ThinkPadシリーズ中で最も購入しやすい価格のEシリーズ。低価格でも個人利用から法人のビジネス利用まで幅広いニーズに応えてくれるスタンダードノートです。この記事ではThinkPad Eシリーズの2025年モデルについて、スペックや選び方の違いを比較しつつ、用途別のおすすめモデルを解説します。
1. ThinkPad Eシリーズの特徴
ThinkPad Eシリーズは、上位シリーズ(X1シリーズやTシリーズなど)よりも価格を抑えつつ、堅牢な筐体や優れたキーボードなど、ThinkPadらしさをしっかり継承したスタンダードモデルです。というか、出来の悪いPC、単なる安物のPCにはThinkPadの名は冠されません。
Eシリーズは14インチと16インチの2サイズ展開で、用途や設置環境に応じた選択もしやすいです。2024年モデルまではIntel CPU版とAMD CPU版がありましたが、2025年モデルはIntel版のみとなり、下記の2系統が展開されています(6月9日現在)。
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IAL:Intel Arrow Lakeの略です。Arrow Lakeは「Core Ultraシリーズ2」のCPUで、AI処理チップNPUを内蔵しています。AI処理をはじめ、全般的に旧世代のCPUよりも性能は高いですが、NPU性能はCopilot+ PCの性能要件を満たしません。
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IRL:Intel Raptor Lakeの略です。Raptor Lakeというのは第13世代のCoreプロセッサーのコードネームですが、最新の「Core シリーズ2」として継続されています(Raptor Lake Refreshとも呼ばれますが、Intelの公式サイトでの呼称はRaptor Lakeのままです)。NPUは非搭載ですが、もともと第13世代Core プロセッサーが現在では性能不足というわけもなく、Coreシリーズ2もまた日常用途には十分な性能です。
なお、IAL、IRLとも型番末尾が「U」のものと「H」のものがあります。省電力性はUが「やや上」、パフォーマンスはHが「ずっと上」です。特にIALに関してはUとHで内蔵GPUが異なる(UはIntel Graphics、HはIntel Arc Graphics)ため、グラフィック性能はHのほうが「格段に上」です。
Eシリーズの搭載CPUについて詳しく知りたい人は、こちらの記事をご覧ください。
ノートPC用CPUの選び方 - 2025年前半・最新CPU編
2. Eシリーズの2025年モデル一覧表
下記がThinkPad Eシリーズの2025年モデルの一覧表です。
製品名 | CPU | ディスプレイ (主なもの) |
重量 | 実売価格(目安) |
---|---|---|---|---|
E16 Gen 3 IAL ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra 5/7 (Arrow Lake) |
16.0インチ IPS 1,920×1,200 / 2,560×1,600 |
約1.63kg | 約11〜20万円 |
E16 Gen 3 IRL ▶ メーカーサイト |
Intel Core 3/5/7 (Raptor Lake) |
16.0インチ IPS 1,920×1,200 |
約1.63kg | 約9〜19万円 |
E14 Gen 7 IAL ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra 5/7 (Arrow Lake) |
14.0インチ IPS 1,920×1,200 / 2,880×1,800 |
約1.34kg | 約11〜18万円 |
E14 Gen 7 IRL ▶ メーカーサイト |
Intel Core 5/7 (Raptor Lake) |
14.0インチ IPS 1,920×1,200 / 2,880×1,800 |
約1.34kg | 約9〜18万円 |
ウインタブではこれら4機種の製品紹介記事を掲載しています。
Lenovo ThinkPad E14 Gen 7 / E16 Gen 3 (IRL/IAL) - ThinkPadシリーズのエントリーモデル、2種類のCPUを搭載して新しくなりました!
3. IALとIRL、どちらを選ぶべきか?
E16はディスプレイサイズが16インチのスタンダードノートです。キーボードにはテンキーもついており、自宅や事務所などじっくり作業するのに向きます。また、ディスプレイも標準的な1,920×1,200解像度のものに加え、2.5K(2,560×1,600)解像度でリフレッシュレートが120HZ、100%sRGBの色域に対応する高品質なものを選べます。筐体重量は1.63 kgと16インチノートとしては比較的軽量ですが、モバイル利用を前提とするサイズ感ではありません。
一方、E14は14インチで携帯性に優れたモデルです。筐体重量は1.34kgから、ということなので「モバイルノート」と呼んでもおかしくありませんね。モバイルノートとしてはちょっと大きくて重いですが、USBポートは合計で4つもありますし、有線LANポートもついているなど、「多少重くても我慢できる」理由も見いだせます。
ディスプレイは1,920×1,200解像度のほか、2.8K(2,880×1,800)解像度、リフレッシュレート120Hz、100%sRGBと高品質なものも選べます。
IALとIRLのどちらを選ぶか、ということについて、ウインタブは「IALにすべき。あえてIRLを選ぶ理由はない」と考えます。処理性能、AI性能、省電力性のいずれでもIALのほうが優れています。
ただし、製品価格についてはIALのほうが若干高い傾向があります。以下に例を挙げます。
●E16 Gen 3 IALの場合
OS:Windows 11 Home
CPU:Core Ultra 5 225H
RAM:16GB
SSD:512GB
ディスプレイ:16インチ(1,920×1,200)
価格:132,220円
●E16 Gen 3 IRLの場合
OS:Windows 11 Home
CPU:Core 5 210H
RAM:16GB
SSD:512GB
ディスプレイ:16インチ(1,920×1,200)
価格:125,356円
CPU以外の構成をほぼ同一にした場合、上記の例では6,864円IALのほうが高い、ということになります。ウインタブが「あえてIRLを選ぶ理由はない」としたのは、「IALとIRLの性能差を踏まえるとIALを選ぶほうがよい」と考えたためですが、この価格差をどう見るかは人それぞれなので、「6,864円もの差額があるのならIRLの方を選ぶ」という選択肢もアリです。
※なお、この価格差はあくまで「一例」です。E14、E16とも注文の際に構成を変更でき、変更内容によって価格差も変わってきます。
また、IRLは「Core 3」も選べます。IALには「Core Ultra 3」という型番が存在しないため、「Core 3の性能でも十分」と考える場合はIRLのほうが格段に安く購入できます(最低価格は10万円を切ります)。よって、価格コンシャスで選ぶならIRLにする、という判断も悪くありません。
4. まとめ
私はThinkPadの大ファンです。このことは常日頃、いろいろな記事で表明していますので、ウインタブを愛読してくれている人なら、この点はよくご存知かと思います。
また「低スペック機と低価格機の擁護派」でもあります。SNSなどでは低スペック機を小馬鹿にする論調を目にすることもありますが、私は「ウインタブの記事を書く程度ならCPUはIntel N100で十分」という認識です。
こういう人間なので、ThinkPad Eシリーズは「ストライクゾーン」です。上でも書きましたが、レノボは出来の悪いPCや安いだけのPCに「ThinkPad」という名前はつけませんので、Eシリーズも他のThinkPadシリーズより安価とは言え、「間違いなくThinkPad品質」です。
毎日PCをバッグに入れて外出するのであれば超軽量なX1・Xシリーズが向きますし、PCにより高い質感や「気持ちよさ」を求めるのであればX1・X9・XシリーズやTシリーズがおすすめですが、「低予算でThinkPadらしさを味わいたい」のであればEシリーズが最良の選択肢になると思います。
5. 関連リンク
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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