ノートPCを買うときにはいつもThinkPad、という人がいると思います。私もその一人です。ThinkPadシリーズは筐体の外観に統一性があり、キーボードの打鍵感、トラックポイント、堅牢性、サポート体制などが高く評価されているのはみなさんご存知だと思いますが、個人的には正直なところThinkPadを選ぶのは「宗教みたいなもの」かもしれません。つまり、論理的に製品のメリットを列挙することはできるが、それだけでなく「そもそもThinkPad以外は購入の選択肢になり得ない」と信じ込んでしまっている、ということです。
とはいえ、こういう気持ちはThinkPadユーザー以外には「なんやそれ?」ということだと思いますので、この特集記事では長年ThinkPadを使ってきた私、ウインタブの視点も交えて、ThinkPadの特徴を解説したいと思います。
今回は「X1・X9・X」シリーズを取り上げます。広義には「Xシリーズ」と書いても良いのかもしれませんが、レノボでは明確に「X1」「X9」「X」と分別していますので、この記事の表記もそれに倣います。X1・X9・Xシリーズは「軽量・高性能」な「ThinkPadモバイルのトップシリーズ」です。
目次
1. ThinkPadの特徴

ThinkPad X1 Carbon Gen 13のイメージ画像
ThinkPadには、他のノートPCにはない「らしさ」があります。黒を基調とした無骨なデザイン、打鍵感にこだわったキーボード、独自のトラックポイント…、これらの特徴が多くのユーザーを惹きつけてきた、言い換えると「信者を作ってきた」と言えます。
実用性という点で最も評価が高く、わかりやすいのが「キーボードの完成度」です。キートップ中央が大きく凹んだ立体的な造形、やや深めのキーストロークなど、一度しっかりタイピングしてみればThinkPadのキーボードがいかに優れた設計になっているかがわかると思います。
それと「赤いデベソ(トラックポイント)」。私の個人的な感想(タッチパッドが苦手…)では「マウス以外で唯一まともに使えるポインティングデバイス」です。
また、ThinkPadはビジネス現場での信頼性でも選ばれています。特に「並外れて頑丈」であると言われていて、数値面では「MIL規格に準拠」ということが謳われていますが、私が聞いたことのある都市伝説にはこんなのがあります。
ある夫婦が自宅で夫婦喧嘩をして、奥さんがご主人に向かってThinkPadを投げつけた。ご主人は辛くもそれを避け、ThinkPadが壁に激突した。壁には穴が開いたがThinkPadは壊れなかった。
これ、出典を探しましたが見つかりませんでした…。まあ、「都市伝説は都市伝説」なのですが、ThinkPadが頑丈である、ということはもはや「定説」と言っていいでしょう。
※ThinkPad全体の魅力については、今後公開予定の特集記事でも詳しく紹介する予定です。
2. X1 / X9 / Xシリーズの2025年モデル一覧表
製品名 | CPU | ディスプレイ (主なもの) |
重量 | 実売価格(目安) |
---|---|---|---|---|
X1 Carbon Gen 13 IAL ▶ 紹介記事を見る ▶メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Arrow Lake) |
14.0インチ有機EL 2,880×1,800 |
約1.01kg | 約22〜30万円 |
X1 Carbon Gen 13 Aura Edition ▶ 紹介記事を見る ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Lunar Lake) ※Copilot+ PC |
14.0インチ有機EL 2,880×1,800 |
約0.986kg | 約26〜32万円 |
X1 2-in-1 Gen 10 IAL ▶ 記事準備中 ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Arrow Lake) |
14.0インチ有機EL 2,880×1,800 |
約1.22kg | 約25〜35万円 |
X1 2-in-1 Gen 10 ILL ▶ 紹介記事を見る ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Lunar Lake) ※Copilot+ PC |
14.0インチ有機EL 2,880×1,800 |
約1.22 kg | 約28〜35万円 |
X9 15 Gen 1 Aura Edition ▶ 紹介記事を見る ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Lunar Lake) ※Copilot+ PC |
15.3インチ有機EL 2,880×1,800 |
約1.4kg | 約20〜25万円 |
X9 14 Gen 1 Aura Edition ▶ レビューを見る ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Lunar Lake) ※Copilot+ PC |
14.0インチ有機EL 2,880×1,800 |
約1.24kg | 約18〜23万円 |
X13 Gen 6 (Intel) ▶ 紹介記事を見る ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Arrow Lake) |
13.3インチIPS 1,920×1,200 |
約0.93kg | 約16〜23万円 |
3. X1 / X9 / Xシリーズの2025年モデルの寸評
X1シリーズ - ThinkPadモバイルのフラッグシップ

ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Edition
X1シリーズの2025年モデルには「X1 Carbon Gen 13」と「X1 2-in-1 Gen 10」があり、それぞれ搭載CPUにより「IAL」と「Aura EditionもしくはILL」の2モデルがあります。
