ご注意:ここでレビューしているGPD Winは試作機(最終段階に近いと思われます)で、日本国内で正式に販売されるモデルや海外向け製品版とは一部仕様が異なっております。試作機であるためファームウェアやタッチパネル関連で不安定な部分も見受けられましたが、製品版では修正されていると思われます。レビュー製品は試作機であることにご留意ください。
目次
1.GPD WINの概要
GPD Winは中国のGPD社が製造を手掛ける5.5インチの小型Windows 10搭載UMPC(Ultra-Mobile PC、ウルトラモバイルPC)。GOLE 1同様クラウドファンディングで多数の出資を得て商品化が決まった製品で、日本でもクラウドファンディングサイトMaukuakeで資金を得ており、技適を通したうえで正式に販売が決定したという経緯を持つ製品です。ちなみに日本での販売元は緑屋電気です。また日本での一般販売開始は来春を予定しています。
GOLE 1同様ポケットに入る超小型Windows 10 PCですが、もともとGPD社はAndroid搭載ゲーミングタブレットをメインに製造してきたメーカーゆえに、本機もXBOX互換コントローラーとキーボードを内蔵した「モバイルゲーミングPC」という扱いになっています。
小型ゲーミングPCとしての魅力はもちろんなのですが、GOLE 1ではキーボードが搭載されていなかったため、フルキーボードを搭載したミニPCの再来を待っていた人にとっては、こちらこそ本命になるのではないでしょうか。
CPUはIntel Atom x7 z8700/8750を搭載。いわゆるCherryTrail世代のAtomですが、その中で上位グレードとなるx7ブランドの最上位モデルが採用されています。内蔵GPUであるIntel HD Graphics(第8世代)のシェーダーユニット数が中国タブレットでも採用例が多く、GOLE 1でも搭載されているAtom x5の12から16に増えており、解像度を落とせばちょっと古めのゲームもそれなりにプレイできる性能を実現しています。
ただし日本で正式販売されるモデルと海外版で搭載CPUが異なっており、日本版はz8700を、海外版はz8700のモデルとz8750のモデルが混在しているようです。一部の販売サイトでは入荷時期によってCPUのモデルが変更される可能性があるという記載があり、ここら辺はかなりの混乱が見られます。
2.筺体の質感とキーボードの操作性
実際に手元に到着したレビュー機を見た感想としては「やばい!小さい!」というのが正直な感想です。かつて所有していたWILLCOM D4や富士通 FMV LOOX U/G90もかなりコンパクトではあったのですが、キーボードとゲームコントローラーを内蔵したPCでここまで小さいのは相当なインパクトです。
ただ、コンパクトな分キーボードのほうもかなり突き詰められており、これでも両手でタイピングはできますが、かなりギリギリかなぁという印象です。XBOXコントローラーのアナログコントローラーのハットスイッチ(L3/R3)やXBOXボタン(いわゆる“しいたけ”ボタン)もキーボードのボタンとして配置されています。またコントローラー部にはDirectInputモード(古いゲームでも動作する一般的なゲームコントローラー互換)、マウスモード、XInputモード(XBOX360互換コントローラーモード)を切り替えるスイッチが搭載され、コントローラーの配置は一般的なゲームパッドと同様の配置となっています。
本体後部にはXBOX360コントローラーのL1/R1ボタン、L2/R2トリガーに相当するボタン、USB-Cポート、microHDMIポート(ただしこれは試作機の仕様で、最終製品版ではminiHDMIポートに変更されているとのこと)、フルサイズのUSB3.0ポートが装備されています。GOLE 1ほどではないにせよPCとしての拡張性はしっかり備えているので、ここら辺は安心できます。
L2/R2トリガーはXBOX360コントローラーのようなアナログトリガーではなく、デジタル式のものになっているため、細かい操作が必要となるレースゲームでは少し不便な仕様になっているのは残念ですが、考えてみれば携帯ゲーム機の任天堂3DSやPS VitaもL2/R2ボタンはデジタル式になっているので、モバイル機への搭載ということを考えると「やむなし」といったところでしょうか。
液晶ディスプレイにはiPhoneを含めスマートフォンで多数採用されているコーニング社のゴリラガラス3が採用されているため、基本的には液晶フィルムを張らなくても傷の心配は不要だと思われます。中華タブレットでは傷つきやすいアクリルパネルが採用されている例が多いので、液晶フィルムを張らなくても傷がつく心配がいらないという意味ではうれしい限りです。
裏面にはファンを切り替えるスイッチが存在しています。この試作機の段階で、内部に搭載されている銅製ヒートシンクの搭載と一緒に実装されたようです。右からそれぞれOFF、中、高の順となっており、負荷の高い3Dゲームをプレイしているときは「高」にしてファンを回す設定にしたほうが安定してプレイできそうです。
3.ゲームをやってみた
GPD Winはゲームコントローラーを内蔵した小型ゲーミングPCで、3DSやPS Vitaと同じようなサイズでありながら多数のWindows用ゲームが動作するのが最大の魅力!というわけで実際にGPD Winでどの程度のゲームが動くのか検証してみることにしました。
GPD Winに今回インストールしたのは2010年にエレクトロニック・アーツから発売したレースゲーム「Need For Speed Hot Pursuit」となります。世代としてはPS3/XBOX360世代のレースゲームで、PC版の最低動作要件は、
