、パフォーマンス 21
Crystal Diskmarkの結果は以下の通りです。NVMe SSDの中ではまずまずといった速さですが、ビジネス用では十二分に早いでしょう。
バッテリー駆動時間
バッテリーは75 Whとこのクラスとしては大容量になっています。駆動時間の測定は、様々な負荷を1時間程度かけ、その間の電力消費量をHWiNFOでモニターして満充電から0%になるまでの時間を推定する方法で行いました。
基礎テストとして行ったJEITA 3.0の4k動画再生は、推定4時間58分(サイレントモードで推定10時間37分)、アイドルは推定16時間35分(バッテリー節約機能ONで推定19時間18分)となりました。モードによって極端に持続時間が異なるのが興味深いところです。続いて実用的な駆動時間の推定のため、いくつかのモードで下記の作業を合計1時間行いました。
・メモ帳やペイントを使ったレビュー執筆(30分程度)
・Web閲覧(15分程度)
・動画サイトでの動画閲覧(15分程度)
標準設定では1時間で13.8%(推定7時間09分)、電源モード「サイレント」は1時間13.1%(推定7時間34分)、「サイレント」+Windowsの「バッテリー節約機能」ONで1時間9.5%(推定10時間32分)でした。標準設定は前モデルの6時間弱に比べ+25%、省電力設定では動画閲覧など重めの作業を増やして同程度の時間です。同世代大型機のMSI Prestige 16 AI Studio B1Vと比べるとほぼ同条件の標準設定では駆動時間75%程度で、これはバッテリー容量の差(75 Wh vs99 Wh)がそのまま出ています。
省電力性についてはややクセがあり、動画一つとってもJEITA 3.0のローカル4k動画は電源モード「サイレント」が効き、Youtubeは「バッテリー節約機能」がよく効く(FPSは落ちる)、一方でZoomはどちらも効果が限定的です(詳しく調べたところオーディオ(マイク)接続とビデオ配信の電力消費が大きいのが原因のようで、特にマイクは改善してほしいところです)。
ひとまず確実に言えることは、「サイレント」+「バッテリー節約機能」は多くの軽めのアプリで非常に電池持ちがよくなります。持続時間を重視すると決め込めば、このモードなら多くの人が12時間程度、1日中充電なしで作業することが可能でしょう。
スリープ時は、ディスプレイを閉じるとかなり早く(1時間程度)でディープスリープしているようで、その場合は開けた後に電源ボタンを押す必要があります。ただ、ディープスリープからの復帰含めて電力消費は常に1%未満でした(レビュー期間中実績)。
PD充電
充電は特段スピードの表記はありませんが、純正アダプタでは急速充電時1分1%ペースで、バッテリーを傷めにくい急速充電として普通の値です。1時間あれば実用的な範囲で充電でき、フル充電までは2~3時間を見積もると良いでしょう。各種の充電器の対応状況は以下の通りです。
PC用 65W PD充電器:可(超高パフォーマンスに制限あり)
Teclast 33W PD充電器:可(充電速度半分程度、”サイレント”モード推奨)
30W モバイルバッテリー:可(同上)
スマホ用20W PD充電器:不可
「超高パフォーマンス」で最大限のパワーを引き出すには純正アダプタが必要です。また、33W充電器を使うと充電速度が不足するとの警告が出ます。「サイレント」モード以下でないと充電・放電が頻繁に交代してバッテリーにはよくないので、「サイレント」が推奨されます。
発熱とファン音
ファン音は使い方依存で変わってきます。体感的には3段階程度あり、(レベル1)ユーザの耳で20dBA程度、静かな部屋で注意を向けて聞こうとしないと気づかない(レベル2)35dBA程度の「フーン」という音で人の声や打鍵音に紛れる(レベル3)45~50dBA程度の「キーン」という小型PC特有の音です。
電源モードが標準の場合、継続的に負荷がかかる場合にレベル3の騒音まで到達します。レビュー中では、初回起動時のMicrosoft Updateの連続の時にその状態になりました。電源モードが「バランス」で実用上は騒音は気にならず、「サイレント」以下の場合はベンチマーク中すらほぼレベル1の騒音にとどまり騒音が気になる状態にはなりませんでした。
発熱については、パームレスト付近はファンが回るような状況でも低温で、ファンクションキーより上の部分は触って熱い(50℃超程度)の高温になることがあります。(軽量な分筐体の熱容量自体が小さいせいか)外気温の影響を受けやすく、執筆時(2月末)では暖房が十分効いた部屋では人肌程度に温かいと感じる一方、もう少し寒い部屋ではひんやりした感覚でした。
4.レビューまとめ
本機種は、1.0 kgを切る軽量筐体ながらMIL規格を満たす耐久性があり、75 Whの大容量バッテリーで長い持続時間を持ちます。特に電源モード「サイレント」+「バッテリー節約機能」を組み合わせた時は実用的な負荷でも10時間の大台に乗る持続時間を期待でき、低発熱と低騒音の快適さもあって、モバイルノートかくあるべしといったPCに仕上がっています。
パフォーマンスもしっかりしており、「超高パフォーマンス」の性能は2年前の大型機に匹敵しますし、「バランス」は2年前のスタンダードノートのパフォーマンスモード水準、電力超節約設定でも第10世代のフルパワー並です。第10世代以前のモバイルノートを使っているなら買い替えて使い勝手が下がる要素はまずなく、純然たるアップグレードになります。
もちろん、フルパワーを出すと騒音や発熱が大きく高負荷アプリを常用するようには作られていませんし、使用するアプリや動作モード次第で持続時間が伸びにくいといった若干の癖はあるので、すべての人にとってファーストチョイスというわけではありませんが、総じて、営業など毎日PCを持ち歩く人にとっては、2024年3月頭現在で最強のWindowsモバイルノートの一つといって間違いありません。
Core Ultra搭載製品は今後も続々と出るのでまた情勢は変わってくるとは思いますが、この重さでバッテリー容量75 Whは(前モデルの時代から)他に類を見ず、少なくとも今年のうちは軽量Windows機の中でもバッテリー持続時間最長の一角の座を占め続けるのは間違いないでしょう。
5.関連リンク
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