現在ゲーミングノートPCの「Vector 16 HX AI A2XW」の実機レビュー記事を執筆中で、この記事のあとに公開する予定なのですが、この製品は「Thunderbolt 5」を搭載しています。ウインタブでThunderbolt 5搭載機のレビューをするのは初めてですし、このポートの性能をフルに活かせるレビューをする、というのも現状難しいです(それくらい高性能です)。
Thunderbolt 5という規格については2023年9月にIntelが発表していますので、発表からもう2年近くが経過していることになります。しかし、規格が発表されても、PCメーカーやパーツメーカーの開発フェーズが入りますので、製品化までにはタイムラグが発生します。MSIやGIGABYTEのハイエンド機のみにThunderbolt 5搭載機が見られる、というのが現状です。
とはいえ、2025年後半にかけてハイスペック機を中心にThunderbolt 5搭載機が続々と登場するものと思われますので、この機会に「Thunderbolt 5とは何か」ということを知っておきたいと思います(尻に火がついてからようやく動き出す、いつものウインタブのスタイル)。
なお、「Thunderbolt 5は別にして、USBの規格を知りたい」という人は下記の解説記事をご覧ください。
ややこしい「パソコンのUSB規格」について、実用的に「これだけは知っておきたい」ということをざっくり解説します
目次
1. Thunderbolt 5とは何か
まずは教科書的な説明をしておきましょう。
「Thunderbolt 5(サンダーボルト5)は、PCと周辺機器をつなぐ最新世代の高速インターフェース規格です。現行のThunderbolt 4の後継にあたり、ポート形状はUSB Type-Cと変わりません。データ転送速度や映像出力、給電能力の面で大幅な強化が図られています。」
2. 圧倒的なデータ帯域幅 (最大80Gbps/120Gbps)
Thunderbolt 5はThunderbolt 4の2倍となる最大80Gbpsの双方向帯域幅を実現し、映像用途など負荷が高い場面では「Bandwidth Boost(双方向ではなく一方向のデータ転送に特化する)」機能により最大120Gbpsに(Thunderbolt 4の3倍)までブーストできます。
これにより、外付けストレージへの超高速なデータ転送や高解像度映像の同時伝送などに一段と余裕が出ます。例えば、巨大な動画ファイルも数秒で転送できる可能性があり、複数の4K/8K動画ストリームを同時に扱うようなクリエイター作業や、超高速SSDによるデータバックアップ、さらには外付けGPU(グラフィックスボード)を用いたゲーミング環境でもボトルネックを抑えて快適に利用できます。
そう言えば以前、外付けGPU(eGPU)のレビューをした際、OCuLink(64Gbps)とThunderbolt 4(レビューしたeGPUだとUSB4、40Gbps)ではベンチマークスコアに結構な差が出ました。Thunderbolt 5だと理論上はその差が埋まる、ということになりますね。
3. 従来のUSB規格との高い互換性
Thunderbolt 5はポート形状がThunderbolt 3/4と同様に「USB Type-C」であり、既存のUSB規格との高い互換性を備えています。USB4対応機器はもちろん、USB 3.2やUSB 2.0といった旧世代のUSB機器もそのポートにそのまま接続して利用できます。
つまり、手持ちのUSBメモリや外付けSSD、USBケーブルなどもThunderbolt 5のポートで問題なく動作し、それぞれの機器の対応速度で通信できます。新しいパソコンにThunderbolt 5ポートがついている場合、歓迎こそすれ、手持ちのUSB機器との互換性を心配する必要はありません。
4. 高解像度ディスプレイへの対応 (DisplayPort 2.1)
映像出力の面でもThunderbolt 5は強力です。Thunderbolt 5のポートは映像用規格である最新のDisplayPort 2.1規格に対応(Thunderbolt 4はDisplayPort 1.4規格)しており
- 最大で8K解像度のディスプレイを2台同時接続したり、
- 4K解像度のディスプレイを3台まで高リフレッシュレート(144Hz)で接続
するといった高度なマルチモニター環境を実現できます。従来のThunderbolt 4では8Kディスプレイは1台(または4Kが2台)程度でしたから、Thunderbolt 5では高度な動画編集やゲーミング用途でも余裕を持って複数画面を扱えるようになります。…が、一般ユーザー的にはあまり意味がないかもしれません…。
5. 最大240Wの給電能力
Thunderbolt 5ではデータと映像だけでなく、給電能力(USB Power Delivery)も強化されています。USB PD規格の最新拡張である「USB PD EPR (Extended Power Range)」に対応し、最大で240Wの充電・給電が可能です。これは従来の最大100Wと比べ約2.4倍もの大出力で、ケーブル1本で高性能ゲーミングノートPCや大型ディスプレイなど電力消費の大きな機器にも電源供給できるようになります。
ただし、この240W給電を活かすには接続される機器(PC側)も対応している必要があります。現状、多くの一般的なノートPCはせいぜい65W~100W程度あれば十分動作する(急速充電できる)ため、240Wが必要なのはゲーミングPCなど一部のハイエンド機に限られます。
6. 性能を活かすには専用ケーブルが必要

エレコム USB-C Thunderbolt 5 ケーブル
Thunderbolt 5の性能をフルに引き出すにはPC側にThunderbolt 5ポートがついているだけでなく「対応するケーブル」を使用する必要があります。お手持ちのThunderbolt 4用ケーブルやUSB Type-Cケーブルも使用できますが、これではThunderbolt 5本来の性能は出ません。
ここに画像を掲載したエレコム USB-C Thunderbolt 5 ケーブルは「Intel正規認証品」を謳っており、データ転送は最大120Gbps、240WのUSB PD対応、8K@60Hzの映像出力対応という説明になっていますので、Thunderbolt 5の性能を最大限発揮できます。ただし、お値段は4,776円(長さ1 m)もします。
エレコム USB-C Thunderbolt 5 ケーブル:Amazon
7. まとめ:次世代に向けて期待のThunderbolt 5
ここまでThunderbolt 5とは何か?について説明してきました。Thunderbolt 5ポートは今後ハイエンドPCを中心に搭載機が増えることが予想されます。
購入するPCにThunderbolt 5ポートがついている、というのは「歓迎できること」ではありますが「必要か?」と言われると、「いや全然…」というのが個人的な感想です。
私としては、データ転送速度に関してはThunderbolt 4やUSB 4の40Gbpsすらニーズがありません。PCのストレージから数十GBのデータを吸い出すような機会はほとんどありませんし、レビュー用にeGPUを入手しましたが、ウインタブの仕事以外でeGPUを接続する機会もありません。
手持ちのモバイルノートはUSB PDに対応していますが、ACアダプターの出力は65Wですし、以前PD 3.0の急速充電器を使用したときも最大の充電能力は65Wで頭打ちになってしまいましたので、240W出力は全く意味がありません。また、4Kディスプレイを何枚も持ってないですw
しかし、Thunderbolt 5は圧倒的に高性能なのでクリエイターやゲーマーには高いニーズがありそうなのと、当面は使いそうもないスペックであっても下方互換性が確保されているので無駄にはなりません。まあ、現状だと「これから買うPCにThunderbolt 5がついていればうれしいが、なければないでいいや」という感じでしょうか。
8. 関連リンク
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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