
Lenovo IdeaPad Pro 5 Gen 10(14型 AMD)の実機レビューです。LenovoのIdeaPadシリーズはシステムスペックの割に価格が非常に安い、つまりコストパフォーマンスが高い製品が多いですが、その一方でディスプレイの発色がいまひとつであるとか、筐体の質感が低い (安っぽい)と感じられるものもあります。今回レビューするIdeaPad Pro 5 Gen 10はIdeaPadシリーズの上位モデル (最上位、と言っていいと思います)なので、品質は高く「安っぽさ」は皆無です。一方で価格はIdeaPadシリーズらしく競合製品よりも低めに抑えられていますので、「メインPCとするにふさわしい品質で、なおかつお買い得なノートPC」です。
なお、このレビューはメーカーよりレビュー機をお借りして実施しています。
・Copilot+ PC対応のRyzen AI 7 350を搭載
・色空間の設定も可能な2.8K・有機ELディスプレイ
・音質のいい4スピーカー搭載
・質感が高く、しっかり感もある金属筐体
ここはイマイチ
・モバイルノートとしては若干重いか (約1.4 kg)
目次
1. スペック表
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| OS | Windows 11 Home/Pro |
| CPU | AMD Ryzen AI 7 350 |
| RAM | 24GB/32GB(LPDDR5X-8000, オンボード) |
| ストレージ | 512GB/1TB SSD(M.2 2242 PCIe-NVMe Gen4) |
| ディスプレイ | 14インチOLED(2,880 × 1,800)120Hz ※Display HDR1000 True Black ※100%DCI-P3、500nit |
| 無線通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth ※Wi-Fi 7選択可 |
| ポート類 | USB4 Type-C(映像出力、PD対応)× 2 USB 3.2 Type-A × 2、HDMI オーディオジャック、SDカードリーダー |
| カメラ | Webカメラ(1080p)顔認証対応 |
| バッテリー | 84Wh |
| サイズ | 312✕221✕15.5 mm |
| 重量 | 1.39 kg |
※この製品はCopilot+ PCです
※レビュー機のスペックは「Windows 11 Home/Ryzen AI 7 350/RAM32GB/SSD1TB」でした
2. 外観と使用感
ACアダプター

ACアダプターは100Wで外部GPU非搭載のノートPC用としては出力が大きめです。サイズはそこまで大型とは感じませんでしたが、電源ケーブル込みの実測重量は384 gと、やはり「ちょっと重い」ですね (外部GPU非搭載のノートPC用のACアダプターは多くが200 g台前半です)。
天板と底面

天板です。筐体は金属製でAl陽極酸化スタンピング (アルマイト処理)が施されています。筐体色はルナグレーという、やや濃い目のグレーです。筐体の質感は高く、しっかり感もあります。

底面です。中央に通気口があり、画像下部左右 (使用時には手前側になります)にスピーカーがあります。IdeaPad Pro 5 Gen 10は底面に2つ、キーボード面にも2つ、合計で4スピーカーを搭載しています。
側面

前面

背面
前面と背面にはポート類やボタン類はありません。

左側面です。画像左からHDMI、USB4 Type-C (映像/PD対応)✕2、SDカードリーダーです。本機への充電/給電はUSB4 Type-Cポートで行います (どちらのUSB4ポートでも充電できます)。また、micro規格ではないフル規格のSDカードリーダーがついているノートPCは今や「数少ない」と言えます。

右側面です。画像左からイヤホンジャック、電源ボタン、USB 3.2 Gen 1 TypeA✕2です。
キーボードと使用感

キーボードは日本語配列で、14インチサイズなのでテンキーはありません。キーピッチは手採寸で約19 mm、キーストロークは1.5 mmと開示されています。キーピッチ19 mmというのは「PCのキーボードの標準サイズ」なので狭苦しさはありません。また、キーストローク1.5 mmというのは薄型ノートPCとしてはやや深めです。バックライトは輝度を2段階に調整でき、「自動モード」も備えています。
キーピッチに余裕があり、キーストロークもしっかりとられているので非常にタイピングがしやすいです。打鍵音も静かなので、静かな場所で使っても周囲にあまり気を使う必要はないと思います。快適に使える高品質なキーボードと評価できます。
ディスプレイと使用感