CPU:Intel Core 2 Duo 2.0Ghz あるいはAMD Athlon x2 64 2.4GHz以上
RAM:1GB以上
GPU:DirectX 9.0c互換 ビデオメモリ256M以上を搭載したGPU(*オンボードGPUはサポート対象外)
HDD:8GB以上の空き容量
となっています。現在のAtomは性能的にはCore 2 Duo相当の処理能力となっているためCPUの要件は満たしており、RAMは4GB搭載しているので、余裕でクリアしています。
これを動かすには割とハイエンドなPCが必要だったのですが、GPD Winではデフォルト設定(解像度800 x 600、解像度設定は最低で15~20fps程度)でちゃんとプレイ可能でした。プレイするにはぎりぎりかなぁという印象ではありますが、PS3/XBOX360世代のゲームがAtomプラットフォームを搭載した小型PCでここまで動くだけでも感動的です。これよりも古い世代のゲームに関しては2008年あたりのタイトルであれば解像度を高めにしてグラフィック設定もより上位の設定で快適にプレイ可能なものと思われます。
ちなみにMMORPGである「ファイナルファンタジーXIV 蒼天のイシュガルド」のベンチマークデモも実行してみたのですが、DirectX 11モードではベンチマーク途中でアプリが落ちてしまい、DirectX 9モードでは上記画像のような結果となりました。ここら辺に関しては本当にグラフィック設定や解像度を落として何とか。といったところでしょうか。
4.試作機の不具合について
記事冒頭の注意書きのとおり、今回レビューしているGPD Winは最終出荷前の試作機だったのですが、試作機固有の問題と思われるファームウェア面・ソフトウェア面での不具合が見受けられました。
製品版ではこれらの問題は修正されていると思われるため、参考にはならないかもしれませんが、試作機で発生した問題点について簡単に説明します。
長時間稼働させると画面がちらつき操作不可能に
長時間システムを稼働させていると画面がちらつきだし、まともにOSの操作ができなくなります。BIOSのPOST画面でもちらつきが起きることや、この試作機が出た後にバッテリーがらみで問題が発生し製品版ではバッテリー容量を変更するというアナウンスがあったため、バッテリーがらみの問題の可能性もあります。またXinputモードで内蔵コントローラーの認識が不安定になる箇所も見受けられました。
OSのリカバリ後に起きる問題
Windows 7以前まではメーカー製のPCにはOSのプロダクトキーを記載した「COAラベル」というシールがハードウェアの裏面に張り付けられていたのですが、これを単体で販売するケースが多数発生したことからWindows 8以降では仕様を変更し、UEFIファームウェアにOEMキーを内蔵しCOAラベル自体はハードウェアに張り付けないという仕様に変更されています。
そのため通常であればリカバリ後もUEFIファームウェアに埋め込まれているキーを参照してWindowsの認証作業を自動的に行うのですが、GPD Win試作機のUEFIファームにはその項目が存在しないため、リカバリを行うとアクティベーション情報が飛んでしまいOEMキーでの再認証ができなくなってしまいました。
製品版では正式版のUEFIファームウェアが搭載されており、OEMキーが埋め込まれているはずですのでリカバリ後にアクティベーション不可になるということはないものと思われます。
ちなみに以前レビューさせていただいているiWork 8 Air、GOLE1はちゃんとUEFIファームウェアにOEMキーが設定されているため、リカバリ後自動的にOEMキーで自動認証が通る仕様になっています。
またリカバリイメージに含まれているタッチパネルファームウェアファイル(C:\Windows\INF\Touchsettings.gtに格納されています)が壊れているのかリカバリ後タッチパネルのキャリブレーションがおかしくなってしまう現象が起きてしまいました。ここら辺も試作機故の現象だと思われますので実際に販売される製品版では問題ないと思います。
5.まとめ
小型PCの本命!キーボード搭載小型UMPCの後継機を望むなら本機しか存在しない
GOLE 1にGPD Winと、中華タブレット界隈では小型PCが立て続けに登場しており、どちらも日本でかなり注目を浴びる存在になっています。
特にGPD Winに関しては来春になってしまいますが日本でも技適を取得したモデルが正式に導入されることが確定となっているため、無線通信に関しても特に問題なく国内で利用することが可能です。
今回試用したモデルは試作機ということで残念ながら不安定な要素もいくつか見受けられたものの、製品版では修正されているということで小型ゲームPCのみならず、キーボード搭載UMPCの復活を待ち望んでいた人には待望の存在になるのではないでしょうか。残念なことにこの盛り上がりとは逆にIntel Atomプラットフォームが収束に向かってしまっているのは皮肉としか言えない現状ではありますが…。
スマートフォンが高性能化し、タブレットデバイスが普及したいま、GOLE 1やGPD WinのようなUMPCが復活すること自体が奇跡的な出来事で、こういった小型PCが大好きだった自分にとっては久しぶりに充実した1年になりました。
6.関連リンク
GPD Win 5.5 inch Gamepad Tablet PC:geekbuying
※この記事で使用している製品はgeekbuyingが特別に提供してくれたものです。
GPD WIN - 5.5インチ、フルWindows、キーボード搭載のゲームパッド ただ感動(実機レビュー):ウインタブ
GPD:英語版のメーカーサイト
正規輸入版先行販売ページ:Makuake
かのあゆブログ
※この記事の執筆者のブログです