IALとは「Intel Arrow Lake」搭載、Aura EditionもしくはILLは「Intel Lunar Lake」搭載です。総合的なパフォーマンスはArrow Lakeが上、NPU性能とバッテリー持ちはLunar Lakeが上です。また、Microsoftが規定する「Copilot+ PC」はNPU性能が要件になっており、Arrow LakeはCopilot+ PCの要件を満たさず、Lunar Lakeは要件を満たします。Arrow LakeとLunar Lakeについて詳しく知りたい人はこちらの記事をご覧ください。
ノートPC用CPUの選び方 - 2025年前半・最新CPU編
X1 Carbon Gen 13
「X1 Carbon」というのはThinkPadユーザーにとっては「ビッグネーム」です。実際のところ、この製品よりも高価なThinkPadも存在しますが、それでも「間違いなくThinkPadのトップモデル」と言っていいでしょう。
1キロ前後の超軽量筐体にレノボの最新テクノロジーを凝縮したパッケージングは「性能、快適性、軽さ」のどれも犠牲にしていませんし、見た目は他のThinkPadと同じでもプレミアム感は明らかに上です。
X1 2-in-1 Gen 10
X1 Carbonを2-in-1筐体にしたものですが、筐体素材はX1 Carbonとは異なり、また2-in-1筐体としての強度を確保するためか重量も少し重いです。X1 Carbonとほぼ同等のプレミアム品質(性能や機能)を備えつつも2-in-1筐体であることのメリットは大きく、筆圧対応のペン(付属品です)を使用して本格的なイラストなどの制作もできますし、会議や小規模のミーティングでもフレキシブルに変形できる筐体構造は便利です。
この記事で紹介する機種の中で最も値の張る製品ですが、それに見合う価値は十分にあります。
X9シリーズ - 掟破り?全く新しいThinkPad
記事の冒頭でチラッと触れた「ThinkPad宗教論」ですが、宗教で言えば「異端者」扱いされそうなのがこのX9シリーズ。トレードマークの「真っ黒な筐体」ではなく「赤いデベソ(トラックポイント)」もない、見た目が「むしろ普通のノートパソコン」になってしまいました。
しかし、ウインタブでこの製品(X9 14)を実機レビューして、「見た目は違うけれど、品質は間違いなくThinkPad」だと感じました。また、「異端者」と書きましたが、ThinkPadユーザーではない人にとっては「とっつきやすいThinkPad」だと思います。
X9 14 Gen 1 Aura Edition
14インチのモバイルノートです。デザインに関してはどうしても賛否がわかれるところではありますが、CPUにLunar Lakeを搭載するCopilot+ PCでディスプレイは全モデル有機EL、そして実機レビューでは「スピーカー音質が異常に良い」ことに驚きを感じました。
X9 14は製品価格が低めなのも魅力です。下に紹介するX13 Gen 6とほぼ同じくらいの価格帯で、その割に(繰り返しになりますが)有機ELディスプレイを搭載していたりするので、他社のノートPCと比較しても割高感がありません。
X9 15 Gen 1 Aura Edition
こちらは15.3インチと大きめのモデルです。ただし、重量が1.4 kgと軽量なのでモバイル用としても使えます。デザインコンセプトはX9 14とほぼ同じ、キーボードにテンキーもありません。価格は20万円を越えてしまいますが、最低価格のベースモデルでもRAM32GB/1TB SSD、そして2.8K解像度の有機ELディスプレイを搭載していますので、コストパフォーマンスは素晴らしいです。
Xシリーズ - ThinkPadでは定番のモバイルノート
「Xシリーズ」と書きましたが、2025年6月5日現在のXシリーズは「X13 Gen 6(Intel)」のみです。2024年以前のモデルにはIntel版の他にAMD版があり、コンバーチブル2-in-1筐体のX13 2-in-1というモデルもありましたので、今後これらのモデルが追加される可能性はあります(海外ではAMD版が発表済みです。ただし、2-in-1については情報がありません)。
X13 Gen 6
ちなみに私、X13 Gen 4(2023年モデル)をメインのモバイルノートとして愛用しています。購入の経緯は「13.3インチがモバイルノートとして最適なサイズであること、そしてX1シリーズと比べて割安感があったこと」です。
X13 Gen 6は私が使っているGen 4から大きな進化を遂げました。CPUにIntel Arrow Lakeを搭載し、パフォーマンスを大きく向上させつつ、大幅な軽量化も実現、1キロを大きく下回る約0.93kgとなりました。私は「X1 Carbonがフラッグシップなら、X13はThinkPadモバイルの『定番』である」だと思っていますので、品質に疑いないはずです。
というか「自分で購入し、大満足しているので、皆さんにも自身を持っておすすめ」できます!
4. まとめ
X13の寸評で妙に力が入ってしまいました。でも、仮に私がX1 CarbonのユーザーであればX1 Carbonの寸評に以上に力が入ったと思います。ウインタブでは様々なメーカーの製品を紹介したり、レビューしたりしていて、それらの記事を通じて「偏りのない、正しい情報」を読者にお届けするのが当然の義務だと思っています(なかなか完璧には出来ていないですけどね)。
でもねえ、ThinkPadについて書くと、妙に力が入ってしまうんですよね。それは私がThinkPadユーザーであり、ThinkPadを愛しているからだと思います。ThinkPadの特集記事、このあとTシリーズとEシリーズについても記事を書く予定ですが、多分「偏りがない」記事にするのは無理かもしれません。ご容赦ください。ThinkPadって、そういう製品なんですよ…。
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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