ディスプレイはIdeaPad Pro 5 Gen 10の大きなセールスポイントです。有機ELパネルで解像度は2.8K (2,880✕1,800)と高く、リフレッシュレートは120Hzと高速です。発色については「Display HDR1000 True Black、100%DCI-P3」と非常に高水準で、ピーク輝度は1100 nitと非常に明るいものになっています。ただ、グレア (光沢)タイプなので、映り込みは激しく、タッチ対応もしません。
手持ちのPCモニター(27インチIPS液晶、99%sRGB)と比較してみましたが、有機ELらしく「黒がしっかり黒い」ので原色の鮮やかさも増し、非常に美しいと感じられました。
設定アプリ「Lenovo Vantage」で色空間を選択できます。クリエイターがIdeaPad Pro 5 Gen 10を使用する場合、お仕事のジャンルに合わせて最適な色空間にできるのが魅力だと思いますが、私には「デフォルト」のままでも文句なしにキレイと感じられました。…まあ、お仕事上の制約がないのであれば、好きな色空間にすればいいと思います。
スピーカー/カメラ/マイク
IdeaPad Pro 5 Gen 10は底面に2つ、キーボード面に2つ、合計で4つのスピーカーを搭載しています。低音から高音までクリアな音質で、非常に高品質だと思います。ウインタブの経験上、「キーボード面の左右」にスピーカーがある場合、一般的なノートPCの「底面のみ」のスピーカーよりも音質面では明らかに上と感じられます。

IdeaPad Pro 5 Gen 10はCopilot+ PCなので、自動フレーミング、アイコンタクトなど、Windowsスタジオエフェクトの機能が使えます。Webカメラは1080p (約2MP、FHD解像度)で画質も良好です。最近はノートPCの上位モデルで5MPなど、非常に高い画素数のカメラを搭載する製品が増えていますが、個人的にはWebミーティングなら2MPでも十分に美しい映像になると思っています。

設定アプリLenovo Vantageでマイクのノイズキャンセリングの設定ができます。この製品に限らず、現行のノートPCでノイズキャンセリング機能がついている場合、周囲の雑音を見事に消してくれます。
その他

ヒンジを最大開口したところです。開口角度は十分で、実用上の問題は全くありませんが、180度までは開きません。
3. 性能テスト
ベンチマークテスト


設定アプリ「Lenovo Vantage」にはパフォーマンスに影響しそうな項目として「電源モード」と「モード」があります。ベンチマークテストの実施にあたり、電源モードを「ギーク・パフォーマンス」というギーク (Geek、「おたく」という意味です)なものに、「モード」を「ゲーム」にして測定しました。また、Windowsの電源モードも「最適なパフォーマンス」にし、レビュー機を電源接続しました。
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PCMarkのスコアです。ビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。ウインタブが最も重視しているテストです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 9 185H:8,099
Ryzen AI 9 365:7,896
Ryzen AI 7 350:7,695
Ryzen AI 9 HX 370:7,511
Core Ultra 7 258V:7,527
Ryzen 7 8845HS:7,446
Ryzen 9 PRO 6950H:6,987
Ryzen 7 8840U:6,949
Ryzen 7 PRO 6850H:6,858
Core Ultra 7 155H:6,849
Ryzen AI 5 340:6,767
Ryzen 5 8645HS:6,708
Core i9-13900H:6,542
Core Ultra 5 135H:6,485
Core Ultra 7 255U:6,404
Core Ultra 7 155U:6,392
Core Ultra 5 125U:6,376
Core i9-13900HK:6,344
Core Ultra 5 225U:6,334
Ryzen 5 7535U:6,021
レビュー機の搭載CPUはRyzen AI 7 350です。過去データに同型CPUのスコア「7,695」がありますが、「ギーク・パフォーマンス」の恩恵か、それよりもわずかに高いスコアとなりました。…まあ、測定のバラツキであると片付けるべき差ですけどね。このスコアは、外部GPUを搭載しないノートPCとしてはトップクラスのものと言えます。

グラフィック性能を測定する3DMarkのスコアです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 7 258V:4,397、8,611、35,677
Core Ultra 9 185H:4,143、8,223、31,710
Core Ultra 7 155H:3,924、8,338、24,476
Ryzen AI 9 365:3,895、8,885、34,303
Ryzen AI 9 HX 370:3,800、8,026、31,138
Core Ultra 5 135H:3,454、7,235、24,791
Core Ultra 5 125H:3,392、7,301、23,168
Ryzen 9 7940HS:3,362、7,776、29,076
Ryzen 7 8845HS:3,330、7,908、29,873
Ryzen AI 7 350:3,268、6,991、28,542
Ryzen 7 8840U:2,943、7,206、27,471
Ryzen 9 PRO 6950H:2,846、7,051、27,983
Ryzen 7 PRO 6850H:2,660、6,601、26,920
Ryzen 5 8645HS:2,437、6,253、24,401
Core Ultra 7 255U:2,430、4,916、20,096
Core Ultra 5 225U:2,372、4,897、20,396
Core Ultra 7 155U:2,319、5,162、19,024
Ryzen AI 5 340:2,123、5,159、22,941
Core Ultra 5 125U:2,081、4,826、19,421
Core i9-13900HK:1,979、5,507、19,723
Core i9-13900H:1,956、5,440、19,477
Core i7-12700H:1,843、5,194、18,244
Core i7-1360P:1,786、4,991、16,779
Core i7-1355U:1,760、4,859、16,891
Core i5-1334U:1,386、3,672、13,157
Ryzen 5 7530U:1,281、3,137、13,730
Ryzen 7 5825U:1,242、3,226、12,859
Ryzen 3 5425U:1,122、2,848、11,949
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
3DMarkのスコアも高いです。ただ、3DMarkに関してはIntelのCore Ultraシリーズ1、シリーズ2に若干引けを取っている印象があります。とはいえ、外部GPU非搭載機としては文句なし、と言える水準です。

SSDの読み書き速度を測定するCrystalDiskMarkのスコアです。PCIe Gen 4のSSDらしく、非常に高いスコアになりました。
バッテリー駆動時間
Windowsの電源モードを「最適な電力効率」に、Lenovo Vantageの電源モードを「適応パワー・モード(自動)」に、モードを「自動」に、ディスプレイ輝度を70%に、音量を30%に、キーボードバックライトをオン(暗いほう)にして下記の作業を実施しました。
・ブラウザー上でYouTubeの動画・音楽鑑賞を約40分
・ブラウザー上でテキスト入力を約25分
・画像加工ソフトGIMPで簡単な画像加工を約40分
上記トータルで約105分使用し、バッテリー消費量は約22%でした。単純計算だと1時間あたり約12.6%のバッテリー消費、バッテリー駆動時間は約8時間となります。この数値は先日レビューをした同型CPU搭載のLenovo Yoga Slim 7 Gen 10よりも1時間弱長いですが、その要因としてバッテリー容量がYoga Slim 7の70Whに対し、IdeaPad Pro 5 Gen 10は84Whと大きいことによるものと思います。
バッテリー持ちといえばIntelのLunar Lake (Core Ultraシリーズ2、Core Ultra 7 258Vなど)が10時間を余裕で超え、「驚異的」と感じていますが、IdeaPad Pro 5 Gen 10も8時間程度のバッテリー駆動が可能なので、出先で終日バッテリー駆動で作業ができると思います。
発熱とファン音
発熱については特筆すべきことはありません。高負荷時にはキーボード面上部が少し熱を持ちますが、他の製品と比較して異常とは感じられませんでした。ファン音は「ギーク・パフォーマンス」時にベンチマークテストを実施した際にはやや大きめとなりました。と言ってもゲーミングノートのような音量ではなく、十分許容範囲内かと思います。また、Excelなどの事務作業中はファン音はほとんど気になりませんでした。
4. まとめ
Lenovo IdeaPad Pro 5 Gen 10(14型 AMD)はLenovo公式サイトで販売中で、11月16日現在の価格は146,124円からです。最低価格のベースモデルでも「Ryzen AI 7/RAM24GB/SSD1TB/2.8K有機ELディスプレイ」という構成なので、そのまま購入してしまっても特に不満を感じないと思います。
ベーシックな製品ブランドであるIdeaPadシリーズですが、このIdeaPad Pro 5 Gen 10は「全然ベーシックではない」ですね。Copilot+ PCの要件を満たし、ディスプレイ品質も非常に高く、4スピーカーや顔認証カメラなどの周辺装備も充実していますので、「高級ノートPC」と捉えるべき製品だと思います。お仕事でもプライベートでも、メインPCとして長く愛用できる製品と評価できます。
5. 関連リンク
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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